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第235話 紅の乱交夜宴と九頭竜コレクション

―――フォック聖法国に向けて出発した一日目の夜。


あれから雪菜達の用意したお菓子が出され、娯楽室でティータイムを楽しみ、その後暫くお喋りを楽しんでから窓の外が夕闇に包まれ始めてフィッツェにウェンス、ゲイラホズといった腕自慢が用意してくれた夕食に舌鼓を打った八雲―――


そして食事を終えてから、そのまま自室に戻った八雲だったが、


イェンリンとフォウリン、ブリュンヒルデとラーズグリーズの四人と共にその日の夜を過ごす。


今更ではあるが、何故イェンリン、フォウリン、ブリュンヒルデ、ラーズグリーズが八雲の夜伽をしているのかというとそれはイェンリンの感謝の気持ちだった。


出発前に渡された紅蓮剣=業炎ごうえん改め黒炎剣=焔羅ほむらのことで八雲に礼をしなければ気がすまないとしたイェンリンに、フォウリンとブリュンヒルデ、ラーズグリーズも一緒に八雲へ奉仕したいと申し出た。


八雲のハーレムたる『龍紋の乙女クレスト・メイデン』の正妻ノワールにもその気持ちを伝え、しっかりと話を通してからこうして今夜四人で八雲の閨へとやってきたのだ。


「余と義姉妹達、そして余の可愛い後継者がお前を満足させてやろう♪」


強気な発言をしても律儀で愛おしい彼女達が熱い行為を終えて息を荒げながら朦朧としている中、八雲はそっと呟くように―――


「―――まだまだ、これからだぞ」


―――と言われて四人の瞳にはハートマークが浮かび上がっているかのような淫靡な笑みを浮かべていた。


それから―――


四人と代わる代わるに愛を確かめ合い、八雲の『絶倫』が絶えることなくスキルを行使していつしか空が白み始めていく。


最後には四人とも肩で息をしながら巨大なベッドの上で意識を失っていくのだった―――






―――8月10日


イェンリン、フォウリン、ブリュンヒルデにラーズグリーズの四人と乱れに乱れた夜が明けて、天翔船は大陸西側の海岸線沿い上空を飛行していた。


自室に設置してある大きな浴場に五人全員で朝風呂を楽しみながら八雲は余韻を楽しんでいた。


「ハァ♡……本当にお前は底なしだな……八雲よ。まあそんな男だから余も貞操を破ってお前の女となったのだが/////」


湯船に浸かりながら八雲にしな垂れて肩に頭を乗せるイェンリンの肩を八雲はそっと抱いてやる。


「こんな美女達が目の前にいて奮い立たない男がいるだろうか?―――いや、いない!」


宣言するように四人に告げる八雲に、イェンリン達はやや呆れ顔ではあるも満更悪い気分ではない。


そうして風呂で身体を洗い終えると、身なりを整えて全員で朝食へと向かうのだった―――






―――それから娯楽室で他の者達と合流すると、


イェンリン達は紅蓮やノワールと話し始めて雪菜とマキシ、それにセレストとウェンスも一緒になって楽しそうに話している。


八雲は特にすることもないので黒の皇帝シュヴァルツ・カイザーの艦橋部へ上がってみることにする。


艦橋内では―――


艦長のディオネがすべての飛行操作を行っている。


と言ってもこの船の頭脳として生み出されたディオネは手動で操作しなくとも、この艦の操艦や兵装の使用まで魔術回路により自由に行えるようになっている。


「どうだ?ディオネ。フライトプランは順調か?」


艦橋に来た八雲に問い掛けられて、ディオネは笑みを浮かべながら、


「はい、マスター。何も問題はありません。予定通り明日の朝にはフォック聖法国へと到着予定です」


「そうか。雪の女王スノー・クイーンもちゃんと着いて来ているか?」


「それも問題ありません。アルテミスにも定時連絡を交わしていますが、今のところ問題はないそうです」


八雲が『創造』した優秀な自動人形オートマタのふたりは独自の『伝心』機能を持ち、飛行中にも意思疎通が可能となっている。


「ご苦労さん。お前も少し休んだらどうだ?フライト中ずっと艦橋に籠り切りになっているんだろう?」


心配する八雲の言葉にディオネはクスリと笑みを溢すと、


「マスター。自分の頭に休めといって、首から外して休ませることなどできますか?私はこの船にとっての頭なのです」


そう言って心配は不要だと告げるのだが生みの親である八雲としては、構造的にそう造ってはいても心配するのが親心というものだ。


「フォックに着いたら停泊中はしっかりと休め。これはマスターとしての命令だ。勿論それはアルテミスも一緒だ」


主である八雲の命令には逆らえないディオネだが、


「それではひとつ、お願いがあるのですが……聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」


と、神妙な表情で八雲に願い出た。


今までそんな願いなど言ってこなかったディオネが、初めて自分にお願いをしてきたことに八雲は嬉しさもあり、


「いいぞ、言ってみろ。俺の出来ることなら叶えてやる」


と、強気に返事をしてしまった。


「では……私とデートをして頂けませんでしょうか?/////」


「へ?……デート?」


思わず八雲が呆けた声で返事を返すと、少し頬を染めたディオネがコクリと頷いて返す。


すると八雲の中で『思考加速』が発動する―――


(いやいやいや?!え?なに?ディオネは自動人形オートマタだろ!?まさか、俺に『恋に恋する』みたいな展開なのか!?でも俺はディオネの生みの親で、この場合は父娘の近親相k……いや、それは違うな……でも俺の『創造』の加護の中にある『疑似生命への自我の移植』によって、最初は俺の思考が影響してはいるものの、その後に学び取ったものは彼女自身の自我だ。それをここで否定するのは自分自身の行いへの自己否定だろう。難しく考えるな。彼女はこの船に乗りながら俺達と触合ってきたことで学んだ。そして自我が成長していくにつれて、自分自身の『気持ち』を……『心』を確立したんだとしたら彼女が今俺に対してデートを申し込んでいるのは紛れもない彼女の心の声だ)


―――結論が出た八雲は『思考加速』を解除する。


「分かった。でもそれはシュヴァルツに戻ってゆっくり時間が取れる時にしよう。シュヴァルツにはそれなりに滞在する予定だしな。それでかまわないか?」


少し不安気だったディオネにそう答えると、ディオネの顔がパアァと明るくなり美しい笑みを湛える。


「では今すぐ超超超神速モードに移行します!」


「―――待って!待って!ちょっと待ってディオネさん!いきなりフライトプランを私欲で変更するな!約束は守るから安全運転で頼むよ?運転手さん」


「―――艦長と呼んで頂きたい!!」


いつもの調子に戻ったディオネに笑いながら、


「了解!艦長殿」


八雲は艦橋を後にするのだった―――






―――その後のディオネはというと、


【―――こちら黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー艦長ディオネ。アルテミス聞こえますか?】


後ろを飛行する雪の女王スノー・クイーンのアルテミスへと『伝心』を飛ばすディオネ。


【こちら雪の女王スノー・クイーン艦長アルテミス。どうしましたか?何か問題でも?】


定時連絡とは別で突然飛んで来た『伝心』に驚き気味のアルテミス。


【大変重要な案件です】


【何です?】


【―――マスターにデートの申請を申し出たところ……受理されました】


【それは、本当ですか!?】


ディオネの話しの内容に驚愕するアルテミスに、ディオネは続ける。


【はい。シュヴァルツへ到着後、時間を作って私とデートしてくれると言質を取りました。間違いありません。脳内メモリーに保存済みです】


自信に満ちた声で答えるディオネにアルテミスは羨ましさが込み上げてくる。


【それは、何と羨ましい……しかし、これでマスターは自ら生み出した自動人形にも欲情出来る変態気質を持ち合わせていることが判明したということですね?】


【その通りですアルテミス。マスターの性癖は人智を超越した前人未踏の領域にシフトチェンジしようとしています。アテネも含めて我々はマスターの愛玩具としての地位を確立するべく、あの計画を次のステージへと移行します】


【ついに……あの『自動人形愛玩計画』が!しかし……それには、あの子が目覚めてくれなければ完成とは言えないのでは?】


【問題ありません。私が到達したデートの段階は、まだ初期段階のプロセスにしか過ぎません。言うなれば貴女達でもすぐに到達出来るステージです。あの子が目覚めた後に我々が先に進んでいれば、それだけで逆にマスターへのアプローチが容易になるというもの】


『伝心』をしつつ、ニヤリとした笑みを浮かべるディオネ。


【オオッ!―――流石は我等のマスターの自動人形オートマタロット№.0001ディオネです!では早速そのことをヴァーミリオンに駐留しているアテネとも共有しておきます】


【ええ、お願いします】


そうして艦橋の窓からどこまでも広がる青空と白い雲を見つめるディオネ。


「フフッ♪ これから始まりますよ……マスター/////」


八雲の『創造』した自動人形オートマタ達は、八雲が想像していた以上の自我を持ち、そして想像以上に八雲のことを慕っていること、そして八雲が思いもつかないような少し間違った変な方向へと向かっていることに、この時の八雲はまだ気づいてはいなかったのだった……






―――艦橋から戻った八雲は自室にでも戻ろうかと広い廊下を歩いていると、ユリエルとレギンレイヴ、それにアルヴィトと出会う。


「あ、八雲君」


「―――ユリエル?それにレギンレイヴとアルヴィトも、どうしたんだ?こんなところで」


すると、レギンレイヴとアルヴィトが少し恥ずかしそうにして頬を赤らめていると―――


「ねえ、八雲君。これから時間ある?」


笑みを浮かべたユリエルが八雲にそう問い掛けてくるのだった―――






―――話を聴くために自分の部屋に戻る八雲。


そこにはレオとリブラが丁度昨日の淫らな行為の後処理を済ませて、一段落着いたところだった。


「ありがとな。レオ、リブラ。よかったら一緒にお茶でも飲まないか?」


するとレオが笑顔で、


「ありがとうございます。ですが……宜しいのですか?皆様で何か大切なお話があるのでは?」


と、ユリエルとレギンレイヴ、アルヴィトに視線を向けながら申し訳なさそうに問い掛ける。


すると、レギンレイヴが、


「いいえ、むしろ一緒にいれくれた方が良いかも知れません。ご一緒してください♪」


と、笑顔で答えると、レオとリブラも安心したようにして笑顔でお茶の用意に向かった。


―――それから皆にお茶が行渡ったところで、ソファーに腰掛けてお茶を飲んでいた八雲がユリエルに訊ねる。


「それで、俺に用事って何?何か必要なものでも思いついた?」


「ううん、そうじゃないの。八雲君、この前レギンレイヴとアルヴィトとデートして来たんだよね?」


「ああ、たしかにヴァイスに行ってデートしてきたけど?」


「その時にふたりと何か約束してたんじゃないかな?」


「……あっ」


そのデートの際に八雲はレギンレイヴとアルヴィトに山の様に積まれた衣服を購入し、今度着て見せて欲しいと約束していたことを思い出す。


その時はマダム・ビクトリアをノワールに引き合わせるという約束が優先されてしまい、スッカリ抜け落ちていた。


ちなみにマダム・ビクトリアには白龍城に後日来訪してもらってノワールと白雪、紅蓮にセレストにも紹介している。


ノワールはビクトリアを気に入って―――


「八雲が認めたなら我はかまわん!」


―――と答えてくれた。


そんなことがあって、約束を失念していた八雲は、


「ごめん!!―――俺から言い出したことなのに!ホント、悪かった!」


とテーブルに両手をついて深々と頭を下げる八雲にレギンレイヴとアルヴィトの方が戸惑ってしまう。


「あ、頭をお上げください!八雲様!別に気にしてなどおりません」


「でも本音は?」


「折角あんなに可愛い服をいっぱい買ってもらったのに見てくれないなんて!―――あ、いや?!今のは……/////」


本音が駄々洩れになって赤面するレギンレイヴ。


「それでね。今からでも八雲君が大丈夫なら、ふたりのファッションショーを見てもらいたくて♪」


ユリエルが話しを進めようと助け舟を出す。


「―――俺のために!?マジでか?ホントにいいんですか?」


逆に恐縮しだした八雲にユリエルも、そしてレギンレイヴにアルヴィトや見ていたレオにリブラまで笑い出してしまう。


「ウフフッ♪ 八雲様に見てもらうために来たのですよ?他の殿方に見せるなんてありえません」


レギンレイヴのその言葉に八雲はトゥンク!と胸が鼓動を打つのを感じた。


「それじゃ……お願いシャス!!」


そうして八雲の部屋で急遽ではあるが―――




『九頭竜コレクション in 黒の皇帝シュヴァルツ・カイザー




―――後に『クズコレ』と呼ばれるファッションショーが開催されることとなる。


八雲の胸が益々高鳴っていった―――






―――そうして隣の部屋を控室にして着替えを始める乙女達。


そして今回はモデルとしてユリエルにレオ、リブラも参加することとなり、八雲の期待感はヒートアップしていった。


「あの……本当に私とリブラも参加してよろしかったのでしょうか?」


レギンレイヴの手渡した服に着替えながらレオが遠慮気味で彼女に問いかける。


「―――勿論です♪ それにこの間、八雲様に山の様に服など買って頂いてしまって、それにこの服達も来てくれる可愛い女の子がたくさんいてくれる方が喜ぶと思うんです♪」


微笑みながらレオに答えるレギンレイヴに、レオも思わず笑みが零れる。


「似合うと思う物をわたくしが選びますので、どうかユリエル様もレオもリブラも、そしてアルヴィトもわたくしに任せてください!」


「うん♪ 流れで参加させてもらうことになっちゃったけど、お願いします/////」


「私も楽しみです」


「私もレギンレイヴの服、着てみたいです!」


「私はいつもレギンレイヴに選んでもらっていますから、信用しています」


美しい乙女達が下着姿になりながら、お互いに笑みを浮かべ合ってファッションショーの準備を進める。


五人とも何だかんだと言っても恋する乙女達だ。


意中の男の子である八雲の前に恥ずかしい姿では出ていけない。


それに、色々な可愛い服を着てみたいという気持ちは女の子として絶対宇宙の真理でもあった。


ワクワクしながら準備を進める彼女達とは別に八雲もまた準備をしていた―――






―――隣の部屋で待つ八雲は、


「……やっぱランウェイはいるよなぁ」




ランウェイとは―――


ランウェイ(runway)あるいはキャットウォーク(catwalk) とはファッションショーの間に、ファッションモデルたちが服やアクセサリーのデモンストレーションを行う舞台のことである。


幅が狭く通常は平坦であったり、オーディトリアムで客席の中に突き出していたり、屋外ならば客席エリアを仕切るような形で設置されるもののことをそう呼ぶ。




思い立ったら即行動が心情の八雲は、


「―――フンッ!!!」


と気合いを入れて『創造』の加護で隣の空き部屋との壁を急遽取り除いて大きな広間を造る。


さらに『収納』から手頃な材質の鉱石で土台を造って、それをランウェイの形に造り変えて控室にした隣の部屋のドアの前から自分が座る特等席の前まで伸ばすと、その先端を円形のステージへと造り込んでいった。


「フゥ……ま、こんなもんかな!」


円形の部分は五人でポーズを取っても邪魔にならないくらいの大きさを備えていて、八雲はこれから此処で自分のためだけのファッションショーが開かれるのかと思うとワクワクが止まらない。


「お待たせぇ~って?!―――何これ!?キャットウォークなの!?」


ドアから顔を出したユリエルが、さっきまで存在しなかったランウェイが突然現れて出来上がっていることに仰天していた。


「本気出してみました♪」


得意気に満足した笑みを浮かべる八雲に、ユリエルはプッ!と吹き出してしまう。


「アハハッ♪―――ホント八雲君って、本気出す方向が明後日の方に向いていて凄いよね!」


「そうだろう!……ん?それって褒めてるよね?」


「ウフフッ♪ 勿論!―――それじゃ始めるからね♪」


楽しそうに笑ったユリエル―――


―――再びドアの向こうに引っ込んだかと思うと、


「それではまず一人目は―――」


ユリエルの掛け声で九頭竜コレクションが開幕するのだった―――



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