―――第一階層の主を討伐した八雲達だったがダンジョンに潜って三時間ほどが経ち、ルドルフも怪我はユリエルによって『回復』したが、失った血液までは回復しないのでダンジョン内で休憩をすることになった。
階層主の部屋には魔法陣が現れ、第二階層に進むためのものだとレベッカが八雲とユリエルに解説してくれた―――
そして階層主の復活は三日ほど時間を要するとのことで、広い階層主の広間に八雲はキャンピング馬車を『収納』から出して、その中で休憩することにした。
馬車と言っても外装は黒神龍の鱗で出来た動く要塞、シェルターのような馬車なので万一この広間の中に魔物が侵入してきたとしても傷ひとつ付けることなどできない造りだ。
「―――とりあえず食事にしよう。ルドルフは飯食って休まないと血を流し過ぎたからな」
「すまん……こんな状況になったのは俺の責任だ。大人しく回復に努めるよ」
いつになく落ち込んだルドルフだったがレベッカが気合を入れる。
「いい加減に…元気出しなさい!それとも……また膝枕してもらいたい?坊や」
バシン!と背中を叩くレベッカの気合いの入れ方は昔から変わらないやり方だ。
「―――誰が坊やだ!お前はホントそろそろ俺とラースを子供扱いするのやめろよ!」
「それだけ元気があれば大丈夫そうだな。いま飯を用意するから、ユリエルは風呂に入って汚れを落としておけよ」
治療の際にルドルフの血を浴びて修道服が赤黒く染みになっていて顔や手も汚れていた。
「なら私も一緒に頂くわ……八雲とルドルフも一緒に……入る?/////」
「―――誰が入るか!!」
「昔は一緒に入ったのに……可愛くない」
「―――ガキの頃の話し持ち出すな!とっとと行ってこい!」
少し顔を赤くしたルドルフに促されてレベッカとユリエルは浴室に向かっていった。
「さて、それじゃあ飯の支度でもしますかね」
そこで浴室に向かったレベッカが戻って来て小声で、
「八雲……」
「―――ん?どうしたレベッカ?」
「ルドルフを…助けてくれて……本当にありがとう」
そう言ってペコリと頭を下げるレベッカを見て八雲はフッと笑みを浮かべながら、
「気にするなよ。助けたのはユリエルだしな。パーティーだろ?パーティーは結束力とチームワークが重要なんだぜ?」
階層主の扉の前で誰かさんが言った台詞をそのまま返すとレベッカは笑っていた―――
―――脱衣所で汚れた服を脱いでいくユリエルと、同じく服を脱ぎだすレベッカ。
ふたりとも浴室に入ると八雲から教わったシャワーの使い方を真似て湯を出して身体の汗と汚れを落としていく。
「ユリエル……肌、白くて、綺麗ね」
「エッ?!そ、そんなことはありませんよ?レベッカさんの方がすごく綺麗です/////」
「ウフフッ……ありがとう♪ やっぱり女の子はいいわねぇ♪」
そう言ってユリエルの後ろから釣鐘型の綺麗な胸を背中に押し当て抱きしめるレベッカに驚くユリエル。
「キャッ!?―――レ、レ、レベッカさん!?ちょっと、あん♡ そこは!/////」
後ろから手を回したレベッカはユリエルの形の良い胸を優しく撫でるように揉んでいく。
「本当に綺麗……ねえ、ユリエル……このおっぱい、八雲にはもう触ってもらったの?」
「へ!?や、八雲君とは、別にそんな関係じゃありません/////」
「あら♪ そうなのね……でも、八雲のこと嫌い……ではないでしょう?」
その言葉にユリエルの顔が一気に真っ赤に変わる。
「そ、それは、確かに、き、嫌いじゃありませんけど……/////」
最後は小さくなっていったその返事を聞いてレベッカはユリエルの下乳の膨らみを掌でゆっくりと撫でていく。
たぷん♪ とした下乳の柔らかな感触を撫でて楽しみながら、レベッカはシャワーで出来た水流がユリエルのスベスベの肌を滑り落ちているのを見つめて耳元で囁く。
「ねぇ……ユリエル。年上としての助言だけど……八雲はひとりの女で……繋ぎ止めることは……出来ないわ」
「……えっ?あん♡/////」
会話中もレベッカの手が止まることはない。
下乳からゆっくりと上に向かって撫でていき、そしてついにその胸の先端をレベッカは軽く指先で転がしていく。
「八雲は黒神龍様の御子で……黒神龍様も八雲のこと……夫と言って憚らない。それに、あのとっても強いメイド達……彼女達も八雲のことを慕っているわ」
「……はい……それは、分かります/////」
「うん……だから、必要なのは……貴女の覚悟だけよ」
「レベッカさん……ヒャアア!?/////」
そこでレベッカの右手が下腹部に滑り落ちてきて、ユリエルは驚いた声を上げてしまう。
「ユリエル……私達、女はね、原始的な根元の部分では……強いオスを求めるメスなの。八雲ほどの男の子と一緒にいて、メスが疼かないことなんて……ないわ」
「あうう……/////」
滑り落ちてきたレベッカの右手が、ゆっくりと下腹部を中心にして円を描く様に撫で回す。
「此処には女にとって……大切なものがあるのは……知っているでしょう?八雲を見て、此処が……キュンとなったら……それはメスの証し。あなたの中のメスが……強い八雲のオスを求めているのよ」
「ハァハァ―――で、ですが、わたくしは、神への奉仕を……/////」
俯いて自分の腹を撫で回すレベッカの指を見つめながら息を荒げていくユリエルの耳元で、
「これだけは覚えておいてユリエル……貴女の身も心も……貴女自身のものよ。神様のものではないの。どの神様も……人にすべてを捧げろなんて教義……残してはいないでしょう?」
「―――そ、それは!……わたくしは、無償の奉仕を神に捧げていますので/////」
「八雲を愛してしまったら、もう……神様に奉仕しては……いけないの?」
「そ、それは!?……」
「神様の御心はそんな狭量では……ないわ。貴女自身に正直になって……八雲に飛び込んでみなさい」
「―――ううぅ/////」
まるでなんでも見透かしている母の様なレベッカには逆らえないでいるユリエル。
「誰も責めたりしないし、もし……誰かが責めたりしたら……私がとっちめてあげるわ♪」
「あ、ありがとう……ございます/////」
「ああ、本当に可愛いわユリエル。このまま……私が貰っちゃおうかしら♪」
「―――へッ!?じょ、冗談ですよね?/////」
「うふふ♪ さあ……身体を洗ってあげるわ♪」
「ちょ、ちょっと、レベッカさん!?ちょっと!そこは!ああ♡ あぁああ♡/////」
レベッカの伸びた手がユリエルのデリケートな場所にまで到達して、そこを優しく蹂躙する魔女に聖女は初めて他人に与えられる快感を覚えさせられた。
ビクビクと身体を震わせながらユリエルは半開きの唇から舌を突き出して唾液が浴室の床に零れ落ちていく。
その後も暫くは浴室にふたりの艶のある声が響いていた―――
―――漸くふたりが風呂を出た後にルドルフも血で汚れていたので風呂に入り、その間に八雲は何品かの料理を仕上げて食卓に並べていった。
「―――八雲君、本当に料理が上手ですね♪」
「うん、まあ家で家事全般こなしていたからね。でもユリエルもさっきサラダ作るときの包丁捌き見ていたけど、けっこう料理出来るんだろ?」
「い、いえ!わたくしは教会で教えて頂いたことが習慣化しただけで、日本ではお母さんの手伝いとか、あまりしていなくて……」
そこまで言ってユリエルは俯いてしまうのを見た八雲は少し考えてから切り出す。
「だったら、こっちにいる間は俺が日本料理とか教えようか?カレーも泣いて食ってたし」
「うっ!?だってカレーなんて、こっちに来て初めてだったから……でも、いいんですか?」
「ああ、その敬語喋りをやめてくれたら教えてあげるよ」
「うう……八雲君、意地悪!/////」
「―――随分と楽しそうね♪ お姉さんも……混ぜてもらいたいわ」
レベッカが様子を見に来て、ふたりの会話に入ってくる。
「いやユリエルがこっちにいる間、俺が料理教えるって話をしていたんだよ。敬語をやめたら」
「あら♪ いい話ね……ねぇ八雲、私も……簡単なお菓子とか……教えてもらえないかしら?」
「うん?お菓子か……悪いけど俺、お菓子とかはほとんど作ったことないんだ」
「……そう」
レベッカが少ない表情の中で落ち込んだ表情を浮かべる。
その珍しい表情が気になった八雲はそこで代替え案としてレベッカに伝える。
「黒龍城にお菓子作りの得意な子がいて、今度その子に教えてもらったらどう?」
「エッ……いいの?」
「きっと喜ぶよ。フィッツェっていうんだけど、エアスト公爵夫人に店を持たないかって誘われているくらいだから腕は保証するよ」
「なんだか……とんでもなくスゴイ人……出てきたわね。でも……ありがとう」
「いいってこと!今度紹介するよ♪ さあ飯にしようぜ」
ルドルフが短い風呂から出てきたところで四人で食卓を囲んで食事をしながら今後の第二階層のことを話し合う。
「―――あの魔法陣で第二階層まで行かないと、どんなところか分からないんだよな?」
「う~ん、第五階層まで行ったって伝説はあるんだが、それも二百年も昔の話しで長寿の種族でもなければ詳しい状況なんて誰も知らねぇんだよ」
「―――レベッカも知らないのか?」
「ええ、当時から……ここの第五階層まで到達した話は……出回っていたのだけれど、それが彼方此方で……たくさん尾ひれが付いてしまって……気がつけば、どれが本当の話か……分からなくなってしまったわ」
「なるほどな。それじゃあ、行くしかないか!」
「―――だな!よし!腹も膨れたし、そろそろ行くか!」
「エッ?おいルドルフ、お前あんなに血を出したんだぞ?今からって本当に大丈夫か?」
「なぁに!八雲の美味い飯を食ったら一発で元気になったぞ!毎日俺の飯作ってくれないか?」
「やめろ気持ち悪い……プロポーズみたいなこと言うな」
「プ、プロポー……ダメッ!!/////」
「―――へ?どうしたユリエル?なにかあったか?」
「あ、い、いえ!な、なんでもないです/////」
過剰な反応を見せたユリエルを笑顔で見つめるレベッカだった―――
―――第二階層
魔法陣で第二階層に降りた八雲達は周囲の警戒に入るが、そこは第一階層主の部屋と同じように石造りの壁や天井の通路となっていて通路幅は第一階層とそれほど変わらなかった。
「それじゃあフォーメーションは第一階層と一緒で。十分に注意して進もう」
先頭のルドルフの言葉に一同頷き通路を進んで行く。
―――暫く進むとレベッカが魔物の気配を感知して皆が一斉に警戒に入った。
「前方から近づいてくる……かなりの数よ」
「いくら広さのある通路でも、大群は勘弁してもらいたいぜ……」
レベッカの言葉にルドルフが顔を顰めていると、前方からなにやら虫が飛ぶような嫌な羽音が近づいてきていた。
全員が通路の前方に注意を向けてルドルフは炎槍を構えて待ち、レベッカは風属性魔術の展開を始めていた。
ユリエルは両手を前に合わせてビクビクしていたが、後ろでは八雲がすでに黒刀=夜叉を抜いてユリエルの護りに入っていた。
すると通路の壁に灯されたランプに照らされて影がいくつも飛んでくるのが目に映ると、そこに襲来したのはキラー・ビーと外で呼ばれている巨大な蜂の軍団だった―――
―――体長1mほどもある蜂の群れが気味の悪い口元の牙をガチ!ガチ!と嚙み合わせながらパーティーへ突撃を開始する。
先鋒のルドルフがスキルを発動して『身体加速』による炎槍の高速突きをキラー・ビーに食らわせていく―――
―――その横をすり抜けてくるキラー・ビーにはレベッカの魔術が発動した。
「―――
下位風属性魔術の《風刃》だが、下位魔術が故にレベッカほどの魔術師となると連射能力が半端ではない―――
―――マシンガンのように発射されていく《風刃》が、キラー・ビーの身体を次々に斬り刻んでいく。
その光景をうしろで見守るユリエルと八雲―――
―――やはり通路に出てくるような魔物であれば、あのふたりだけでも余裕の様子が伺えるのだが第一階層のような不測の事態に陥るとふたりに『回復』が使える者がいなければ危ないだろうと八雲は分析していた。
そうして最後のキラー・ビーが斬り捨てられて通路は再びシーンと静まり返っていく―――
「どうやら落ち着いたみたいだが……でもまたいつ来るか分かったもんじゃないな」
ルドルフがそう全員に伝えるとレベッカが、
「あまり……ドロップ出ないわねぇ……」
と落胆した表情をしているので、以前から気になっていたことを八雲は訪ねてみることにする。
「なあ?レベッカはいつも報酬とかアイテムとか気に掛けているみたいだけど元々稼いでいるんだよな?もっと稼ぐ必要が何かあるのか?」
するとレベッカが呆けた顔をして、
「あら?……言ってなかったかしら?私……アードラーで、孤児院を運営しているのよ」
「―――え?孤児院を?そうなのか?」
驚いてルドルフに顔を向けて尋ねるとそのルドルフが頭を掻きながら、
「ああ、レベッカは孤児院をやってる……俺とラースもそこの出身だ」
「あ……すまない」
思わずルドルフの気持ちを推し量った八雲が謝罪する。
「いいって!別に謝ることなんかねえよ。俺達みたいな子供なんて、どこの国でも珍しくなんかねぇからな」
それを聞いて八雲とユリエルも現代日本にもそんな施設は確かにあって、虐待などの理由で引き取られていることを思い出した。
「うふふ♪ 私は……昔から子供好きでね。だから冒険者になってお金を貯めて……アードラーに孤児院を建てたの」
「だけど俺達みたいな子供はキリがないほどいるからな。俺達が子供の頃はレベッカひとりで冒険者の仕事で稼いで養ってくれてたんだ。でもいつまでも世話になりっ放しなんて嫌だろ?だからラースと一緒にレベッカと三人で冒険者になったってわけだ」
「ふたりとも……私が怪我をして帰ったりするのを……とっても心配してくれてね♪……泣きながら自分達も冒険者になるって聞かなくて」
「―――うるせえ!余計な昔話すんじゃねぇよ/////」
自分の子供の頃の話をされてルドルフは少し照れ隠しをしてそっぽを向いていた。
その話しを聞いていたユリエルは瞳を潤ませると、
「―――凄いですレベッカさん!わたくし、とても感動しました/////」
とレベッカの手を取って笑みを浮かべている。
八雲はレベッカのお姉さんというよりも母親に近いオーラを感じていた訳にこれで合点がいったと納得していた。
「―――あの!街に戻ったらレベッカさんの孤児院にお邪魔させて頂いてもいいですか?」
ユリエルが手を上げてレベッカにお願いする。
「ええ♪ 勿論よ。きっと子供達も……喜んでくれるわ♪」
「ありがとうございます!」
「ああ、だからあの時お菓子の作り方だったのか」
八雲の言葉にレベッカが頷く。
「ええ……同じ物ばかりじゃ……子供達も飽きてしまうから」
「よし!そういうことなら俺に任せてくれ!戻ったら早速その孤児院の子供達の為に準備するよ」
「ありがとう、八雲」
戻ってからの話しも決まって、明るい顔で包まれたパーティーにまたも嫌な羽音が聴こえてくる。
「チッ!―――もう次が来やがったか!さっきの調子で行くぞ!」
ルドルフの掛け声に全員が顔を引き締め直して戦闘体勢に入ると―――
現れたのは―――巨大な蠅……外ではキラー・フライと呼ばれる魔物だった。
「―――今度は蠅かよ!!」
すかさず臨戦態勢に入るルドルフの前に飛び込んで来たキラー・フライは―――
―――突然そのおぞましい形の口元からビュシュ!と液体を噴き出してくる。
すると―――
―――空気中で一気に霧散してその液体は消えていく。
「は?なんだ?今のは一体―――ッ!?」
するとルドルフの手に持っていた炎槍がドロッとまるで炉で熱したように溶けて曲がっていく―――
「アアア―――ッ!!!嘘だろ!?」
―――他のキラー・フライも次々に液体を吐き出すとすぐに霧散化して空気中に消えていく。
だがそれからすぐに―――
「きゃあああ!!!/////」
「こ、これは……大変だわ……私の服が……」
八雲の目の前ではルドルフ、レベッカ、そしてユリエルの着ている服が溶け出して、遂には三人ともあっという間に全裸にまでなってしまった……
「―――み、見ないで!八雲君!!/////」
「これは……杖まで溶けて……/////」
「ふざけんな!この蠅野郎が!!俺の槍、弁償しろ!!!―――てか、なんで八雲は無事なんだ!?」
三者が全裸のまま八雲に視線を向けると―――
「ああ、身体の周りに障壁を張ってあるから、あの空気中の溶解液が届かないんだ。まずはあの蠅共を倒すから三人は動かないようにしていてくれ」
「―――何で自分だけ!」
「―――酷いよ!八雲君!」
といったクレームが後ろで聞こえてくるが実は『思考加速』で服が溶けていく間に、
『ユリエルとレベッカに見惚れて、対処が遅れてしまいました』
とは口が裂けても言えない……
―――ここは早急に目の前の蠅どもを退治して態勢を立て直さなければならない。
「とっとと片付けるぞ!」
そう気合いを入れて夜叉と羅刹を構え、蠅の軍団を対峙する八雲を後ろから恨み節の視線で見守る三人だった―――