どうも、メガネです。
牛乳瓶の底のようなメガネをかけた男子ですよ。
ええ、
一応、
ボクは今から購買でお昼ご飯を買いに行こうかと思ってるところです。
焼きそばパンは人気ですぐ売り切れるらしいので、練乳パンか何にしようかと思ってます。
「あ……」
教室を出ようとした時、一人寂しく席でお弁当をつつく
皆は誤解してるようだけど、彼は良い人です。
数学の授業で、極悪非道な奴だとか校内放送が入ったけど、そんなことありません。
『皆さん、お昼の時間です。極悪非道
校内放送が入った。副生徒会長の
(城ヶ崎くんはそんな人じゃない……。パン買ったら城ヶ崎くんと一緒に食べよう……)
ボクに出来ることは、城ヶ崎くんの味方になることだ。
うん、そうしていくうちに、ボクが少しずつ誤解を解いてあげよう。
(ええと……)
購買コーナーは人で溢れていた。焼きそばパンはもう売り切れ。でも隅っこの方にアンパンが残っていた。ボクはそれを買って、その場を離れた。
(……あれ?)
渡り廊下の先から、
彼女はギシュギシュと防護服を鳴らしながら、慌ただしくボクとすれ違っていった。鞘師さんが向かった方向は下駄箱。
(なにか家に忘れ物でもしたのかな……)
ぶっちゃけ、鞘師さんに良いイメージはありません。
でも、なんだろう……。
城ヶ崎くんのように、鞘師さんも……もしかしたら本当は良い人なのかなと思う時があります。
今度、勇気を出して話して、確かめてみよう。
(……ん?)
中庭に差し掛かった時だった。『考える人』の銅像の前で立つ、黒スーツ姿の男が目に入った。
長く伸びた白髪を後ろで束ねた男は、ものすごくシュッとした体型をしている。
(誰だろう……。学校の関係者かな?)
立ち止まったボクの気配に気づいたのか、白髪の男はこちらを向いた。
「やあ」
と、男は微笑みながら言った。精悍な顔立ちだった。かなり年配なのだろうけど、それを感じさせないほどしっかりとした光を目に宿している。
驚いたのは、年配にしては長身だったこと。一八〇はあると思う。腰も曲がっておらず、しっかりとした姿勢を保っている。
「これからお昼かね?」
男は優しく言った。
「あ、はい……」
「ふむ、ではご一緒しませんかね?」
「え、ボクとですか?」
「ええ、ぜひご一緒したいと思いましてね。無理にとは言いませんが」
……どうしよう……。城ヶ崎くんと一緒にお昼食べたかったんだけど……。
でも断るのも悪いし……。
「じゃあ、はい……」
「ありがとう。ではあちらで食べようか」
ボクは得体の知れない謎の男と一緒に、中庭のベンチに腰を下ろした。
「あの~。大変失礼なのですが……」
ボクが恐る恐る言うと、
「何かね?」
男は優しく微笑みながら言った。
「どちら様でしょうか?」
「おっと、これは大変失礼した。まだ自己紹介がまだでしたね」
男はコホンと咳ばらいをした。
「ワタシはこの学校の教頭であります」
「へえー。教頭先生だったんですね――」
って、ええええええええええええええええ?
教頭おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?
この人があの?
トラブルを何でも解決してくれるっていう噂の?
「おっと、このことはご内密に」
教頭はシッと人差し指を立てた。
「こちらの都合上、素性がバレるわけにはいかなくてね。全校集会にも参加しないようにしていまして。まだキミだけですぞ、ワタシの正体を知っているのは」
言うと、教頭はニコッと笑ったのだった。
「あ、あのー。何でボクにそのことを?」
「メガネくんなら他言はしまいと思いましてね。何せメガネを掛けている人物より目立つメガネを掛けている。つまりメガネという物質であるということが証明されている」
なにか物凄く失礼なこと言われてる? 気のせいですよね?
「あ、あのー。一応、ボクは早乙女勇気っていう名前がありまして。まあメガネっていうあだ名で呼んでもらっても良いんですけど……」
「おっと、これは失礼した。では早乙女……あっ間違えた、メガネくん」
なんで言い直したの? 今確実に狙って正解を不正解に持っていきましたよね?
「ところでメガネくん」
早乙女です。まあ良いけどね、メガネで良いけどね別に。それで通ってるし。
「お昼ごはんはそれかね?」
教頭はボクが持つアンパンを視線で差した。
「あ、はい。本当は焼きそばパンが良かったんですけど、やっぱり人気で残ってなかったんです」
「ふむ。そういうことなら」
言うと、教頭はスーツのふところから焼きそばパンを出した。
「ワタシの焼きそばパンと交換しないかい?」
「え、ええ? 悪いですよ!」
「ふふっ。遠慮する必要はありませんぞ。ワタシなら毎日のように焼きそばパンを強奪できますからね」
強奪?
「ふっふっふっ。焼きそばパンの取り合いでも、まだまだ若い者には負けませんぞ。まあ彼らはワタシの存在にすら気づいていないでしょう。某国の隠密機動隊トップクラスに所属していたワタシの、ね」
何者なんですかアナタは?
「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」
ボクが教頭と焼きそばパンと交換しようとした時だった。
チュイン! と音が鳴り、近くの地面に小さな穴が空いた。そこから小さな煙が一瞬だけ立ち昇った。
「……え?」
今のは一体……?
面食らっていると、
「メガネくん、少々お付き合いを!」
教頭が僕からアンパンを取り上げ、自分が持つ焼きそばパンごとスーツのふところにしまった。
「え? なんですか?」
「失礼!」
言いつつ、教頭はボクの頭を掴んでその場に伏せさせた。
「しばらくそうしていてください!」
ワケが解らぬまま、伏せていると……。
タタタタタタ! と銃声? のようなものが聞こえてきた。その音に連動して、地面に小さな穴が沢山出来ていく。
「え? え? え?」
混乱するボクとは対照的に、
「ふっふ。なるほど、彼らもスナイパーを雇ったようですね」
教頭はとても冷静だった。
銃声? が鳴りやむと、教頭は、
「メガネくん、今です! あの銅像の後ろに隠れましょう!」
指示通り、ボクは教頭と一緒に『考える人』の銅像の陰に隠れた。