ショーンは、炎の壁を背にして、無数のキョンシー型ゾンビ達と戦う決意を固めた。
もちろん、火の海からも続々と燃えながら、フレッシャー&ウォーリアー達が現れる。
また、ジャンピンガーは、炎を軽く越えてしまい、仲間たちに襲いかかってくる。
火炎に包まれる事なく、バリケード上から、スピットゲロー&ファットゲロー達は攻撃してくる。
「お前ら…………元は、仲間だったからな? せめて、苦しめないで、殺してやる」
「グアア~~~~」
「ギャアアッ!!」
「ショーン、背中は任せるにゃっ!」
「グルアア~~!!」
「ウォーーーー!!」
ショーンは、トリップソードを正眼に構えると、道を塞ぐように立つ、敵に突進していく。
その後ろに立ち、風打棍で、ウォーリアー達の長剣や短槍を受け止めつつ、時おり反撃する。
黒服の男性キョンシー型ゾンビは、脇腹から血を垂らしながら、連続で拳を繰り出してくる。
赤服のキョンシー娘ゾンビは、空中に高く飛び上がり、そこからドロップキックを放ってきた。
もちろん、彼は、まともに相手をせず、双方の攻撃を上手く交わしてから後方に回り込む。
その間、ミーは釘を連続で投擲しながら、ウォーリアー達を牽制する。
女ウォーリアーは、金髪を振り払いながら、力強くロングソードを横凪に振るう。
体格が少しいい、アラブ人ウォーリアーは、短剣シャンビーヤを真っ直ぐに突き出してくる。
「不味いっ! 不味い、コイツら…………強い」
「グアア…………アア」
「グルアアアア~~~~!?」
「にゃあっ! これは、避けるだけで、精一杯にゃっ!」
「ギャアッ!?」
「ウォ~~~~! グ?」
黒服の男性キョンシー型ゾンビに、ショーンは背後から回り込んで、斬撃を首に喰らわせる。
赤服のキョンシー娘ゾンビは、彼に飛びかかったが、拳銃弾を何発も喰らって落下する。
風打棍で、女ウォーリアーの眉間に、打突による強烈な一撃を、ミーは叩きこんだ。
その隙に足元を狙って、シャンビーヤを、アラブ人ウォーリアーは振るうが、何故か頭が燃える。
「二人とも、無事かっ! 先に走れっ! もう、俺のリボルバーも弾切れだっ!」
「今ので、私の魔力も切れたわっ! 撤退よっ!」
「俺の銃も弾が切れた…………クソッ!」
「ウォーリアーとの戦闘は、危険過ぎるから相手してられないっ!」
リオンは、リボルバーを仕舞う暇なく、ひたすら地面を蹴って、走り続ける。
火炎魔法で、ウォーリアーを仕留めたばかりのマーリーンも、素早く駆けてくる。
黒人冒険者は、ピストルを茶色いホルスターに、突っ込みながら逃げ出す。
バックソードを背中の鞘に仕舞い、白人冒険者は、踵を返して、戦線から離脱する。
「分かったっ! 先に逃げるぞっ! と言うか、他の連中は大丈夫なのか?」
「みんな、必死で走りまくってるにゃあーー!?」
「ショーン、ミー、後ろを振り向くなっ! 遅れれば、フレッシャーに殺られちまうぞ」
「走るのは苦手なんだけど、この状況じゃあ~~ワガママは言ってられないわっ!」
「今は、ひたすら走るのみっ! じゃないと、ゾンビの
「ああ、そう成らない内に、安全区域まで戻らないとなっ! っと」
必死で、ビルの立つ安全区域の方へと、ショーンは後ろに振り向く事なく逃げていく。
ミーは、彼の後に続き、風打棍を抱えながら、路上を疾走していく。
ワシントンは、ボウイナイフを握ったまま、迫り来るゾンビ達から距離を取ろうとする。
マジックロッドを背負い、リズは息を苦しそうに吐きながらも、手足を動かし続ける。
ポイズンソードを振るっては、フリンカは先に回り込んでくるフレッシャー達を斬り捨てていく。
がむしゃらに走っては、ゾンビ達に捕まりそうになる度に、スバスは前に飛んで回避する。
「あとは、火炎瓶を投げればっ!」
「援護するっ! 逃げるぞっ!」
アジア系冒険者は、ポリタンクを蹴飛ばし、酒樽を転がしまくり、最後は火炎瓶を投げた。
タンクローリーの上から、ラテン系冒険者は、氷結魔法を乱発しながら、ゾンビ達を攻撃する。
「残りは、アイツらだけか? おい、早くしろっ! もう、そこまで敵が迫っているぞっ!」
ショーンが、二人に声をかけると、タンクローリーは大爆発して、派手な炎を吹き上げた。
どうやら、彼等の内、どちらかが火を着けたらしく、周囲を走るゾンビ達が火炎に包まれる。
「何とか、バリケードから距離を離せたが? みんなは大丈夫か? もう、ここまで来れば…………」
「ウゴアアアア」
「グルアア~~~~」
ショーンは、状況を整理するために、バリケードの手前で、燃え盛る炎を目にした。
そこには、やはり揺らめく火炎の中から出てくるゾンビ達と、それに追いかけられる味方が見えた。
ウォーリアー化してしまった、トロールの冒険者は、血塗れた棍棒を振るいながら追いかけてくる。
ライフルを闇雲に振り回して、マンドラゴラの冒険者ウォーリアーは、ノロノロと小走りしていた。
「ここまで来れば…………あとは、どうすんだ?」
「マーク、ジュリア、助けてくれっ! ロープを下ろしてくれっ!」
「氷の壁を作るっ! 今のうちに行けっ!」
ショーンは、炎の壁を見て、次はビルと店屋の間に、隙間なく設置された、木箱を見た。
アジア系冒険者は、後ろから大きな声で叫びながら、こっちに走ってきた。
ラテン系冒険者は、氷結魔法で、大きなガラス窓のような氷壁を作っていく。
燃え盛る体を、ものともせず、執拗にゾンビ達が向かってくるため、それを止めようと言うわけだ。
「お前ら、はやく上がってこいっ!」
「今すぐ、登って来なさいっ!」
「ロープがっ! 行くぜ」
「はあ、はあ、やっと安心できるにゃあっ!」
賢者らしき赤いローブを着ているゴブリンは、ナイフの先から、紫ビームを連続で発射する。
緑色の軍服を着ている女性オーガーは、アサルトライフルを炎を越えてくるゾンビ達に撃ちまくる。
それ以外にも、多数の冒険者や自警団員などが、弓や魔法で、敵を攻撃する。
ショーンは、ロープを掴むと、急いでバリケード上に向かっていく。
その横では、同じく、ミーが木箱まで走ってきて、とにかく上を目指した。
「っと…………おい、みんな? 無事か?」
「私は無事だにゃ? 他はーー!?」
ショーンとミー達は、取り敢えず、バリケードから下の路上に降り立った。
「私は、無事よっ! なんとか、逃げてこれたわ」
「私もねぇ~~? はああ~~生き残れた」
「珍しいな、お前が溜め息を吐くとは?」
「ふぅ? 爆薬も煙玉も使い果たした、なんか武器になる物を見つけないと」
ショーンが振り向くと、リズが木箱の上から飛び降りる姿が確認できた。
フリンカも、着地すると疲れたらしく、両手を道路に突いて、苦しそうに息を吐いた。
ワシントンは、冷静な顔で呟いたが、その顔には汗が滲み出ており、体力を消耗していると分かる。
次なる戦いに備えて、スバスは武器に成りそうな物を探して、
「ふぅ…………助かった、助かった」
「ぐあっ! た、助けてくれ~~」
「ぎゃあっ!? こうなったら、道ずれだっ!」
「うわあっ!! 不味い、逃げろっ!」
アジア系冒険者は、バリケード上に飛び乗ってから地面に飛び降りる、
ラテン系冒険者は、氷結魔法で、階段を作ったが、登っている間に強酸が背中に当たってしまう。
黒人冒険者は、ロープを掴んで登りきろうとした時に、ジャンピンガーに捕まえられてしまった。
そして、落下していき、自爆を選択したのか、派手な爆発音を鳴らした。
白人冒険者は、フレッシャー達が群がる中、必死で、木箱の上まで逃げてきた。
「奴らの内、二人は生き残れなかったか…………中華街のは、二人だけ…………」
ショーンは、路上で疲れた顔を、バリケード上に向けると、苦し気に呟いた。
「とにかく、逃げるぞ」
「分かったわっ!」
青服を着ている中華男性は、蛇矛を背負い、上にまで何とか生き延びれた。
それに続いて、中華娘は素早くロープを掴み上がり、こっち側に着地した。
「あの地獄の中から、逃げてきたのか? 信じられんな」
「グオオッ!」
「ガアガア」
バリケードの向こう側で、揺らめく炎を見ながら、ショーンは粒いた。
しかし、未だにゾンビ達の恐ろしい咆哮は、途切れる事なく聞こえてきた。