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第85話 後方では…………


 ショーン達は、何とか安全区域まで逃げてきていたが、未だに、ゾンビとの戦闘は続いている。



「アレ? そう言えば、リオンとマーリーン達は?」


「ショーン、あそこだにゃっ!」


「弾薬を補給したら、すぐに戻るぞっ!」


「ゴクゴク…………ここで、敵を食い止めなければ」


 冒険者や自警団員たちを、ショーンは見ていたが、二人の姿が見えない事に気がつく。


 そんな彼に、ミーは指差しながら、彼等が立っている居場所を教えた。



 リオンは、左側の建物手前にある木箱に置かれた厚紙箱から、拳銃弾を取り出している。


 マーリーンは、缶に葡萄が描かれている、エナジードリンクを飲んで、魔力を回復していた。



「お前ら、どうするんだ? てか、いつの間に逃げてきてた?」


「さっき、君が呟いている時だっ! 俺たちが生き残りの最後だったっ! それより、やる事は決まってるっ! 敵を食い止めるだけだっ!」


「ここも、食い破られれば、終わりだからね」


 ショーンは、二人を見つけると、すぐに近づいていって、話しかけた。


 それに、リオンとマーリーン達は、ここに残り、ゾンビ達を足留めする積もりだった。



「分かった? しかし、俺達は…………」


 二人から、この場で戦い続ける覚悟を聞いて、ショーンは自分たちも残ろうかと考える。



「おいっ! 誰か、こっちに来てくれっ! 防衛線が突破されそうなんだ」


 その時、カエル人間が東側から現れると、青ざめた顔で叫び、援軍を求めた。



「なにっ! リオン、マーリーンッ! ここは任せたっ! みんな、行くぞっ!」


「ああ、そっちは頼んだぞ」


「向こうでの民間人の救助、お願いするわ」


「ええ、行くしかないわっ! 今、飲むしか無いわっ!」


「武器の補給くらいは、させてくれ」


 援軍要請を聞いて、再び戦闘に戻るべく、ショーンは、剣と盾を強く握りしめる。


 リオンとマーリーン達は、木箱が積まれた、バリケードの方へと走っていく。



 リンゴとミカンのジュース缶を、一気に飲み干して、魔力補助した、リズは素早く駆けだした。


 スバスは、樽の上に、置いてある子樽型の爆弾や火炎瓶を幾つか拾うと、直ぐに東側へと向かう。



「こっちだ、はやく来てくれっ!」


 カエル人間の誘導で、ショーン達は路上を進み、木々が生えている公園に出た。



「うわああんっ! 痛いよ~~!」


「済まん、こうするしかないんだっ!」


「いや、止めてぇっ!?」


「落ち着いて、下さいっ!」


 公園では、重傷者や避難民が集められており、そこは地獄のような光景だった。


 強酸が頭にかかり、泣きわめく少年を、ゾンビの警察官は、リボルバーで眉間を撃ち抜く。



 その母親である白人女性は、我が子を守るため、銃殺を止めようと走り出した。


 しかし、時すでに遅く、さらに彼女は兵士により、後ろから羽交い締めにされる。



「くぅぅ…………な、ななんで、こんな? こんなのって、あり得ないわ」


「リズ、見るなっ!」


 子供や老人に優しい、リズに取って、この場所はゾンビと戦うより辛く、気分を悪くさせる。


 ショーンは、彼女を気づかい、この悲惨な現場から早く離れようとした。



「グハッ!? ゲホ、ゲホ」


「カラチスッ!? どうした、何があったんだっ!」


「カラチス…………嘘、どうしたのっ?」


「いったい、何で怪我しているんだっ! 誰か、負傷者を治せる奴は、居ないのか?」


 だが、そこには、公園のベンチに銃弾を何発も、下顎に撃たれて、もたれているカラチスが居た。


 彼が、苦し気に血を吐く姿を見た、ショーンは直ぐに駆け寄り、両肩を掴む。



 リズも、即座に近づき、治療できる手段は無いかと、包帯や回復アイテムを探す。


 怪我の深刻さに驚き、スバスは目を見開いて、医者やヒーラー達を探す。



「ショーン、リズ、スバス? 俺は下手こいたんだ、ガキ達を守ろうとしてっ!」


「カラチス、無理はするなっ!?」


 カラチスは、自らが負傷した理由を話そうとしたが、それを止めようと、ショーンは叫ぶ。



「いいんだ、ショーン、俺は負傷が酷いっ! 海トカゲ団のクズに撃たれたんだ…………へへ? お前は、リズと一発やれよ? 俺も女とヤリ…………ぐ」


 それだけ言うと、カラチスの頭であるつぼみは、ベンチから転げ落ちた。



「カラチスッ!! カラチスッ!! アイツらっ! 絶対に緩さねえっ!」


 額の青筋から、血を吹き出させようなほど、ショーンは怒りに震えながら、爆走しだした。



「ショーン、待ってってばっ!?」


「一人で、死にに行くなっ! 俺だって、復讐に燃えてるんだっ!」


 一人で、先走るショーンの後を追って、リズはマジックロッドを抱えながら着いていく。


 もちろん、スバスも仲間を殺られて、ただ黙っていられる男ではない。



「ショーンの仲間だったのか…………なら、敵討ちに加勢してやる」


「私は、コイツの事を知らないけれど、良い奴だってのは分かった」


「にゃあっ! 悲しいけれど、今は戦うしか道はないにゃあっ!」


 ワシントンは、東側へと向かう、三人の後を追って、一気に駆け出した。


 フリンカとミー達も、これ以上の被害を出さないために、二人とも敵を殲滅しに行った。



「お前ら、着いてこいっ! んんっ!」


「はあ、はあ、うぐぅぅ」


 派手な看板が並ぶ、アジア人街を走るショーンの前に、血塗れになった、ナカタニが現れた。



「ナカタニさんっ! どうしてっ!?」


「ショー…………私は、出前を届けようとし? そこで、噛まれ…………はや、首を切ってく」


 ショーンの声を聞いて、ナカタニは地面に倒れそうに成りながらも、何とか立ったまま答える。



「またかっ! ナカタニさん、俺が残って居ればっ! 済みません」


「謝らなく…………て、いい? シューさ、よれしき、ウゲゴアッ!?」


「ショーン、もう彼はゾンビに転化しているわ」


「ダメだ、これは俺たちまで危なくなるっ! 鉄球で、頭を叩き割るしかない」


 咄嗟に動き、ショーンは肩を貸して、ナカタニを支えたが、彼のゾンビ化が始まりだした。


 リズは不安気な顔で、マジックロッドを構え、

スバスも、ウニ鉄球を無げだそうとした。



「いや、俺がやる」


「ウゴガアアアアーー」


 ショーンは、ナカタニを地面に押し倒すと、額にショートソードを、思いっきり差し込んだ。



「はあ、はあ、はあ~~? なんで、カラチスやアンタが死ぬんだよっ!」


「ショーン…………」


「確りしなっ! 黙っていると、まだまだ犠牲者は増えるよっ!!」


「ナカタニさんの仇を取りに行くんだにゃあっ!」


 怒りの余り、顔を真っ赤にしながら、膝に両手を突いて、ショーンは怒鳴り散らす。


 リズは、彼にかけるべき言葉が分からず、一言だけ呟き、それから黙ってしまう。



 フリンカは、ポイズンソードを構えながら、勢いを下げず、東側に進んでいく。


 ミーも、忍者のように素早く、彼女を追いながら、風打棍を抱えながら走る。



「そうだな、そうだっ! 今度は、奴らを殲滅しに行かないとっ!?」


「その意気だぜっ! 俺も、ナイフしかないが、復讐には付き合う」


「取り敢えず、東側に行きましょうっ! 銃声や魔法の音がするわっ!」


 ショーンは、拳を強く握りしめると、ショートソードを、ナカタニの遺体から抜きとる。


 そして、慌てて駆け出した、彼に続いて、ワシントンとリズ達も武器を手に動き出す。



 彼等が向かわんとする、東側からは、連続で木霊する機銃掃射の音が鳴り響いている。


 また、雷撃魔法の稲妻が光り、火炎魔法による煙が、ここからでも見えていた。



「確かに、銃声が成りやまない? 海トカゲ団は、ここまで進撃しているのか? かなり、不味い状況だっ! だが、二人の仇は討たせて貰うぜっ!」


「ここから、先は戦場だっ! ゾンビとは、また違った脅威が来やがるぞっ! 火炎瓶を投げて、やらないとな」


 高いビルの間を走る、ショーンは聞こえてくる戦闘音に、敵が近い事が分かった。


 補充してきた、投擲武器を片手に、スバスは遠くに見える、キノコ雲や落雷を睨んだ。

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