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第6話 コーホーコーホー

 ここは全国で五指に入るほど偏差値が高く、勉学に励むのに最適の環境であるエリート高校。

 この俺……城ヶ崎じょうがさき俊介しゅんすけはエリートとして勉学に励むだけでなく、高校デビューを意気込んでいた。

 んだけど。


「コーホー、コーホー」


 と、右隣からフルアーマー系女子……鞘師さやしトアリの呼吸が届いてくる。アイツの防塵マスクには超重厚なフィルターが施されているらしく、どこぞの暗黒面のような吐息がもれなくついてくるのだ。


(はぁ……)


 奴さえ居なければ自分のことに集中できるのにね、ホント。


「改めて自己紹介させてもらうわ。私がこのクラスの担任、岩田いわた優美ゆうみよ」


 一限目もHR。日直、係決め等を岩田先生が説明していく。


「ではまず日直について話すわ」

「コーホーコーホー」


 と、岩田先生の話に、鞘師トアリの呼吸が割り込んでくる。


「日直は出席番号順で、日替わりね」

「コーホーコーホー」

「明日から出席番号一番の男女から――」

「コーホーコーホー」

「――の二人ね。明日はあなたたちが日直で――」

「コーホーコーホー」

「――チョークが無くなったりしてたら――」

「コーホーコーホー」

「――ええ、職員室の――」

「コーホーコーホー」


 コホコホうるせえな。


「おい、おい、ちょっと静かにしてくんない?」


 俺は囁き声で言った。すると鞘師トアリは勢い良く立ち上がり、防護服をギシュギシュ鳴らしながらダッシュで教室を出ていったのであった。


「ちょっと鞘師さん? 何処行くの!」


 岩田先生の静止も追いつかないほどのスピードだった。


「どうしたのかしら……」


 岩田先生が困った様子で言った。


「ねえ城ヶ崎くん。隣のよしみでちょっと捜してきてくれないかしら?」


「お、俺ですか?」俺は己を指差す。


「ええ。頼むわ。あなたが戻ってくるまで、鞘師さんのことを知っている人に彼女のことを詳しく聞いておくから。担任として対処法を知っておきたいの。だからお願い」


「は、はあ……分かりました……」



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