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第16話 鞘師のこと


 今日から本格的な授業がスタートする。

 昨日とは違って、一限から六限まで授業がある。


 その長い時間、あのフルアーマーを何とかしなければならないのだ。


「……やるっきゃない、か……」


 気合いと共にきよキラ高校の制服に袖を通し、俺は他の生徒より早く学校に来ていた。


「早速頼むわね、城ヶ崎じょうがさきくん」


 職員室にて。担任の岩田いわた先生にプリントの束を受け取った。昨日の疲労が残っているのか、たった四十枚の紙さえ重く感じた。


 俺の冴えない表情を見てか、岩田先生は「こらこら」と優しく言った。


「自分からやりたいって言ったんでしょ? だったら責任持ちなさい」


 ね? と笑顔で言いつつ、岩田先生は俺の左胸の『清』と青字で書かれた赤いワッペンをポンと手で叩いた。


「それに城ヶ崎くん。大勢の中から選ばれて清キラ高校の一員になったんだから、ここに入れなかった人に恥じないよう、しゃんとするのがあなたの義務じゃないの?」


「それは分かってるんですけど……。イレギュラーが過ぎるというか……」


鞘師さやしさんのこと?」


「はい……。何とかなんないんですかね。あの潔癖症」


「そうねぇ。城ヶ崎くんはまだ、鞘師さんのこと知らないんだったわね」


「いえ、身をもって知ってるつもりですけど」


「ああ、そういう意味じゃないわ」岩田先生はかぶりを振って、「鞘師さんのこと、ちゃんと知ったら変わるかもってこと。城ヶ崎くんの気持ちも」


「は、はあ……」


「ほらほら。いいから早く元気出して、さっさと動く動く!」


「あ、はい。失礼します」


 岩田先生に背中を押され、俺は職員室を後にした。


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