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第42話 獣王国への出発準備

―――深夜遅くにベッドで仰向けになって眠る八雲から横に伸ばされた両腕を枕にして、レオとリブラがスヤスヤと笑みを浮かべて眠っている。


昨晩はレオとリブラの純潔を捧げられた八雲。


そしてふたりの下腹部に『龍紋』が刻まれると、そこからは『絶倫』スキルを発動した八雲に寵愛を受け続けて意識を失い幸せそうな顔で眠るふたり……


日付も変わり、今日はエレファン獣王国へ向かう準備を整える日だ―――






―――レオ、リブラのふたりと結ばれた翌日の朝


差し込む陽射しにウトウトとしながら目を覚ますと、


「―――あ、おはようございます八雲様/////」


レオとリブラが既に起きていて八雲に綺麗で大きな瞳を向けて微笑んでいる。


「おはよう、ふたりとも。気持ちよく目が覚めた。ありがとな。」


ふたりも昨晩の行為で『完堕ち』していることが八雲には分かっていたので、これからは関係を結んだ彼女達のためにも遠慮はしないと心に決めて今日の準備に取り掛かることにした―――






―――着替えが終わり、朝食をノワールとジュディ・ジェナ姉妹と取り終わってから今日の予定とこれからの予定について話す。


「まずはアードラーに行って必要な物があったら買い揃える。後ついでに商人ギルドに行って古代魚の売却と冒険者ギルドに行ってリッチの討伐報酬を受け取る予定だ」


「遠回りになったが商人ギルドはサッサと終わらせよう。冒険者ギルドはエディスが心配していることだろう。お馬鹿な娘だが悪い子ではないからな。母親はアレだが……」


(一体エディスの母親と何があったんだ……)


と思わなくもない八雲だがそれでなくとも問題が色々あるのに、そんな話にまで首を突っ込んでいられないと切り捨てることにした。


「では外出の準備をするとしようか。ジュディとジェナは我と共に来い。お前達の外出用の服を用意してある」


遠慮がちなジュディは断ろうとしたが新しい服が着られると大喜びするジェナと、ノワールの強引な誘いにあえなく降参して連れて行かれることになった。


「さてと……俺も準備するかな」


自分の準備を始める八雲―――






―――三十分ほどして、


『伝心』で黒龍城の正門で待つとノワールに連絡しておいた八雲は、いつもの黒いコートを着て外出の準備は万端整っていた。


そこに―――外出の準備が整ったノワール、ジュディ、ジェナを見て八雲は―――


「オオォ……」


―――と思わず唸ってしまった。


三人とも揃いの服装で上はノースリーブの黒いブラウスに首には白いネクタイを締め、下は黒の生地に赤いチェックラインの入った短いプリーツスカートを履いて足には黒のニーソックス、そして上着には女性用の黒い生地に黄金の刺繍が鏤められたコートを着ていた。


八雲とノワールのコートには背中に『龍紋』が金刺繍されているが、ジュディとジェナの背中には入っていなかった。


「どうしたんだ、それ?スゴイ似合っているし可愛いけど」


「ふふん♪ エレファンまで行くのだし、外出用の服を誂えたのだ!ジュディやジェナの分も合わせて!」


「こ、このような高価な服を頂いて本当に宜しかったのでしょうか?」


ジュディはかなり遠慮しているようだが、


「どう?お兄ちゃん!私とお姉ちゃん、カッコイイ?」


「―――ああ、よく似合ってる。可愛いよ」


そう褒めながら無意識に再びジェナの耳をモフモフしていると、


「可愛いも嬉しいけど、カッコイイかどうか!ていうか、また耳触って!えへへ♪/////」


ジェナの中では『可愛い』も大事だが、『カッコイイ』はその上をいく大切さらしい……狼の誇りなの?と思った八雲だったが、それからキャンピング馬車を用意してアードラーへと出発する―――






―――通い慣れてきたアードラーへの道、


そしてお馴染みになってきた城壁の関所に近づくと―――


「来たぞぉおおお!!!―――今日は大きい方の馬車だああ!!門を開けろぉおおお!!!」


―――段取りに慣れてきた門兵達も、巨大な黒い馬車を見るなり一斉に城門の開放のために動き出す。


「―――おはよう!」


窓から顔を出して通過すると同時に八雲は大きな声で門兵達に挨拶をする。


「―――おはようございます!御子様!!!」


すると門兵達も口々に八雲へと挨拶をして、たちまち巨大な馬車は通り過ぎていった。


「……御子様、俺達みたいな下端にも自分から挨拶して下さるなんて」


「そうだな、ああいう方だからこそ黒神龍様も御子に選ばれたんだろうなぁ」


普段通る貴族達など自分達のような門兵に声を掛けることなど天地が引っ繰り返っても有り得ないことだが、八雲は通る度に声を掛けてくれる。


それがいつの間にか門兵達が八雲を慕う切掛けとなっていた。


だが、八雲からすれば普段出会った人や世話になっている人に挨拶をするのは当然のことであり、ここで現代日本人の八雲と異世界の人間との感覚のズレがあるのだが八雲にとっては悪い方向に向いている話ではない。


城壁を越えた八雲達は横幅の大きなメインストリートの道端で馬車を下車し、八雲はキャンピング馬車を『収納』に仕舞い込んだ。


そこにあるのは―――『商人ギルド』だ。


建物は冒険者ギルドとよく似ている大きな建物だが、その裏手には大量の商品を取り扱っているためか巨大な倉庫がところ狭しと並び建っている。


そこで建物の中に入って受付に向かうと受付の女性が八雲達を見るなり立ち上がって、すぐに上司といった人物を呼びに向かうのが見えた。


八雲は冒険者ギルドのように此方にも何かしらの通達が届いているのだろうと推測して、受付に声を掛けずに待ってみることにする。


―――するとそこに、


「―――お待たせ致しました御子様。それとそちらのご婦人は、もしや……」


「我のことか?まあ、お前の推測通りだから、ここであまり事を荒立てるな」


ノワールは自身の正体を、この多くの人が行き交う商人ギルドの受付前で口にするなと暗に伝えて出てきた商人ギルドの男も瞬時にそれを理解する空気の読める人物だった。


「―――承知致しました。それでは奥の別室を用意しておりますので其方でお伺い致します」


丁寧な対応で別室に通してくれるというので八雲達はそれに従って奥の部屋に入ることにする。


部屋の中にある応接のソファーに腰を掛けた八雲とノワール、その後ろにジュディとジェナが立っていた。


「お初にお目に掛かります黒神龍様と御子様。わたくしは商人ギルドのギルド長を任されておりますヤン・ジュリアス・ミューエと申します」


見た目は三十歳くらいで、セミロングの金髪に蒼い瞳をした優男のヤンは丁寧に挨拶をする。


「九頭竜八雲です。よろしくお願いします。まずはこれを読んでください」


八雲はそう言って以前クリストフに書いてもらった商業ギルドへの書簡を手渡し、男は拝見しますと断ってから蝋で封印された公爵印を解き内容を読んでいく。


「まさか、古代魚ですか……黒神龍様と御子様相手でなければ信じていなかったでしょうな……しかも持ち歩いておられるとは」


「実際に確認されるでしょう?どこかに取り出せるスペースがあれば、お渡ししますよ?」


「分かりました。裏の倉庫前にある広場がいいでしょうね。ご案内致します」


そこから全員で商人ギルド会館の裏手に出て、建ち並ぶ倉庫群の前にある広場で八雲はすぐに『収納』から仕舞っていた古代魚を放り出すと、ドス―――ンッ!と地響きを伴って轟音が辺りに響き渡った。


「―――こ、これは……さすが御子様は桁が違いますね……それでは拝見します」


始めは驚いた顔をしていたヤンだったがすぐに商人の顔といった真剣な面持ちとなり、目の前に現れた古代魚の査定を呼んで来た部下と開始する。


暫くしてヤンがバインダーのような物に色々と記載した書類を持って戻って来ると、


「お待たせ致しまして申し訳ございませんでした。これほどの古代魚が丸ごと一匹というのはなかなか入荷できないものですから、時間が掛かってしまいました。早速査定金額ですが大金貨一枚で如何でしょうか?」


大金貨一枚=一千万円といったところかと金銭感覚を合わせる八雲―――


「―――それでかまいません」


即決した八雲に対して逆にヤンが驚きの表情を見せる。


「随分と即決ですね?失礼ですが……言い値で決めてしまって、よろしいのですか?」


これほどの大きさで高価な素材の古代魚を、値上げも何も言わない八雲にヤンは逆に驚いてしまったのだ。


「ギルド長を信用して、というより本音を言えばここで御子相手に詐欺紛いな金額を提示して信用を失うような馬鹿な真似はしないと思っただけですよ。これからの付き合いを考えれば、ここで気に入られないような金額提示はしないでしょう?」


八雲の言葉にヤンは苦笑いを見せる。


「ご慧眼、恐れ入ります。本音と言ってくださったので、わたくしも本音を言わせて頂ければ戦った際のものでしょうが傷が多いところが値打ちを落とす点なのですが、そこはこれからの投資という意味も込めて大金貨一枚とさせて頂きました。よろしければ、此方の売却書類にサインをお願い致します」


「ああ、攻撃魔法が突き刺さったから……もしまた捕まえる機会があったら今度は傷つけないようにしますよ」


あっさり傷つけずに捕まえると言ってサインする八雲にヤンはまた苦笑いをした。


そこからギルドカードに振り込むように入金を済ませ、ヤンに挨拶をして商人ギルドを出ようとしたとき―――


「あ、そうだ。このギルドカードは確か商人ギルドも重複して登録出来るんですよね?」


「ええ、できますが、御子様は商売を始めるつもりですか?」


ヤンは八雲が商売をする意志があるのか確かめる。


「まだ確定じゃないけど、この先に自分で素材を集めて商売するかもって考えてはいる」


「そうですか。では、わたくしが登録致しましょう。カードをお借りできますか?」


その場でギルド長用のカードを用いて八雲のブラックカードに登録を済ませるヤンが、処理の終わったカードを返すと、




【ギルド登録証】


【Guild】 冒険者・商人

【Name】 九頭竜 八雲

【Class】 御子




そこは新たな表記に変わっていた―――


―――そうして商人ギルドを出た八雲。


「―――お兄ちゃん!次はどこに行くの?」


腕に抱きついてくるジェナの将来を期待する可愛い胸の感触を腕に感じながら、


「次は冒険者ギルドだ。そのあと買い物に行く予定だよ」


笑顔で答えるのだった―――






―――商人ギルドと冒険者ギルドはその関係性から近場にあったので徒歩で移動する。


相変わらず立派な建物に到着した八雲達は入口を通って受付に向かうと―――


「ああぁ!!!―――八雲さん!!!よ、よがったああ!ぶ、無事だったんですねぇ……」


突然大声で立ち上がった受付嬢にして八雲のサポーターでもあるエディスが涙声で嗚咽を漏らし出した……


「おい、いきなり大声で泣き出したら俺が泣かせているみたいじゃねぇか……」


「だっでぇ!やぐもざんが泣かせているんでずよおお!討伐報告はギルドカードから届いたのに全然顔を出してくれないし、何の連絡もないから、心配しますよ!うわぁああ!!」


「分かった!分かった!悪かった―――あと早く精算して」


「―――まったく誠意がない?!」


「おいエヴリンの娘、この後も我らは忙しい。とっとと仕事をしろ」


「あ、はい……」


ノワールのイライラ顔を見た瞬間、青ざめたエディスはすぐに八雲の冒険者カードを受け取ると受付カードと呼ばれるコピー用紙A4サイズほどのカードに八雲のカードを重ねて今回のリッチ討伐の報酬が振り込まれた。


「―――次の依頼はどうされますか?」


大口の依頼を完遂してもらってエディスもニコニコ顔だったが、


「悪いけど、明日からエレファン獣王国に行くんだ。だから暫くは依頼受けられないかな」


「エレファンに?そうですか……あ、だったらエレファンへの輸送依頼とかはどうですか?」


「輸送依頼?」


「はい。ランクはシルバーカード依頼ですが、ちょうど希少鉱石の素材運搬依頼があるんですけど」


そこで八雲は、その依頼について考えた。


(エレファン獣王国の入国理由に丁度いい話だな)


用事がないのに入国させてくれとか適当な理由で入国しようとして怪しまれるより、何か明確な理由がある方がいいだろうと考えたのだ。


「よし、それ受けるぞ。はい手続きして」


そう言ってギルドカードを差し出すと、


「ありがとうございますぅ!……はい!依頼受領しました!明日出発前にこちらの商会に行って荷物を受け取って下さい。道中、くれぐれもお気をつけくださいね?」


「ありがとう。あ、そうだ。今からこのふたりの冒険者登録してくれないか?」


そう言って八雲はジュディとジェナを前に押し出すと、


「み、御子様!?わ、私達は冒険者になれるほど強くなんてないですよ!?」


「冒険者!ちょっとなってみたいかも♪」


大人しいジュディは腰が引けているが、元気なジェナは興味津々だ。


「御子様が連れてくるなんて……まさか?!またブラックカード!?」


「いやこのふたりは普通だ……たぶん。いや只の身分証明とお金の管理に便利だから」


「……あ、そうですか。では手続きさせて頂きますね」


そうしてジュディとジェナも冒険者ギルドに登録した。


カードの色は―――白色だったので、Level 1~19 ホワイトに該当する。


カードの色を見てホッとしつつも少し残念そうな表情をしたエディスを八雲はしっかり見ていて、その複雑な心境は分からなくはないと理解していた。


身分証と買い物の支払い用として作ったジュディとジェナのカードだが、それでもエディスは熱心に冒険者としての注意事項を丁寧に説明していて何だかんだ言っても冒険者を心配する優しさはエディスの美徳だと感じたが、あえてそこは口にしないのがエディスに対する八雲スタイル。


そうして冒険者ギルドを後にした八雲だがそこでノワールが、


「それじゃあ、このあとは買い物に行くぞ!―――続けジュディ!ジェナ!」


と急に張り切り出して、その勢いにジュディとジェナは、


「―――は、はい!ノワール様」


「はぁ~い♪ 買い物楽しみだね!お兄ちゃん♪」


とそれぞれ違った反応を示しながら先を進むノワールに突き従って商会の多い区画へと向かう八雲達だった―――



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