ショーンは、他の仲間たちが無事かどうか、確認するため、バリケードから身を引いた。
そうして、梯子に掴まったまま、左側に顔を向けると、そちらの様子を伺う。
「フリンカ達は? 凄いっ! 敵を薙ぎ倒している? スバスは火炎瓶を投げたか」
「二人とも、バリケード上の敵は排除したし、向こうは冒険者たちの援軍が来てるにゃあ」
「リズは、兵士や自警団員とともに、援護を受けながら、前進しているなっ!」
ショーンは、フリンカが暴れまわり、ポイズンソードで、チンピラ達を次々と斬り殺す姿を見た。
一方、彼女を狙うバリケード上の海トカゲ団員は、スバスが投げた火炎瓶に体を焼かれてしまう。
そこに、道路を冒険者たちの集団が、向かってくる姿を、ミーは目にした。
ワシントンは、右側の自動車が壊れたまま、散乱している道路を眺めて、走るリズを見つける。
そこでは、数多のチンピラと自警団員たちが集まり、壮絶な白兵戦が繰り広げられていた。
しかも、双方とも味方部隊の射撃援護を受けて、かなり死傷者を出していた。
「リズは、不味いっ! ミー、助けに行ってくれるかっ!」
「確かに、彼女は放置できないにゃあっ! 二人は、ここから敵の増援を何とかしてくれにゃあっ!」
「それなら、これを使うから心配するな」
ショーンは、梯子を登り、海トカゲ団の攻撃を受けて、身を引いてしまう。
そして、彼は足の速いミーに、リズが混戦に巻き込まれているため、救出と援護を頼んだ。
ワシントンは、アサルトライフルを拾ってから、直ぐに単発で、何度も弾丸を放つ。
それは、自警団員や兵士たちに襲いかかっていく、チンピラ達を次々と撃ち抜いていく。
「お前、銃も扱えるのか?」
「まあな、しかし、弓の方が得意だが」
「二人とも、ありがとうっ!!」
「こっちは、押し返したにゃあっ!」
驚きながら、ショーンは後ろに振り向くと、ワシントンは険しい顔をしながら、弾倉を取り外す。
そうして、彼が残弾数を確かめていると、リズとミー達が、大声で礼を言いながら手を振ってきた。
「そっちも、気をつけてけよっ!」
「俺たちが、援護するからな」
ショーンとワシントン達は、遠くで走る二人に、それだけ言うと、今度は反対方向に顔を向ける。
「左側から来るぞっ!」
「どうやら、敵にも増援が来やがったようだね」
「アイツらも、押し返したか?」
「俺達も、援護射撃してやるぞ」
バリケードの上に登った、スバスを筆頭とする冒険者たちは、路上にできた、陥没穴に落ちていく。
爆弾や砲撃で吹き飛んだのか、そこに入った彼等は、装甲車や装甲トラックが現れた事に気づいた。
フリンカは、木箱の階段を上がり、海トカゲ団を睨みながら、いつ突撃しようかと見定めている。
「トラックが来るぞっ!! 味方のだっ!」
右側から冒険者の一人が叫び、そちらを見ると、黒いトラックが、三台も現れた。
それには、簡易的な装甲として、鉄板が正面の窓ガラスに貼られている。
「やっと、敵に近づけるなっ!」
「よし、ショーン、銃とベストを取れっ!」
梯子を駆け登るショーンの後ろから、スバスも声をかけながら着いていく。
「俺は、あまり銃は使えないぞ? てか、左側に展開したなっ!」
「当たらなくても、敵の注意は
右側のトラックが停車すると、中から冒険者や警察官たちが、慌てて飛び出してくる。
それを見ながら、ショーンはバリケード上に登り、リザードマンの死体から、ベストを剥ぎ取る。
彼が、銃を握り締めたのを見ると、ワシントンもスケルトンから防弾ベストを脱がした。
そして、自らも彼を追って、海トカゲ団に橫から射撃を浴びせようと走る。
「よっと…………ワシントン、射つのよりも、もう少し近づこうか? 今は隠密行動を優先しようっ?」
「近くから奇襲する積もりか、分かったぞ」
ショーンは、深い陥没した穴に入り込むと、右側に振り向き、迫り来る海トカゲ団の姿を捉えた。
連中は、弓矢やクロスボウを装備している冒険者や、ピストルを射つ、警官隊を集中攻撃する。
双方とも、装甲車やトラックに隠れて、機銃掃射や激しい銃撃を繰り返す。
それに混じって、矢が飛んだり、様々な魔法が放たれて、互いを牽制し合う。
ワシントンも、木箱のバリケードが崩れてできた、小さな瓦礫に、身を伏せて隠れた。
「また、敵の増援が来るっ! 連中、馬やバイクに乗っているぞっ!」
「オオトカゲも混ざっているなっ! は…………アレは、前に見た連中じゃないか?」
海トカゲ団の騎兵隊が、東側から現れて、馬上から銃や魔法を放ってくる。
オオトカゲは、鋭い牙と凶悪な顎を開いて、凄まじい速度で走り、冒険者たちに襲いかかってくる。
ショーンは、味方を救うべく、短弓を握る騎兵と馬を狙い、アサルトライフルを乱射した。
それが当たるのを見て、ワシントンも敵を狙うが、ある軍用車両コンボイが目に入る。
「ショーン、お前の因縁の相手が来たぞっ!」
「アイツら…………しかも、あのワニ野郎も?」
「奴らを蹴散らせっ! ここを落とせば、食糧が手に入るぞ」
「とにかく、攻め続けるのよっ!!」
「邪魔する者は、殺せっ! 我々の勝利は目前だっ!」
ワシントンが叫ぶと、ショーンは衝撃を受けながら、海トカゲ団の幹部たちを目視する。
それは、コンボイに乗っている、ライルズとスザンナ達と、黒い大型オオトカゲに跨がる騎兵だ。
金ピカの鱗を光らせ、ランスを振るう、ワニ型リザードマンは部下たちを怒鳴り続ける。
これは、士気を鼓舞するためであり、戦士と指揮官の両面で、優秀な人物だと一目で分かる。
「奴等…………いや、まずは邪魔な騎兵隊を排除しなければっ! ワシントン、撃つぞ」
「アイツ、銃撃が効かないぞっ! トカゲに当たっても効果がないっ?」
一気に、頭に血が登り、ショーンは顔を真っ赤にさせたが、直ぐに冷静さを取り外す。
彼は、近くを走る騎兵隊やバイク部隊を、アサルトライフルで、何発も銃弾を浴びせる。
一方、ワシントンは静かに、大型オオトカゲを狙い、単発で何回も銃弾を当てる。
しかし、固い黒鱗に弾かれてしまい、相手は無傷なまま、ひたすら暴れまわる。
「ぎゃああああっ!? 熱い、熱い」
「うごおっ!!」
「あの鱗は、攻撃できないっ! 乗ってる奴も、下手したら、角度によっては、ライフル弾を弾いてしまうかもな」
「なら、どうする?」
ワニ型リザードマンは、大型オオトカゲを見事に乗りこなし、冒険者たちのトラックを攻撃する。
口からは、火炎放射を吐き出し、部隊の後方に回り込んでは、尻尾を振るって敵を吹き飛ばす。
ショーンは、騎兵隊を指揮する人物を良く知っており、険しい顔と憎悪を混ぜた表情で睨む。
ワシントンも、どうやって奴を倒そうかと、じっと動かず、冷静に観察する。
「ヒューー!! イヤッホ~~イッ!」
「ヒャッハー!!」
「ぐっ! まずは、騎兵隊を排除するっ! あのボス…………ガビアルは後回しだっ!」
馬を操るカウボーイ姿の海トカゲ団員は、リボルバーを四方八方に、ぶっぱなす。
バイクを突っ走らせる、トロールの海トカゲ団員は、二連散弾銃コーチガンから散弾を発射する。
ショーンは、銃撃を受けて、陥没穴に下がったあと、アサルトライフルだけを頭上に掲げた。
それから、とにかく銃弾が空になるまで、夢中で適当に敵を攻撃しまくる。
「ショーン、当たらないぞ? 銃や弓は狙って、撃つものなんだっ!」
「なら、銃を撃つのを、お前だけに任せて、突撃したいが、そうもいかないしな…………」
「ぎゃあっ!」
「う、うわあっ!?」
「ぐ?」
「うああーー!」
ワシントンは、木箱の瓦礫に紛れながら、一発ずつ敵に対して、精密射撃を行う。
それを、ショーンは眺めたあと、アサルトライフルの弾倉を交換した。
眉間を狙撃された、馬に跨がる鎧騎士の海トカゲ団員は、馬から転げ落ちながら、一瞬だけ叫ぶ。
その後、青い軽鎧を着ている、スケルトンが乗っていた、バイクに衝突してしまった。
オオトカゲを操る、槍を構えた海トカゲ団員は、首を撃ち抜かれて、後ろに倒れた。
バイクのタンクを撃たれた、海トカゲ団員は、燃えながら、バリケードに、ぶつかってしまった。