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第92話 冒険者と海トカゲ団幹部の決闘

 ゾンビに囲まれて、逃げ道のない、ショーンに向かって、大型オオトカゲが走る。


 それに騎乗するガビアルを狙い、スバスとフリンカ達は、四輪バギーを爆走させる。



「うわ、二人ともっ!! はやく、助けてくれええ~~~~!?」


「仲間に助けを乞うとは、情けない奴めっ!」


「その仲間が居るから、彼は勝つんだわっ!」


「自爆ゥッ!?」


「その通りだっ! 喰らえ、俺たちのプレゼントだっ!」


 迫りくる、大型オオトカゲの大顎オオアゴを前にして、ショーンは必死で叫ぶ。


 そして、周りのゾンビによる攻撃を避けながら、剣を振るう彼に、ガビアルは紅いランスを向ける。



 ゾンビの血液で、血塗れた穂先が彼を貫くよりも先に、ボンバーが弾け飛び、爆弾が爆発した。


 フリンカが、短弓から爆裂アローを放ち、スバスは小樽型爆弾を投げたからだ。



「ギュオオオオ~~~~!?」


「ぐわっ! く、このくらいっ!」


 導火線に火が着いた、爆裂アローが弾けると、ボンバーも派手な爆発を起こす。


 さらに小樽型爆弾は、炸裂すると、勢いよく爆炎と木片を撒き散らした。



 これを喰らった、ガビアルと大型オオトカゲ達は、肉片や骨片を受けてしまう。


 通常ならば、頑丈な鱗や皮膚は、攻撃を通さないが、流石に今の攻撃は防ぎきれなかった。



「ぐぅっ! これくらい、何て事はない」


「グウウウウ~~~~? グアッ!!」


「強がりやがって…………」


 ガビアルは呻くも、大した傷ではないと考え、大型オオトカゲを直ぐに動かす。


 その間に、ショーンはバリケードにまで向かい、木箱が崩れた場所を目指す。



「ショーン、待てっ!? 逃がしはしないぞっ! 貴様をコイツの餌にしてやるっ! 待ちやがれっ!」


「待てるかっ! お前と俺では、ハンデが有りすぎるだろっ! だいたい、どうやって、そのトカゲに勝つんだよっ!」


「ショーン、援護するぞっ! 煙玉だっ!」


「火炎瓶も、あるわよっ! 私たちも、居るんだからねっ!」


 崩れた木箱から、バリケードに飛びのって、ショーンは、ガビアルから逃げていく。


 その後ろから、四輪バギーが走ってくると、スバスとフリンカ達が、投擲物を投げた。



「フリンカ、味方の方に逃げるぞ? ここは、ゾンビが多すぎるからなっ!」


「あいよっ! その前に、火炎瓶を投げて、追って来られないようにするよっ!」


「ぐわっ! 幸い直撃は避けられたか? 奴等は放置だっ! このバリケードを火炎で焼き付くす」


 スバスは、四輪バギーを猛スピードで、かっ飛ばしながら、ゾンビ達から離れていく。


 その際に、フリンカは、ゾンビ軍団&ガビアルから追撃を受けないように、何度も火炎瓶を投げた。



 近くで、瓶が割れる音が木霊するが、油と炎は路上に広がるだけであった。


 しかし、それはゾンビ達の進撃を、完璧に阻む事はできなかったが、何体かは火に包まれた。



「はあっ! 今度は、火炎放射かっ! あのゴジラモドキと、ワニ人間めっ! 俺を焼き殺す気かっ!」


 火を吹き始めた、大型オオトカゲを、バリケード上から見ていた、ショーンは直ぐに動き出す。



「こうなったら、逃げるっ! ただ、ひたすら逃げるっ! そして、ゾンビの群れに向かうぜっ!」


「ショーン、ゾンビなど? 私の前では、樹木のように薙ぎ倒されるだけだっ!」


 木箱に焼け広がる炎を避けて、ショーンは、トラックの荷台に飛び移り、ひたすら北側を目指す。


 それを、ガビアルは大型オオトカゲに追わせるが、道中の邪魔なゾンビ達は皆弾き飛ばされる。



「グルアッ! ギャギャッ!」


「ゲロッ!」


「ウオオオオッ!!」


「グルオオッ!!」


 キョンシー型ゾンビは、鋭い正拳突きを放ち、スピットゲローは強酸を吐き飛ばす。


 マッスラーは、強烈なパンチを繰り出し、ウォーリアーは、フランジメイスを振るう。



「ガオオオオッ!?」


 殴られたり、叩かれたりして、大型オオトカゲは暴れながら、敵を吹き飛ばしていく。



「どうしたっ! うお、そうかっ! 爆風で、殺られた傷がっ!? うっ! 俺にもかっ!!」


 強酸が、左肩にかかり、ガビアルは肉を溶かすほどの猛毒による痛みをこらえる。



「ガビアル、お前も流石に爆発には、耐えられなかったかっ! そのまま、ゾンビ化するまで、後少しかっ!」


「うるさいっ! こうなったら、貴様も道ずれにしてやるっ! 娘のためにも、ただでは殺られんっ!」


 バリケードの上から、ショーンは叫びながら走りだし、南側へと逃げる。


 北側からは、フレッシャー&ジャンピンガー達が、向かって来たからだ。



 それを追撃する、ガビアルは苦しそうな顔を見せながらも、大型オオトカゲを素早く動かす。


 騎乗する彼も、乗せている騎獣も、体のだるさとは裏腹に、移動速度は上がっている。



「しつこい奴等だっ! もう海トカゲ団の連中も、逃げ出し始めているのにっ!」


「グアアアアッ!」


「ギュアアアアッ!」


 逃げるショーンを追って、フレッシャー達が、バリケード上を、がむしゃらに走る。


 ジャンピンガー達も、カエルのように道路から跳ね飛びながら、追いつこうと迫ってくる。



 海トカゲ団のトラック&テクニカルなどは、激しい戦闘で、破壊されて、残骸を晒している。


 装甲車は、機銃弾を切らせたのか、西側を目指して、移動している最中だった。



「ショーン、貴様もゾンビに変えてやるううっ! 私の執念は、決して負けないっ!」


「うわっ! 大変だっ! あのオオトカゲから逃げろっ!」


「ガビアル隊長は、ゾンビに噛まれたのかっ! 撤退しろっ!」


 段々と、大型オオトカゲは紫色に変わり、ガビアル自身も薄紫色になり、速度は上がる一方だ。


 その途上を走る、バイクに乗った警察官や、馬に跨がる海トカゲ団員は、彼の眼中に無い。



「来るなら、こいっ! お前の相手は、俺だからなっ! だが、そう易々と捕まるかっ! って、さっきから言ってるだろっ!」


「ショーン、貴様ああああアア~~~~!! お前ら、邪魔ダアアアアッ!?」


 バリケード上を、ショーンは南下しながら直進すると、ガビアルも左斜め後ろから追撃する。


 そんな奴も、ゾンビ化が進行してきたらしく、左目が真っ赤に充血して、徐々に顔まで紫色になる。



「ガオオオオッ!! ブシャ~~~~!?」


「うわあっ!! 殺られっ!?」


「ぐあああっ!?」


「うぐぅぅ…………」


「い、息が、できな?」


 オオトカゲも、毒々しい紫色に染まり、最早ゾンビと化して、見境なく敵味方に襲いかかる。


 それに、戦闘を続けていた双方の戦力が、攻撃されて、混乱が広まってしまう。



 ドライアドの海トカゲ団員が乗った、バイクは吹き飛ばされて、空中を舞う。


 オオトカゲに跨がる、魔法使いの海トカゲ団員は、太い足により、踏み潰されてしまう。



 バギーを運転しながら、逃げようとした、白人兵士は、毒ガスである紫煙に包み込まれる。


 青アリ人間は、マグナムを撃とうとしたが、ブラックアントごと、同じく毒煙を吸ってしまった。



「不味いっ!? もう、ゾンビ化しているのかっ!」


「ショーン、ショーンッ! 逃がすカアア~~?」


「今だっ! 喰らえっ!」


「紫ビームは、効くかな? 効くと良いけどっ!」


「狙撃なら、任せろっ!」


 ショーンは、ガビアルと大型オオトカゲの変化に戸惑いながらも、ひたすら逃げる。


 そんな奴に向かって、四輪バギーが突っ込んでいき、そこから、マルルンが転げ落ちる。



 さらに、バリケード上から、カーニャが紫ビームを乱発して、手を休ませる事なく、射撃を続けた。


 止めに、テアンが遠く放れた場所から立ったまま、雷撃ボルトを放った。



「グオ?」


「ぎゃっ!」


 大型オオトカゲは、四輪バギーが衝突して怯み、さらに大量の紫ビームを浴びてしまう。


 ガビアルが、そこから落馬してしまい、さらに胸に雷撃ボルトを射ち込まれた。



「ガビアル、終わりだっ!」


「ショーン、お前は良い仲間を持ったナ…………」


 バリケード上から、ショーンは地面に倒れるガビアルを見下ろしながら叫んだ。

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