5月のゴールデンウイーク、全国インターハイ最初の関門である都道府県別の地区予選インターハイに俺は個人種目で出場させてもらった。種目は200m。これまでは1年生で春の地区インターハイ個人では出られなかったのだが、この時既にこの部のスーパーエースともてはやされたのが功を奏した。お陰で1年生から個人種目でインターハイに挑戦することが出来た。
結果は無事予選を勝ち抜けることが出来た。念願の本戦…大阪インターハイ出場を決められた。リレーの方も400mリレーメンバーに選ばれ、好タイムに貢献できた。
しかし、俺の快進撃はそこで途絶えた。同月の下旬の大阪インターハイ、その予選で俺は散ってしまった。
予選から本気でいったし、全力も出した。なのに、準決勝には進められなかった。自己記録を出せてればすんなり勝ち抜けられるレベルだった。
しかしながら当日の俺の予選タイムは自己ベストよりだいぶ遅いタイムだった。別に怪我してたとか、体調が悪いとか、そんなのは一切なかった。本気全力で走ってダメだったのだ。
同期たちからは「来年また挑戦しよう」、先輩たちからは「受験のブランクもあったやろうし、しゃーない」と労いの声をかけられた。
違う……俺はこんな形の労い言葉なんか望んでない。ブランクなんかねーよ、冬もずっと鍛錬していた。鍛錬は怠ってない、ずっと継続してきた。なのに、伸び盛りのこの時期で全く成長しないのは、何なんだ?
その後6月の記録会、7月の夏季地区総体、8月の大阪総体と戦ってきたが、どれ一つとして自己記録を更新することはなかった。
学年別で競う夏季の地区総体、そこで勝ち抜けば出られる大阪総体。学年別でならと思って大阪総体に挑んだが、ここでも振るわず、決勝3位内に入れず、その先の近畿ユースに進めなかった。去年の府大会では俺が一番だった。同学年同士でならワンチャンあると思っていた。
しかし現実は全くそうならなかった。魚住や寺井など去年勝っていた同学年たちに追い抜かれてしまっていた。彼らは俺と違って高校に入ってから順調に成長していた。いつの間にか彼らに追い抜かれ、置いていかれようとしている。
そして9月、10月、冬季……1年生の間ずっと、俺が去年より速くなることは全くなかった。
「これまでの周回と同じやんけ……。高1の間は100も200も400も、何一つベスト更新出来やんかった……!
は?何で?何やの?『今』の俺は当時とは全然違うはずや!力も知識も当時よりもずっと上のはず!やのに何で全然強くなれてへんのや!?
いつまで停滞しとんねん、松山祐有真ぁ!!」
4回目のやり直しでもなおこの体たらく。何をやっても全く成長しない。同期は男女ともに春と比べて随分成長しているというのに。今年高宮は三段跳びで、瀧野は400mハードルで近畿ユースに進んだのに。俺はどうして彼らに続かなかったのか。
どうして高1は全然成長しなかったんだ?何なんだこれは、神か何かが俺の邪魔でもしてるってのか?もしそうなら、そいつらぶち殺してやりたい。
そういった葛藤と苦悩は、高校1年で終わらなかった。高2になってからもそれらは続いた。
怪我もせず調子も悪くないのに、タイムは停滞する一方。3年生が抜けたことで部内で100と200は俺が現状いちばん速いってことになってるが、当然それで満足するはずもなく。
何もかも全然上手くいかない。これじゃあ当時と何も変わらない。あの頃も高1から高2の夏頃までずっと、タイムが停滞していたのだ。今もそれと全く同じ。ずっと泥沼に足をとられている。
筋トレの量を増やして筋肉量増やしても、色んなドリルを取り入れて常に新しい刺激を入れても、走り込みをしても。ずっと何も変わらなかった。
そんな停滞期に陥ったせいで、高2も大阪インターハイに進めることは出来ても、また予選落ちに終わった。絶不調の俺とは反対に、今年入ってきた一年生が一人、400mで決勝4位となり、近畿へ進んだ。彼も去年全国に出場して入賞し、さらには当時のシーズンランキングトップに輝いた。まさにスーパールーキー。俺と違って1年からバリバリ活躍していた。
そんな後輩を、俺は心底妬んでしまった。
夏になってようやく自己ベスト更新した。だが全然喜べなかった。この頃の俺はもう、この人生に飽きていた。今さら速くなってんじゃねーよと完全に腐っていた。当時と同じ陸上人生歩んでんじゃねーよと、自分に唾を吐きつける。
今のタイムじゃ中学では全国レベルでも、高校では全然通用しない。ちゃんと更新しない限り高校陸上で上を名乗ることは到底不可能。
今さらちょっと速くなったから何?確かにベスト更新したけど、全然大したタイムじゃねーし。ふざけんなカス。しね。
心底落胆し失望した。今周回も何一つ上手くいかなかった高校陸上だった。もうやってやれない。この身体レベルでまた中学から鍛え直してやる。そうすれば次の高校陸上もちっとマシになるだろう。
そうなることを祈って、懐中時計の「Reset」ボタンを押した―――
4回目終了時点 100mベスト:11秒05 200mベスト:22秒19、400mベスト:51秒90、走り幅跳びベスト:6m35cm