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幕間2 探偵の襲来?(上)

 大陸西南には三つの中規模の村があり、冬になるとその三つの村はよく交流をする。村は各自の土地柄から一つは綺麗な水、一つは畜産、一つは森の恵みという特徴があり、その三つの村にはそれぞれ名称がある。順にスーエン村、ヘネン村、テカソー村である。三つの村は冬になると互いに協力しながら、苦難だらけの冬を越そうと努力するのが通例なのだ。

 そんな話を、雪が降り始め藍色の影に包まれる街道の途中で馬車に乗せてくれた好青年が、面白そうに話してくれた。

 西のカシーアを出ようとしたときはまだ寒くなかったが、あれから二週間も経てば温度はそれなりに下がっていた。なのでシャルロットとカルは毛布を頭からかぶりながら、馬車の荷台に乗せてもらっている。

 「雪国慣れしてなかったんですね~」と馬車に乗せてくれた好青年が言った。


「……実はまだこのあたりは来たことがなくて、うぅう」

「し、シャルロット。もうちょっとしっかり調べておけば、こうはならなかったんじゃないの⁉ 流石に、寒すぎるよ!」


 あまりの寒さに身を揺らし、がじがじと奥歯を鳴らす少年は、眼前で同様に座っている彼女を理不尽にたしなめた。「うっ、うるさいわね!」と彼女は声を荒げ「私だってここまで寒いとは思わなかったわよ! もう少しお金があれば、寒くない道を通れたのに」


 白い息を吐きながら反論し、二人は犬のように唸りながら視線を交わした。お金をかければ迂回する必要がなくもっと早く村に到着していたのだが、防寒具や食料の買いだめ等で旅は既に節約中である。

 そんな二人の様子をみて、好青年……いいや、半そでの青年は微笑ましそうに、


「お二人は仲がいいんですね。ちなみにですが、冬に慣れていない子供たちは、『お互いに身を寄せ合って』過ごしたりしますよ」


 彼はうふふと上品に笑って、冗談を言った。


「!」

 そんな事を青年が云った瞬間――「カル、こっち来て」とシャルロットは両手を大きく広げ、毛布の中にカルを誘った。カルはそんなシャルロットに髪の毛を逆立たせて驚いた。が、すぐに冷静を装った。


「……いやだよ?」

「――どうして?」


 至って健全にカルはそう拒否するがしかし、シャルロットはその返答に食ってかかり。

 どうして。なんて言い放ち、カルはにわかに困り顔をみせた。


「はぁ、恥ずかしいじゃん! シャルロットだってそうじゃないの⁉」

「私は別にショタ好きではない」

「……何の話?」

「だから私はカルを胸に迎えることに何も感じないのである、かもん」

「誰もシャルロットの意見は聞いていない! 僕が恥ずかしいの! 怒るよ⁉」


 そんなやりとりをしていると、ふと肌寒い風が荷台を突き抜け、


「アッ、寒ウ」


 思わず裏声になりながらシャルロットは毛布を閉じ、カルもがくがく震えながら彼女の気狂いに軽蔑の視線を向けた。そんな愛らしい物をみた好青年は――、


「お二人は仲がいいんですね」


 そんなやり取りをみていっそう楽しそうに微笑んだ。

 依然、好青年は、半そでであった。


 *


 スーエン村に到着した二人は宿に出向きすぐ部屋を借りた。

 スーエン村は前述した『綺麗な水』の村であるが、冬に差し掛かったことで他の村から特産品が送られているのか、ロビーと一体化していた酒場にはキラキラした食事が並んでいた。その酒場には男が数十人と女性もセットになりこれまた豪快に飲んでおり、酒場は盛り上がりを見せている。

 長旅の疲れもあったせいか部屋へ荷物一式を放り投げた二人は、すぐに酒場に出向き、大きなステーキを二人で豪快に齧った。カルは目を輝かせ、シャルロットは口いっぱいに肉を頬張った。


「美味しいねシャルロット!」

「ふん、そうね~疲れが癒されるわ~」

「なんだい姉ちゃん、よそもんかい?」


 二人であっという間にステーキを完食した時、ふと横の机からそう声がかかった。

 シャルロットが振り向くと、そこには赤色の薄い服を着て両腕と胸の筋肉がとても発達している、はつらつとした男性だった。


「そうなんです! 旅自体は長いものなんですが、いつになっても雪国は中々慣れませんねぇ」


 シャルロットは男性に向かってそう正直に言うと、男性はガハハ! と大笑いして、


「今日は結構冷え込んだからなぁ! 聞くところによると、吹雪もあったみたいだし。まあこの宿で休んでいきな! 乾杯すっか?」

「あ、私お酒飲めないので……」

「おっとそうなのか。酒が飲めないなんて可哀想なことだ。水でいいさ水で、さ、乾杯だ!」

「いえーい!」


 カチンっとグラスがぶつかる音がして、酒場のボルテージが一気にあがり、店内に流れていた音楽の音量が一気に上がった。

 なんて楽し気な会話をしているとすぐ二人は満腹になり、そのまま食事を終えた。


 ぼとぼとお腹をさすりながら歩く。

 シャルロットとカルは自分の部屋に向かうため階段を上がり、窓から雪景色が見える廊下を進んだ。外をみると小さな雪粒がひらひら静寂に落ち始めており、それをぼうっと見ながらカルは呟いた。


「久しぶりにお肉食べたね」


 そんなカルの前を歩きながら、シャルロットは借りた部屋番号を探しながら口を開く。


「カシーアだとちょっと高かったから中々手を出せなかったけど、やっぱり村は違うね。あれぇ、部屋このあたりだと思っていたんだけど」


 街と村、ただの規模の話だが発展しているか、していないかで食べ物の値段が変わるのは割と常識である。シャルロットの旅の楽しみには必ず『食』があるのだ。


「あ、そうだシャルロット。お風呂どうする? 部屋にはついてないらしいよ」

「……そうねぇ、カル先に入る? どうやらこの宿、露天風呂があるらしいっ」


 言いながらシャルロットは窓の外に視線を向けるので、


「ほ、本当?」


 カルも同じように窓から景色を見る。すると言われた通り露天風呂らしいものが一階部分にある。しっかり温泉内が見えないように屋根で隠れるようになっていて、一つの小屋と味のある木の塀だけが、二階から確認できた。


「……じゃあ、お先に行こうかな。とりあえず着替えを取りにいかなきゃね」


 シャルロットの目算通り、カルは露天風呂に入ったことがないようだ。別に顔をみなくとも、カルの嬉しそうな声は分かりやすい。


 (うふふ、カル、露天風呂とか初めてだろうからな。もし混浴があったら脅かして、カルがびっくりしたところをネタに弄ることだってできたのに。ああ、残念)


 悪い顔をする彼女は、自分が思いのほか悪い顔をしていると気が付いていない。カルはその顔で大体を察した。


「――――」


 そんな時だった。


「う、うわああああああああああ!」


「……え?」


 宿内に迸ったのは、はっきりとした絶叫だった。

 思わずシャルロットは振り返り、カルと目を合わせる。彼の表情を読み取ったシャルロットは自分の聞き間違いでないことを改めて認識し、只事でない気配を感じ取る。胸が早鐘をうち始め、次第に焦燥感が露わになり始めた。


「……なに事かしら?」

「わ、わからない。なんだろう……」


 呟くように言うと、カルも戸惑いながら同意してくれた。すると、


「ぁ、た、助けてくれえええぇ!」


 ――刹那、宿中に響き渡った男の声。それは、恐怖の夜の始まりであった……。


 *


「どうしてこんなことに……」


 漏らすように椅子に座っているシャルロットが呟くと、眼前の少女は「まあまあそう言わず」と可愛らしい声で言った。


「それでそれで、あなたが旅人のシャルロットさんですね?」

「……そうよ。私がシャルロットだけど」


 「ふむふむ」と彼女は呟きながら、自身の手帳に手慣れた様子で万年筆を走らせた。その人物は、身長はカルとシャルロットの間くらいであり、膝下まである紺色のひらひらしたスカートに襟付きが厚い長袖の白シャツを下に揃え、その上に如何にもな山桃色のインパネスコートを着た少女である。


「ご職業は?」

「旅人」


「性別は?」

「……女性」


「趣味は?」

「人助け?」


「アリバイは?」

「カルと一緒に歩いていたから、あの子に聞いて。……それで、」


「被害者との面識は?」

「な、ないわよ。ちょっと、こっちにも質問させなさい!」


 たまらずそう申すと彼女はきょとんとしてから、すぐ黒髪を揺らし美しい碧眼でシャルロットを見つめた。


「どうされました?」


 きょとんとした顔で分からなそうに訊いてくる。これは本当にこちらの意図を組んでいないんだなと呆れるシャルロット。


「まず、あなたの名前はなんていうの?」


 初っ端から駆けだされ置いてかれているシャルロットはそう言うと、眼前の彼女は「なんだそんなことか」と言いたげな表情を浮かべてから、


「ボクはニーナ。探偵のニーナといいます」


 と、平然と自己紹介をした。


「た、探偵なのね……まず質問。酒場で何が起こったの?」


 そう――シャルロットは個室でニーナと名乗る少女と会話をしていた。

 遡ること数刻前……。叫び声が宿で響き、それを聞きつけた人が酒場に集まると――そこには血だらけで倒れている大柄な男性と、真っ青な顔で腰を抜かしている管理人の老人がいた。

 現場は一時騒然としたが、すぐさま現れたニーナという少女により現場の保存が行われ、目撃者、そして宿に泊まりに来ている人たちが大部屋に集められた。そして一人一人呼び出し、事情聴取を行っている。

 シャルロットとカルもニーナの言う通りに大部屋へ移動し、そうして部屋で待っていると、シャルロットの番がきて、今に至るといった感じだ。


「被害者の男性は鈍器のようなもので頭を割られて死亡していました。近場には争いの形跡があり。故にボクは他殺であると推理しています。弟にそのあたりの調査は任せていますので、じきまとまった書類がくるでしょう」

「な、なるほど……この村に騎士は?」

「ヘネン村に駐在所がありますが、外はいつの間にか吹雪になっていました。しばらくは助けを呼べないでしょう。しかし安心してください、シャルロットさん」


 途端にニーナがそう言うと、なぜか如何にもな虫眼鏡を天井に掲げ、自信満々かつぷっくりとしたほっぺをして、


「ニーナに解けない謎はありませんから!」

「…………」


 シャルロットは困った……。

 彼女の対応を、小さな少女向けにするのか、はたまた大人と話すような心構えで会話をするのか、迷った。少なくとも彼女の態度は――子供のそれだったからだ。


「う、うーん。ならいいのだけど」


 モヤモヤしながらもシャルロットは頷いた。するとニーナは花のような笑顔を披露して、


「じゃあ事情聴取は終わり! ご協力、ありがとうございマ~ス!」


 という感じで、何んとも軽く解放された。

 元の大部屋へ戻ると、普通の男性(宿泊客?)が二人と、血相が悪く黒い長コートを着込んだ長身の男性が一人、そして宿の管理人である老人(死体の第一発見者)が一人と、若い女性が二人、総勢五人が部屋の中で、揃って浮かない顔をしていた。


「あれ、カルがいない……?」

「あ、シャルロット」


 ふと背後から声がして振り返ると、毛先が跳ねているブロンド髪を揺らしている、無愛想な少年が立っていた。


「どこに行ってたの? カル」

「小さい男の子に言われて部屋に行っていたよ。事情聴取だった」

「事情聴取?」


 カルの言葉からシャルロットはふんわりと、ニーナの『弟』発言を思い浮かべた。


「なるほどね」

「それで、シャルロットはどうだった?」

「収穫はないわね」


 会話をしながら、二人は壁際に寄り、並んで背中を壁につける。


「シャルロットはどう思う? 誰が犯人とか、目星あったりしないの?」


 途端にカルがそう言うと、シャルロットはびっくりしたように肩を震わせて「あんまり大きい声で言わないの」と前置きしてから息を落とし。


「……ある訳ないわ。さっぱりわからない」


 と片手をひらひらさせながら言う。


「じゃあ、どうなるんだろうね。ニーナって人が本当に解決してくれるのかな」

「それも分からない、今のところ頼りなさそうに見えるし。子供のままごとって言われたら信じちゃうくらい」


 シャルロットの言葉にカルは無言で頷いた。

 そしてカルは囁くようにシャルロットに向かって。


「……チビは動けないの?」

「動けるわよ」


 カルの問いにシャルロットは即答した。


「もう駐在所に向かわせているけど、吹雪で視界不調の上に知らない場所を進んでいるから遅れてる。でも、時間の問題だと思う」

「そっか。チビが早く駐在所に辿り着ければいいけどね……」

「そうね」


 駐在所に辿り着いて騎士が来たところでどうなるか分からないが、少なくとも助けがこない状態に比べると幾分かマシに思えた。


「流石にじっとしてられないわね」


 言いながら壁を蹴って重心を体の中心に戻し、両手を腰にあてて部屋を見渡した。シャルロットにしてみれば、この待ち時間がとても嫌だったらしい。


「どうするの?」

「決まってる。私も事情聴取をするよ」


 *


 二人の男の特徴は快活な青年だった。話を聞いても? と近づくと気軽な感じで了承してくれ、彼らから名乗る。


「お、俺はラント。こっちはオルラってんだ」


 まずシャルロットは彼らのアリバイを聞いた。あの死体が見つかったとき、彼らがどこで何をしていたのかという、お決まりの奴である。

 ラントという青年は自分の部屋に居たと言う。そしてオルラは酒場のトイレに居たらしい。どちらもアリバイを証明できる人物はいないが、オルラという人物が酒場に比較的近い場所に居た事が気になった。


「音?」

「争ってる音とかなかったの?」


 シャルロットが訊くと、オルラは肯いて「さっきの女の子にも話したんですが」と語り出す。


「怒鳴り声なら聞こえましたね」

「怒鳴り声?」

「なんて言っていたかまでは分からないですが……言い争っている感じの怒鳴り声がトイレの中まで聞こえていましたね」

「……なるほど。トイレに入る前は酒場に誰が居たの?」

「……多分、酒場の営業が終わって後片付けが始まっていたと思います。その場に居たのは宿の管理人の方と、片付けをお手伝いしていた被害者でしたね」

「なるほど、二人に変なところとかありました?」

「特に。あの被害者の方、どうやら善人みたいで、管理人がいいよというのに片付けを手伝っていました。……だから、まさかあんなことになるとは思わなかったです。残念です」


 オルラは伏目になる。ラントとオルラは二人で一部屋を借りた友達同士らしく、その他の顔見知りはこの宿におらず、誰とも関りがないようだ。

 次は高身長で全体的に黒っぽい服装の、血相が悪く気だるげな男に話を聞いた。


「……ザザだ。俺はザザ・バティライトという」


 話によるとこの男性もシャルロットと同じ旅人らしく宿に泊まりに来た客だった。彼はその時間に温泉に居たらしく、それは他の客である二人の女性に聞けば証明ができるとまで教えてくれた。どうやらこの男は勘がいいみたいで、シャルロットがわざわざ訊くこともなく全てを話してくれた。


「へえ、あなたも旅の人なんですね」

「ああ。傭兵をしている。金さえ払えばなんでもするぜぇ」

「殺しでも?」

「もちろん」


 その回答にシャルロットは「ふん」と鼻を鳴らした。そして疑うような視線ではなく、あくまで興味本位で男を眺める……傭兵と言われると軽装すぎる気がしたし、武器を扱えるほど体が鍛えられている様にも見えなかった。魔術主体の戦闘スタイルだったりするのだろうか?


 次は女性二人に話を聞い。

 女性の二人は一見冷静そうに装っているが、声色が震えていた。


「な、ナシャと言います。こっちはマチルダ」

「よろしく。早速だけど二人はどこに居たの?」


 と訊くと、ナシャと名乗った女性が前に出た。


「銭湯でマチルダと一緒にお風呂に。証人もいます。あの怖い」

「ザザさんね。さっき話を聞いて来たわ」


 そういうと、何故かマチルダさんは真っ青になった。シャルロットはその様子を見ながら疑問そうな顔をすると、ナシャさんがシャルロットの肩を掴んで、こっちと身を寄せるように告げてきた。シャルロットは従ってナシャの口元へ行く。


「正直、私達はあの男の人がやったんじゃないかって思ってるんです」


 ナシャは真剣な顔をしてそう言った。


「どうして?」


 とシャルロットが訊くと、彼女らはとても興味深い話をしてくれた。

 ――実はこの三つの村の一つであるテカソー村近くの森で、人を喰らう亜人『人狼』がいるらしい。その生命体は吹雪の闇夜を纏って村にやってくると、人の姿となり村に馴染むまで息を潜めてから、毎年一人、肉付きのいい人間をがぶりと食べると言い伝えられているのだ。

 そんな人狼があの男なのではないか、とナシャは些か疑心暗鬼に教えてくれた。


「何か確証とかはあるの?」

「それは、ありません」


 ナシャははっきりと言った。だが彼女はふっと顔を上げ、真っ青になっている友人のマチルダを一瞬見てからまたシャルロットに向き合った。


「でも『人狼』は毎年この時期になると必ず現れるんです。去年も男性が一人、その前の歳は女性が襲われました。吹雪に紛れて人を襲う。まるで、この宿で今起こっている事件のように」


 *


 大部分の話を聞き終わり、シャルロットは最後の管理人である老人に話を聞きに行く前に、壁にもたれながら唸っていたカルの横に移動した。

 カルの顔を見ると、シャルロットは彼の表情が変であることに気が付いた。


「どうしたの?」


 そう訊くと、カルは「うーん」と唸ってから。


「今回の事件に関係ないかもしれないんだけど」

「うん」

「僕の事情聴取をした小さい男の子、なんか変な感じだったんだよね」

「変な感じ?」


 曖昧な言い草だったのでシャルロットが重ねて聞くと、振り向いて。


「な、なんか凄くね……僕の事を人としてみてないような感じだった。僕もよくわからないんだけど、近い例えをするなら……僕を、まるで美味しそうな物を見るような視線でみていたんだよね」

「そ、それって……じ、人ろ――」

「はーい!」


 途端、部屋の扉が勢いよく開けられ、そんな甲高い声が響いた。

 全員の視線がその扉へ向けられると、そこにはあの探偵ニーナが満面の笑みで立っており、その後ろには、ニーナより身長が小さく、特徴的な青髪と右目に眼帯を付けた少年が静かに立っていた。その少年をみて、カルはぼそっと口で「あの子」言いながら、目線でも訴えてくれる。


「では皆さん! 酒場に集まってください!」


 そんなシャルロットとカルの会話をまるで感知していないようにニーナは両手を上げ、次に虫眼鏡を自分の右目にかざし、部屋にいる全員に大きくなった碧眼を覗かせ、彼女は言う。


「犯人が、分かりましタ」



 その言葉と共に不思議とニーナの碧眼が、自分の心の内を舐めているような不快感が背筋を走った。


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