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第32話 潔癖症を治す大ヒントです。


「てかおまえ、潔癖症のわりには部屋あんま綺麗にしてないよな? 埃とかも結構あるし、服とか漫画とか散らばってるし……」


「そんなの決まってるじゃないですか。私の部屋にある物質や、部屋で生成されたゴミ等は汚染されていませんからね。片付けたり掃除したりする必要性が無いのですよ」


「……ふーん……」


 そういえば、なるみちゃんが言っていた。トアリが『自分が汚いと思ったモノの範囲が凄く広くなって』と。


 普通の人でも、自分が汚いと思うモノは極端に避ける。でも通常はその範囲はあまり広くないので、日常生活を送るのに何ら支障はない。


 しかしトアリはその範囲が非常に広く、ただのシャーペンでも汚いと思って、触ったあとに手を洗わなければならない。


 だが潔癖症とて、実際に汚染されているモノでも綺麗だと思っていれば無害と認識するようだ。


 トアリが自室にあるモノを実際の汚染度のことを考えずに『綺麗』と言ったのが良い例だ。


(ちょっと見えてきたぞ……トアリの潔癖症を治すヒントが……。時期がかなりかかるかもだけど、治せるかもしれない……。でも今は……)


 その時ではない。今第一にしなければならないのは、明日の課外授業の対策。


「よし、分かったトアリ。ともあれ今はまず課外授業だ。その作戦会議をするぞ」


「えー?」


 いや「えー?」じゃなくて。


「その前に人生ゲームやりませんか?」


 何でだよ。


「悪いけどそんな暇は無え。いいから早くトアリが課外授業に行けるような作戦立てなきゃ駄目だろ。明日なんだぞ?」


「私が課外授業にねえ……。とりあえず人生ゲームとかトランプを向こうでやりましょうか」


 うん、そうだね。やってもいいけどその前にオマエが行けるようにしようか。

 そろそろ真剣に作戦会議しようか(怒)。


「初日は京都だ。新幹線で移動するんだけど、ここまではまあ、大丈夫だよな?」


「無理無理。新幹線が無理。汚染度かなり高いし」


 引っかかるの早いな。


「新幹線は別に大丈夫じゃねえのか?」


「いやー、無理ですよ。あそこ、かなり汚染されてますよ?」


「何でだよ?」


「だって色んな人が利用してるじゃないですか。電車のトイレも同じく」


「だから?」


「中にはトイレを済ませた後、手を洗わない人が居るでしょう? そんな人が利用してたら、自ずと電車内の至る場所がその菌に塗れてるってワケですよ」


 なんか妙にリアルな話するなこういうときだけ。


「……まあ……。なんかそう考えたら確かにちょっと……ってなるけどさ」


「でしょ?」


「うーん……。確かに俺も、公衆便所とかに前から抵抗があったから分からないでもない。でも電車の座席は我慢できないか? 防護服もあることだしさ」


 トアリは渋々「はあ……」と頷いた。


「んでさ、新幹線での移動、一時間半ぐらいなんだけど。その間のトイレは我慢するって方向でどうだ?」


 ふむ、とトアリは頷いた。


「なるほど。それなら出来なくはないかも、ですね。学校でも我慢できてますし」


「えっ? ずっと我慢してんのか?」


「いえ、したくなったら帰宅してます」


 帰宅してんのねいちいち。


「あんな汚染された区域に人が立ち入るべきではありませんし(笑)」


 おまえは今、学校中の女子を敵に回した。


「じゃあ移動時間は我慢する作戦でいこう。時間が無いからサクサク決めてくぞ? かなり腹も減ってきたし」


「じゃあ昼食タイムにします?」


「……別にいいけど……。一応訊いとくぞ? ここでは食べない、よな?」


「当たり前じゃないですか。ここには汚染物質を持ち込まない、使わない、作らないようにしてますから」


 なにそのオセン三原則。


「食事はリビングでとるようにしていますから。早速行きましょう」


 俺たちはスリッパに履き替えて、一階のリビングに向かった。


 中に入ると、そこには何と、岩田いわた先生がソファーに腰をかけていたのだった。


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