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第30話 出発、救出に向かえっ!


 ショーン達は、元来た道を戻り、装甲トラックを運転しながら、沿岸警備隊の事務所を目指す。



「あと少しで、事務所の裏側に着くな?」


「ショーン、それより、連中…………あの二人と何かあったんだろ? 差し支えなければ、私達に教えてくれるかい?」


 車両部隊が、襲撃された交差点にまで、ショーンは戻ってくると、運転しながら呟く。


 フリンカは、海トカゲ団の幹部二人に関する質問を気まずそうな顔でした。



「ああ、あの連中か? ライルズの野郎とは、過去に因縁があってな…………運転手のビッチも同じ感じで憎たらしいって、理由があるんだわ」


 ショーンは、できるだけ簡単に、連中との関わりを話すが、本当は教えたくはない。



「あとは言わなくても、何となく察しができるだろう?」


「う~~? 分かったわ、これ以上は効かない事にするよ」


 過去に、二人と問題があって、ショーンは散々な目に合わされた。


 話の内容から、フリンカも何となく、彼が辛い思い出があると、察する事ができた。



「それよか、お前の筋力は凄いな? 木箱を軽々と持ち上げるとは、驚いたぜ」


「にゃあ~~! アレは、凄まじかったにゃっ!」


 ショーンが話題を変えようとしたら、後ろからミーも話しかけてきた。



「私は、鍛えまくってるし、ラテン系ヒューマンとオークのハーフだからね? 並みの男じゃ、相手に成らないわよ」


 フリンカは、左腕に力を入れて、ムキムキの筋肉を強調する。



「私を、スケベ目的で襲ったり、ベッドに誘うバカは、何人も病院送りにしてやったか」


 怪力を誇示して、さらに喧嘩自慢をする、フリンカは中々の美女だ。


 彼女が持つ筋肉と、ナイスバディーで、野性的な雰囲気は、男性を強く惹き付けるだろう。



「頼もしいな、でも、その怪力を俺に向けないで欲しいぜ」


「格闘技じゃ、正面から戦ったら負けちゃうにゃ~~」


 ショーンは、戦闘でも活躍していた、彼女が味方であって、本当に心強いと思う。



 ミーも、格闘家ではあるが、自身の拳では、力勝負だと決して敵わないだろうと覚る。



「そう言っている間に、事務所に着いたぞ」


「さっさと、荷物を下ろしましょう」


「待ってたぞ、さあ荷物を下ろしてくれ」


「半分は、武器屋に持っていってくれ」


 後部ドアを開けた、ワシントンは重たい木箱を、せっせと運び出す。


 リズも、段ボール箱を持ち上げると、すばやく車内から出ていく。



 それを、緑色の服を着ている冒険者らしき、ワータイガーは受けとる。


 黄色い布を首に巻いており、ベージュの服装をしている、アラブ人男性も荷物を持ち上げる。



 物資を事務所に持っていくには、警備も含めて、何人もの人手がいる。


 だから、彼等以外にも、数人の人員が装甲トラック周辺で、慌ただしく動いていた。



「よし、敵はいないようね?」


「早く持っていってくれ」


 緑色の包帯を巻いた、ミイラ女は両手で、クロスボウを構える。


 棍棒を肩に担いだ、オークは周囲を警戒して、目をキョロキョロと動かす。



「よっと、よっと、よっ! 頼むぜ」


「任せときな」


「これを運び出さなきゃねぇ」


「うわっ?」


 ショーンは重たい袋を、トロールに手渡すと、彼は軽々と担いで、事務所に持っていく。


 フリンカも木箱を、二つも両肩に抱えて歩いていくが、それを見て、ホブゴブリンは驚いてしまう。



「私達も運ぶにゃ」


「こっちは、私が持つ」


「面倒だが、はやく終わらせないとな」


「早く持っていくぞ」


 ミーは、黒服のキョンシー女性とともに、細長い木箱を、二人で事務所の手前まで持っていく。


 ワシントンは、スイカが詰まった袋を、白人冒険者に手渡す。



「作業は終わった」


「はやく、助けに向かってくれ」


「ふぅ? 分かった、出発する」


「行くよ、ショーン」


 水色の服装をした、黒人男性が物資を運び終えると、そう告げた。


 ゾンビ男性も、マルルン達を心配しているのか、不安そうな顔を向ける。



 もちろん、ショーン達は最初から、彼等を救出する積もりである。


 なので、フリンカと彼は素早く装甲トラックに乗り込み、エンジン音を吹かせた。



「待ってろよ、マルルン…………」


 こうして、ショーン達は装甲トラックで、マルルン達を救いに行く。


 幸いな事に、道路には、一体のゾンビも存在せず、しばらくは安全に進むことができた。



「目的地の場所が見えて来たぜ…………凄いな、ここからでも、ゾンビが見える」


「引き殺そうにも、あの数じゃあ、逆に止められてしまうわね」


 余りにも、ゾンビの数は多く、ショーンは不味いと思って、装甲トラックを止めてしまった。


 このまま進めば、連中に走行音で気づかれてしまうと思ったからだ。



 フリンカも、ドアを静かに開けて、車内から路上に飛び降りた。


 それから、敵を睨みつつ、ロングソードを右手で握りしめる。



 十字路には、うじゃうじゃと大量の動く死者たちが、ひしめきあっていた。



「鍵は、もちろん掛けた…………それから、どうするかな?」


「ここは開けた場所だよ、このまま居たら見つかるよ」


「あんなに数が多いとは、ヤバイにゃっ!」


「これでは、俺の狩猟弓は、使えないな? どこかに道は無いものか?」


 前方に位置するゾンビを前にして、ショーンは困り果てる。


 彼と同様に、フリンカも他の道を探して、目をキョロキョロと動かす。



 後部ドアから出てきた、ミーも正面の群れを見て、目を丸くさせる。


 自慢の狩猟弓でも、連中を倒しきれないと考えた、ワシントンは両腕を組みながら悩みだす。



「俺の爆弾は、アイツらを吹き飛ばせるほど、威力は無いぞ」


「私の魔法なら全部を燃やせるけど、他のゾンビを呼び寄せてしまうかも知れないわ」


「んっ! みんな、あそこを通るとしよう? あそこから上に行けば、楽に通れる」


「おお、あの屋上からなら、上に行けるなっ!」


 ここでは、スバスの持つ爆弾は、かえって敵を誘き寄せてしまうだけだ。


 リズの火炎魔法も、ゾンビを何体か倒せるだけで、音や炎などで連中を刺激してしまうだろう。



 十字路の両側手前には、店屋が存在するが、他も似たような建物が、いくつも立ち並ぶ。



 ワシントンは、右側の屋上を眺めていたが、そこは屋根ではなく、柵となっていた。


 そこに投げられた、フック付きロープを見て、ショーンは早速それを掴む。



「先に行くぞ、着いてきてくれるな」


「持ってきて、良かったなっ! 倉庫にあった物で作ったんだっ! マンションにあった奴を真似てな」


「とにかく、上に急ぎましょうっ! 次の建物への移動は、それから考えれば」


「そうだにゃ、上に行けば安全だにゃっ?」


 ショーンとワシントン達は、ロープを登っていき、屋上から辺りを見渡す。


 後ろから、リズとミー達も上がってきて、登りきると路上を見渡す。



「ふむ? この数は何だろうな?」


「さあな、それよりも次の建物に行くぞ」


 スバスは、道路を歩くゾンビの群れを見ながら呟くが、ショーンは先を急ぐ。


 彼等は、屋上から屋根に、そこから建物の中へと、どんどん進んでいく。



 時おり、眼下の路上を眺めて見れば、やはり、うじゃうじゃと動く死者たちが蠢いている。


 それは、何処までも続き、地上に降りられる場所が見つけられない。



 やがて、十字路に来た彼等は、向かい側へと、フック付きロープを投げて進む。


 これを、何度も繰り返して、道なりに目的地に向かっていると、いきなり銃声が轟いた。



「下からだっ! 頭を下げろっ!」


「何なの? いったい、誰がっ!」


「奴等が来たぞっ!」


「ここの食糧は、渡さないっ!」


「ギュアアアアーーーー!」


「グオオオオッ!!」


 ショーンとリズ達は、赤く緩やかな三角屋根の上で、敵から見えない方に、すばやく伏せた。


 そんな彼等を狙って、チンピラ達が、ピストルを撃ちまくってきた。



 さらに、地上を歩くゾンビ達も音に反応して、騒ぎ始めた。


 その中には、強敵であるフレッシャー&ウォーリアー達まで見えた。

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