ショーン達が、受付部屋で、ゾンビ達や格闘ゾンビと対峙している。
「グルッ!!」
「ガルッ!?」
「ぐううううっ! コイツら、強いぞっ! 噛む事より、殴る事を優先してくるっ!」
「足技まで、使うからねぇ~~? 並みのゾンビじゃあないねっ!」
「ガアッ!」
「キョンシー!! それに、アジア人街の住民が、ゾンビ化したんだにゃあっ!!」
「グルアッ!」
キョンシー型ゾンビは、ショーンの首を狙って、ラリアットを喰らわせようとする。
それを避けた、彼の前に女性キョンシーからは鋭い蹴りが放たれており、腹から全身に衝撃が走る。
ボクサーのように、フリンカは右腕を突き出したが、それも敵は軽く回避してしまう。
ミーの風打棍による打突も、相手は後ろに宙返りしながら、交わしてしまった。
「そろそろ、炎の壁が消えるわっ! 通常の魔法を射つわねっ!」
「くっ! なら、もう少ししたら、弓矢を射たないとなっ!」
「俺は、一か八か…………ショーン達を援護しに行くっ!」
「ゲロロッ!? 」
燃える炎が消え失せるさまを見て、リズは威力を弱めた、火の玉を何発か発射し始める。
そう言いながら、奥から走ってくるゾンビ達に対して、ワシントンは狩猟弓から矢を放つ。
スバスは、二人が援護している間に、床に這いつくばりながら、ショーン達の元へと向かっていく。
廊下の奥からは、スピットゲローが相変わらず、強酸を吐き飛ばしていた。
「リズ達も苦戦しているのか? うっ! よそ見している暇は無いかっ!?」
「ショーン、行くにゃあっ!」
「グルアアッ!」
「ウオーーーー!!」
「うわあっ! ぎゃっ!」
「ぐああっ!」
トリップソードで、キョンシー型女性ゾンビの腕を切って、ショーンは反撃を避けるために下がる。
ミーは、リーチの長い風打棍を頭上で振り回しながら、連中を弾き飛ばしていく。
だが、何度も斬られようが、叩かれようとも、キョンシー型ゾンビ達は、前に向かってくる。
サメ人間の海トカゲ団員は、短刀で応戦していたが、頬を拳で殴られて後ろに吹き飛ばされる。
インキュバスの海トカゲ団員も、回し蹴りを喰らって、口から吐血しながら膝を突いてしまった。
「かか、か?」
「ごはあっ!」
サメ人間の海トカゲ団員は、短刀を握ったまま、机に背中を預けて、白眼を向いている。
インキュバスの海トカゲ団員も、床を血で真っ赤にしながら倒れている。
「何て威力だ? まともに喰らうのは不味いっ!」
「だったら、どうするにゃあ?」
「こうするんだよっ! 剣や棍棒がダメなら、力技だよっ! てね? あ?」
ショーンは、キョンシー型ゾンビの鋭い手刀を、間一髪で避けながらも叫ぶ。
連中の攻撃を、風打棍で受け止めながら、ミーは防御に徹している。
このように苦戦する中、フリンカは事務机を持ち上げて、敵を見た。
すると、キョンシー型女性ゾンビが、味方であるはずのゾンビ達を攻撃している姿を目にした。
「薬が効いてきたんだっ!」
「なら、好都合だねっ! そら、そら」
妙な動きをし始めた、キョンシー型ゾンビを観察して、ショーンは理由を考察した。
その間に、フリンカは持ち上げた事務机を、ガンガン敵に向かって、勢いよく放り投げた。
「グエッ? ギャアッ!」
「ギャアアッ!」
「ゴア~~~~」
「ギュアーー!!」
キョンシー型ゾンビ達は、事務机が体に当たったり、下敷きにされていく。
「よし、今だっ! おらっ! こうやって、頭を踏み潰せばっ!」
「ショーン、間に合ったか? 俺も最後くらいは…………」
「ギャアッ!?」
「ギャアッ!!」
ショーンは、机の下敷きになっている、キョンシー女性型ゾンビに、止めを刺した。
戦いに何とか間に合った、スバスはウニ鉄球をジババタと床で暴れる、敵の頭に振り下ろす。
「終わったな? ワシントン、リズッ! そっちは、今どうなっている?」
敵を殲滅し終えると、ショーンは廊下で射撃している仲間たちの名前を呼ぶ。
「グアア…………」
「ゲロローー!?」
「こっちも終わったぞっ! ゾンビ化した奴は今殺したっ! 他の奴は、二人とも強酸に頭を殺られて、ゾンビ化すら出来なかった見たいだな」
「スピットゲローは、火炎魔法の連発で焼き殺せたわ」
ワシントンは、狩猟弓を下げると、ショーンの方を向きながら答えた。
火炎魔法を連発しているリズも、スピットゲローの体を炎上させたが、それを険しい顔で睨む。
「分かったっ! そっちは左右に警戒を続けてくれっ! おいっ! ここで、何があったんだ」
「カハッ! 俺たちは監視と起爆を頼まれていた…………しかし、警察官たちが入って来たんだ…………」
ショーンは、まだ息のある海トカゲ団員を探すと、インキュバスが目に入った。
「おいっ! 確りしろ、誰に殺られたんだっ!」
「奴等は、二階の監視所に鍵を掛けて、閉じ籠っている? そして、牢屋の電子システ…………を開け? ガハッ!」
彼を起こした、ショーンは何があったか聞いてみると、インキュバスの海トカゲ団員は答える。
「た、頼む、内臓が殺られて苦しいんだ? 一思いに?」
「分かった、もう喋らなくていい…………」
吐血しながら、苦しそうに話すインキュバスを、ショーンは首を切って、楽にしてやった。
「ふぅ? これで、海トカゲ団による爆破計画は中止になったな? 残るは、リオンとマーリーン達を探す事だけだ」
「ショーン、あそこに監視カメラがあるにゃあ?」
戦闘が終わり、ショーンは溜め息を吐くと、ミーは天井の隅にある、監視水晶を指差す。
「おいっ! リオン、マーリーン、お前らを助けに来たんだ? 監視室から出てこいっ! 今から上に迎えに行くからな」
「これは、変装しているんだからね~~とっとと、脱がないと」
トリップソードを仕舞うと、両手を振って、ショーンは二人を救助しに来た事を報せる。
そこら辺に、OLPロゴが書かれた、青いアーメットや鎧を、フリンカは躊躇せずに捨てていく。
「上に行く必要は無い? 今、来たからな…………有り難う、助かった」
「敵を殲滅してくれたのね? 二人とも無線機が戦闘中に壊れて、連絡できなかったのよ」
「それなら、仕方ないが? とにかく、今はアジア人街が包囲されている状況なんだっ! 急ごうっ!」
「ショーンの言う通りさっ! 海トカゲ団も撤退しているし、私たちも逃げようじゃないかっ!」
みんなが変装用に着ていた、海トカゲ団員の衣服などを脱ぎ捨てると、奥のドアが開かれた。
そして、リオンとマーリーン達が、ドアを開けながら室内に入ってきた。
すると、ショーンは外に向かって、事態を説明しながら歩いていく。
フリンカも、彼の後を追いながら、警察署から出ると、テクニカルへと飛び乗った
「よし、ミーは助手席を頼むっ! フリンカ、マシンガンを頼むぜっ! ワシントン、リズ、スバス達は何かあったら攻撃を頼んだぞっ!」
「分かってるにゃあ~~よっ!?」
「その時は、俺もリボルバーを射つからなっ!」
「私も、この特殊警棒で火炎魔法を扱えるわ」
運転席に乗ると、ショーンの隣には、ミーが座り、エンジン音が鳴り始める。
もちろん、リオンとマーリーン達も戦いに備えて、後ろの荷台で周囲を警戒していた。
「なら? リオン、マーリーン、お前らも後ろを頼んだぞ」
そう言いながら、ショーンは豪華客船から敵を惹き付けぬように低速で、テクニカルを走らせた。
と思いきや、いきなり港の方から爆発音が鳴り響き、辺り一帯に木霊した。
「うわあっ!? な、なんだ、爆発がしたっ! まただっ! 海トカゲ団は、殲滅したんじゃねーーのかよっ!」
「まさか、まだ起爆チームが署内に残っていたのかにゃあっ!?」
「或いは、他の建物にも監視チームが存在していまのかも知れないっ! くっ! ゾンビが来るっ! ピストルを射つ準備をしないと」
「私も、警棒でっ? て、敵車両が近づいて来るわっ! 別動隊よっ!」
爆発が連続して起こり、ショーンは急いで、テクニカルをの走るスピードを上げた。
そんな激しく揺れる車内で、ミーは顔を蒼白にさせながら、後ろの爆炎をバックミラーで眺める。
もちろん、リオンは直ぐさま、リボルバーのシリンダーをずらして、残団数を確認する。
マーリーンは、後方に目を向けると、爆煙とトラックや装甲車などを目にした。