「はいはい静かに静かに」
「
いやどこからどうみてもS極とS極以上に強く反発し合ってたでしょ。その綺麗な瞳は節穴ですか?
「城ヶ崎くん、そんなに仲が良いのなら鞘師さんと替わってあげたらどう?」
仲良くないし。おいそこのクソバカフルアーマー系女子、岩田先生の隣でウンウン頷いてんじゃねーよ腹立つな。
「俺は替わるつもりありません……」俺は着席した。「視力悪い人が替わるとかなら分かりますけど、俺、視力一・〇だし」
鞘師トアリが防護服の中で舌打ちした。
「ああなるほど。視力が悪い人ね。でも目が悪い人がわざわざ一番後ろの席を取ったりしないだろうし……」
アッと、岩田先生は最後列の、ある生徒に視線をロックした。
その、俺の右隣に座る男子は、今時珍しく牛乳瓶の底のように分厚い眼鏡を掛けていたのであった。
「ぼ、僕が……何か?」
静まり返る教室。もう、生徒たちは全員、とばっちりを受ける人を把握していた。
このままずっと、鞘師トアリがダダをこね続けて一日が終わる事態を避けるためには、もう……。
……眼鏡が犠牲になるしかないのだ。
「ごめんねあなた。悪いんだけど、鞘師さんと席替わってあげてくれない? 目も悪そうだし」
「あ、いえ、僕、眼鏡かけてるし――」
「突然信じられない現象が起こってその眼鏡が割れたりしたら大変よね? そういう時、最後列だと何かと不便だと思うの」
「いえ、心配ありません。スペアの眼鏡なら沢山――」
「ありがとう快諾してくれて。あなたのような心の広い生徒が居てくれて助かるわ」
「え? 僕まだ了承してな――」
そんなこんなで鞘師トアリは俺の右隣……最後列の席をゲットしたのであった。
「わーい、やったー」
鞘師トアリは防護服をギシュギシュ鳴らしながら、岩田先生の隣で何度もバンザイして喜ぶ。
納得いかない……。
とりあえず眼鏡の男子には後でフォローしとくか。