銀色ドラゴンについて何か情報を知りませんか? と聞いてくるアーロさまを、まずは体を回復させてから、とか何とか言いくるめて再び眠らせてから、私の自室に集合してのヒソヒソ話です。
部屋の真ん中にちんまりと集まり、アガマやモゼルはもちろん、私も立ったままの話し合います。なんだか落ち着かない気分です。
「アーロさまの探しているドラゴンを、探してきてちょうだい」
私の言葉に、アガマとモゼルが爆笑して膝から崩れていきました。ちょっと待ってよ、何事ですか?
「アハハ……ヒッヒッ、大丈夫です。あれは、お嬢さまのことですよ」
アガマが笑いながら苦しそうに言いました。ちょっと失礼だと思います。
「フフフ……フッ、クククッ。そうですよ、お嬢さま。あれは間違いなく、お嬢さまの……クククッ」
モゼルも笑いながら苦しそうに言っていますが、失礼ですね。拗ねますよ、プクッ。
「ハハハッ。お嬢さま、怒ったのですか? その姿も可愛らしいですが……ハハハッ」
「もう、アガマさまってば、止めてくださいな。私まで笑いが止まらないじゃないですか、デュフフフ」
二人して笑ってますね。もう、知らないっ。
「ハハハ、お嬢さま。まぁまぁ、拗ねないでください」
「フフフ、そうですよ、お嬢さま。拗ねている姿もお可愛らしいですけど……フフフ」
私に何か言う前に、笑いを収めて欲しいです。いつまで笑っているつもりなのかしら? 私はちょっと強めに使用人たちを睨んでみました。笑いは一瞬、収まりましたけど。次の瞬間、もっと大きな笑い声が上がりました。解せません。
「まぁまぁ、お嬢さま。これでお嬢さまに対する人間のイメージが分かったでしょう?」
「ええ、アガマさまの言う通りです。人間から見た私たち聖獣は、いつもあんな感じですよ」
アガマとモゼルはそう言いますが。彼らのイメージはドラゴンよりは可愛いと思います。力強すぎるイメージって、可愛くないですよね? 乙女心は少し傷ついてしまいましたよ。
「お嬢さま、そんなに凹まなくても大丈夫ですよ。人間から見た我々、聖獣は実に都合のよい存在なのです」
「そうですよ、アガマさまの言う通りです、お嬢さま。人間には無い能力を持つ聖獣は、色々な場所で神のように崇められています。ですが、人間にとって都合のよい解釈で認識されていて、必要なときに利用できると思っているのです」
「えぇ?」
アガマとモゼルの意見に容赦はありません。ですが、そこまで酷いものでしょうか?
「そうですよ、お嬢さま。伝説の銀色ドラゴンさま、なんて言ってますけど。要は魔王軍と戦って助けてくれってことじゃないですか。普段は何のお付き合いもないのに助けだけ欲しがるって、どうなんですかね」
アガマが嫌味臭く言います。年寄りは僻みっぽいといいますが、本当ですね。
「本当ですよ、お嬢さま。魔王軍と戦え、なんて下手したら命を落とすことになるのですよ? いくらお嬢さまが強くても、必ず勝てるとは限らないですし」
モゼルも強く不満を感じたようです。興奮して唇が尖っています。
「そうそう、本当に図々しい。捧げものすら無いようなのに……いや、捧げものがあればいいってもんでもないですよ? 依頼されたドラゴン側の了承について、考慮がなされていないのが問題なのです」
「ん、分かったわ。アガマが興奮すると話が難しくなるから、落ち着いて?」
なんだか話がこんがらがってきました。
「お嬢さまは、アーロさまが、お好きなんですよね?」
モゼルが突然、核心を突いた質問をしてきました。
好きですけど、好きですけど、好きですけど。言葉にするのは恥ずかしくて、私はコクンと頷きました。
「アーロさまが銀色のドラゴン、つまりお嬢さまのことを探しているというのは。恋する乙女であるお嬢さまには、嬉しいことかもしれません。ですが……」
モゼルは意味深に言葉を切ると、私の顔をジッと見ています。何を言うつもりなのでしょうか? 私は緊張して唾をゴクリと呑み込みます。
「アーロさまが欲しいのは、お嬢さまのパワーです」
ああっ! なんてことっ! 私、戦力として求められているのですわっ!