―――フレデリカ皇女が去ったあとフレデリックはポカーンと呆けていたものの、すぐに再起動して八雲達に向かって盛大に謝罪の嵐となるのだったが八雲は気にしていないと返す。
「―――それで、先ほどの言葉は一体どういう意味で?」
ある事件が切掛けでおかしくなり、じゃじゃ馬になったフレデリカがすぐに引いたことを不思議に思ったフレデリックは言葉の意味を八雲に問う。
「それは皇女殿下に訊いた方がいいと思いますよ?そうすれば皇女殿下の考えも分かるでしょうから」
「フレデリカの考え?ふむ……」
フレデリックは何か想うところがあるのか、それ以上は八雲に問わなかった―――
―――それからは国同士のことをエドワードとフレデリックが話し合い、そこから話が流れ流れて何故か八雲の通り名についての話に至った。
「―――え?通り名って、渾名みたいなものってこと?……それっている?」
八雲はなんだか痛い渾名とかが飛び出しそうで、かなり嫌そうな表情を見せる。
「通り名はあった方が余もいいと思う。余も皇帝位にある故、下々の者達に呼び方で誤解や勘違いを招いたりせぬように決めておいた方がよいだろう。式典などでも、それを用いれば分別も着けやすいであろうしな」
フレデリックの提案にエドワードとクリストフ、アルフォンスも賛成する。
「でも通り名とか言われてもなぁ……誰かそんな渾名持ってる偉人とかいるの?」
「身近だとラースは『武神ラース』と呼ばれているねぇ」
クリストフの発言に八雲は、
「おお……」
と軽く唸ってしまった。
「他だと、かの紅神龍の御子、北部ノルドのヴァーミリオン皇国皇帝は『剣聖』という通り名だ」
「ああ、まぁ、そうですよね……」
その通り名を聞くと、八雲はあの
「そうだな……だったら『
そこでアルフォンスが、実際に戦場で見ていた数万の兵を葬った『
「うむ。『黒帝』か……黒神龍様の御子であり皇帝―――うむ!よいではないか!のう黒帝殿!」
エドワードもあの戦場にいたことで実際に目にしていたため、八雲の『黒帝』に賛同した。
「ではこれから『黒帝』九頭竜八雲様として、このシュヴァルツ皇国の皇帝のことを広めて参ろう」
フレデリックも賛同して八雲の通り名を『黒帝』に決定した。
「なんだか厨二的な疼きを感じるぞ……自分からは言いたくないかも」
八雲だけがそんな痛い渾名やめて欲しいと思ったが、皆が納得してもう止まりそうにないのでひとり諦めた。
「黒帝か。まさに我を象徴する御子の通り名よな!実に似合っているぞ!八雲よ!」
「単純に全身黒ずくめの黒髪だからじゃないよね?まあ、もうそれでいいよ、分かりやすいしさ」
ノワールも『黒帝』の通り名が気に入ったようなので八雲も反対はしなかった。
いやむしろ少し心の中の厨二病な部分が疼いたのは誰にも言えない秘密だ。
―――そしてそこから真面目な話に戻り、八雲が考えていたシュヴァルツ皇国で自分が行いたいことについて皆に語っていく。
―――まず八雲が持ち出した施策は『道の整備』だった。
―――八雲自身も何度も見ているが、この世界では盗賊、山賊といった類いは今でも多く出没している。
―――また魔物といった危険も多く、街に繋がる道の整備と安全の確保は物品の流通に対して絶対に必要だからだ。
「―――私も娘のシャルロットが野盗共に襲われていたのを黒帝陛下に救ってもらったのが切掛けでお会いしました。今でもあの時のことを思い出すと震えがくるほどに恐ろしかったですから……」
クリストフは八雲との出会いを思い返して、あの時もしも八雲がいなかったらと思うと恐怖を隠し切れないと語り、またフレデリックも―――
「確かに道は街の近くならばある程度整備されておるが、少し離れれば山道や畦道、草むらと変わらぬ道もあるからな。余も収穫した農作物を狙う野盗共の対処には収穫期になると毎年いつも悩みの種となっておる……」
―――と言ってエーグル帝国の重臣達も暗い顔を隠せないでいる。
「道をしっかりと整備して重要な国家の生命線になる作物には特別な運搬方法なども考えている。それでギルドにも協力を求めて護衛のシステムも構築するというのが俺の提案だよ。流通が安定すれば国民の生活の安定にも繋がる」
八雲の言葉に同席した為政者達は頷いて返した。
その話しをもって一旦全員での話し合いを終了し、夕食までは休憩となった―――
「―――お疲れ様でした八雲様」
一旦休憩で
「アリエスもジュディとジェナの指導、お疲れさん」
そう言って頬に手を当てると、当然のようにその瞳を伏せて唇を差し出すように顔を寄せてくるので、八雲はそっと自分の唇を重ねた……
「んっ……ちゅ……ちゅ……あ……/////」
徐々に激しくなる舌の動きに、お互い我慢が効かなくなっていく感覚に呑まれていった。
「んん…ん、もっと……/////」
アリエスの甘い香りに八雲の脳内もピンクモードに切り替わり、八雲の首に両手を巻き付けるアリエスの形の良い尻を両手で鷲掴みにして、ゆっくりと揉んでいく。
「あん…あ、八雲様の手、気持ち、い…んっ♡/////」
スカートの上から軟らかい尻に指を沈めながら揉み上げ、掌に『神の手』を発動させている八雲のマッサージに、アリエスの瞳にはまるで♡マークが浮かんだような恍惚とした表情を見せていた。
何でもこなす序列01位のメイドは、更に夜の技も身に着けて益々完璧になり、エロくなっていく姿に八雲は心の中で更なる興奮を覚えていた―――
―――そんなアリエスとの甘い時間を経てから休憩して身なりを整え、迎えがきた城の夕食に向かうとそれは夜会形式で立食の歓迎会をフレデリックが催してくれた。
あまり大勢をいきなり呼んでも疲れるだけだろうとフレデリックとその皇族という身内だけを呼んで、挨拶をする程度の簡単な催しとしてくれたのはフレデリックの気づかいだった。
しかし皇族の身内だけと言っても五十名近くは呼ばれていて、子供から年寄りまで様々な人間が呼ばれている。
一般人丸出しの『黒帝』九頭竜八雲には縁遠い場所であることは本人が一番理解していた……
そこから漸く挨拶も落ち着いて、一息入れていた八雲のところにひとりの婦人が近づいてくる。
周囲のエーグル皇族の人々は八雲に近づく婦人の顔を見て驚愕の表情をしていたが、気にせずに近づくその者に声を掛けられた。
「―――お疲れですか?黒帝様」
「ああ、いや、それほどでも……って―――驚いたな……」
そこに現れたのは―――
「うふふっ♪ そこまで驚かれますと、わたくしも着替えた甲斐がありますわ♪」
―――真っ直ぐなサラサラとして少し青みがかった銀髪を靡かせた赤い瞳の美女。
白を基調とした豪華なドレスに金銀の装飾と宝石を身に纏ってカーテシーで礼儀正しく、澄ました顔を上げてニッコリと見惚れるような美しさで微笑んでくる―――
「今回は俺の負けかな―――」
―――エーグル帝国第一皇女フレデリカだった。
「改めましてエーグル帝国第一皇女フレデリカ=シン・エーグルでございます―――黒帝陛下」
「別に俺の前で無理に格式ばった言葉を話さなくてもいいんだぞ?」
八雲が気をつかってそう言ってみたがフレデリカは一瞬驚いた顔をして、
「ご配慮感謝いたしますわ。ですが、これもまたわたくし、いえ本来のわたくしの姿ですわ。あの時の姿が仮の姿なのですから」
「それを確かめる術は俺にはないからな。少なくとも周囲の方々は君のその姿に顎が外れそうになってるぞ?」
事実、フレデリック始めエーグル皇族は全員がまるで鳩が豆鉄砲を喰った顔をしていたのだ。
「他の者達のことは置いておいて……黒帝陛下。少しバルコニーに出て、ふたりきりでお話致しませんか?」
「それは光栄ですね皇女殿下」
どうやらエーグルの夜会はまだまだ続きそうだと、八雲は思いながらバルコニーへと向かうのだった―――
―――夜会会場になった広間の窓にあるバルコニーへとフレデリカと共に出た八雲は夜風が頬を吹き抜けて、その少し冷える気温にコートを脱いで肩が丸出しのドレスを着たフレデリカの肩に掛けた……
そのときに見えたフレデリカの胸の谷間はグランドキャニオンだった―――
「ありがとうございます。お優しいですわね、黒帝陛下は」
笑顔でそう言ったフレデリカに笑顔を返しながら八雲は本題に入ろうとする。
「それで、何が望みなんだ?」
「―――まあ、怖い。先ほどの優しさはどこに行きましたの?」
ワザとらしく身を竦めるフレデリカに、
「他の人に聞かれたくない話しがあるから、ふたりきりになりたかったんだろ?」
「……そうですわね。では率直に申し上げます。どうかわたくしをお傍に置いていただけませんか?」
「妻にしろ、てことか?」
フレデリカの予想もしていなかった言葉に八雲は驚く。
「妻になさらずとも、貴方様の傍に置いて頂けるだけでよいのです。もし、この身をお望みとあれば、お好きにして頂いてもかまいません」
いきなりそこまでの覚悟を口にされても八雲にとっては現実味のない話でしかない。
「何故だ?理由を聞いても?」
「それは……申し上げられません」
「―――なら、この話は終わりだ。俺はそこまで節操無しじゃない。抱きたい女は自分で決める」
「わたくしでは不満だと?」
「あんたにじゃない、あんたの考え方が不満だと言っている。話は終わりだ」
そう言い放って会場に戻ろうとする八雲の腕にフレデリカは縋りついて、
「―――父は命を狙われております!」
「ッ?!―――フレデリック皇帝が?」
必死な表情でフレデリカは黙って頷く。
「……ハァ……話を聞こう。出来たばかりの共和国でそれは大きすぎる問題だからな」
そう言って八雲はフレデリカを所謂お姫様抱っこで抱き上げると、
「―――シッカリ掴まってろよっと!」
「え?キャアア―――ッ!!」
そのままバルコニーから《空中浮揚《レビテーション》》で飛び出した八雲に、落ちると思って悲鳴を上げたフレデリカは思わず抱き着いていた―――
―――場所を空中に停泊している
ソファーとテーブルが置かれて宮殿の部屋並みに色調や雰囲気に拘った部屋になっていて、フレデリカは珍しそうにキョロキョロしている。
ただでさえ空飛ぶ船なんてあり得ない物が、城に突き刺さる様にして空中に停泊しているのだから驚かない訳はないのだが……
ジュディとジェナが用意した飲み物と軽食を取りながらフレデリカに話を促す。
「―――それで王族の暗殺なんて珍しいことなのかどうか俺は知らないけど。でも共和国を作ることに賛同すると言ってくれたフレデリック皇帝が暗殺されるなんて話を聞いたら放っておくわけにもいかない。まずは始めから話してくれ」
「ありがとうございます。このエーグル帝国は長子が皇帝を継ぐという仕来りがございます。ですので、第一継承権を持つのはわたくしになります」
八雲は黙ってフレデリカの話を聴いている。
「その上で、事の発端は父の側室にあたるライネス=フラット公爵夫人が男子を産んだことに始まります。異母弟にあたるテスラーが生まれたのはわたくしが十一歳のときです」
フレデリカはゆっくりと皇族の内情を語り始めた―――
「今は五歳になったところです。わたくしの母はわたくしが十三歳のときに病でなくなりました。そして母が亡くなったことで、ライネス公爵夫人はテスラーを連れて王城に移り住み、父の後妻として妃となり義理の母となりました。今はこの城で我が物顔をして生活していますが当初は皇位第一継承権のわたくしの命を狙ってきたのです」
「話だけ聞いてると今までよく生きてたな……誰か護ってくれるヤツでもいたのか?」
「―――いいえ。偶々わたくしに盛られた毒が命を奪うところまではいかず、その時にわたくしが思わず、毒だと言ったことで父上が警備を厳重にしてくださったことも幸いしてわたくしは生き延びましたが、それから後も生き残れるとは限りませんでした。そこでわたくしは一計を案じたのです……それが―――」
「―――あの頭のおかしい風を装った傾奇者姿というわけか」
「はい。あそこまで奇抜な格好をして、おかしな言動に行動を取っていれば、皆はわたくしが盛られた毒で頭がおかしくなったのだと思い込むだろうと。わたくしの予想通り皆は憐れみを浮かべた瞳をしつつ、わたくしと関わらないように離れていき、義母上もわたくしの奇行を見ていつかは父から廃嫡され、そして弟がいずれ皇帝になる……そう思ってか、わたくしには手を出さなくなりました」
「そこから、どうしてフレデリック皇帝暗殺に繋がるんだ?放っておいても、その弟が皇帝になる流れになったんだろ?」
八雲は思ったことをそのまま問い掛ける。
「確かにわたくしへ向けられていた殺意は消え、一時は上辺だけの平穏が訪れていたのですが義母上はそれでも我慢出来なくなったのです。わたくしは放っておき、父上を先に亡き者にして弟を皇帝位に就けてこの国を我が物にする欲に囚われてしまったのです。そうなればわたくしはいつでも消せますから」
「欲深いことだな……自分の身に余る欲は己を滅ぼすことになるのに」
「言われる通りです……そのことを知ったのは義母上が暗殺ギルドの幹部と密談しているところの話を、わたくしが偶々聞いてしまった時でした」
そこで八雲は、んん?と考える。
「ちょっと待て。その暗殺ギルドって『災禍』の戦争時にエドワード王とアルフォンス王子を暗殺に来たあいつ等のことか?」
「ええ。わたくしも『災禍』の戦闘詳報を盗み見て我が目を疑いましたが、黒帝陛下が返り討ちにされた暗殺集団はエーグルの暗殺ギルドから派遣された者達で間違いないでしょう」
その話を聴いて、さらに八雲は混乱し始める。
「ちょっと待って。どうしてその義理の母親ってヤツがエドワード王やアルフォンス王子の暗殺を依頼するんだ?」
「いえ、エドワード陛下とアルフォンス殿下の暗殺を依頼したのは義母上ではありませんよ?」
「―――えっ?」
「―――えっ?」
そこで一瞬シーンとした空間が続いて、
「……つまり、あの時の暗殺を依頼したヤツは別にいると?」
「ええ、そういうことになりますわね……」
そこで八雲は頭を抱える。
今聞いたフレデリック皇帝の暗殺と並行して、エドワードとアルフォンスも狙われているのだ。
(平和を願って結ばれた『共和国』のうち二カ国の国のトップが暗殺のターゲットって……)
シュヴァルツ皇国は前途多難にも程があると八雲は頭が痛くなる。
そんな八雲の様子を見てフレデリカも何か悪いことをしたような申し訳ない気持ちになり、
「なんだか申し訳ございません……余計な心労を陛下に負わせてしまうことになってしまって」
「いや、何も知らずに手遅れになるよりは、先に知れている方がよっぽどいい……俺の両親は間に合わなかったから」
「―――えっ?」
「いや、なんでもない。それで今夜はどうして上手くいっていた仮の姿を捨てて正気の姿に戻って俺の前に現れたんだ?」
「それは本当に黒帝陛下の傍に置いて頂くためですわ。今回の『共和国』への参加は父上の唯一の英断だったと思っております。これでわたくしが陛下のお傍にいき、陛下の庇護下に入ったとなれば義母上も迂闊なことをして父上を狙うことを止めるでしょうし、もしも事を起こせば『共和国』の他の三国に黒帝陛下までも含めて敵に回すことになります。そうなればテスラーの命も危険になります」
「唯一って……親父さん聞いたら泣くぞ」
「事実ですもの♪ それで陛下のお返事をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「だったら言うが、フレデリカが女皇帝になれ。そして義理の母親を消せ」
「それは……わたくしは女の身。皇帝などそれこそ身に余る地位ですわ。それに義母上は始めからそんな人ではなかったのです……」
「本当にそうか?実のところ父を失うのも、その義理の親子の命を奪うことも怖いんじゃないのか?」
そう言われてフレデリカの表情が曇り、図星を突かれたことを如実に表していた。
「……いけませんか?家族を失うことを恐れては?弟が生まれたとき、実は父に連れられて会いにいったことがあるのです。生まれたばかりの弟は本当に可愛らしくて、そのとき初めて姉になったのだという自覚が芽生えました」
「そうか……だったら、俺に全て任せるか?俺ならすべてを纏めて斬って捨ててやる。それで皇女はもう悩むことも苦しむこともない。斬ったのは俺ってことで生きていける。そして女皇帝にもなれるだろう。どうする?」
「……」
フレデリカは即答出来ない。
すべてを八雲に任せて制裁をしてもらえば自分の手を汚すことはない、家族を葬るという罪深い行いを自ら手を下すことをしなくてもいいというだけで彼女にとってこれほど甘美な誘いはない。
「―――どうして?」
「ん?なんだ?」
「どうして、そこまで?」
「自分から相談に来ておいてそれを言うのか?まあ強いて言うならフレデリック皇帝に、この国についての話を聴いたからかな」
「この国について?父上から?」
「ティグリス城に到着する前に空から見た麦畑の話をしたんだ。この国の農法や素晴らしい麦畑の様子を見て感動したことを話したら、フレデリック皇帝が本当に嬉しそうな笑顔を見せて、この国の農業生産について誇りを持っていることを話してくれたんだ。あんな良い笑顔を見せられたら、あの皇帝さんを簡単に死なせたくないだろ?」
そう言った八雲の笑顔もまたフレデリカにとってはドキリと胸を高鳴らせるような笑顔だった―――
「……わたくし決めました。自分の家族のことは自分で決めると。他の者に頼って家族を切り捨ててもらえば、きっと後悔すると思いますから」
先ほどまでとは明らかに変わった力強いその赤い瞳を見て八雲はゆっくりと頷いた―――
―――フレデリカを夜会の会場にエスコートし、ふたりで広間に戻るとフレデリック皇帝が近づいてくる。
「おお、どこに行っていたのだ?フレデリカ、黒帝殿とふたりで……」
その質問には八雲が答える。
「皇女殿下があの
現代風でいうなら初デートで門限に遅れて彼女の家の前で父親に遭遇したような気持ちだな、と八雲は何気にどうでもいいことを思い浮かべていた。
「いやいや、そうであったか。しかし、フレデリカ。そちは……」
「まあ、そのことについては今夜、親子水入らず話してみたらどうですか?」
さきほどのフレデリカの話も含めて親子で話せと八雲はフレデリカの背中を押した。
「あう、そ、そうか。黒帝殿がそう言われるのなら……」
「わたくしも、父上と久しぶりにお話したいですわ」
ここからは親子の時間だろうと八雲はフレデリカの返してきたコートに袖を通して、静かにその場を去った―――
―――ほどなくして夜会は滞りなく終わり、
八雲達は
それから八雲が船に造った自分の部屋に戻ると自室のベッドの上で待っていたのは―――
「―――遅いぞ!八雲!我を待たせるとは!」
「あうう……八雲様/////」
―――昼間約束したノワールと顔を真っ赤にしたシュティーアが待っていた。
ノワールは褐色の肌に栄える純白のブラにガーターベルトと白い網タイツ、そして純白の紐パンTバック姿。
シュティーアは白い肌に髪の色と同じ真っ赤なブラとガーターベルトに赤い網タイツ、そしてノワールと同じく紐パンTバックを履いて、涙目になった赤い瞳で八雲を見つめていた。
「シュティーアはどうして?」
「あう、そのアタイ……その、好き……だから/////」
もう一杯いっぱいといった雰囲気のシュティーアに抱き着いたノワールが、
「どうだ!八雲!この下着をつけたシュティーアは!」
「―――マジ最高」
ニヤつくノワールの問い掛けに八雲は0.05秒で即答する。
「あうううぅ/////」
恥ずかしさで気を失いそうなシュティーアだった。
それでも八雲への想いを告げられずにいたことに、あるとき黒龍城の工房でドワーフ達から―――
「―――姐さん!このままでいいんですかい!!」
「ジェーヴァの姐さんも御手付きになったって話ですぜ!これ以上追い抜かれてもかまわないんですかい!!」
いじけていたシュティーアに向かってドワーフ達から発破を掛けられているところを、偶々黒龍城内を散策していたノワールにその話を聴かれて「ここは我に任せろ!」とシュティーアが思っている以上に話が大事になっていったのだ。
―――今回の
「いや、やたら
「細かいことは気にするな!今日は我とシュティーアで、たっぷりとご奉仕してやるからな♡」
「―――よ、よろしくお願いシャス!!/////」
シュティーアのテンションがおかしくなっていたけれど、八雲は服を脱ぎ去りながら、
「そこまでお膳立てしたんだ……ふたりとも今夜は寝られると思うなよ。朝までつき合ってもらうからな」
と、ふたりのいるベッドにゆっくりと登っていく八雲だった。
ノワールと顔の真っ赤なシュティーアはというと、ふたり同時に、
「―――はい♡/////」
と一言、期待を込めながら熱い吐息の返事していた―――