「―――攻撃が……止んだ?」
レベッカの声にルドルフもユリエルも周囲の警戒を続けているものの戻ってこない八雲を心配していた―――
「八雲に限って怪我をするとも思えんが、戻ってこないのは気になるな……」
「探しに行きましょう!」
「―――待てユリエル!この階層がどれだけの広さがあるのかも分からない状態で、この場を動いて八雲とすれ違いになったら余計な時間を使う可能性がある。もう少しだけ待ってそれでも戻って来なければ捜索に向かう。それでいいな?」
ルドルフの提案に八雲が心配でユリエルは今すぐ探しに行きたかったが、自分ひとりが飛び出せば皆に迷惑を掛けるのは目に見えているので、
「……分かりました。ルドルフさんに従います」
ユリエルは逸る気持ちをグッと抑えて、この場で待つことに同意したものの、
(八雲君……どうか無事に、早く帰ってきて)
と祈らずにはいられなかった……
「―――もう一度聞く。どうしてお前は此処にいるんだ?サジテール」
「……」
バルバール迷宮の第三階層で邂逅した人物は
ノワール達からは家出したみたいなことを聞かされていた八雲だが詳しい事情は聴かされてはいない。
だからこんなダンジョンの奥にいることなど予想もしていなかったのだ。
「お前……本当に黒神龍様の御子なのか?」
疑いの眼差しを向けるサジテールに、ハァ……と溜め息を吐いた八雲は、
【これで信用したか?】
「―――ッ!?」
『伝心』で話しかけた途端サジテールはビクッと反応して聞こえたことを肯定してくれた。
「……『伝心』か。確かにそれは黒神龍様の加護……よりにもよって男なんかを……」
その言葉を聴いて八雲はふと、もしかするとサジテールは……
「―――お前、もしかして男嫌いなのか?」
「……ああ。俺は男なんか信用していない。男は女と見れば襲い、奪い、犯すだけのクズだ。全世界から全滅して欲しいとさえ思っている」
「そんなことしたら子供も生まれなくなって人類滅亡だな……」
八雲のツッコミに少し鋭く瞳を細めたサジテールだがすぐに力を抜いて、
「まあそれは言い過ぎた。別に幸せな家族として生活を営む者達に対して敵対心はない。だが!世の中には生きていることすらおぞましい男達もいることは事実だろう?」
「―――それは否定しない。野盗とか見たら即殲滅だしな。
八雲の突拍子もない返事にサジテールは少し気を許した風ではあるが、まだ肝心なことに答えてもらっていない八雲は『伝心』を用いてノワールにサジテールと会ったことを伝えようとするが―――
【―――ノワール。聞こえるか?ノワール】
―――呼び出してもノワールの返事はない。
「此処で『伝心』を外に飛ばしても無駄だぞ。俺も何度か試したが誰にも聞こえていない。お前がさっき使ったことでこの中にいる者同士なら通じることは確認出来たが」
「―――てことは、当然外からこっちに連絡してきても……聞こえないってことだよな?」
「ああ。俺は此処に来てから一度も『伝心』を受けたことがない」
八雲の頭からサァーと血の気が引いていく―――
ダンジョンに潜ることは入る前にノワールに伝えておいたが、こうも長く連絡が繋がらないとなるとユリエルも連れている手前、外が大騒ぎになっている予感しかしない……
「不味いな。早く戻らないと……大変なことになる」
フォック聖法国の聖女を連れてダンジョンに潜り、しかも音信不通となればシュヴァルツ皇国とフォック聖法国の国際問題になり兼ねない。
下手をするとノワールが錯乱して
「おい?どうした?」
「―――
「うわ?!な、なんだ!?何故ここで黒神龍様の
思わず錯乱した八雲だが、そこで『理性の強化』が働いて冷静に戻る。
「すまんサジテール。少しノワールが錯乱している姿が頭に浮かんだだけだ」
「訳の分からないヤツだな」
「それで、話しを戻すが此処でお前は何をしているんだ?」
ここで始めの質問に戻った……
「……お前には関係ない」
「―――そうか。なら仕方がない。さようなら」
そう言ってペコリと頭を下げると八雲は踵を返してルドルフ達の元に戻ることにする。
「……おい!ちょっと待て」
そこでサジテールが背中に向かって呼び止めるので八雲は再びサジテールに向きを変える。
「なんだ?俺には関係ないんだろ?今、森の中で俺の帰りを待っているやつ等がいるんだ。そいつ等とすぐ地上に戻りたいんでな」
素っ気ない八雲の返事に一瞬ムッとした表情をしたサジテールだが、それを抑えても話を聴いてもらいたいことがあるようで、
「お前に少し話がある」
「……分かった。だが、まずは仲間達と合流させてくれ。そうしたらお前の話を聴く」
「ああ、それでいい」
話しは一旦纏まって八雲とサジテールはルドルフ達の待つ地点まで移動する―――
「―――八雲!戻ってきたか!ん?……そっちのお嬢さんは?」
「アリエスさん!?」
戻ってきた八雲の姿を見てホッと胸を撫でおろすパーティーメンバー達だったが、ユリエルがサジテールの顔を見て同じリアクションを取ったことに八雲は少し可笑しくなった。
「―――ユリエル、此方はサジテール。
「エエッ!?そうなんですか!お顔がそっくりだったもので、アリエスさん本人かと……でも髪の色は違いますもんね」
「俺は
「俺達のことも知っているのか?」
「ああ、
「改めまして、ユリエルと申します。よろしくお願い致しますね」
「レベッカよ。貴女もやっぱり……あのメイドさん達みたいに……とっても強いのでしょうね」
「誰のことを言っているか分からんが、俺は強い」
「ルドルフだ。以前お前さんのお仲間のメイド達と戦争に参加した。本当にあんた達の強さには驚かされたよ」
「―――戦争だと!?いつのことだ?」
「二カ月くらい前のことだ。サジテールは知らなかったのか?」
「ああ……俺はその頃にはもう此処にいたからな」
その言葉に四人は驚きを隠せない。
「エ?此処にずっといたのか?どうしてだ?」
「ああ、二カ月どころか半年近く此処にいる。お前に話したかったのはそのことについてだ」
「半年!?それってお前とノワール達との連絡が途絶えた時期じゃないのか?ノワールは位置把握でこの国にいることは分かっているって言っていたけど、どうして出て来なかったんだ?」
八雲の質問にサジテールがグッと表情を強張らせて、
「此処にある者達を匿っている」
突拍子もない理由に八雲は身動きが出来ないくらい驚かされた―――
「……此処だ」
サジテールの案内で第三階層の樹木の森を歩き進めると、そこには木製の家が立ち並ぶ開けた土地に出た。
「なんだ?此処はまるで集落だな」
「れっきとした集落だ。俺達は此処で生活している」
サジテールの言葉に八雲もユリエル達も思わず―――
「エッ!?」
―――と声を上げた。
「どうしてこんなダンジョンの奥で生活しているんだ?」
八雲が当然の疑問を投げ掛けるとサジテールが家で話そうと言って一軒の大きめの家に案内してくれる。
「お帰りなさい!サジテー……その人達は!?」
「―――心配するなナターシャ。彼らは敵ではない」
ナターシャと呼ばれた少女は八雲よりも少し下くらいの歳に見えたが、その耳は長くて一目でその子が、
「……エルフか」
八雲が無意識にそう呟くと、ナターシャと呼ばれた少女がビクッと身を震わせてサジテールの後ろに隠れる。
「あらあら……大丈夫よ。私はレベッカというの。貴女はどこから来たの?」
八雲に代わって前に出たレベッカが少し身を屈めてナターシャと呼ばれたエルフの娘に声を掛ける。
同じエルフの女性とあってか、レベッカには少しだけ安心した顔を見せるナターシャだったがそこでサジテールが、
「そのことで此処に来てもらったんだ」
と言って、皆をテーブルに招いた。
「まず、この子達はレオパール魔導国のある地方の村の子達だ」
サジテールが話し出したところで八雲が確認する。
「この子達ってことは、この子の他にも何人かいるのか?」
「ああ。この子も含めて全部で二十四人いる」
「そんなに!?それはまた……」
予想以上の人数に八雲は驚いたがサジテールは話しを続ける。
「―――話を続けよう。この子達の村は比較的ウルス共和国の国境近くの村で穏やかな生活を送っていた。だが、ある日突如としてレオパール魔導国の軍隊が村を焼き払いに来た」
「エッ!?そんなバカなこと……」
その話しに一番驚いていたのはレベッカだった。
「理由は分からん。というかその理由を調査する前に俺はこの子達二十四人に対して薄汚い兵士どもの所業が許せずに助けてしまってな。調べようにもこの子達が離れてくれなくて、そこで仕方なく以前攻略したことのあるこのダンジョンを思い出した」
「え?攻略!?―――サジテール、このダンジョン攻略したことあるのか?いつのことだ?」
「うん?大体二百年くらい前だったか」
「―――攻略したのって、お前だったんかい!」
レベッカ達の言っていた二百年前の攻略者がなんとサジテールだったとは……八雲は心の中でお前いくつだよ!とツッコミながらも生ける伝説サジテールの話を聴く。
「此処の第三階層はいわゆる『安全地帯』でな。魔物が一切現れないエリアだ。水と食料もあるし、この子達を匿うには丁度いいと思った」
たしかに此処に来る際に途中で八雲達の目には綺麗な小川や木の実が見えたのを憶えている。
「俺はこの子達を連れて、レオパールからウルス共和国を経由してティーグルの西にあるこのダンジョンまで来た。そして第三階層まで下りてきて、こうして集落を構築したという訳だ」
「なるほど……それでここに潜ったことで『伝心』が届かなかったと。けれど此処がその『安全地帯』なら、もうお前が離れてもいいんじゃないのか?」
「俺もそう考えたんだが……安全のためとはいえ、ダンジョンの奥に置き去りにするのも無責任だろう?それに此処だって攻略目当ての冒険者がいつ下りてくるとも限らない」
「それで見張っていた訳か……でもいきなり矢を射かけるのは、やり過ぎだ」
するとサジテールは悪びれる様子もなく、
「そのくらいの脅しをかけなければ帰らんだろ?しかし俺達が此処に来てから下りてきたのはお前達が初めてだが」
そう言ってナターシャが出してくれたお茶を飲んでいた。
「このお茶も此処で作ったのか?」
「ん?ああ、ハーブティーだ。疲れが取れるし何より美味い。この子達は村では特産品の茶葉を作って生計を立てていたんだ。だが、家族諸共その茶畑も焼かれた。黒神龍様は外の世界の政には一切関わられることはない。だが、俺には奴等の下衆な笑みを浮かべながらの殺戮が我慢ならずに手を出してしまった。これでは黒神龍様に会わせる顔もない」
神妙な面持ちで語るサジテールの話しに八雲は黙って耳を傾けていたがユリエルが立ち上がり、
「―――そんなことはありません!サジテールさんの行ったことは誰も責めたりなど出来ません。神は争いを好まれませんが、弱者を虐げる者もまた罰をお与えになります。サジテールさんがなさったことは間違ってはいません」
サジテールの瞳を真っ直ぐに見つめて自分の言葉を伝えるユリエルに、
「……聖女よ、感謝する」
サジテールは短く、そう一言答えた。
「それで、話はそれだけじゃないんだろ?態々俺達を此処まで連れて来たのは」
そう言った八雲に向き直ったサジテールは―――
「この子達を地上で生活させてやりたい。だがクレーブスと違って俺にはそこまでの策は浮かばない。だから地上から来たお前達に知恵を借りたい」
真っ直ぐに八雲を見つめてそう訴えるサジテール。
「……八雲君」
ユリエルの声に八雲は笑顔で応じてサジテールに語り掛ける。
「サジテール。お前、黒龍城が今は地上にあること、知らないだろ?」
「なに?黒龍城が胎内世界から外の世界に移ったのか?」
サジテールが此処に半年前から潜ったのなら黒龍城が現れた話を耳に入れる前ということになる。
「ああ。いまはティーグルのエアスト公爵領に土地をもらって、そこにノワールが
「その土地に迎え入れてくれるのか?」
「それはお前が直接ノワールに頼め。それが礼儀だろ……心配していたぞ」
「……そうだな。黒神龍様には謝罪しなければならない。どんな罰も受けよう。だが、この子達のことだけはお願いするとしよう」
「そうと決まったらルドルフ、レベッカ。第五階層まで付き合いたかったが、一旦この子達を連れて地上に戻りたいんだけど、いいかな?」
八雲の提案に黙って聴いていたルドルフとレベッカだったが、
「なに言ってんだ八雲。お前のおかげで此処まで来れた。こんな装備まで造ってもらって俺達に文句言う筋合いなんてねぇよ。それに、俺も孤児だったからな。レベッカがいなかったら正直どこで野垂れ死んでいてもおかしくなかった。だからこの子達が地上に戻って生活出来るなら、その方が大事に決まってる。そうだろ?レベッカ」
ルドルフの言葉にレベッカも頷く。
「そうね……八雲には感謝こそすれ……謝られるようなこと……ないわ。それに第一階層と第二階層の階層主が……ドロップした宝石だけでも十分な収入よ。孤児院の子供達にも……不自由な思いをさせずに生活させられるわ」
ふたりの言葉に八雲は胸が熱くなる想いだった。
そしてユリエルには、
「ユリエル、ダンジョン攻略は中途半端になったけど戻ったら聖法王猊下にちゃんと話しするから」
「はい!信じていますから。八雲君のこと/////」
そんな八雲達の様子を見てサジテールは、
「いい仲間を持っているなお前は。男であることが勿体ないくらいだ」
「いやそれもう男への偏見でしかないぞ?」
そうしてエルフの集落大移動が急遽計画されるのだった―――
―――その頃、黒龍城では……
「あ、ああ、ノ、ノワールさまぁ!こ、これ以上はぁ~ダメですぅ/////」
「あん、気持ち、いい……もっと……もっと、ジェナのこと気持ちよくしてぇえ/////」
ノワールのベッドの上で仰向けになって股を広げるジュディとジェナの間には向かい合って上から見つめるノワールがいた。
「可愛い我のジュディとジェナよ。日々の訓練でかなり感覚が上がってきているようでなによりだ」
そう言いながらふたりの感触を指先で楽しむノワールの顔は悦に浸っている。
毎晩のようにしてふたりに優しく、ときに激しく快感をその身に教え込んできたノワールは今日もその指先でふたりに触れ、それを楽しみながら快感を教え込んでいく。
八雲のために天狼姉妹の身体をじっくりと開発していくノワールは、そろそろこのふたりを次の段階へ進めたいと考えていた。
即ちそれは八雲との初夜である―――
「あ、あ、あぁあぁあ!きゅ、急に速くなって!あ、あぁ!ダメですぅ/////」
「あぁあぁあ!ジェナの、すごい!熱い!あぁあ!これ、おかしく、なるぅう/////」
「フフッ……ふたりとも、もう完璧に身体で覚えたな。八雲が帰ってきたら、いよいよ本番だ」
ノワールは笑みを浮かべてそう告げると、途端にふたりの身体がビクリと跳ねる。
「や、八雲様にぃい!!/////」
「お兄ちゃんにぃい!!/////」
「ああ、そうだぞ♪ 八雲は我の指なんかより、もっと気持ちよくしてくれるぞ♪/////」
「あぁあ!や、やくもさまぁああ!!/////」
「ああぁん!お、お兄ちゃん!!/////」
これまで何度もノワールにそう言われてきたふたりは、その想いと期待はどんどんふたりの胸に膨らんでいく。
「さあ、ふたりとも!今日もしっかりと果てるところを我に見せるのだ/////」
ノワールの指がふたりの弱点を攻める。
「あぁああぁあ!!!ノワールさまぁああ!!!/////」
「あ、ダメ、あ、あぁあぁあ!!!/////」
ビクビクと身体を痙攣させたふたりは、ほぼ同時に脳が蕩けるほどの快感に飲まれていった。
「早く帰ってこいよ♪ 八雲」
そんなふたりを見つめながら、笑みを浮かべるノワールだった―――