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7 規則性と就寝

 すると、今度は真咲ちゃんが口を開いた。

「自分は野々村さんに羽山さん、斎田さんのことは知ってます」

「うん。このメンバーには何らかの、規則性とでも言うべきものがあるのかもしれないね」

 考え込む様子で羽山さんがそう返し、僕はふと田村くんたちへ顔を向けた。

「でも、僕は田村くんたちのことを誰一人知りません」

「いや、どこかで会ったことがある気がするぜ」

 と、返したのは田村くんだ。怪訝に思っているのかいないのか、どっちつかずの表情である。

「君までそんなこと言うの?」

 驚く僕へ千葉くんが返す。

「やはり羽山さんの言うように、何かあるようですね」

 僕の夢の中なのに、ここにいるメンバーには何らかの規則性があるなんて、まったく信じられない。いや、夢なんだからきっとこじつけか何かに決まってる。

 僕は無言でスコーンを一口かじって考えた。

 そうだ、現実へ戻ったら羽山さんへ連絡して聞いてみよう。前島という名前の後輩がいるかどうか、って。きっといないと答えるに決まってる。だって夢なのだから、現実に存在するはずがないんだ。

 すると篠山くんたちもいないことになるわけだけど、それならそれでいい。だって夢だもの。

 僕が確実に知っている羽山さん、真咲ちゃん、斎田さんが夢の中に出てきた、というだけのことなのだ。だからその他の人のことなど知らなくて当然だ。

 目を覚ました時にちゃんと羽山さんへ連絡するのを忘れないよう、脳裏にしっかりと刻みこむ。

 スコーンを一度皿へ置き、ウバで気持ちを整えてから僕はみんなを見た。話題を変えようとして、できるだけ明るく言う。

「それよりもこのゲーム、早く終わらせたいですよね。ここで犯人に名乗り出てもらう、っていうのはなしでしょうか?」

 先ほどまでの奇妙な空気から、今度は暗くぎとぎとしたものへ変わった。やってしまったと気づいた時にはもう遅い。

 羽山さんが少し戸惑った顔をして言う。

「犯人なんだから手を挙げるわけがないよ」

「それに、まだ誰も殺されてないんです。ゲームが始まるのはこれからなのでは?」

 千葉くんの冷静な言葉が僕の胸を鈍く刺す。

「そう、ですよね……」

 ああ、こんなゲームはさっさと終わらせたい。探偵役は僕だと分かっているけれど、それでもいつ殺されるか分からないのは怖い。

「すみませんでした」

 なんとなくみんなに謝ってから、僕はまた無言でスコーンへかじりついた。

 僕を知っている人たちばかり集まっているのに、どうにも居心地が悪かった。


 お茶会がお開きになった時には、窓の外が真っ暗になっていた。どうやら夜が来たらしい。

「疲れたねぇ。今日は早く休もうかな」

 階段を上がっている途中、羽山さんがそう言った。

「そうですね、僕も早くベッドに入っちゃいたいです」

 体の疲労は特に感じていなかったが、夢の中で眠れば、次に目を覚ます時は現実だ。殺人が起こる前に現実へ戻ることができれば、こんなゲームとはおさらばできる。

「じゃあ、今日はもう解散ってことで」

 前島さんが言い、僕らはそれぞれにうなずいた。

 部屋の前にそれぞれ立って、ほぼ同時に扉を開ける。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 そんな言葉をかけ合って、それぞれ部屋へ入った。

 忘れずに振り返り、僕はきちんと鍵をかけておいた。

 見ると室内は電気がついたままになっていた。というより、どこに電気のスイッチがあるか分からない。

 室内を一通り見回してみたが、それらしきものはどこにもなかった。

 仕方ないのでベッドへ入ろうと思い、今度は着替えがないことに気がつく。

 目についたクローゼットを開けてみるが、空だった。引き出しも開けてみるが、もちろん何も入っていない。

 僕はがっかりしてため息をつき、しぶしぶと服のままでベッドへ入った。

 枕は清潔でふわふわだが、僕には少しやわらかすぎる。こんな枕でぐっすり眠れると思えない。

 一方、毛布はしっかりとしていて分厚く、ほどよい重みもある。肩までかぶって両目を閉じると、部屋の電気がぱっと消えたのが分かった。古城なのに自動消灯とは。

 まったく、どうにも妙な夢だ。しかし、次に目を開けたら現実へ戻っているはずだ。

 僕は安心して眠りについた。

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