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第255話 動き出すオーヴェスト

―――八雲がカタリーナとエディスとの時間を楽しんでいる頃


「あっ♡ あっ♡ ちょ、ちょっとダ、ダルタニアン!そ、そんな、あん♡ は、激しく!あぁあああ―――っ♡!/////」


リオンでも有数の高級宿のスイートルームにあるベッドでは、ダルタニアンに組み伏せられたコンスタンスが金髪を振り乱しながらも、彼の逞しい肉体に組み敷かれたまま声を上げていた―――


「ハア!ハア!―――コンスタンス!俺、今日は、興奮して!止まれない!!」


「ああっ♡ そ、そんな♡! んんっ♡ もうっ♡ ほんと―――バカァああ♡!/////」


背中を仰け反らせて絶頂するコンスタンス―――


―――その瞬間、伸びた首筋に口を近づけて牙を突き立てるダルタニアン。


「ア“ア”ア“ア”ァアア―――ッ!!!/////」


吸血鬼の牙による吸血行為は、痛みよりもその行為により与えられる快感が脳を突き抜ける効果がある……


―――吸血されたことで引き起こされたコンスタンスの絶頂。


それと同時にダルタニアンは熱い欲望を彼女へと迸らせていく―――


「ア“ア”ア“……あ”っ♡ あ“っ♡……あつい……あついのぉ♡/////」


―――強烈な絶頂で意識が朦朧とするコンスタンス。


だが、八雲と邂逅したことで、その底知れない強さに触発されたダルタニアンの本能は一度では止まらなかった……


(あんな底が知れない凄い男がいるなんて……この世界はどれだけ広いんだよ!―――ああ!ダメだ!まだ収まらないぜっ!!)


「―――コンスタンス、もう一回、いや、俺が収まるまでつき合ってもらうから」


「……へっ?……しょんな……むり……昨日も、あんなに―――あっ!ちょ、ちょっと、ダルタニアンンンンッ♡! おおっ♡!/////」


ダルタニアンを制止しようとしたコンスタンスだったが、結局その興奮は朝まで収まることを知らなかった……


こうしてリオンの夜は深けていき、八雲とダルタニアン……ふたりの絶倫によってカタリーナ、エディス、コンスタンスの嬌声が夜中いつまでも響き続けるのだった―――






―――8月17日


朝、目を覚ました八雲はカタリーナ、エディスと一緒に風呂に入って、またそこでも彼女達と身体を重ね楽しんでから身形を整えて、リオン出発の準備に入る。


「―――カタリーナ。いつも寂しい思いをさせてゴメン」


「何を仰いますの♪ 八雲様とは『龍紋』でいつも繋がっています。寂しい気持ちがないとは言いませんが、わたくしは貴方の『龍紋の乙女クレスト・メイデン』になれたことに幸せを感じております。リオンにご命令があれば、いつでも『伝心』でお知らせくださいませ」


「ありがとう。愛してる」


「んっ♡……ちゅっ……はい、わたくしも愛しております/////」


カタリーナとキスを交わし、別れを告げてジョヴァンニに軍編成の確認を行った八雲は黒の皇帝シュヴァルツ・カイザーに乗り込み、雪の女王スノー・クイーンと共に一路ティーグル公王領へと向かった。


ここからのフロンテ大陸オーヴェストは、目まぐるしく激動の様相を呈していく―――






―――高級宿の窓を開き、朝の涼しい風を受けながら空を見るダルタニアン。


夏の青空が広がるリオンの空を突然巨大な影が覆ったかと思うと、二隻の空を翔ける巨大な船がティーグルの方向に向かって飛び立っていく。


「……行っちまったか」


ひとりそう呟くダルタニアン。


その隣には激しい夜のせいでグッスリと熟睡しているコンスタンスがベッドで横になっていた。


ダルタニアンはコンスタンスの前髪をそっと撫でながら、天翔船の去って行った空を見つめていた……






―――数時間後、ティーグル公王領に到着する天翔船


第二の故郷と言える懐かしい土地に八雲はアークイラ城や黒龍城を目にして感慨深い想いがする。


だが、そのティーグルの上空から八雲は黒龍城とその周囲に広がる新しい街の様子を目にして声を上げる。


「ウオオォ!なんだ?!これ!?―――シュティーアとドワーフ達、頑張ったんだなぁ……」


「オオオッ!!―――我の黒龍城の周りに街が出来ているぞ♪ それも見事な街並みではないか!」


上空から見た黒龍城の周囲には城を中心にして放射状に広がる八本のメイン通りと、その通りと通りを繋げるサークル状の円形をした道が大小幾重にも整備されていて、ティーグルの首都アードラーほどではないにしても近代的都市と言って間違いないものになっていた。


最初は職人達のための家を建ててシュヴァルツから出発した八雲だが、今現在も街中では建設中の建物が幾つも見えて、まだまだ発展中の状況だった。


中心にある黒龍城の城壁の外に、まるで空港の滑走路のように整備された土地があり、そこに着陸する黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー雪の女王スノー・クイーン


二隻の天翔船が着陸しても余裕のある滑走路は、まだ他にも二隻は余裕で止められるほどのスペースが確保されていた。


ハッチを開き、デッキを伸ばして地上に降りる八雲達を待ちわびていた出迎えの者達が集まり寄って来る。


「―――八雲様♪」


「お帰りなさいませ♪ ご無事でなによりです」


「シュティーア!上から街並みを見たけど、頑張ったなぁ!アクアーリオも出迎えありがとう」


城に残ってくれていたシュティーアとアクアーリオが、にこやかに出迎えてくれる。


「久しぶりだな―――八雲」


「おかえりなさい。八雲……黒神龍様」


「ルドルフ!それにレベッカも来てくれたのか!」


オーヴェストの英雄Class冒険者ルドルフとレベッカも八雲が戻る知らせを聞いて、滑走路まで出迎えに来てくれていた。


「またお前のことだから、色々と冒険してきたのか?ん?」


揶揄気味に笑いながらそう言ってくるルドルフに、八雲は涼しい顔で答える。


「ああ、シーサーペントとかケートスとか色々相手してきたよ」


「いや、それもう神話クラスじゃねぇか……ったく!ホントお前は伝説作りすぎだろ!!」


「フフッ♪ それでも……無事でよかったわ……あの子達は元気?」


レベッカが言うあの子達とはシェーナ達のことで、その様子を問い掛けたところに―――


シリウスを先頭にしてシェーナとアルファ、トルカとベータ、レピスとガンマ、ルクティアとデルタといったそれぞれ相棒の地獄狼ガルムに乗った幼女騎士団(仮)が付き従い、最後にコゼロークが殿を務めた隊列がやって来る。


「なに?……まさか……ガルム、なの?……八雲、この子たちは?」


「ああ、俺の『調教テイム』スキルでこの子達の護衛にしたんだ。魔術付与した首輪のオマケ付きで」


「地獄狼の護衛……だと……どんなけ過保護なんだよ……」


レベッカは驚きの表情を見せて、ルドルフは地獄狼ガルムを護衛にしている八雲に驚き、そして呆れていた。


「なんだ!ルドルフ~ゥ!我の天使達に文句でもあるのか?消し炭になるか?アン?」


そこにチビッ子達を馬鹿にされたと勘違いしたノワールが、今にも龍崩壊撃砲ドラゴニック・バーストを撃ちそうな勢いでルドルフを睨む。


「―――いや?!黒神龍様!?別にそんなつもりじゃなくて!ほ、ほ~お、この子達の騎乗姿はまさに騎士のような気品に溢れてますね~!」


圧倒的な『威圧』に怖気づいたルドルフが、チビッ子達を必死に褒め捲るとノワールがコロリと表情を変えた。


「そうだろう♪ そうだろう♪ なんだ!分かっているではないか!ルドルフ!!やはりお前は見どころのある奴だな!ハッハッハッ♪」


「世渡りが……上手くなったわね……ルドルフ……でも本当に可愛らしくて、恰好いいわね♪」


ルドルフの態度に呆れ半分だったレベッカだったが、シェーナ達の可愛らしい姿を見て微笑んでいた。


「色々話したいことはあるけど、まずはアークイラ城に向かう。ルドルフ、レベッカ、それとヴァレリアとシャルロットも一緒に来てくれ」


「―――畏まりました♪ 八雲様」


「はい!ご一緒いたします♪ 八雲様」


「え?―――俺達も?城に?」


「別に……かまわないけれど……」


ティーグルの王女と公爵家令嬢を連れてノワール達神龍四人と八雲達御子四人、そして英雄Classの二人に随伴としてアリエスとイノセントを連れ、八雲は『収納』からキャンピング馬車を出してアークイラ城に向かうのだった―――






―――久々に首都アードラーの外壁の門番達に挨拶をして、八雲はアークイラ城に向かう。


「黒帝陛下……御元気そうで何よりだ!」


門番達は馬車で通過しながら大きな声で挨拶をしてくれる八雲への感謝と敬意、そして忠誠を忘れていない。


そうして首都の中を駆け抜けてキャンピング馬車はアークイラ城に到着した。


広い貴賓室に通されて大きなテーブル席に着いた八雲達の前に―――


「オオッ!黒帝殿!!―――よくぞ戻られた!」


―――ティーグル公王領エドワード公王とクリストフ達がやってきた。


「無事の御帰還なによりです。それと……シャルちゃ~ん♪ パパはもう、こんなに長い間シャルちゃんに会えなくて寂しかった―――ゴブフッ?!」


シャルロットに飛びつきそうになったエアスト公爵クリストフの後頭部を、妻のアンヌが手にした木槌で見事にクリーンヒットをキメていた。


「相変わらずだなぁ……まあ、いつも通りだからいいとして―――」


「―――ちょっと!?もう少し義理のパパの心配してよ!?」


床にへばりついていたクリストフは一瞬で立ち上がり、八雲の素気ない態度に抗議の声を上げる。


「ああ、ハイハイ。今から大事な話するからねぇ~」


「―――まったく気にしてないよね?パパ泣いていい?」


「そのくらいにしておけ、クリストフ!黒帝殿の話しが進まんだろう!!」


ふざけ半分のクリストフを諫めて、エドワードが八雲の話しを促す。


貴賓室にはティーグルの公王エドワードと公爵のクリストフにその妻であるアンヌ、エドワードの第一王子アルフォンスにその妻のアンジェラが集まっていた。


八雲は連れてきた神龍達と御子達を紹介していき、その面々に驚くティーグル王家だったが、それよりも重要な話があるとこれまでの経緯を説明していった―――


―――フォック聖法国で知った『シュヴァルツ包囲網構築条約』のこと


―――ウルス共和国に行って農業・酪農といった国益になる産業の可能性を開いたこと


―――レオパールで使者だったダニエーレの示した委任状のこと


―――リオンで出会った吸血鬼騎士ヴァンパイア・ナイトのダルタニアン達のこと


―――そしてリオン、レオパールに軍備の指示を出して、これから兵をソプラ・ゾットに運んでいく予定であること


それらのことをエドワード達に話し、ティーグルにも軍備の話しをする。


「ゲオルクの奴……領地で蟄居謹慎していると思っていれば、国の委任状を勝手に捏造して外交を行うとは!」


第一王子の立場であるアルフォンスは誰よりも怒りを露わにする。


「―――控えよ、アルフォンス」


そんなアルフォンスをエドワードは静かな声で窘めた。


「しかし親父殿!!ゲオルクのしたことは、他国にシュヴァルツの名を騙って交渉事を行ったという大罪だぞ!!!」


席から立ち上がり、テーブルをバンッ!と叩いて声を荒げるアルフォンスに八雲が告げる。


「アルフォンス殿下、心配しなくてもゲオルク殿下もダニエーレ=エンリーチも、知らないうちに勝手に破滅へ向かってるんだ。放っておいても大丈夫だよ」


「んん?黒帝陛下、それは一体どういう意味です?」


八雲の言葉の意味が分からないアルフォンスだが、その意味は後に分かる。


そんな時―――


【―――八雲様、こちらジェーヴァッス!】


―――ダニエーレについて監視していたジェーヴァから『伝心』が届く。


【どうした?何か動きがあったか?】


【はいッス!ゾットの首都シエンを訪れたダニエーレが、ゾットの王ゴルビア=ウノに謁見して、予測通りイロンデルからの兵の貸し出しを持ち掛けてソプラ征服の協力と包囲網条約を提示したッス】


ダニエーレはゾットへの手土産として八雲の予測した通り、イロンデルからの出兵とソプラ征服に協力する体制を提案し、そしてシュヴァルツ包囲網構築条約を承諾させたのだ。


【―――やっぱりそう来たか。ジェーヴァ、お前はソプラに戻ってそのことをイェダン王に伝えてくれ。それと、その暴挙を防ぐためにシュヴァルツとレオパールから援軍を連れて行くことも付け加えてだ】


【―――了解しましたッス!】


―――そうしてジェーヴァの『伝心』が切れて、八雲は今ジェーヴァからもたらされた報告を貴賓室の皆に伝えた。


「では黒帝殿、ティーグルからも兵を出す準備を?」


「ああ、明日には出発してリオンで兵を収容してからレオパールに向かって、そこでも兵を収容してソプラに渡る」


「アルフォンス!すぐに第一皇国騎士団と第二皇国騎士団を準備させよ!!」


「―――承知しました!すぐにラースとナディアに伝えます!!」


「ん?―――ナディアって第三騎士団の団長じゃなかった?」


八雲の疑問にアルフォンスが答える。


「ああ、あの災禍戦役で皇国第二騎士団は実質全滅したので、第三騎士団をそのまま第二騎士団にしたんだ」


「なるほど。ラースとナディアにも会いたいな」


ふたりは八雲から黒神龍装ノワール・シリーズの漆黒刀=比翼と連理を贈られた八雲公認のカップルだ。


「明日の出撃の際にでも声を掛けてやってもらいたい……ふたりとも、まだまだ初心な関係なんだ」


アルフォンスがヤレヤレといった表情を八雲に向ける。


「はぁ~しょうがないな……まあ、今回の戦で此方の兵については誰一人死なせるつもりはない」


「―――そのような手があるのか?」


エドワードが八雲の顔を覗き込むようにして前のめりで問い掛ける。


「それは仕掛けを御覧じろってね♪」


不敵な笑みを浮かべる八雲に、同席した者達は首を傾げるしかなかった―――






―――その後はイロンデル、フォーコンへの対策としてティーグルからイロンデル、フォーコンの国境付近に第三騎士団、第四騎士団を進軍させてエーグルからもフォーコンに向けて軍の準備をさせていることを説明する。


そして―――


「アマリア、ジュディ、ジェナ。三人に頼みたいことがある」


「―――はい!八雲様!なんでしょうか?」


元気に返事をしたのはエレファン公王領の第三王女であり自称八雲の婚約者アマリア王女だ。


「これからエレファンに向かって、エミリオにエーグルに向けて援軍を送ってくれと伝えて欲しい。そのことも俺からフレデリカに伝えておくから。黒麒麟に乗って行け」


「畏まりました!必ずやその使命、達成いたします!!」


勢いよく立ち上がったアマリアは胸を張り、真剣な瞳を八雲に向けて宣言する。


「あのお転婆娘が随分と八雲に殊勝な態度ではないか?」


揶揄ようにイェンリンに弄られたアマリアは顔を赤くして、


「―――イ、イェンリン様?!そのことはもう言わないでください!/////」


するとアルフォンスの妻にしてアマリアの姉であるアンジェラが、


「まあ!アマリア、貴女―――ヴァーミリオン皇帝陛下に、何か失礼なことをしたのではありませんよね?」


と鋭い視線でアマリアを射抜く。


「あ、姉上?!わ、私は別に、そのようなことはしておりません!」


自らの素行の悪さにヴァーミリオンへ留学に出されたアマリアは、アンジェラの追及に冷や汗がダラダラだ。


「イェンリンに喧嘩売りに行ったことと、俺のところに婚約者だ!って言って乗り込んできたくらいだよな?」


「や、八雲様!?あ、いや―――姉上!?」


「―――アマリア!!貴女は故郷を潰す気ですかっ!!!」


フォローしたつもりの八雲の一言でアンジェラの雷がアマリアに落ちてきた。


「あうぅ……/////」


もはや半泣き状態のアマリアをジュディとジェナが慰めている。


「アンジェラ王女、そんなに怒らないでやってくれ」


見かねた八雲がアンジェラにアマリアのフォローを入れる。


「はぁ……黒帝陛下の仰せとあれば。アマリア!あんまり心配をかけさせないでくださいね?」


「は、はい!姉上!」


そうしてアマリアとジュディ、ジェナは黒麒麟に乗り、以前八雲が整備した陸路をエレファン目指して出発する。


こうして、フロンテ大陸西部オーヴェストが激動の流れを加速させていくのだった―――



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