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第79話 アジア人街への逃走


 爆発が連続して吹き上がる中、ショーンは急いで、テクニカルの走るスピードを上げ続ける。


 その後ろには、トラックや装甲車などが追いかけてきており、さらに豪華客船からも叫び声がする。



「うわああっ! おい、海トカゲ団が車両部隊を出してきたのかっ!」


「しかも、ゾンビのオマケ付きにゃああああっ!?」


 トラックの左右からは、アサルトライフル持つ海トカゲ団員たちが撃ってくる。


 装甲車からは、マシンガンが途切れる事なく、機銃弾を放ってきた。



 ショーンは、車体を襲う金属音に焦りながらも、ひたすら、テクニカルを走らせる。


 その後方からは、フレッシャー&ジャンピンガーが爆走する姿が、ミーには見えた。



「おい、ショーン、これじゃあ? 狙いが定められ無いぞっ!」


「全くだね、反撃するのもまま成らないねぇ~~」


「私は、魔法を使うわっ!」


「トラックは、ともかく、装甲車は…………どうやって、倒すんだ? ありゃあ、俺の爆弾も効かないぞ?」


 ワシントンは、狩猟弓を引くも、トラックの運転席には当たらず、矢がバンパーに弾かれてしまう。


 マシンガンを両手で握り、フリンカは撃ち続けるも、装甲車には当たっても、全然効果がない。



 火炎魔法を操るリズは、横に広がる大きな壁を作り、敵から此方の姿を、一瞬だが見えなくする。


 スバスは、取り敢えず、煙玉や小型爆弾を投げるが、牽制にも成らない。



「んなもん知るかっ! 後ろは任せたっ! 俺は曲がるから、みんな捕まっていろよっ!」


 ショーンは、みんなの文句を聞いても、お構い無しに、テクニカルを走らせていく。



「こっちに曲がれば、海トカゲ団員の攻撃が…………は?」


「前方にも、敵が見えるにゃあっ! バリケードと、連中の橋があるにゃあっ!?」


「奴等が来たぞっ! 撃てぇーーーー!?」


「逃がすな、ここで撃ち殺すんだっ!!」


 左側に曲がって、別な道からアジア人街を目指そうとした、ショーンの目に敵が映る。


 十字路の先では、トラックや木箱を設置して、バリケードが構築されている。



 ミーは、それを見ると中世風の建物を繋ぐ、吊り橋を見上げた。


 当然ながら、それ等からは、海トカゲ団員が発射した、大量の魔法と銃弾が放たれまくる。



「曲がるしかねーー!!」


「にゃあ~~~~!!」


 アジア人街を目指して、ショーンは再度左側へと、テクニカルを走らせる。


 その隣に座っている、ミーは当然ながら急カーブで、遠心力がかかり、思わず叫んでしまう。



「一台、バリケードに突っ込んだわっ! でも、まだ来るよっ! 気を引き締めなっ!」


「煙玉を喰らえっ! これで、他の連中も事故ってくれれば、良いんだがっ!」


「奴等、まだ追ってくるっ! リロードする、その間は援護を頼む」


「火炎魔法を連発すれば、窓に当たって…………」


 トラックが、バリケードの木箱に突っ込むさまを見て、フリンカは険しい顔を変えずに叫ぶ。


 懐やターバンから煙玉を取り出して、スバスは道路に次々と投げおとしていく。



 だが、それでも執拗に、車両部隊は後を追ってきており、煙の中から攻撃してくる。


 リオンが、一発ずつ弾丸をシリンダーに込める中、マーリーンは火炎魔法を連発する。



「あっ! 装甲車が事故ったわ、私も同じ事をするわっ!」


「俺は、トラックの窓を狙うっ!」


 マーリーンの魔法で、窓に火炎球が当たり、視界を遮られた、装甲車が建物に衝突した。


 それを真似して、リズはトラックに火炎魔法を連発するが、中々命中しない。



 ワシントンは狩猟弓で、トラックの運転席を狙うが、窓を割るだけで、運転手は仕留められない。


 そして、その間も敵部隊は追撃しながら、銃撃を止める気配はない。



「後ろは任せてるぜっ! もう少しで、アジア人街だからなっ!」


「ショーン、だとしても着いたら、どうするにゃあ?」


 テクニカルを運転するショーンは、アジア人街の自警団が作った、バリケードを目にした。


 ミーは、そこから何をどうして中に戻るのかと思い、彼に質問してきた。



「んなもん、考えているワケがねーー!?」


「にゃああああ~~! やっぱりにゃあっ!」


 ショーンは、バリケード側からも撃たれまくる中、取り敢えず、右側に向かった。


 彼の答えを聞いて、ミーは叫びながら目を見開くが、再び遠心力で体に重力がかかる。



「とにかく、ここで止まるっ! みんな、降りるんだっ!」


「いきなり、降りろって、強引だにゃあっ!」


「ここで、降りろだと? 仕方ないなっ! 敵が間も無く来るぞ」


「バリケードは、無理だねっ! 向こうの建物に走るすないよっ!」


 バリケード近くの路肩に、テクニカルを停車させて、ショーンは車外へと飛び出る。


 それに合わせて、ミーも飛び出していき、顔を左右に振って、敵や見方を探す。



 ワシントンも、荷台から飛び降りると、狩猟弓を構えながら、トラックや装甲車が来るのを待つ。


 フリンカは、木箱が山積みされた高い塀を見て、ここより向かい側にある西洋建築の建物に向かう。



「襲撃者だっ! 撃ち殺せ」


「魔法を射ちまくるんだっ!」


 バリケードの上から、キョンシー自警団員と白人警察官たちが、アサルトライフルを構える。



「ま、待て、俺たちは行方不明の警察官を連れて来たんだっ! 敵は、向こうだっ! 今来るぞっ!」


「彼の言っている事は、本当だっ! リオン巡査だっ! マーリーンも居るっ!」


「私たちは、彼に助けられたのよっ! だから、通し…………きゃあっ!!」


 何人もの自警団員を前にして、敵意は無いと両手を上げるショーンは、冷や汗を滴しながら叫ぶ。


 リオンも、自警団員や仲間の警察官たちに、両手を掲げながら無事な姿を見せる。



 マーリーンは、事態を説明していたが、そんな彼女を狙って、マシンガンの弾が飛んできた。


 海トカゲ団のトラックや装甲車などが、走ってきて、攻撃してきたからだ。



「ショーン、地面に伏せろっ! 不味いっ! 今、煙玉を投げるっ!」


「ヤバいねぇっ! 銃撃が止んだら、みんな、こっちに来るんだよっ!」


「不味いわっ!? 反撃すら、できないっ! どうすんのよっ!!」


「頭の上を銃弾が、飛び交っている…………ここは、戦場なのかよっ!」


 スバスは、道路に伏せると同時に煙玉を投げて、機銃掃射から身を守ろうとする。


 一方、フリンカは建物の入口に、身を隠しながら仲間たちに向かって叫ぶ。



 リズは、テクニカルの正面側に背を預けながら屈んで、両手で頭を押さえる。


 ワシントンは、荷台の中で伏せながら隠れて、銃撃に当たらない事を祈る。



「うわあっ!? どうすりゃ良いんだよっ! 何も出来ないぞ」


 当然だが、ショーンも身動き一つできず、道路に伏せたまま叫び続ける。



「下がれっ! 射たれるぞっ!」


「不味い、装甲車だあーー!!」


 バリケード上から、機銃掃射を避けるため、アラブ人冒険者と黒人警察官たちは、素早く退避する。



「あれ、連中は向こうに行ってしまったぞ? んん…………ミー、ミー? まさか、死んだのか?」


 暫く続くと思われた銃撃だが、海トカゲ団の車列は、東側に向かって行ってしまった。


 それにより、ショーンは安全になったので、頭を上げながら、遠くに向かった車両部隊を眺める。



 彼は、仲間たちが無事か確かめようとしたが、一人だけ歩道に倒れている人物を発見する。


 それは、身動きしないで、一言も発せず、うつぶせになっているミーだ。



「…………うう? 痛いにゃあ? 擦りむいてしまったにゃあ?」


「何だよ、死んだんじゃね~~のかよっ!」


 ミーは、たんに怪我しただけであり、それを堪えていただけだったのだ。


 それに呆れながら、ショーンは彼女を立たせつつ、思わず大声で叫んでしまった。



「それより、装甲車の連中は、何処に向かったんだ?」


「分かんにゃいにゃ? それより、ゾンビも向かって来ているはずだにゃあ?」


「装甲車の行き先は、分かんないわ? いったい、何で私達を放置したのかしら?」


「そんな悠長な話しはしてられないぜ? 海トカゲ団の攻撃とゾンビの大群が向かっているんだからなっ! 矢は足りるだろうか?」


 ショーンは、居なくなってしまった敵部隊の動きを不自然に思い、首をかしげた。


 ミーは、ゾンビの群れも大集団で向かって来ている事を思いだし、西側を向く。



 疲れた表情で、リズも立ち上がると、両肩から力を抜いて、アチコチを見回す。


 ワシントンは、背中の矢筒を取り出し、中身を数えたあと、荷台から降りる。



「大変だっ! 北西にある門に大量のゾンビ達が押し寄せているっ!」


「東側には、海トカゲ団が襲撃して来ているぞっ! どうするっ!」


 バリケードの上では、キョンシー兵士と、白人冒険者たちが慌てて、混乱している様子が見えた。

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