目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第236話 第一回クズコレ開催

―――自分の部屋を物理的に拡張し、控室になった隣の部屋の前から登れるように用意したランウェイを拡張した部屋に伸ばして先端に円形のステージまで取り付けた八雲。


そんなステージを目の当りにして、ユリエルも少しノリのいいところを見せて―――


「それでは―――『九頭竜コレクション! in 黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー!!』 スタート♪」


―――MCよろしく明るい開幕宣言を上げて場を盛り上げる。


「オオオ―――ッ!!!」


ひとりでパチ!パチ!パチ!と拍手と声援を送る八雲。


「それでは!まず、最初の一人目は―――ッ!」




バン!と開いた扉の向こうから現れた最初のモデルは―――リブラだった。


―――黒いキャミソールの上から白いボリューム袖のブラウスを羽織っている。


―――下は黒とグレーに黄色のチェック柄を施したカレッジ風プリーツスカート。




黒い大人っぽいキャミソールの上から、ゆるっとしたシルエットとボリューム感のある袖が魅力的なブラウスに若さと元気な雰囲気を出すカレッジ風のデザインプリーツスカート。


ランウェイを元気にニコニコ笑顔で歩きながら、八雲の前にある円形のステージまでやってきたリブラは、


「八雲様!―――似合いますか?似合ってますか?可愛いですか?」


と矢継ぎ早に問い掛けてくる。


「ああ!似合ってる!スゲェー可愛いぞ」


笑顔でそう答える八雲に満足したリブラは、エへッ♪ と嬉しそうに笑いながら控室へと戻っていく。




その控室の扉に戻った瞬間に次のモデル―――アルヴィトが姿を見せる。


―――丈の短い白いキャミソールからは可愛いおへそが顔を出していて、その上からピンクのカーディガンを肩に羽織っている。


―――スカートは黒のレザー調というハードタイプではあるが、ミニタイプで眩しい素足が見えていて可愛らしさが先行するファッションになっている。




丈の短いキャミソールは、お腹を丸見えにしているのでセクシーな雰囲気を醸し出して、その上からピンクのカーディガンがアルヴィトの可愛らしさを強調し、そして黒革のミニスカートが美しい脚を露出して大人びた色気を引き立たせていた。


恥ずかしそうな表情で円形ステージまで来たアルヴィトが、


「ど、どうでしょうか?ちょっと恥ずかしい……です/////」


と、紅潮させた頬を両手で覆いながら問い掛けてくる姿に、


「グッときた。アルヴィトの魅力をまた新しく知れたよ」


と、八雲は笑顔で答える。


「あ、ありがとう……ございましゅ/////」


(あ、噛んだ)


赤い顔のままでランウェイを控室に向かって消えていくアルヴィトの歩く速さは出てきたときよりも明らかに速かった。




そして入れ替わりでランウェイを歩いてくるのは―――ユリエルだ。


―――ユリエルは白のキャミソールの上に黒のレザージャケットを羽織る。


―――下は白基調に黒のラインが入ったチェック調のハイウエストタイトスカートで、黒のロングブーツを履いている。




モノトーンの白黒基調に纏めたファッションで、シックな雰囲気と大人びた魅力を振り撒いており、しかも八雲と同じ世界から来たユリエルはモデルが歩くランウェイのことも分かっているので、モデル歩調に円形のステージでも八雲の前でくるりと一回転して横から後ろからの姿もじっくりと見せつけた。


「どうだった?」


「凄いな。ユリエル、モデル経験でもあるのか?」


「エヘヘ♪ 実は前の世界でちょっとだけモデルのお仕事していたことあるんだ♪/////」


「マジか?!通りで堂に入った雰囲気でカッコイイ訳だ」


「ホント?そう見えたなら、よかった/////」




そうしてユリエルも再びランウェイを戻っていって、入れ替わりに出てきたのは―――レオだ。


(なるほど……ユリエル様のようにすればよいのですね)


ユリエルのモデルの仕草といったものを見て取ったレオは、腰に手を当てながら八雲に向かってくる。


―――薄いミント色の肩紐がついたブラトップに白い長袖ブラウスを羽織って前は全開にしている。


―――下はアイボリー色のゆったりとしたワイドパンツでキメていた。




(オオ……本当にモデルみたいに歩いてくるぞ。レオは本当に器用だよなぁ)


腰に手を当てたまま全開になったブラウスの間から見える引き締まったウエスト。


明るい基調の色でもレオの落ち着いた雰囲気と大人びた空気を全身に纏っていて、そして円形のステージでゆっくりと回転するレオ。


「如何でしょうか?八雲様」


「スゴク似合っているし、カッコイイよ。レオは本当に魅力的だ」


「ありがとうございます/////」


レオは少しだけ頬を染めて、満足気な笑みを浮かべてランウェイを戻っていく。




そして次に現れたモデルは―――レギンレイヴだ。


―――ピンクのニットワンピースで両肩は露出していて、腕にはボリューム感のある袖が付いている。


―――そのワンピースの裾から膝上まで深いスリットが入っていて、そこから素足が見え隠れしている。


―――パーツで露出している肩と素足が、シンプルなデザインの中で大人びた雰囲気と色気が感じられた。




円形のステージまでやってきたレギンレイヴも、そこで一回転して見せて、


「如何ですか?八雲様/////」


と問いかけてくるが、やはり慣れていないことをしているからか、頬がほんのりと赤い。


「レギンレイヴもすごく似合っているよ。ホントにセンスがある」


「ありがとうございます/////」


そうしてランウェイを戻っていくレギンレイヴ。


だが、次にまたリブラが登場する番になったときには、ランウェイは先ほどまでとは変わり、


「えっ!?ノワール様!?それに、皆さんも/////」


と驚くリブラの目の前にはノワールを始め、この天翔船に乗っている全員がそれこそ艦長のディオネまで部屋に集まっていた。


「オオッ!可愛いではないかリブラ♪ さすがは我の龍の牙ドラゴン・ファングだ!!」


「あら?私のレギンレイヴとアルヴィトも可愛いわよ♪」


「余の知らぬ間にこんな楽しい余興を楽しむとは八雲も隅に置けん」


「マキシも参加してみたら?」


「―――セ、セレスト!?」


「ユリエル可愛い♡ 本当にモデルのファッションショーみたい♪」


「……きえい」


「ワウッ!ハァッ!ハァッ!」


「何してるの?マスター。おおっ!可愛いじゃない♪ 私用の服はないの?私も着たい!!」


ひとりだけで見るのが余りにも勿体ないと思った八雲が、船内の龍紋の乙女クレスト・メイデン全員に周囲を誘って部屋に来るように『伝心』で伝えたのだった。


「皆の可愛い姿を俺だけで見ているなんて勿体ないから皆にも来てもらった。参加したい人はレギンレイヴに服を選んでもらって参加してくれ!レギンレイヴ、頼む」


「はい♪ それじゃあ~!ラーズグリーズにブリュンヒルデ、ゲイラホズもこっちに来なさい!貴女達のために選んだ服も着てもらうんだから!!」


そこからは―――


飛び入りで参加していく元々が皆スーパーモデルのような乙女達の新しい服のお披露目を見て楽しんだり、ノワールがチビッ子達のために買っておいた子供服も、チビッ子四人に着せてランウェイをトテトテ歩いては萌える魅力を振り撒いて披露してもらったりと、全員で盛り上がった。


リヴァーにも人形用の衣装を持っていたレギンレイヴが着せてあげて、子供達と一緒にランウェイを飛び交う。


「オオオッ!!!我の天使達よぉ~♡ ハァ♡ ハァ♡ マジカワユス♡/////」


「ノワールさん……ちょっと怖いよ」


なんとディオネも無理矢理着替えに連れ込まれ、そして参加させられてフィッツェと共に黒革のボンテージ衣装に身を包み、軍帽を被ったドS女王様ファッションで登場して顔を赤らめながらステージの床をパシン!と鞭で打っていた。


(なんであんな衣装が?……おおっ!胸が零れそう!!―――うん、ま、細かいことはいっか♪)


眼福の八雲は、今は細かいことは敢えて考えないことにする。


ヴァレリアとシャルロットも飛び入りでピンクのロングキャミソールの下に白のワイドパンツと水色のワイドパンツを履いて普段のお姫様ドレスとは違うギャップ萌えを振り撒いていた。


次にクレーブス、ゴンドゥルの魔女コンビがチャイナドレスのようなドレスに身を包んで現れる。


弾けそうな胸元と深く切れ込んだスリットのデザインに八雲の視点がマッハで吸い寄せられる。


さらにはスコーピオがオッドアイを見せて、金髪をハーフアップにしてお姫様の様なドレスでランウェイを闊歩する。


そのギャップに八雲の興奮も最高潮に達していた。


終いにはノワールが―――


「我の魅力に翻弄されるがいい!しかと目に焼き付けよ♡ 八雲♡/////」


―――そう言って控室から出てきたその姿は……


「深めに入った胸元のスリットが目を惹くバニーコスプレ!!大胆な肌見せでセクシーに仕上げ、充実した内容で本格的なプレイを楽しめます。衣装の縁に白のレースを施すことで可愛甘さをプラスし、頭にはバニーの象徴である耳のカチューシャ!これはランジェリー感覚で着こなす最高のデザインです」


「―――誰に説明しているの?」


本気の解説をする八雲に、隣で見ていた雪菜が思わずツッコミを入れる。


「フフッ♪ どうだぁ?八雲。我のこの姿に欲情しているか?/////」


ステージの上からエロティックな瞳を向けて吐息混じりに問いかけるノワール。


「メチャクチャ、グッ!とくるに決まってんだろ!全俺がスタンディングオベーションだわ!!」


と、言って半泣きになり、本当に立ち上がって拍手喝采する八雲。


何故かアリエスやサジテール、スコーピオにモデルをしていたレオとリブラなどノワールの眷属達も拍手喝采している。


「ウッ?!―――何故だ?今更になって、もの凄く羞恥心が襲ってきているのだが……/////」


過剰に持ち上げられ過ぎて、ここに来て羞恥心が湧いてきたノワールは真っ赤になっていく。


―――こうして、


『第一回 九頭竜コレクション in 黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー


は大盛況の中で閉幕したのだった―――






―――色々と片付け終わり、


「フフッ♪ なかなか楽しめたぞ。最後はお前達だけでお互い労うといい―――八雲!」


イェンリンに呼ばれて其方を見ると、


「レギンレイヴとアルヴィトのこと、頼んだぞ」


「あ、ああ―――分かった」


意味深な言葉を残してイェンリンが退室していく。


ノワールはバニーガールのまま新しい服を着ているシェーナ達を連れてアリエス達と自室に戻っていく。


そうして今、この部屋にはレギンレイヴ、アルヴィト、ユリエル、レオ、リブラの五人と八雲だけが残っていた。


ランウェイは八雲が『収納』に片付けて、部屋は戻すのが面倒なので広いままで利用することにした。


「ハアア~♪ 楽しかったですね♪」


リブラも色々な服が着られて満足したようで、ニコニコと笑みを浮かべている。


「フフフッ♪ 普段はメイド服しか着ていないから、なんだか新鮮だったわ♪」


レオも満足気にそう答える。


「ねぇ八雲君。このファッションショーって、この世界でもウケるんじゃないかな?」


ユリエルが八雲に訊いてきたが、


「実は俺もそのことを考えていたんだ。今度、黒龍城で造っている街でこういう催しが出来るホールとか建てようかなって」


八雲も同じことを考えていた。


「それは素敵ですね!わたくしももっと広い場所で多くの方に、こうした華やかな催しを楽しんでもらいたいです!」


レギンレイヴも俄然ノリ気だ。


「フフッ♪ レギンレイヴなら自分で服を作れますものね♪」


そのアルヴィトの言葉に八雲とユリエルが反応する―――


「―――それマジか!?」


「―――それホント!?」


―――ふたり同時に詰め寄られて、やや引き気味のレギンレイヴ。


「え、ええ。自分でも材料を買ってきて作ることも……ありますけど?」


その言葉に―――


「ユリエル―――」


「八雲君―――」


―――目を合わせた八雲とユリエルが同時に、


「―――ブランドをつくろう!!」


「……え?」


置いてきぼりのレギンレイヴが変な声を上げて固まっていた。


「レギンレイヴがデザイナーとして服をつくるんだよ!勿論直接作るんじゃなくて、針子を雇ってデザイン通りの服を作るんだ」


「レギンレイヴが作った物にブランド名を入れて、それを流通させるの♪」


「わ、わたくしがですか!?そんな、無理ですよ?!」


「大丈夫!大丈夫!製造は俺に任せてくれれば問題無いし、ブランドの流通にはマダム・ビクトリアのところやロッシ商会に持ち込もう!これはまたやることが増えたなぁ!」


「で、でも―――」


「―――レギンレイヴ。貴女には服飾に対する才能があります。その才能を使ってあげなくては才能が可哀想です」


アルヴィトに諭されるように言われて、レギンレイヴも少し考え込んだ後に、


「分かった。よろしく、お願いします」


と、ブランド立ち上げに意欲を燃やすことになるのだった―――






―――それから六人で打ち上げパーティーを行うことにした八雲。


料理は八雲とユリエルが、飲み物の用意や部屋の準備はレオ、リブラ、レギンレイヴ、アルヴィトでやってもらった。


そして、始めようとしたその時―――


「八雲様、少し待っていてください」


「ん?ああ、いいけど?」


レギンレイヴに「待て!」をされて忠犬のように料理の並んだテーブルの前で待つ八雲だったが、暫くして―――


「―――お待たせしました/////」


「いや、だい……じょばない……」


八雲の目の前に広がっているのは、ノワールが着ていたのと同じセクシーバニーガールの群れだった。


「おま、それ……」


言葉にならない八雲は、黙ってその場に立ち上がると、無言で拍手喝采を始める。


―――真っ赤な衣装のバニーガールになったレギンレイヴ。


―――ピンクの衣装のバニーガールになったアルヴィト。


―――白色の衣装のバニーガールになったユリエル。


―――黄色の衣装のバニーガールになったレオ。


―――青色の衣装のバニーガールになったリブラ。


「……最高だ。天国は此処にあった」


拍手しながら、そう呟く八雲。


この夜、バニーガール軍団と、八雲の夜が始まる―――



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?