セラフィーナさまが『伝説の銀色ドラゴン』さまだった!
それは私、アーロ・ヤンセンを動揺させ、高揚させる事実だ。
私は魔族と戦いながら、空から天使のごとく降ってくるセラフィーナさまの姿に感動した。
優美に体を躍らせて、舞うように落ちてきた美しき女性は、美しきドラゴンへと姿を変える。
魔族どもを一喝する勇壮たる姿に、私の心は震えた。
私が険しい山に分け入ったのは、まさに『伝説の銀色ドラゴン』さまを探す旅であり……。
あぁ、セラフィーナさまと出会うための旅となったのだ。
傷付いた私を助けてくれた優しい女性が、探し求めていた『伝説の銀色ドラゴン』さまでもあったなんて。
こんな幸運なことがあろうか。いや、ない。
私が説得するまでもなく、王国の危機に自ら駆けつけてくれる『伝説の銀色ドラゴン』さま。
勇猛果敢でありながら思慮深く、無駄な争いを避けて事を収めてくれた『伝説の銀色ドラゴン』さま。
まさに私が思い描いていた『伝説の銀色ドラゴン』さまの姿、そのものだった。
しかも美しい。
美しく可憐で儚げなセラフィーナさまが、あの『伝説の銀色ドラゴン』さまだったなんて。
夢のようだ。
私はセラフィーナさまに恋をした。
あの『伝説の銀色ドラゴン』さまに恋をした。
聖剣が光ったのだって、きっと私の力じゃない。
ここにいる『伝説の銀色ドラゴン』さまの……いや、セラフィーナさまの力に違いない。
セラフィーナさまは、私の力についてご存じないようではあるが。
私に力があるとすれば、それが開花したのはセラフィーナさまの力だ。
私は、ただ恋に落ちただけの男。
だというのに、セラフィーナさまは、泣きながら詫びるのだ。
自分が『伝説の銀色ドラゴン』だと告げなくて悪かったと泣くのだ。
そして私のことが好きだと……この私のことが好きだと告げたのだ。
自分よりも寿命の短い人間に恋したことを愛するゆえに嘆き、強すぎる女性は嫌だろうと言って泣き、ルーロさまのように庇護欲をそそるような存在だったら良かったのにと言って泣く、あなたのどこに欠点があるというのか。
美しく可憐で儚げで、そのうえ健気なあなたのどこに魅力がないというのか。
私は『伝説の銀色ドラゴン』さまに恋する資格すらないような、取るに足らないただの人間だというのに。
ああ、私の心は完全に、あなたに撃ち抜かれてしまった。
出来ることならば、セラフィーナさま。
あなたと一緒になりたい。
取るに足らない人間の身ではあるけれど。
先に死にゆく私は、あなたを泣かせることになるだろうけれど。
私はあなたと一緒に、生きていきたい――――