ショーン達は、オーシャンリザード団を倒した後、また別なギャング団と対峙した。
しかし、サイード爺さんの仲裁により、彼等と交戦する事なく、何とか和解できた。
「いや、済まねぇな? 爺さんを助けてくれてよ?」
「んにゃ? 礼には及ばないぜ、それより、食糧を貰って良いか?」
「あのトラックもね? それから、その中にある分だけでいいからさ?」
タイソンは、謝りながら礼を言うが、ショーンは彼に物資を要求する。
リズも、運搬と安全な移動には、装甲トラックも必要だと言った。
「あのトラックの中身なんだが? 元々は、アジア街から俺達の拠点に届くはずだったんだよ」
「分かったよ、だか? 他の物資は俺達が頂くからな」
ショーンは、中身の物資に関して、タイソンを説得するために説明する。
「あと、シャワールームを借りていいかしら? こっちは、女が三人も居るし?」
「それなら、サイード爺さんに聞いてくれるか? 俺は、場所は知らんからな」
リズの頼みを聞いて、タイソンは両手を上げて、首を左右に振った。
「ああ~~あ? じゃ、爺さんに聞いてくるわっ!」
「そいじゃ、また後で話そう」
「ああ、こっちも見張りの話があるからな、チンピラ連中を纏めるのも楽じゃねぇぜ」
リズとショーン達は、別れを告げて、倉庫の前から離れていく。
そんな彼等の後ろで、タイソンは愚痴りながらも、部下たちに指示を下しにいった。
「じゃあ、私はシャワーの場所を聞いてくるからね?」
「分かった、分かった、後の事は任せてくれ」
リズも別れを告げて、サイード爺さんを探しに行ってしまった。
一人、残されたまま、ショーンは剣の手入れをしようかと考えた。
「ショーン、無線機を直したんだが、良くないニュースだ…………」
「なんだ、何があったんだ、スバス?」
いきなり、倉庫の奥からスバスが現れて、神妙な顔付きで、話しかけてきた。
それを聞いて、ショーンも怪訝な顔で、内容を確認しようと、彼に近づいていく。
「マルルン達が、目的地に着いた…………だが、ゾンビに囲まれて、立ち往生しているらしい? 目的地の武器店も、周囲をゾンビに包囲されてるとか」
「なんだと、それでっ! 連中は無事なのかっ!」
スバスは、真剣な顔で、無線機から得られた情報を、ショーンに説明する。
「落ち着け…………今日は、もう遅いから助けに行くのは明日だ? それに、彼等は目的地の近くの家に避難しているらしい」
「そう、か? なら良かった…………いや? ゾンビに包囲されているのか、不味いな」
スバスの言う通り、時刻は夕暮れであり、夜に行動するのは危険である。
そして、マルルン達も、今は安全区域だと言って、ショーンを落ち着かせようとした。
「とにかく無線で、沿岸警備隊の事務所にも連絡はしておいたからな…………明日は、そっちで食糧を下ろしてから、マルルン達を助けに行くぞ」
「それなら、明日は早く起きないとな? 連中も、援軍を待っているだろうし」
スバスとショーン達は、段取りを決めると、互いに離れようとする。
「ああ、これから俺は爆弾を作る作業を行う、じゃあな」
「おう、じゃあな~~」
スバスは、倉庫の奥に行き、ショーンは広い敷地を歩き始めた。
「お? ショーン、居たね?」
「BB団と海トカゲ団の事を教えてくれにゃ?」
「俺達は、余所者だからな」
フリンカとミー達は、二大組織の事を質問してくると、ワシントンも背後から現れた。
「あ~~そうか? お前ら、知らねぇよな? オーシャンリザード…………通称、海トカゲ団…………BB団は、ボルドーブラッツって言うんだ」
「海トカゲ団ね~~アダ名かい」
「きっと、それに違いないな」
ショーンが、二大組織の事を話し始めると、フリンカとワシントン達は呟く。
「そうだ…………オーシャンリザード・パーティーは、表では巨大な冒険者家業を中心に、色々な事業を行っている」
「でも、裏では悪い事をって、言うワケだにゃ!」
二人の言葉を、ショーンは肯定すると、今度はミーが答えた。
「その通りだな? ここのチンピラ連中は、きっと傘下のギャング達だろう? 表では、港湾関係や観光業で、莫大な利益を出してるし、政治家とも癒着しているしな? しかし、汚れ仕事は下部組織が担当しているんだ」
「なるほどね~~? んじゃ、早い話し? 奴等はマフィアって事だね」
「この死体を見る限り、凄いな? まるで、軍隊並みの装備だぞ」
ショーンの説明を聞き続けて、フリンカは海トカゲ団が何であるか、大体理解した。
一方、ワシントンの方は、未だ片付けられていない死体を見ながら呟く。
BB団のメンバーは、見張りに向かったり、戦闘で破壊した門を修復したりと忙しい。
なので、未だに遺体が処理されておらず、放置されたままなワケだ。
しかし、放っておくと、ゾンビ化するかも知れないので、後で火葬しようと皆が思っていた。
「それは、警察とかから盗んだのも有るだろうが? 元々、冒険者としては軽装甲車まで保有していたからな…………あと、オーシャンリザード・パーティーだから、OFPな?」
「まあ、だいたい分かったにゃっ! 次は、BB団にゃっ!」
オーシャンリザードの規模は、傭兵としては、一個旅団に匹敵する装備を保有していた。
彼等が被る青い帽子などには、組織のロゴとマークが描かれている。
円内には、黄色いトカゲのシルエットと、左右に波線があり、下にはOFPと書かれている。
ショーンは、死体を眺めながら語り終えると、ミーはBB団について、彼に質問をする。
「BB団か? ボルドーブラッツの略だ、ボルドーの赤ワイン見たいなカラーを使った服装で、海の向こうの黒人ギャング、ブラッツを真似した名前を使ってる」
「連中、確かに灰色の服装に、赤スカーフや赤帽子を使ってるな」
ショーンの話を聞いて、ワシントンは倉庫で作業するBB団員を見て唸る。
「まあ、海トカゲ団をよく思わないチンピラの中には、幾つかのギャング・グループがあってな…………BB団も、その一つだ」
ショーンは、ここマリンピア・シティーでは、冒険者と言う名の警備員を職業にしている。
だから、土地のゴロツキ・チンピラなどが作った組織に関しては、割りと詳しい。
「ここの連中とは、話が通じたが~~? ギャングらしく、一つの組織として纏まりがあるワケじゃないから、他のブラッツとは戦闘になるかも知れないからな」
「なら、厄介な事になるにゃ? そうならない事を祈るしかないにゃーーねっ!」
「マフィア、ギャングの抗争か? これは、面倒な事になってきたな」
ショーン達が、BB団員と協力できたのは、サイード爺さんが仲介してくれたからである。
ミーとワシントン達は、他のブラッツと戦闘に成らないように祈る。
敵は進化した、ゾンビの群れだけではなく、武装している人間も相手になる。
前者は恐ろしい様々な能力を備え、後者は強力な武器や兵器を使う。
しかし、いざ敵対したら、ショーン達も必死で戦うだけだ。
「まあ、しかし、この出島であるマリンピア・シティーでは、ほぼ一つの組織として纏まってると思うがな」
「分かったよ、それじゃあ~~ショーン? あの連中との因縁を教えてくれないかい?」
皆がBB団とも、戦闘になるのを心配した事で、ショーンは、彼等を安心させようとする。
そして、フリンカは幹部クラスである、ライルズとスザンナの事を彼に聞いてきた。
「それは、明日な? 明日…………今日は、もう飯を食って寝よう」
「そうだね、先に腹を満たそうか」
何か思い出したくはない記憶でもあるのか、ショーンは、質問をはぐらかしてしまった。
だが、フリンカも気まずい事を察したらしく、これ以上は、彼の事情に踏み込まなかった。
それから、彼等は死体から装備を回収したり、火葬を済ませて、夜を過ごした。