トリップソードを振るっている、ショーンの後ろから、ミーは馬車を睨んでいた。
そして、多数のキョンシー型ゾンビ達が、降りたかと思うと、一気に走り出した。
「不味いぜ、こりゃあっ!? ゾンビ達に挟みうちにされちまう…………」
「どうなっているにゃあ? もしかして、街まで殺られたのかにゃっ!?」
トリップソードを強く握りしめながは、ショーンは、新たな敵の登場に危機感を募らせた。
ミーは、走り出した連中を目で追い、恐怖を感じながらも、釘を投げる準備をした。
「二人とも待って、アレはゾンビじゃないわっ! 援軍よっ!」
「あの四人は、中華街の人間とキョンシー達だっ!」
「そうだっ! 避難民の誘導が済んだから、こっちにきたぞ」
「私達も、戦うわよっ!!」
リズとスバス達は、背後に振り向くと、馬車を見つめながら叫び、再度正面の敵に向き直る。
そして、黒服の男性キョンシーと中華娘たちが、青龍刀や中国剣を手にして、走ってきた。
「ショーンッ! 上だ、キョンシー連中が来るっ! もう弓矢がないから、援護は出来ないっ!」
「向こうからも、格闘タイプが来たわねっ! 私は前のゾンビ達だけしか撃てなっ! 弾切れ…………しかも予備もない」
「火炎魔法で、カーテンをっ! いや、自爆ゾンビが来たわっ! うああっ!?」
「じ、自爆すルル」
「不味いぜ、ウニ鉄球だけじゃ、敵を食い止められないぜっ! 爆弾も煙弾もない…………氷結瓶も使いきってしまったし」
ワシントンは、弓矢を背中に回し、ボウイナイフを片手に、ゾンビ達に立ち向かわんとする。
マシンガンの銃撃が、一瞬止まり、弾切れを覚って、フリンカは背中からポイズンソードを抜く。
二人が見上げる、バリケードには、無数のキョンシー型ゾンビ達が、飛び乗っているさまが見えた。
蒼白い肌に赤い目、そして、不気味に跳び跳ねる素早い動き、格闘術で襲いかかってくる。
連中の口からは、低い唸り声が漏れており、こちらに対して、明確な殺意を向けている。
火炎魔法で、リズは火炎放射や炎のカーテンを作るが、自爆ゾンビは日が着いた瞬間に吹き飛ぶ。
両腕を交差させて、スバスは爆風から身を守り、ウニ鉄球を振り回しながら走っていく。
「はっ! 前からの連中に、気は集中させないとなっ!」
ショーンは、意識を正面から迫るゾンビ達に戻すと、トリップソードを構え直した。
彼の目には、決意が宿っていたが、そんな事など、お構い無しにキョンシー型ゾンビは迫る。
「行くぞ、ミー! おっと、こんなんじゃあ~~俺は殺せないぜ? あと、殺さないようにして、何回か切りつければ」
「ガアッ! グガアッ! グルアア? ?…………」
「分かってるにゃあっ! 援軍が戦闘に加わる前に、私たちは敵を押し戻すにゃっ!」
「グギャッ!?」
「グエッ!」
ショーンの声は力強く叫び、自らに放たれた手刀を軽く左へ避けると、キョンシー型ゾンビを睨む。
そして、脇や肩などをトリップソード切り裂き、奴を薬の効果で、混乱させる。
ミーも、フレッシャー&ゾンビ達の頬を風打棍で、ぶっ叩きながら前へと突き進む。
「援護するわっ! 私達も戦えるものっ!」
「行くぜっ!! ハアッ!?」
「援軍だああああっ!!」
「これで、雑魚どもを切り裂いてやるわ」
赤服のキョンシー娘は、青龍刀を二刀流で構えながら、敵中で回転しつつ相手を切り裂いていく。
青服を着ている中華男性は、槍の穂先が波打つ、
黒服の男性キョンシーは、青龍刀から雷撃魔法を放ち、ゾンビ達を感電させる。
中華娘は、中国剣をグルグルと回しながら、風刃魔法と氷結魔法を組み合わせて、吹雪を放つ。
「凄いな、敵が雷撃で黒焦げになり、吹雪は小さな
「グルアア? グルアア~~?」
「ギャッ!? グエッ! ガオッ?」
「ギュオオ? グエエーー!?」
ショーンは、アジア人街の味方が登場して、ゾンビ達を圧倒するさまを目にする。
そして、我に帰った彼も、トリップソードを振って、連中を次々と切っていった。
刃に塗られた、薬の効果で、キョンシー型ゾンビは混乱し始め、互いに攻撃し合う。
殴り合い、腹に蹴りを入れたりする間に、他のゾンビとも入り乱れて、揉み合いになっていく。
「急げ、ミー! 時間がないっ! まだまだ、敵が現れるぞっ! 着地した瞬間を狙うんだっ!」
「分かっているにゃあっ! うにゃああっ!? これでも、喰らうにゃあっ!!」
「じ、自爆するルルルル、ル~~~~!!」
「うわわっ!! また、爆弾野郎が来たよっ! みんな、下がりなっ!」
「これ以上は、不味いっ! 一度後退するぞ、こんな小さなナイフじゃ、いつまでも持たないっ!」
「ギュアアアア」
「グオオオオーー」
スカルビーマーが、バリケード上に現れると、ショーンは、ゾンビの群れに突っ込む。
敵は薬によって、混戦しており、ミーも風打棍をプロペラの如く回転させながら、突進していった。
ボンバーを見て、フリンカは振り回していた、ポイズンソードを止め、一気に踵を返して走る。
次々と襲来する、ジャンピンガー&マッスラー達を前に、ワシントンは、バックステップし続ける。
「マジかよっ! そっちから、ゾンビ達が来やがったかっ!? 俺も下がらないとなっ! コイツらに喰われちまうっ!」
「にゃああっ!! もう、ここはヤバいにゃ…………敵を押し留めつつ、下がるしかないにゃ…………」
「ウグルアアアア」
「ガアアアア~~」
「ぐっ! ここは、我々も引き下がるしか無いなっ!
「う…………私達も、後退しましょうっ! 今、吹雪を吹かせますからねっ! ふっ!」
ショーンとミー達は、気合いで勢いに乗ったまま、ひたすら敵を倒しまくっていた。
しかし、前方のゾンビを薬で混乱させたり、打突で押したりしても、何度でも後ろから現れる。
ゾンビ達も、マッスラーが小走りで、豪腕を振るいまくり、エングラーが叫び声を放つ。
青服を着ている中華男性は、
中華娘は、中国剣と左手から、風刃魔法と氷結魔法による、猛吹雪を起こしながら下がり出す。
「ショーン、ミー、援護するわっ! 大火球を放つから射程距離から離れてっ!!」
「俺も下がるぜ、鉄球を振るうのが、疲れてきたからなっ!」
「ゴアッ!」
「ぐあっ! うぐうううう」
「弾切れっ! ぎゃあっ!」
リズが、バリケード上に放った大火球は、炎の雨を降らせて、ゾンビ達を燃やしていく。
スバスは、ウニ鉄球で、マッスラーを殴ったあと、すぐさま逃げ出す。
トロールの冒険者は、スピットゲローを相手に棍棒を振るったが、腕を溶かされてしまった。
ライフルに弾を込めようとした、マンドラゴラの冒険者は、ジャンピンガーに殺られてしまう。
「しまった…………君達も、はやく下がるんだっ! リボルバーで、援護するっ!」
「ここは、私達が、魔法で殿をするから、今のうちにっ!」
「分かってるっ! 撃ちながら逃げるぜっ!」
「先に行かせて貰うぞっ!」
味方が殺られ始めたのを見て、リオンは射撃しながら、一歩ずつ後ろに下がりだした。
その背後から、マーリーンも小さな火玉を、両手から交互に連発しまくる。
黒人冒険者は、群れ牽制するため、ピストルを弾片手で撃ちながら走っていく。
バックソードを構えながら、白人冒険者は、バックステップした後、後ろに振り返って逃げ出す。
「不味いな、マジで不味い…………もう、これ以上は下がれないぜ」
「あっ! また、援軍が来たにゃっ! 中華街の住人たちだにゃっ! にゃあ? なんか変だにゃ~~?」
「ヒヒーー!!」
「ヒヒーー!!」
他の仲間たちが、押され気味になり、ショーンは、ジリジリと後退を余儀なくされる。
同じく、ミーも下がっていたが、不意に聞こえてきた、馬の鳴き声と馬車が走る音に反応する。
「アレはっ!? 馬や御者が、ゾンビ化しているっ!!」
「乗っているのも、キョンシーじゃなくて、キョンシー型ゾンビにゃああああっ!?」
「ガアガア、ガアガア」
「グアアアアーー!!」
やってくる馬車に、妙な雰囲気を感じた、ショーンとミー達は、思わず叫んでしまう。
何故なら、馬車には何体ものキョンシー型ゾンビが乗っており、こちらを白眼で睨んでいたからだ。