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第82話 援軍?


 トリップソードを振るっている、ショーンの後ろから、ミーは馬車を睨んでいた。


 そして、多数のキョンシー型ゾンビ達が、降りたかと思うと、一気に走り出した。



「不味いぜ、こりゃあっ!? ゾンビ達に挟みうちにされちまう…………」


「どうなっているにゃあ? もしかして、街まで殺られたのかにゃっ!?」


 トリップソードを強く握りしめながは、ショーンは、新たな敵の登場に危機感を募らせた。


 ミーは、走り出した連中を目で追い、恐怖を感じながらも、釘を投げる準備をした。



「二人とも待って、アレはゾンビじゃないわっ! 援軍よっ!」


「あの四人は、中華街の人間とキョンシー達だっ!」


「そうだっ! 避難民の誘導が済んだから、こっちにきたぞ」


「私達も、戦うわよっ!!」


 リズとスバス達は、背後に振り向くと、馬車を見つめながら叫び、再度正面の敵に向き直る。


 そして、黒服の男性キョンシーと中華娘たちが、青龍刀や中国剣を手にして、走ってきた。



「ショーンッ! 上だ、キョンシー連中が来るっ! もう弓矢がないから、援護は出来ないっ!」


「向こうからも、格闘タイプが来たわねっ! 私は前のゾンビ達だけしか撃てなっ! 弾切れ…………しかも予備もない」


「火炎魔法で、カーテンをっ! いや、自爆ゾンビが来たわっ! うああっ!?」


「じ、自爆すルル」


「不味いぜ、ウニ鉄球だけじゃ、敵を食い止められないぜっ! 爆弾も煙弾もない…………氷結瓶も使いきってしまったし」


 ワシントンは、弓矢を背中に回し、ボウイナイフを片手に、ゾンビ達に立ち向かわんとする。


 マシンガンの銃撃が、一瞬止まり、弾切れを覚って、フリンカは背中からポイズンソードを抜く。


 二人が見上げる、バリケードには、無数のキョンシー型ゾンビ達が、飛び乗っているさまが見えた。



 蒼白い肌に赤い目、そして、不気味に跳び跳ねる素早い動き、格闘術で襲いかかってくる。


 連中の口からは、低い唸り声が漏れており、こちらに対して、明確な殺意を向けている。



 火炎魔法で、リズは火炎放射や炎のカーテンを作るが、自爆ゾンビは日が着いた瞬間に吹き飛ぶ。


 両腕を交差させて、スバスは爆風から身を守り、ウニ鉄球を振り回しながら走っていく。



「はっ! 前からの連中に、気は集中させないとなっ!」


 ショーンは、意識を正面から迫るゾンビ達に戻すと、トリップソードを構え直した。


 彼の目には、決意が宿っていたが、そんな事など、お構い無しにキョンシー型ゾンビは迫る。



「行くぞ、ミー! おっと、こんなんじゃあ~~俺は殺せないぜ? あと、殺さないようにして、何回か切りつければ」


「ガアッ! グガアッ! グルアア? ?…………」


「分かってるにゃあっ! 援軍が戦闘に加わる前に、私たちは敵を押し戻すにゃっ!」


「グギャッ!?」


「グエッ!」


 ショーンの声は力強く叫び、自らに放たれた手刀を軽く左へ避けると、キョンシー型ゾンビを睨む。


 そして、脇や肩などをトリップソード切り裂き、奴を薬の効果で、混乱させる。



 ミーも、フレッシャー&ゾンビ達の頬を風打棍で、ぶっ叩きながら前へと突き進む。



「援護するわっ! 私達も戦えるものっ!」


「行くぜっ!! ハアッ!?」


「援軍だああああっ!!」


「これで、雑魚どもを切り裂いてやるわ」


 赤服のキョンシー娘は、青龍刀を二刀流で構えながら、敵中で回転しつつ相手を切り裂いていく。


 青服を着ている中華男性は、槍の穂先が波打つ、蛇矛だぼうを構えながら、敵に突進していった。


 黒服の男性キョンシーは、青龍刀から雷撃魔法を放ち、ゾンビ達を感電させる。


 中華娘は、中国剣をグルグルと回しながら、風刃魔法と氷結魔法を組み合わせて、吹雪を放つ。



「凄いな、敵が雷撃で黒焦げになり、吹雪は小さな氷柱つららが、肌を切り裂きまくっている…………俺も負けてられないぜ」


「グルアア? グルアア~~?」


「ギャッ!? グエッ! ガオッ?」


「ギュオオ? グエエーー!?」


 ショーンは、アジア人街の味方が登場して、ゾンビ達を圧倒するさまを目にする。


 そして、我に帰った彼も、トリップソードを振って、連中を次々と切っていった。



 刃に塗られた、薬の効果で、キョンシー型ゾンビは混乱し始め、互いに攻撃し合う。


 殴り合い、腹に蹴りを入れたりする間に、他のゾンビとも入り乱れて、揉み合いになっていく。



「急げ、ミー! 時間がないっ! まだまだ、敵が現れるぞっ! 着地した瞬間を狙うんだっ!」


「分かっているにゃあっ! うにゃああっ!? これでも、喰らうにゃあっ!!」


「じ、自爆するルルルル、ル~~~~!!」


「うわわっ!! また、爆弾野郎が来たよっ! みんな、下がりなっ!」


「これ以上は、不味いっ! 一度後退するぞ、こんな小さなナイフじゃ、いつまでも持たないっ!」


「ギュアアアア」


「グオオオオーー」


 スカルビーマーが、バリケード上に現れると、ショーンは、ゾンビの群れに突っ込む。


 敵は薬によって、混戦しており、ミーも風打棍をプロペラの如く回転させながら、突進していった。



 ボンバーを見て、フリンカは振り回していた、ポイズンソードを止め、一気に踵を返して走る。


 次々と襲来する、ジャンピンガー&マッスラー達を前に、ワシントンは、バックステップし続ける。



「マジかよっ! そっちから、ゾンビ達が来やがったかっ!? 俺も下がらないとなっ! コイツらに喰われちまうっ!」


「にゃああっ!! もう、ここはヤバいにゃ…………敵を押し留めつつ、下がるしかないにゃ…………」


「ウグルアアアア」


「ガアアアア~~」


「ぐっ! ここは、我々も引き下がるしか無いなっ! 蛇矛だぼうでは歯が立たないっ! はああっ!」


「う…………私達も、後退しましょうっ! 今、吹雪を吹かせますからねっ! ふっ!」


 ショーンとミー達は、気合いで勢いに乗ったまま、ひたすら敵を倒しまくっていた。


 しかし、前方のゾンビを薬で混乱させたり、打突で押したりしても、何度でも後ろから現れる。



 ゾンビ達も、マッスラーが小走りで、豪腕を振るいまくり、エングラーが叫び声を放つ。



 青服を着ている中華男性は、蛇矛だぼうを激しく振るわせながら、敵から離れていった。


 中華娘は、中国剣と左手から、風刃魔法と氷結魔法による、猛吹雪を起こしながら下がり出す。



「ショーン、ミー、援護するわっ! 大火球を放つから射程距離から離れてっ!!」


「俺も下がるぜ、鉄球を振るうのが、疲れてきたからなっ!」


「ゴアッ!」


「ぐあっ! うぐうううう」


「弾切れっ! ぎゃあっ!」


 リズが、バリケード上に放った大火球は、炎の雨を降らせて、ゾンビ達を燃やしていく。


 スバスは、ウニ鉄球で、マッスラーを殴ったあと、すぐさま逃げ出す。



 トロールの冒険者は、スピットゲローを相手に棍棒を振るったが、腕を溶かされてしまった。


 ライフルに弾を込めようとした、マンドラゴラの冒険者は、ジャンピンガーに殺られてしまう。



「しまった…………君達も、はやく下がるんだっ! リボルバーで、援護するっ!」


「ここは、私達が、魔法で殿をするから、今のうちにっ!」


「分かってるっ! 撃ちながら逃げるぜっ!」


「先に行かせて貰うぞっ!」


 味方が殺られ始めたのを見て、リオンは射撃しながら、一歩ずつ後ろに下がりだした。


 その背後から、マーリーンも小さな火玉を、両手から交互に連発しまくる。



 黒人冒険者は、群れ牽制するため、ピストルを弾片手で撃ちながら走っていく。


 バックソードを構えながら、白人冒険者は、バックステップした後、後ろに振り返って逃げ出す。



「不味いな、マジで不味い…………もう、これ以上は下がれないぜ」


「あっ! また、援軍が来たにゃっ! 中華街の住人たちだにゃっ! にゃあ? なんか変だにゃ~~?」


「ヒヒーー!!」


「ヒヒーー!!」


 他の仲間たちが、押され気味になり、ショーンは、ジリジリと後退を余儀なくされる。


 同じく、ミーも下がっていたが、不意に聞こえてきた、馬の鳴き声と馬車が走る音に反応する。



「アレはっ!? 馬や御者が、ゾンビ化しているっ!!」


「乗っているのも、キョンシーじゃなくて、キョンシー型ゾンビにゃああああっ!?」


「ガアガア、ガアガア」


「グアアアアーー!!」


 やってくる馬車に、妙な雰囲気を感じた、ショーンとミー達は、思わず叫んでしまう。


 何故なら、馬車には何体ものキョンシー型ゾンビが乗っており、こちらを白眼で睨んでいたからだ。

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