ショーン達は、食糧を取り戻すべく、自動車整備工場を兼ねた、倉庫に向かおうとしていた。
この建物は、シャッターが三つあり、両端にはドアがあった。
「よし、みんな? 行くぞ」
「待て…………ゴーレムとドローン達は居なくなったっ! ここからは、俺が弓で援護するっ!」
「つまりは、ステルスキルしながら進めって、事にゃあ?」
「一気に行くのも、いいけど、確かに隠密の方が安全に敵を倒せるねぇ」
ショーンは、敵が少なくなったので、一気に勝負を挑もうとした。
しかし、ワシントンは彼を止めながら、自らが考案した作戦を説明する。
それを聞いて、ミーは暗殺しながら戦うのかと思い、得意気な表情を浮かべた。
フリンカは、ロングソードを構えると、何時でも行けるように準備をした。
「なら、援護は任せたぞ、ワシントン」
「ああ、ここから敵を射ち殺す」
「私にも、先導を任せてくれにゃ…………」
ショーンは、ショートソードを右手で強く握り、チンピラ達を睨む。
敷地内を歩くチンピラ達は、僅かな数しか居なくて、みんなドラム缶や木箱の回りを歩いている。
ワシントンは、右側上方へと狩猟弓を構えて、狙いを定めた。
ミーの方は、背中のベルトに黒いスカーフで、棍を閉めて、固定した。
「ミー、何か暗殺技でも、あるのか?」
「さっき言った通り、投擲は任せてくれにゃ」
ショーンの質問に答えながら、ミーは懐から電動サンダーに取り付ける、ギザギザ刃を取り出した。
「私は、先に行って、あっちの敵の数は減らすにゃ!」
「俺は、援護する」
ミーは、背中を丸めながら、物音を立てずに素早く走っていく。
それを見られないように、建物の屋上で見張るスナイパー達を、ワシントンは射殺する。
「フッ! …………」
「次はっ!」
「ぎゃっ?」
「うわっ!?」
ミーが静かに投げた、ギザギザ手裏剣は、魔法使いのチンピラに当たり、後頭部に突き刺さった。
彼女は、次にピストルを持っていた、チンピラに背後から近づき、その首に刃を当てる。
ワシントンによる狩猟弓を使った射撃も、左右の建物に立っていた、スナイパー達を暗殺する。
「ん? 誰か居たような? 気のせいか? う…………」
「誰だ…………って、勘違いか? ぐがっ!」
「はっ!」
「当たってくれ」
「よし、二人とも頼りにしているぜっ!」
「私達も、敵が殲滅されたら行くよ」
ミーは、ドラム缶などの物陰を利用しながら、密かに進み、次々とチンピラ達を倒していく。
ワシントンも、彼女に対して、弓を射ちながら援護して、敵の側頭部に
ショーンは、先に行動する二人を見守りつつ、何時でも突撃できる準備を整える。
また、フリンカも不足の事態に備えて、ロングソードを右手に強く握り締める。
「ねぇ、ショーン? 私は、ワシントンとともに待機しているわ、暗殺は得意じゃないし? いざと成ったら援護するし」
「俺は、着いていくぞっ! ステルスキルはできないが、いざ、銃撃戦と成ったら爆弾を投げて戦えるからな」
「分かった…………リズは待機していてくれ、スバスは戦闘を任せる…………と、言ってる間に制圧が完了したらしい」
リズの扱う火炎魔法は、チンピラ達を狙って射つには、かなり目立つ。
スバスの爆弾や鉄球も、隠密行動には適していないため、二人とも待機しようとする。
しかし、ショーンは敵が潜入に気がつくと思っていたが、呆気なく終わってしまい、拍子抜けする。
戦闘になる可能性を考えていた彼等だったが、チンピラ達は、余りにも弱く人数が少なすぎたのだ。
「ミーが手招きしている、行くぞ」
「後ろは任せろっ!」
ミーの方に、ショーンが走り出すと、仲間たちは彼の後に続いて、倉庫に向かっていく。
ワシントンは、列の最後尾で辺りを警戒しながら、進んでいく。
「こっちだにゃ? いきなり、突入するのは危険だから、どうするにゃ?」
「俺が裏口で、爆弾を使って、敵の注目を集める」
「その間に正面から、俺達は突入するか」
「できれば、静かに行きたいんだけれど、派手に行くしかないねぇ」
ミーは、倉庫の右端にあるドアにたどり着くと、手に釘を持って待機する。
そこに着くと、スバスはチンピラ達を奇襲するべく、裏から攻撃を仕掛けようと、提案してきた。
ショーンは、バックラーとショートソードを構えて、低姿勢になり、突入の準備をする。
ロングソードを両手で強く握る、フリンカも中で暴れる気は満々である。
「なら、私も後ろから行くわ、派手に魔法を連射すれば、敵の注意を惹けるし」
「俺は、正面チームを背後から支援するっ! 敵の銃器に対抗するためにな」
「分かったぜ、二人とも射撃は任せた」
「さあて、私も気合いを入れないとねっ!!」
派手な火炎魔法は、連射が出きるため、リズは援護に徹する事にした。
一方、ワシントンは正面から、チンピラ達と撃ち合い、仲間たちを守ろうかと考えた。
頼もしい援護キャラの二人に、ショーンは射撃を任せて、自らは白兵突撃を敢行しようとする。
フリンカも、前後で敵を挟み討ちにするべく、彼の後ろで、顔を険しくさせた。
「じゃあ、行くぞ、俺達から仕掛けるからな」
「派手に射ちまくった後、入って来てね?」
それだけ言うと、スバスとリズ達は、右側から倉庫の裏手へと回って行った。
こうして、彼等は襲撃作戦を実行に移そうとしたが、いきなり遠くで爆発音が木霊した。
「うわっ! 段々、近くなって来たな? 中に入ったら、はやく奴らの車を奪って逃走しよう? 連中が食糧を盗んだ時に使ってた奴が、まだ残っているはずだ」
「中の連中は、全員やっつけて、さっさと逃げようにゃっ!」
遠くで聞こえた、爆弾が炸裂する音に、ショーンは焦ってしまう。
同じく、ミーも表情を険しくさせながら、ドアを開けようとする。
「ショーンッ! やるぞ、喰らえっ! この野郎っ!!」
「こっちよっ!! 火炎魔法を連射してやるわっ!」
「ぐわっ! な、なんだっ!」
「襲撃かっ! ついに、ここまで来やがったか」
音から察するに、スバスが小型爆弾を幾つか投げて、リズが火炎魔法を乱射しているようだ。
倉庫内からは、チンピラ達が混乱しながら魔法や銃撃で、反撃する音が聞こえる。
「左側から行ったようだな、よしっ! 俺たちも突入するっ!」
「行くよっ! 敵を一気に殲滅するよっ!」
「それじゃ、行くにゃああっ!」
「…………援護するが、俺も向こうのドアから支援を行うっ!」
チンピラ達が、二人の襲撃に気を取られている内に、ショーンもドアを開きながら走っていく。
フリンカも、ロングソードを真っ直ぐに構えながら突撃していく。
室内に突入すると同時に、ミーは右手を振るって、釘を投げ飛ばした。
ワシントンは、いつの間にか、左側正面にあるドアに移動しており、そこから狩猟弓を射っていた。
「このっ! 死にやがれっ!」
「うわあっ!?」
「て、敵襲~~~~!! ぐあ?」
「静かにしな」
左側のドアを狙い、チンピラはピストルを撃っていたが、ショーンが素早く近づき、胸を斬られた。
短杖から雷撃魔法を放ってきた、チンピラだったが、フリンカのロングソードを腹に突き刺される。
「おいっ! こっちからも来たぞっ!」
「気にするなっ! やっちまえっ!」
「凍らせてやるっ!」
「死ねーーーーーー!!」
屋内中央に位置する、軍用装甲トラックの上からは、チンピラが両手から火炎魔法を連射してきた。
その後部からも、アサルトライフルを、チンピラが猛烈に乱射してきた。
二階左側に、三つある作業通路に立つ、チンピラは、マジックワンドから氷結魔法を放ってきた。
また、反対の壁際からも、チンピラが二連ショットガンを射ってきた。
「にゃっ! にゃっ!」
「上の連中は、俺がやる」
「うっ!」
「ぐあ…………」
「うげっ! がは」
「うわああああ?」
チンピラ達による反撃は強力だったが、ミーは釘を投げて、トラックの上に立つ、一人を殺す。
次いで、ナットを指弾で跳ばして、トラック後部から攻撃してくる、チンピラの喉を射ち抜いた。
ワシントンは、左側の作業通路から、氷結魔法を乱射していた、チンピラを狩猟弓で仕留める。
右側の壁に位置するチンピラも、燃え上がった事から、リズが仕留めたと思える。
「やっちまったか?」
「どうやら、そう見たいだね」
こうして、ショーンとフリンカ達は、一気に敵を殲滅する事に成功した。