「今から私がする質問に答えなさい! いい?」
「はいはい……。で? 何だよ?」
気怠く構える俺を見てか、
「受験で全教科満点を取った功績を認められ、一年生にして生徒会副会長の座を手にした優等生の中の優等生である私を目の前にして、なかなか良い度胸してるわね!」
自慢長いしめんどくせえな。
「まあいいわ。にしても
「……えっ、有名人?」
「ええ。あの
……は?
「二人で手を組んでこの学校を制圧するつもりだ、なんて噂もされてるわ。なんて野蛮な!」
いやちょっと待て。
何だそれ。
マジか。マジでそんな感じの噂流れてんのか。だからかあの視線は。
なんか隣のクラスどころか全校中に話が広がってんだけどおおぉ。
「マジか……そんな噂が……」
「ええ。キミのクラスメートから広まった噂よ。心当たりはあるんでしょ?」
……ぐ……。
「少しは自覚しなさい! たった一日でこれだけ噂になるなんて前代未聞らしいわ!」
くそ……。ちょっとは覚悟してたけど、まさかこれほどまでに話がデカくなるとは……。
これもしかして挽回不可能だったりする?
「ええとまあ、それで質問なんだけど、その、ええと……」
先ほどまでの強気が打って変わって、加藤は頬を赤らめてモジモジと指を絡ませた。
「その、鞘師……トアリ……さんは、元気?」
「……ああ鞘師? どうせ元気だろ――って、直接訊いた方が早いと思うぞ」
俺は加藤の背後を指差した。そこにはフルアーマー系女子、鞘師トアリの姿が。
今日もギシュギシュ歩いて登場していたのに、加藤は俺に集中しすぎてその音に気付かなかったようだ。
「さ、さささささ鞘師トアリ!」
加藤は後退りして、俺の隣まで来た。
「……なに分かり易く動揺してんだよ?」
「うるさい! 警察呼ぶわよ!」
呼べよ。呼べるものならな
「はあ」鞘師は防護服の中でため息を吐いた。「増殖するG二人と対面とは、朝からツイてないな」
増殖するGってなんだ。
「そろそろだと思ってたんですよねー。温かくなるとGがわき出すんですよねー。カサカサカサカサと」
おい。まさかGってゴキブリのことじゃねーだろうな。
「あっ、そこのゴから始まって中間にキブが入ってリで終わるお二人さーん。汚いので私に近づかないで下さいね」
やっぱゴキブリかいぃ。今日も朝から平常運転だな。