2学期となり秋シーズンが到来。夏で俺史上中々良い実績が出たこともあり、この人生まだ続けてみようとのことで、「リセット」せずこのやり直し人生を続投。
中学大阪府大会の決勝出場。思えば俺の中ではこれは快挙といっていい。やり直しを含むこれまでの人生ではあの舞台に上がったことなど一度もなかったのだから。
あの日、決勝が始まる時アナウンスが選手のフルネームと所属中学を一人ずつ読み上げてくれたんだが、俺の名前が紹介された時はかなり気持ちが上がった。けっこう気持ちがいいんだよなー、ああやって自分の名前を紹介されるのは。
少なくともあの時間あの空間にいる間だけ、自分の存在が競技場の何人かに知らしめることが出来たはず。あの時あの場所には確かに俺がいたんだぞー!って。
そんな府大会の後、夏休みの日々、その最後に秋季大阪総体予選があって、2学期が始まり、9月の終わりに秋季大阪総体があって、そして今に至る。
夏休みはそれなりに楽しめた日々だった。午前から昼にかけて部活動。昼からは積みゲーの消化や株投資に向けてのちょっとしたマネーゲームなど。高校受験勉強はほとんどやってなかったと言っていい。せいぜい学校の夏休み宿題で復習したくらいだ。
その夏休みの終わりに、再び地区予選大会があり、3年100mに出た。4位だった。その地区予選を勝ち抜いたことで出られる秋の府大会に同種目で出場。秋の大阪総体は学年別で競うことになってて、3年生のみでの大阪ナンバーワンを競うことになる。
で、その大会での100mだが、準決勝で敗退。11秒50台で走ってもダメだった。
これにて中学の大きな大会はもう終わり、実質引退したも同然。実際に短距離ブロックの3年の何人かはもう練習に来なくなってる。受験勉強を理由に引退したと言っていい。
10月現在、俺も部活にはもう行ってない。理由は単純、1学期の喧嘩の件でみんなから煙たがられているからだ。時期としても3年がいなくなる頃だし、そんな中慕われてもない奴がいつまでも部活に顔出してたら後輩たちには毒にしかならない。気も休まらないだろう。
というわけで同期の那須と中山に続き、俺もひっそり引退しておいた。あでも、そういや部活に行かなくなってから何日か経った後、1年の男子と1・2年の女子の何人かが俺のところに訪ねてきて、「もう練習には来ないんですか?」ってわざわざ聞いてきたので、「そうだよ」って言ったら、「そうなんですね。寂しいですけど受験あるから仕方ないですよね。お疲れ様でした、勉強頑張って下さい!」って言ってくれたな。
みんなからしたら俺は怖い先輩に映って見えてたろうに、わざわざ労いと応援の言葉を送ってくるなんて、出来た後輩たちだよ。ただ女子の何人かは残念そうな顔してたけど、まあ俺の見間違いだろう。きっと。
夏以降の陸上活動は、まるでやり直し前の人生を辿ってるようだった。当時も夏がピーク真っ盛りで、そこからは沈んでく一方だった。今回もそう、夏休み終盤で100mの自己記録をさらに更新して(11秒50)良い感じだったのに、秋の大会・地元の記録会はどれも結果・成績ともに振るわずに終わった。
これ以上続けてもタレるだけになりそうだし、受験勉強を言い訳にいったん一線から退くことにした。部活動には行ってないものの練習は別のところで一人でやってる。大人になってから続けてたドリル、走り込みをちょくちょくやってる。
これが高校生になってから実に結び付けばいいんだけどな。てかなってくれなきゃマジでクソだぞ。努力だけは裏切ってくれないでほしい。これ以上自分に失望させないでほしい……。
そんな不安を抱きながらの陸上活動を、卒業まで続けることになる。で、陸上以外の普段の学校生活だが、こっちも相変わらずクソつまんなくて鬱憤募るばかりだ。
1学期でクソ陽キャどもと散々喧嘩をしたことで、クラスからは「こいつすぐキレてばっかのヤベー奴」と思われて誰からも相手されなくなってるし、同様の理由で休み時間他の教室に行けなくなったし、その元凶の不良男子の顔を毎回教室で見せられるし。あークソ、マジでゴミじゃんこの中学生活。
受験が近づいてることもあって、不良やってる尾西も勉強に取り組み、俺にちょっかい出すことが無くなってきたのがいちおうの救いだが、一方でモヤモヤが溜まってもいた。やっぱりもう一度あのクソチビをど突かないと気が済まない。とはいえこの時期に喧嘩して騒動起こすのはさすがにこちらの印象を大きく下げることになるし、内申点にも大きく響く。
気にくわないが尾西や大村、里野、山峰といったクズどもに復讐(?)するのは出来そうもないな。あいつらからまた何かしない限りはその機会はもうこないだろう。
あとは、クソ不良・陽キャ以外の同級生…特に女子との関わりについてだが。
はぁ……。この回のやり直しではクラスや部活の女子と上手く会話して、その誰かと交友関係になる挑戦をしようと思ってたんだよな。
出来ることなら中学の間で彼女の一人つくりたかった。今となっては到底叶いそうにない。あとは高校、将来のどこかに懸けるしかないか。
でもなぁ、これまでの人生いつかは俺にも彼女の一人くらい出来るっしょって思い続けて、30歳になってしまったからなぁ……。
実体験した身から言わせてもらうが、「彼女なんてそのうち出来るでしょ」理論は完全まやかしだからな?今の自分を丸っと変えるくらいの行動力が無いと、彼女なんて到底つくれない世の中になってるんだから。昔も今も。
この中学には顔や体つきが好みな女子が何人かいる。その誰かと一人くらいは親密になりたかったのだが、その望みは水泡と帰すことに……はぁ。
そういうわけでこの回での中学生活では、結局彼女をつくることが出来ずに終わりそうだ。浮いた話の一つも出せない。どうせ誰一人も仲良くなれそうにないんで、今回も女子の説明は無しで。
ただ一つだけ良かったのが、陸上部としての実績のお陰で「松山祐有真は凄く速い人」といったプラス評価が、一部の女子たちに好感を持たれてたことだった。それだけに「喧嘩っ早い」「ヤベー奴」といったマイナス評価がついたのが惜しい。
そんな諦めムーブのまま秋と冬を過ごし、1回目のやり直しよりかはマシに終えることが出来た中学生活から、高校生活へと移る。
今回も進学先は当時と同じ高校にした。まだ色々試したいことがあるからな。苦労することなく受験に合格して、2011年4月からそこの高校生として、やり直し人生の続きをする。
この時点で100mは11秒中盤、200mは23秒前半、専門外だが走り幅跳びで6mちょうどと、それなりの自己記録を持っている。やり直し前と比べてだいぶレベルアップしている。
もう失敗したくない。挫折するのはもうたくさんだ。今度こそ高校1年から納得いく成績を出してみせる!そしてずっと這いずってくすぶり続けてた平凡の沼からとっとと脱してやるんだ!!
早く平均よりも上の位置に立ちたいという焦り。自分にはそこらの凡人には無い特別な才能があることを証明したいという切実な願望、もっと強くなりたいという向上欲求。
そんな様々な欲求に突き動かされるまま、俺は突っ走っていった。。あまりに夢中で走り続けたものだから、色々見落としていたのかもしれない。
そのせいもあって、俺はまた、大きく転ぶことになった。
「また……怪我した…………。
何で?どうして?前よりも強くなってるはずやのに………っ」
高校1年の冬、俺はまた怪我をしてしまった。当時と全く同じ時期、全く同じ箇所を怪我してしまった……。