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第81話 皇女との初夜

―――ティグリス城の客室のベッドの上で腕の中にノワールとフレデリカを抱き寄せる八雲。


「それじゃあ、本当にいいんだな?フレデリカ」


腕の中で小さくなっていたフレデリカがその言葉に八雲を見上げて見つめながら、


「はい。わたくしは八雲様に救われた時から、身も心もあなたのものです。どうか―――/////」


そう言い掛けたフレデリカを強く抱き寄せ、その潤いのある唇に八雲は自分の唇を押し付ける。


「んん?!……ん……んん……ちゅ♡…ちゅ……」


始めは強く押し付けられて驚いていたフレデリカだったが、そこからは優しく撫でるように唇を動かす八雲に喜びが胸の奥から溢れて頭がボォーッと熱にうなされたような感覚になる。


「んちゅ…ちゅ♡ はぁ…んん♡……ちゅう……」


キスに慣れてきた風のフレデリカの様子に八雲はそっと自分の舌を軽くフレデリカの唇に当ててみると、フレデリカもそれに気づいてそのことを喜ぶように自らの舌をチロリと伸ばしてきた。


そこからはどんどん激しいキスに変わり、ディープキスでお互い求めるようにし舌を絡め、吸い合い、そして深く差し込む。


そんなキスを繰り返していると隣からノワールが身を乗り出してきた。


「八雲!我もぉお!我も…して♡/////」


そう言って甘えるように身体を摺り寄せてきているノワールに顔を向けて、ぷるん♪ と潤んだ唇に八雲の唇を近づけるとノワールは既に口を半開きにして舌を差し出していた。


「うう……/////」


その様子を隣で見ていたフレデリカは、その扇情的なノワールの様子に同じ女でありながら気恥ずかしさを覚えていた。


―――フレデリカを今夜抱くと決めた八雲。


―――その瞬間、フレデリカの何かが激しく弾けた。


すると、フレデリカの下腹部には八雲の『龍印』による『龍紋』が刻みつけられて浮かび上がっていた―――


―――そして、


八雲は次にノワールを押し倒していくのだった―――






―――そして次に目を覚ますと、すでに昼前になっていた。


「……んふふ……やくもしゃま……しゅき♡……」


八雲は隣で可愛い寝言を呟く全裸のフレデリカを見て……


―――寝過ごした!と気づいた八雲は慌ててふたりを起こした。


八雲とノワールは挨拶も早々にしてエーグルの地を立ち、再び道の整備を今度はエレファンに向かって開始した―――


「いってらっしゃいませ♡ ちゅ♡/////」


―――遠慮のなくなったフレデリカからのキスを受けてからの出発だった。


そうしてエーグルからエレファンへの道をその日に繋いだ八雲とノワールは、エレファンでもエミリオと会談して城に一泊させてもらった。


次の日の朝、アリエスとコゼロークが整備した道を辿り、その道の確認をしつつティーグルの黒龍城へと帰還したのだった―――






―――そして黒龍城に戻った日の談話室に八雲とノワール、アリエス、レオとリブラ、シュティーアとクレーブスに葵が顔を並べていた。


「皆、ご苦労だった。皆の力で八雲の提案した道の整備は一先ず形を得たが―――」


「本題はここからだ。道は出来たが『警備府』の建設がこれからだからな。未だに野盗達の存在はエレファンやエーグルでも耳に入ってきた。あいつ等のために道を整備したわけじゃないのは当然、皆もわかっていると思う」


「その為にも『警備府』の建設が次の課題だな。どうするつもりだ?八雲」


ノワールの質問に八雲が説明する―――


「―――まずは黒翼シュヴァルツ・フリューゲルで建設予定地まで飛んで、俺が基礎の工事までを一気に建ち上げる。その後、その場に現場警備の龍の牙ドラゴン・ファングをおいて、あとシュティーアのところのドワーフ隊をそれぞれに配備していく。そうすれば基本的な建物の建ち上げを俺が『創造』するから、細かい内装や設備についてはドワーフ達に任せられる。野盗が邪魔しに来ないよう警備のメイド隊を配置しておけば万全だろう」


「確かに。それだったら短い工期で警備府を仕上げることが出来るね」


シュティーアもなるほどといった口調で八雲の案に賛成した。


「警備の龍の牙ドラゴン・ファングは序列外のメイド達でも充分に務まるでしょうから、三人態勢で各地に配置をしてもかまいませんか?ノワール様」


序列01位のアリエスがノワールに承諾を求めると、


「―――ああ、かまわんぞ。それでどこから先に行くつもりだ?」


アリエスの意見を承諾したノワールが、八雲にどの道から始めるのか問い掛けると、


「リオンからだ。リオンからの道が一番質の高い物や大量の物資が行き来する回数が多い。当然、野盗の動きもそのルートが一番活発だろうしな」


そう言いながら八雲は以前カタリーナの友人のブランドが輸送中に野盗が現れ、商品を失う被害に遭った話を思い出していた。


「そう言えばレオ、リブラ。リオンに行って来てミネアの様子はどうだった?」


「はい、その、そうですね……」


「あは、あはは……」


八雲の質問にレオとリブラは何故か苦笑いで要領を得ない。


「どうした?なにか向こうであったのか?まさかもうピッツァが飽きられていたとか?」


そんな八雲の不安に対して、レオとリブラは慌てて否定する素振りを見せた。


「いえいえ!!飽きられるどころか……」


「人気になり過ぎてしまって、忙し過ぎてソフィーさんが……」


「―――ソフィーがどうした?まさか倒れたのか!?」


「いえ、倒れるどころか様子を伺いに行きました私達の姿を見つけるなり、『今すぐ手伝え!!!』と鬼の形相で迫ってきまして……」


「お客は相変わらず外に長蛇の列を作っていましたけどカタリーナさんが従業員をかなり補充したようで、あと警備隊から列の整理に駆り出されている隊員さんが何人もいました」


どうやらキレたソフィーに掴まったレオとリブラが手伝いをする破目になり、おそらく警備隊についてはジョヴァンニが手を回したのだろうと八雲は推察した。


「それは……大変だったな。お疲れ様」


「本当に大変でした……でも翌日の朝、出発前に見に行ったときには少しずつ落ち着いてきている様子でしたので、問題はないかと」


レオがそう確認したのなら、そのうち収まるだろうと八雲も深くは考えないようにした。


「それとカタリーナさんから八雲様にご伝言で、早く会いたい……だそうです」


リブラからカタリーナの伝言を聞いて、八雲は来月に学院祭に行く約束をしていたことを思い出した。


「来月の学院祭で会えるだろう。ノワールも楽しみにしていたしな」


「―――うむ!その時は皆で学院とやらに遊びに出向こうではないか!」


ニコニコしながら言い放ったノワールの言葉に、その場にいる皆が笑顔になる。


「大体のことはさっきの話しで進めるとして、別件は暗殺ギルドに依頼をした『天孤』についての調査だが―――葵」


「―――はい、ぬし様。天狐がどこに潜んでいるのか、現在はクレーブスと協力しながら妾の『式神』を用いて捜索をしておりまする」


「御前の『式神』は非常に興味深い能力で、私も指導して頂いて使えるようになりました。現在は二手に分かれてオーヴェストの各国に遣わせて捜索中です」


葵とクレーブスの報告を聞いて八雲は―――


「葵の式神ってもしかして……管狐くだぎつね?」


「おお!流石は主様!見せたことのない妾の式神までご存知とは♪」


「いや知っていた訳じゃないぞ?ただ、何となくそう思っただけだ。クレーブスの式神も管狐なのか?」


クレーブスに向かって質問を投げかけると、


「いえ、私の式神は―――『からす』です」


漆黒の髪に褐色の肌をしたクレーブスに何故か似合うと思ってしまう八雲。


「何となくクレーブスに似合ってるな。烏は鳥の中でも一際頭が良いしな」


「ありがとうございます。今、御前の管狐が地上から、私の烏が空からその『天孤』を捜索している最中です」


「ですが……残念ながら、それでも発見するのは難しいと思いまする」


「そうだな……千年生きた狐だ。追手を巻くくらい造作もないだろうな。だが引き続き捜索は続けてくれ」


「畏まりました」


これで一通りの確認事項が終わったと思っていたところに、アリエスが声を上げる。


「―――八雲様。エアスト公爵様よりご伝達を仰せつかっております。一週間後フォック聖法国より聖法王様がシュヴァルツ皇国にお越しになるとのこと。そして御入国されてアークイラ城に到着後、八雲様の戴冠式を行うとのことです」


突然の連絡に八雲は一瞬呆けてしまって、


「……は?戴冠式?俺の?」


と、訳が分からないといった様子になり、そこでノワールが説明する。


「このオーヴェストの各国ではリオンを除いて王族、皇族が王や皇帝を受け継ぐ際には聖法王を招き、その手によって戴冠式が行われるのが決まりなのだ」


「ああ、なるほど。そうなのか」


「それと今回は八雲様とエーグルのフレデリカ皇女殿下とエレファンのエミリオ陛下の戴冠式も同時に行うとのことです」


「ええ!?―――三人同時に?そんなことあるのか?」


「いや、歴史上始まって以来のことだな。流石は我の御子だ!」


「いやいや、ホントそういうのはお腹痛くなるから……」


今から戴冠式に向けて八雲は式典などの作法などを覚えるのかと考えると、腹部に緊張の痛みを感じるのだった……






―――そうしてフォック聖法国では、


ジェローム聖法王が聖女ユリエルに戴冠式の話をしてから一週間が経ち、遂にティーグルに向けて出発する日となっていた。


「聖法王猊下!―――出発!!」


白馬に乗った教会騎士パラディンの掛け声によって、ジェロームとユリエルの乗る豪華な装飾を施した馬車が動き出す。


その馬車の中では―――


「―――いよいよ出発するのですね」


「ああ。診療所が心配かい?ユリエル」


向かい合って座るジェロームの質問にユリエルは首を軽く横に振ると、


「気にならないと言えば嘘になってしまいますが、教会で『回復』の加護をお持ちの方々に後はお願い出来ましたので、今はこうして猊下と旅ができることに正直舞い上がっております」


そう言って柔らかい笑顔をジェロームに向けていた。


「そうか。そう言えばこうして国外に出るのは、巡礼の旅に一緒に行って以来だったかな?」


「―――はい。そのため楽しみにしていたので、到着してからのお役目を忘れそうですわ」


「なぁに、戴冠式はそこまで気にしなくてよい。それよりもお前には黒神龍様の御子様のことを、よぉく見ておいて欲しい」


少し引き締めた表情でジェロームがそうユリエルに話すと、


「―――承知しておりますわ。おじい様」


ユリエルが『聖法王猊下』ではなく自身の義理の祖父としての『おじい様』と言って答えてくれたことに、ジェロームは再び笑みを浮かべるのだった―――



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