明朝、アパートの一室で、ショーンは目を覚まして、大きな
「ふぁああ…………おっと、もう朝か?」
ベッドから下りた、ショーンは武器や装備を身につけると、玄関から廊下に出ていく。
昨晩、彼は割り当てられた部屋に入ると、すぐさま、ぐっすりと眠ってしまったのだ。
「ショーン、どうかしら? 似合う? この腕輪は?」
「金色の蛇の腕輪か…………死体から剥ぎ取ったのか」
左側の窓から、太陽光を浴びつつ、廊下を歩いていると、リズが声をかけてきた。
その声を聞いて、後ろに振り向くと、ショーンは彼女を目にした。
「ええっ! これで、大火力の魔法を放てるし、魔力量も大幅アップしたわ」
「そうか、それじゃあ? 今まで通り、援護射撃を頼むぜ」
リズは、踊るように両腕を振り回しながら、笑顔で、金ピカ腕輪を見せびらかす。
ショーンは、それを見ながら、戦闘で後ろから、強力な支援攻撃が得られると思った。
「え、それだけっ!? もっと、何かないの?」
「ああ、あ? 似合うな、それ、似合うよ、うん」
女子として、褒めて貰えると期待していた、リズは不満顔になる。
それを察した、ショーンは取り敢えず、適当に彼女が喜びそうな言葉を答えた。
「でしょっ! でしょっ! ね? きっと、私に装備して貰うために、この子も作成されたのよ」
「まあ、そうだろうな…………そうだよ、うん」
リズは、元気よく体を再び回転させながら笑顔を見せると、ショーンは彼女の尻と胸に目を向ける。
乙女心の方には、少し疎い彼だが、やや太りぎみな彼女の肉体に関しては、やはり反応してしまう。
「うぅん…………とにかく、リズの魔法は実戦で試して貰うとして、飯を食いに行くか?」
「みんな準備は、出来てるわ? あと、ショーンだけが食べてないのよ?」
しかし、何時までも見惚れていると、セクハラとか言われるかも知れない。
そう思った、ショーンは素早く、リズに視線を察知される前に、話題を切り替えた。
「ふぁっ! やべ…………寝過ごしたか?」
だが、肝心の食事に遅れたと思った、ショーンは凄く焦ってしまう。
「いや? 昨日、自分で言ってたじゃない? 明日は飯を食ってる余裕はない、できるだけ軽食で済ませてから、マルルン達を早く助けに行くぞってさ?」
「あーー? あ、そんな事を言った、かーー? 飲んでたからなあ、覚えてねぇわ」
リズの言っている事を、すっかり忘れて、全く覚えてない、ショーンは情けない声を出してしまう。
「まあ、いいわ、俺は適当なパンと牛乳で済ますわ」
「全く、ちゃんと栄養を取らないと、ゾンビに負けちゃうわよ?」
いい加減な性格のショーンは、食事も簡単な物で済ませてしまおうかと考えた。
だが、彼の身を案じるリズは、まるで母親みたいに諭そうとした。
「心配すんな? 昨日は食いすぎ&飲みすぎたくらいだしな」
「はあ~~分かったわ…………それじゃ、私は先に装甲トラックまで行ってるからね」
ショーンは、そう言いながら両手を天に向けて、背筋を真っ直ぐ伸ばす。
そんな彼に対して、いくら叱っても無駄かと思った、リズは廊下を進んで行った。
「おうっ! またな」
こうして、リズと別れてから、ショーンは日陰に包まれた、アパートの入口から出ていく。
「ショーン、連中と取引して、武器を補充できたぞっ!」
「おっ? スバス、どんな武器だ」
今度は、スバスが現れて、すごく自信満々な表情を見せてきた。
ショーンは、パソコン関係から手作業まで、得意な彼の新作武器に興味を持った。
「まず、俺の鉄球だが? 元々のトゲに長い釘を多数追加して、鋭さを増加させたんだっ! ネイルド鉄球とか? トゲトゲ鉄球って、感じだな? サイード爺さんに頼んだら溶接して作ってくれた」
「鋭いトゲのある鉄球か? 確かに物騒な感じに仕上がっているな? まるで、ウニやハリセンボンに見えるぞ」
スバスが見せた鉄球は、黒玉に生えていた、トゲトゲの中に、細く鋭いスパイクが何本もあった。
ショーンは、それを眺めると、高級食材である魚介類を思い浮かべて、口から
「それと、爆弾を作る代わりに連中から材料を貰ったり、ここにある材料を使って、小型爆弾と手製地雷を作ったんだっ! その報酬として、こちらも大量に貰ったがな」
スバスは、爆薬を扱う事ができるため、小型爆弾を作る能力は高い。
それ故、彼は火薬と様々な材料を用いて、簡易の爆弾が作れるワケだ。
「どちらも、小石や釘を混ぜて、火薬量も増したから、威力は上がっている? あと、ワシントンの爆裂ボルトも強化できた」
「そうかい? しかし、それなら俺の武器も、今度は改造してくれよ? ゾンビも強い連中が多くなって来ているからな」
武器の改造により、スバスは自身だけでなく、チーム自体を戦力強化したと語る。
そんな彼に、ショーンも自分の使うショートソードを強力な武器にしてくれと頼んだ。
それは、今まで戦ってきた、ゾンビ達は段々と進化してきている事が分かっている。
だから、何らかの対抗策が必要であり、新種に勝てるような物を用意しようと言うワケだ。
「分かっている、だが、今度だな? 今は、マルルン達を救出しに行かないと成らんし?」
「だなーー? ま、その時は頼むわ、ん?」
時間や材料が無いから、今度だと言って、スバスは頼みを断った。
確かに、今は目的地に向かい、マルルン達を救うことが先決だと思った、ショーンも頷いた。
そして、二人が目を向けると、そこは倉庫の裏であり、慌ただしくBB団員たちが走っていた。
灰色の服装に、赤い帽子などを身につけた彼等は、忙しそうに動いている。
「西門の方に、ゾンビが来ているらしい? 銃弾を持って来いだとよっ!」
「仕方ない、行くしかないな」
「北側から、海トカゲ団が来やがった」
「昨日の報復だなっ! また、蹴散らしてやんよっ!」
赤いバンダナのBB団員は、アサルトライフルを抱えつつ、西側へと走っていく。
赤いターバンのBB団員も、マジックケーンを持ちながら駆け出していく。
丸坊主の黒人BB団員は、手裏剣やフランジメイスを持って、北側に向かっていった。
赤モヒカンの白人BB団員も、ゴルフクラブと火炎瓶を片手に、勢いよく疾走していく
「慌ただしくなって来たな? ここも、完全には安全な場所じゃないようだな」
「どうやら、そう見たいだな…………どこも、安全な場所なんて無いのかも知れない」
スバスとショーン達は、BB団員たちを見て、戦場に立っているような気持ちになった。
「お前たち、昨日は世話になってしまったな? ここで、ワシは囚われてたんじゃが、その間に車の修理をさせられててな…………お前さんらの装甲トラックも整備しておいたから使ってくれ」
「爺さん、武器を改造してくれて、助かったよっ! 感謝するぜ」
「爺さん、色々と済まないな…………とにかく、俺たちはゾンビ狩りに行ってくるから無事を祈っててくれ」
サイード爺さんの言葉を聞いて、スバスとショーン達は、彼に礼を言った。
「ふん、気にせんでええ? さっきも言ったが、お前さん達も助けてくれたんじゃからな? そいじゃ、歳よりは車の修理をしに行くわい」
そう言って、サイード爺さんは倉庫の裏口にある、左側ドアから中に入っていった。
「じゃあ、行くぞっ! 運転は、俺が担当するからな?」
「俺は、後ろの荷台に乗る、後ろから爆弾で敵を倒す」
ショーンとスバス達も、装甲トラックに乗ろうとして、倉庫のドアへと歩いていく。
すると、フリンカとミー達が、荷台の上で腰掛けている姿が見えた。
「待っていたにゃ、私達は準備ができてるにゃ?」
「遅いよっ! 二人とも早くしないと、マルルン達が、ゾンビに食べられるちゃうよ」
「悪いな、遅れてしまって」
「済まないな、直ぐに乗り込む」
ミーは、荷台から飛び降りながら、後部のドアを開いて、中に入っていく。
同じく、フリンカも素早く降りると同時に、助手席に座り始めた。
ショーンは、遅れた事を詫びながら運転席に飛び乗ると、すぐさま、エンジンをかける。
そして、スバスも車内に後ろから入っていき、準備を出撃の整える。
「ショーン、リズやワシントン達も乗っているから、出してくれて構わないよ」
「おっしゃ、なら行くぜ…………って、なんだ?」
フリンカの言葉を聞いて、ショーンは装甲トラックを発進させようとした。
しかし、何故か知らないが、二人の前にBB団員たちが近づいてきた。
「おいっ! 海トカゲ団の連中を見たら、ズタズタに切り裂いてくれよ」
「アイツらを、蜂の巣にしてくれな」
「任せとけ、連中は見つけたら必ず、殺ってやるからな」
「もし、出会ったら、そうしといてやるわよっ!」
よほど、恨みがあるのか、赤いニット帽を被るBB団員は、ランスを担ぎながら頼んできた。
また、顔中に赤い包帯みたいな赤布を巻いた、BB団員も、海トカゲ団員の殺害を依頼してきた。
彼等に対して、ショーンとフリンカ達は、適当に答えると、装甲トラックを敷地内から出ていく。
こうして、彼等は三つある門型の入口へと近づき、一番左側から道路へと出ていった。