それからも当時の人生と今までのやり直し人生でやられた分の仕返しを存分に実行った。それでも俺の気は晴れず、それどころかもっとやってやろうとエスカレートしていった。最初と2回目でやられた時のことを思い出しては怒りを呼び起こし、さらなる暴力を振るった。
さすがに野次馬たちはドン引きしていた。尾西と横原も完全に狼狽えてるわ、他の陽キャたちも顔真っ青にさせて棒立ちしてるわでいい気味だった。
「3回目も散々俺を罵倒してくれたよな?暴力も振るわれたしさぁ」
足をやられて立てなくなった里野と山峰の顔に加減の無い蹴りをくらわせる。大人とそう変わらない人の本気の蹴りを顔に入れるなど、非常に危険なわけで。二人とも危険な転び方をし、床に倒れて痙攣していた。それがどうした?と言わんばかりに俺は二人の体を何度も踏みつけてやった。
それを見た大村の顔が恐怖に引きつっていた。不良のこいつからしても俺が二人にやってることは過激かつ残忍なものらしい。完全にビビり散らして後ずさってるよこいつ。
「なあ大村。お前に至ってはタバコを倒れた俺の体に捨てもしたよな?横原、お前もボコられて倒れた俺を嗤いながら、ポイ捨てしやがったよな、俺の頭に」
「は……!?し、知らん、やってへんわそんなこと!?やった覚え無いわ!?」
「お前らに憶え無くても、こっちはよぉく憶えとんのや、クソったれが!!中学のガキの分際で揃いもそろって俺の前でタバコなんざ吹かしやがって!
お前らが俺の知らんとこで喫煙しようが犯罪犯そうが、そんなんどうでもええ。けど俺にそんな害悪なモンぶつけてくんのは完全にアウトやわ。
てなわけで、不良気取ってるお前らは全員、死刑で」
後ずさり逃げようとする大村だが、僅か数秒で捕える。
「この俺から走って逃げられると思うなや?こちとら50m6秒前半、100mは11秒前半やぞ、ボケ―――」
肘で顔面を殴りつける。鼻に命中して大村の顔が鼻血で赤く染まる。それを見た野次馬の中から悲鳴がいくつか上がる。そのせいで他の生徒もやってきて、また声を上げて、さらに生徒を呼び寄せてしまう。
「あーあ。見物人がこんな数にまで増えてもうとるやん。俺がお前らに暴力振るってるとこの目撃者が多いとマズいわな~~~。困ったなぁ~~~~~」
やり直す前の自分だったら、この状況下でこの場に留まって喧嘩続行など、到底出来なかったことだろう。気後れして今すぐ走り去っていただろう。
「――なーんて、言うと思ったか?」
が、「今」の俺はこんなことで止めたりはしない。気後れなんてこれっぽっちも起こらない。なぜなら俺は今、無敵思考に入ってるから。
「やっぱええよなぁ、中学にいる間は!ここまでしても大人ほどの罪には問わわれへんのやもんなぁ!?」
最高の気分、欲望のままに暴力をさらに振るう。最初と2回目の時はほぼ一方的に殴られ蹴られ嫌なこと言われてきた。だが今回は立ち位置が真逆となってる。今は俺が勝ち誇った顔で大村たちを執拗に殴り蹴りつけている。
そんな俺を同級生たちはドン引きした目で見ている。ガチサイコパスか犯罪者を見る目を向けられまくってるが、俺の意思はちっとも揺るがない。平気平気。
「無敵」になるのは本当に良いぞ~。体裁とか人間関係とか社会の中で生きていくのに捨てられないしがらみを一時的でも全部捨てて忘れてしまえば、人間ってこんなにも好き放題に動けるものらしい。
こんな風に、一度はやってみたかった、後頭部を掴んでの、顔面を地面に擦り付けるやつだって出来てしまう!ガリガリガリと顔をコンクリートの地面に擦り付ける度に大村の「痛いいたいいだい」と悲鳴が上がり、それが俺の嗜虐心をさらに増長させてくれる。
「な、何やねん!?この前まで陰キャやったくせに!何でこんな奴にこんなボコられなアカンねん!?何やねんお前ぇ!?」
「るさいわボケ!お前らこそ人を陰キャ呼ばわりしてんじゃねーよ、カス!大体まだ十と数年しか生きてないクソガキが、俺を見下してんじゃねーぞ!?」
大村を存分にシバき終えた後は、当然尾西と横原もボコっボコにシバきまくってやった。
「はあ、はあ、はあ……!どーや、分かったか、クソガキども!!俺をブチギレさせたらどんな目に遭うか……。喧嘩で俺に勝てると思うなや!?暴力で競えば俺がいちばん強いんじゃボケぇ!!」
最高の気分だった。この後大変なことになるのだろうが、今はそんなこと考えなくていい。今この時だけは、このクソ野郎どもをこの手で全員ぶちのめしてやったことの喜びに存分に浸ろう!はぁ~~~あ!ホンマ気持ちええなぁ。ぶち殺したいくらい嫌ってた奴らをこの手でボコっボコにぶちのめすのは!
もう一生叶わないと思ってたことが、タイムスリップなんて形で叶うとか、あの懐中時計を手にするまではまさか思わなかっただろーな。
ああそうだ、俺を嫌な気持ちにさせたクソ陽キャの清瑞とか野球部の青山とかもこの機にシメとくか。てかいるじゃん、野次馬の中に清瑞がばっちりと。あ、目が合った途端顔色悪くさせて後ずさりはじめた。逃がすかよ!!
そうして俺は残りのクソ陽キャどももぶん殴りに走った―――
後日、大規模な喧嘩と暴力行為を起こした俺は当然というか、それなりの処分を下された。まず約一か月間の停学および陸上部の活動の禁止。
それと、今回俺がボコった連中のうち里野と山峰と大村が大怪我で入院した。そいつらのクソ親どもが俺を傷害罪にかけようと団結して、こちらの母も巻き込んで学校にて全面衝突した。
結果は奴らが泣き寝入りするという、ざまぁな形となった。俺が一方的に傷害させたのならまだしも、連中も大概なことやらかしていたからな。まず多人数で俺を囲み、俺と同じかそれ以上の暴力を振るおうとした点。ていうか実際こっちも暴力振るわれた点。奴らの日頃の行いが目に余るくらい悪かった点。大村と尾西と横原が喫煙をしていた点。その他色々見過ごせない点……。
そういうわけでこっちが警察にどうこうとか少年院送りとかになることは一切なかった。まあ母からはけっこうな説教をされたけど。
停学が明けて学校に戻ると、予想通りみんなの俺を見る目が完全に変わっていた。前周回もそうだったが、今回はさらにみんなとの溝が深くなった気がする。教室では俺の席だけポツンとした感じになってたし。前の席にいた清瑞や尾西は一番端の席に移り、常に俺から逃げる感じでいた。
そんな日がずっと続いたものだから、俺は隔離教室に移され、そこで一人きりで授業を受けるという措置をとらされた。
いや、一人きりではなかったな。様々な事情でクラスに馴染むことが出来ず教室にも行けなくなった生徒たちが集う、特別支援教室に俺は移された。
ここに移る際、先生たちからはくれぐれも問題起こしたり生徒たちを傷つけたりしないよう、厳重注意をされた。まったく、見くびらないでほしい。向こうから何かしてこない限り、こっちから何かちょっかいかけたり暴力振るったりしないっての。
そんな俺の内面を理解してる大人は少ないため、学校の先生たちからは常に問題児として見られることになってしまった。
こうして隔離教室に移った日以降、俺は5組の教室に戻ることが一度も無いまま、残りの中学生活を送ることになった。同じ隔離された生徒たちとも話すことは一切なく、一人きりのスクールライフを送り続けるのだった。
うーん……。いつかはやってみたいと思っていた、中学校での異性交遊。今周回もそれは出来そうにないなぁ。残念だ。