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第88話 海トカゲ団と自警団や冒険者たち


 ショーンとワシントン達は、それぞれ身を隠しながら、アサルトライフルを連射していた。



「あら…………弾切れか? 俺は、銃や弓は使い慣れてないからな~~? 予備弾は、やるわ」


「ああ? どうする積もりだ」


 弾が切れた、アサルトライフルを放置して、ショーンは近くに置いといた、ベストを投げた。


 それは、ワシントンの側に落ちて、それを彼は素早く、自身に手繰たぐり寄せる。



「敵の馬を奪うっ! 誰か、適当に騎乗している奴を撃ち殺してくれ」


「それは良いが、無茶はするなよ…………」


 陥没穴から飛び出していった、ショーンの後ろから、ワシントンは照準を覗きながら敵を探す。



「分かってるっ! だが、今は厳しい状況だっ! だから、やっぱり無理してでも突撃しないと」


「死ねええええっ!!」


「結局、無茶するのかよっ! しかし、期待には答えてやる」


 騎兵やバイカー部隊に、果敢にも突っ込んでいく、ショーンに馬に跨がる騎兵が迫る。


 ワシントンは、レイピアを振るう、青い銃士の格好をした敵を狙撃した。



「ぐああっ!」


「俺は、アイツを知っているっ! ガビアルの野郎だっ! ワシントン、後は頼んだぜっ! うわっと」


「ショーン? 無事だったか…………それにしても、ガビアルか? 名前まんまだな?」


「避けたか、なら次っ! あ、ああ」


 落馬していく、銃士は自らの青マントに包まれながら路上を転げ回る。


 ショーンは、奴に代わり、すぐさま馬に跨がろうとするも隙を狙われて、ピストルで銃撃された。



 その瞬間に、ワシントンは驚いたが、彼が地面に伏せている姿に安堵した。


 再度、攻撃を仕掛けようとするバイクに乗った、鎧騎士姿の海トカゲ団員は、兜を射貫かれる。



「サンキュー、ワシントンッ! 引き続き、援護をしてくれっ! 俺は騎兵隊を蹴散らす」


「言われなくても、きちんとやるさっ!」


 ショーンは、倒れたバイクに跨がり、エンジンをかけると、即座に北側へと駆け出す。


 そんな彼に迫るモンゴル人風の海トカゲ団員が、短弓を構えたため、ワシントンは奴を射殺する。



「お前ら、俺に注目しろっ! 間抜けどもがっ!」


「なんだっ! バイクを盗んだ奴がいるっ!」


「奴を追えっ! 逃がすなっ!」


 ショーンは、自身が目立ち、海トカゲ団を混乱させようとして、トリップソードを派手に振り回す。


 バイク、オオトカゲなどに跨がる騎兵部隊は、散弾銃やピストルを撃ちながら、彼をつけ回す。



「アイツは? ショーン、生きていたのか…………とっくに、ゾンビに喰われていると思っていたが?」


「ガビアル、お前こそ、生きていたか? 自慢の鱗は、ゾンビも噛まれないからかっ!」


 ワニ型リザードマンのガビアルは、ショーンを見ると、彼に狙いを定めて、追跡しだした。



「いや? 下手に構うより、部下に任せて、俺は雑魚狩りに専念しよう」


「へっ! 怖じ気づいたのかよ、情けないな」


「奴を黙らせろっ!」


「隊長を侮辱するなっ!」


 大型オオトカゲを、冒険者たちと、トラックに向かわせるガビアルに、ショーンは罵声を浴びせる。


 こうする事で、挑発に乗るような相手ではないが、奴の部下たちは憤慨する。



「おわっ! そうだ、俺を狙えっ! そうすれば、それだけ、リズやミー達を含む冒険者たちは狙われないからなっ!」


「ショーン…………お前も、ここに居たのか? 今度こそ、殺してやるっ!」


「引き殺してやるわっ! アンタは、私たちの邪魔なのよっ!」


「不味いな、軍用車はタイヤを撃っても、パンクしないし、あの金髪野郎は、銃座まわりの装甲を強化してて、姿が見えない…………」


 敵に追撃されながら、ショーンは、バイクをジグザグに走らせ、拳銃弾や散弾を回避しつつ逃げる。


 ライルズは、コンボイの銃座から、雷撃魔法と風刃魔法を組み合わせて、めちゃくちゃ放ってきた。



 マジックロッドと魔導筒まどうとうを合体させた武器だけでなく、スザンナの運転も脅威だ。


 背後から迫る二人の攻撃は、ワシントンから見ても、かなり不味い状況だが、今は何もできない。



「ショーン、死ねっ! お前が、ルドマン商会に入ったせいで、組織は殺せなくなった」


「ルドマン商会は、海洋貿易なんちよらとか、沿岸組合だかと同盟を組んでいるからなっ! お前ら、マフィア集団も迂闊に手は出せんかったなあ?」


 ライルズは、二種類の魔法を混ぜ合わせて、グルグルと回転する雷撃と風斬を放ちまくる。


 それを、バイクを右側に走らせながら、ショーンは何とか回避に専念する。



 海トカゲ団は、表向きの業務部門と、マフィアとして、設立された部門がある。


 巨大な犯罪組織であるが、だからと言って、無闇に他の巨大組織を攻撃できない。



 暗殺や密輸などは、傘下のチンピラ達に任せ、数あるライバル企業&組合は、基本的に相手しない。


 その方針と、これら組織は、互いに商売面では結び付いているため、二人は今まで戦わなかった。



 しかし、今ゾンビが暴れまわる無法地帯となった、マリンピアシティーに仁義はない。


 だから、彼等は生存をかけて、残り少ない食糧を奪いあうしかないのだ。



「だが、今は組織同士の利害は、もう関係ないっ! 互いに、自由に殺し合いを楽しもうじゃないかっ!」


「このまま、踏み潰してやるわっ! アンタは、過去の男、いつまでも付き纏わないでっ!」


「はっ! お前は、爆殺も暗殺も出来なかったっ! 今度も俺が生き延びて、お前らを逆に殺してやるっ!」


 ライルズによる、雷風魔法の勢いは止まらず、しかも、段々と威力を上げてきた。


 そして、スザンナは、コンボイの速度を上げ続け、うるさいエンジン音を吹かせた。



 二人に追われながらも、ショーンは左右へと、バイクを蛇行運転で、走らせつつ必死で逃げる。


 今は、既に海トカゲ団の騎兵たちも、彼を追わず、冒険者たちに対する攻撃に戻っていた。



「な、なんだっ!? 急に爆発がっ!! 前方のトラックや装甲車が燃えてやがるっ!!」


「これは、なんだっ! 敵の奇襲かっ!」


「取り敢えず、離れるわよっ! このままじゃあ、炎に突っ込んでしまうわっ!」


 そんな中、ショーンは突如、遥か前方と左側から爆発が起きて、派手な炸裂音が鳴った事に驚いた。


 どうやら、トラックや木箱を積み上げていた、バリケードの一部が、吹き飛んだようだ。



 これは、海トカゲ団の方も分からなかったらしく、ライルズは魔法攻撃を中断させてしまう。


 炎で、窓ガラスの視界を塞がれると、スザンナは衝突事故を起こすかも知れないと考えた。



「取り敢えず、逃げるしかないなっ!」


 ショーンは、バイクを右側にUターンさせて、吹き上がる炎から離れていった。



「クソッ! 逃がすかっ! はっ! エネルギー切れか? こんな時に、こうなったら、銃でっ!」


「ライルズ、ここは後方に戻るわっ! 消費した魔力を補充したら、また戻ってきましょう?」


 コンボイの上で、憎悪をショーンに向けていた、ライルズは、急に車載武器が動かなくなり焦った。


 すぐさま、ピストルを取り出す彼に、スザンナは追撃を一時中断して、東側の道路に向かった。



「お前ら、待ちやがれっ! 俺は、自分だけでなく、カラチスとナカタニさん達の仇を討たねば成らないんだっ! だから、逃がす訳にはいかないっ! うわっ! 撃つな、バカ野郎っ!!」


「知るかっ! これでも喰らえ、間抜け野郎っ! スザンナ、早く行こうっ!」


「ええ、こんな奴は放置して、今は後退しないとっ!!」


 二人が逃げ出すのを見て、ショーンは今度は自分が追いかけようとするも、ピストルで撃たれる。


 こうして、彼による追跡を、ライルズとスザンナ達は、牽制しながら道路を一直線に進んでいった。



「野郎っ! 逃がさないって、言ってるんだろ…………は?」


「ウゴアアアアーー」


「ギャアアアア~~」


 ショーンが乗っているバイクを、疲れた様子もなく、追いかけてくる連中が存在した。


 もちろん、それはフレッシャー&等を含んでいるゾンビの大集団だった。

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