ショーンとワシントン達は、それぞれ身を隠しながら、アサルトライフルを連射していた。
「あら…………弾切れか? 俺は、銃や弓は使い慣れてないからな~~? 予備弾は、やるわ」
「ああ? どうする積もりだ」
弾が切れた、アサルトライフルを放置して、ショーンは近くに置いといた、ベストを投げた。
それは、ワシントンの側に落ちて、それを彼は素早く、自身に
「敵の馬を奪うっ! 誰か、適当に騎乗している奴を撃ち殺してくれ」
「それは良いが、無茶はするなよ…………」
陥没穴から飛び出していった、ショーンの後ろから、ワシントンは照準を覗きながら敵を探す。
「分かってるっ! だが、今は厳しい状況だっ! だから、やっぱり無理してでも突撃しないと」
「死ねええええっ!!」
「結局、無茶するのかよっ! しかし、期待には答えてやる」
騎兵やバイカー部隊に、果敢にも突っ込んでいく、ショーンに馬に跨がる騎兵が迫る。
ワシントンは、レイピアを振るう、青い銃士の格好をした敵を狙撃した。
「ぐああっ!」
「俺は、アイツを知っているっ! ガビアルの野郎だっ! ワシントン、後は頼んだぜっ! うわっと」
「ショーン? 無事だったか…………それにしても、ガビアルか? 名前まんまだな?」
「避けたか、なら次っ! あ、ああ」
落馬していく、銃士は自らの青マントに包まれながら路上を転げ回る。
ショーンは、奴に代わり、すぐさま馬に跨がろうとするも隙を狙われて、ピストルで銃撃された。
その瞬間に、ワシントンは驚いたが、彼が地面に伏せている姿に安堵した。
再度、攻撃を仕掛けようとするバイクに乗った、鎧騎士姿の海トカゲ団員は、兜を射貫かれる。
「サンキュー、ワシントンッ! 引き続き、援護をしてくれっ! 俺は騎兵隊を蹴散らす」
「言われなくても、きちんとやるさっ!」
ショーンは、倒れたバイクに跨がり、エンジンをかけると、即座に北側へと駆け出す。
そんな彼に迫るモンゴル人風の海トカゲ団員が、短弓を構えたため、ワシントンは奴を射殺する。
「お前ら、俺に注目しろっ! 間抜けどもがっ!」
「なんだっ! バイクを盗んだ奴がいるっ!」
「奴を追えっ! 逃がすなっ!」
ショーンは、自身が目立ち、海トカゲ団を混乱させようとして、トリップソードを派手に振り回す。
バイク、オオトカゲなどに跨がる騎兵部隊は、散弾銃やピストルを撃ちながら、彼をつけ回す。
「アイツは? ショーン、生きていたのか…………とっくに、ゾンビに喰われていると思っていたが?」
「ガビアル、お前こそ、生きていたか? 自慢の鱗は、ゾンビも噛まれないからかっ!」
ワニ型リザードマンのガビアルは、ショーンを見ると、彼に狙いを定めて、追跡しだした。
「いや? 下手に構うより、部下に任せて、俺は雑魚狩りに専念しよう」
「へっ! 怖じ気づいたのかよ、情けないな」
「奴を黙らせろっ!」
「隊長を侮辱するなっ!」
大型オオトカゲを、冒険者たちと、トラックに向かわせるガビアルに、ショーンは罵声を浴びせる。
こうする事で、挑発に乗るような相手ではないが、奴の部下たちは憤慨する。
「おわっ! そうだ、俺を狙えっ! そうすれば、それだけ、リズやミー達を含む冒険者たちは狙われないからなっ!」
「ショーン…………お前も、ここに居たのか? 今度こそ、殺してやるっ!」
「引き殺してやるわっ! アンタは、私たちの邪魔なのよっ!」
「不味いな、軍用車はタイヤを撃っても、パンクしないし、あの金髪野郎は、銃座まわりの装甲を強化してて、姿が見えない…………」
敵に追撃されながら、ショーンは、バイクをジグザグに走らせ、拳銃弾や散弾を回避しつつ逃げる。
ライルズは、コンボイの銃座から、雷撃魔法と風刃魔法を組み合わせて、めちゃくちゃ放ってきた。
マジックロッドと
背後から迫る二人の攻撃は、ワシントンから見ても、かなり不味い状況だが、今は何もできない。
「ショーン、死ねっ! お前が、ルドマン商会に入ったせいで、組織は殺せなくなった」
「ルドマン商会は、海洋貿易なんちよらとか、沿岸組合だかと同盟を組んでいるからなっ! お前ら、マフィア集団も迂闊に手は出せんかったなあ?」
ライルズは、二種類の魔法を混ぜ合わせて、グルグルと回転する雷撃と風斬を放ちまくる。
それを、バイクを右側に走らせながら、ショーンは何とか回避に専念する。
海トカゲ団は、表向きの業務部門と、マフィアとして、設立された部門がある。
巨大な犯罪組織であるが、だからと言って、無闇に他の巨大組織を攻撃できない。
暗殺や密輸などは、傘下のチンピラ達に任せ、数あるライバル企業&組合は、基本的に相手しない。
その方針と、これら組織は、互いに商売面では結び付いているため、二人は今まで戦わなかった。
しかし、今ゾンビが暴れまわる無法地帯となった、マリンピアシティーに仁義はない。
だから、彼等は生存をかけて、残り少ない食糧を奪いあうしかないのだ。
「だが、今は組織同士の利害は、もう関係ないっ! 互いに、自由に殺し合いを楽しもうじゃないかっ!」
「このまま、踏み潰してやるわっ! アンタは、過去の男、いつまでも付き纏わないでっ!」
「はっ! お前は、爆殺も暗殺も出来なかったっ! 今度も俺が生き延びて、お前らを逆に殺してやるっ!」
ライルズによる、雷風魔法の勢いは止まらず、しかも、段々と威力を上げてきた。
そして、スザンナは、コンボイの速度を上げ続け、うるさいエンジン音を吹かせた。
二人に追われながらも、ショーンは左右へと、バイクを蛇行運転で、走らせつつ必死で逃げる。
今は、既に海トカゲ団の騎兵たちも、彼を追わず、冒険者たちに対する攻撃に戻っていた。
「な、なんだっ!? 急に爆発がっ!! 前方のトラックや装甲車が燃えてやがるっ!!」
「これは、なんだっ! 敵の奇襲かっ!」
「取り敢えず、離れるわよっ! このままじゃあ、炎に突っ込んでしまうわっ!」
そんな中、ショーンは突如、遥か前方と左側から爆発が起きて、派手な炸裂音が鳴った事に驚いた。
どうやら、トラックや木箱を積み上げていた、バリケードの一部が、吹き飛んだようだ。
これは、海トカゲ団の方も分からなかったらしく、ライルズは魔法攻撃を中断させてしまう。
炎で、窓ガラスの視界を塞がれると、スザンナは衝突事故を起こすかも知れないと考えた。
「取り敢えず、逃げるしかないなっ!」
ショーンは、バイクを右側にUターンさせて、吹き上がる炎から離れていった。
「クソッ! 逃がすかっ! はっ! エネルギー切れか? こんな時に、こうなったら、銃でっ!」
「ライルズ、ここは後方に戻るわっ! 消費した魔力を補充したら、また戻ってきましょう?」
コンボイの上で、憎悪をショーンに向けていた、ライルズは、急に車載武器が動かなくなり焦った。
すぐさま、ピストルを取り出す彼に、スザンナは追撃を一時中断して、東側の道路に向かった。
「お前ら、待ちやがれっ! 俺は、自分だけでなく、カラチスとナカタニさん達の仇を討たねば成らないんだっ! だから、逃がす訳にはいかないっ! うわっ! 撃つな、バカ野郎っ!!」
「知るかっ! これでも喰らえ、間抜け野郎っ! スザンナ、早く行こうっ!」
「ええ、こんな奴は放置して、今は後退しないとっ!!」
二人が逃げ出すのを見て、ショーンは今度は自分が追いかけようとするも、ピストルで撃たれる。
こうして、彼による追跡を、ライルズとスザンナ達は、牽制しながら道路を一直線に進んでいった。
「野郎っ! 逃がさないって、言ってるんだろ…………は?」
「ウゴアアアアーー」
「ギャアアアア~~」
ショーンが乗っているバイクを、疲れた様子もなく、追いかけてくる連中が存在した。
もちろん、それはフレッシャー&等を含んでいるゾンビの大集団だった。