クロスボウを背負うチンピラは、いきなり目の前に現れた、二人を殴ろうと襲いかかる。
マジックロッドを抱えていた、チンピラも右手から魔法を放とうとした。
「邪魔だっ! ぐはっ!!」
「退けやっ! ぐぶっ!?」
「死ね」
「お前は行かしてやるにゃっ!」
だが、チンピラは殴りかかる前に、ロングソードで、フリンカに首を跳ねられてしまった。
その後ろを走る、チンピラも魔法を放とうとするが、それより先に、ミーの打突を食らってしまう。
「かはっ? く、ぅぅ」
「答えろ、お前らはチンピラだな」
倒れた、チンピラの喉仏に対して、フリンカは切っ先を向ける。
「うぅ? ぐふっ!」
「もう一度、食らうかにゃ~~」
苦しそうに腹を押さえるチンピラに、ミーは涼しい顔をしながら、再び棍を突き出そうと構える。
「わ、分か…………い、言う」
チンピラも、二人を前にして、大人しく従う他なく、情報を吐こうとした。
「なら、何者で、ここで何をしていたか、答えろっ!」
「俺たちは、たんなる見張り役で、ここに来る奴らを撃てと言われてたんだ」
フリンカは、ロングソードの切っ先を少しだけ喉に刺しつつ質問して、チンピラは素直に答えた。
「警備か? 何のためだい…………」
「ひっ!」
「ほかに、本拠地とかは存在するのかにゃ」
「人数は何人だ、それと他の監視場所も教えろ」
かなり怒った表情で、質問を続ける、フリンカに対して、チンピラはビビりながら後ずさる。
それに加えて、ミーとワシントン達も、奴に色々と聞いてみて情報を収集しようと試みた。
「に、人数は三十人だ、本拠地はな…………他にも、監視拠点が、ここを含めて、六か所も存在する」
チンピラは、六人から囲まれて、いつ殺されるのかと心配しながら答える。
「その本拠地は、いったい何処にある?」
「ここから東に行った場所にある、つまり、あのドアから向こうだ」
ショーンによる質問にも、チンピラは死にたくないのか、素直に答える。
「分かったわ、もういい…………喋るなっ!」
チンピラは、全ての情報を吐くと、フリンカにより後ろから首を跳ねられてしまった。
そして、奴は一言も喋る事もなく、立っている力を失い倒れてしまった。
「コイツら、ギャングやチンピラ冒険者にしては、やけにいい武器を持っているわね」
「きっと、警察や軍、騎士団から横取りしたんだろなっ?」
「この騒ぎじゃ、殲滅した部隊もあるだろう」
「他に、密輸や密造していたか? 武器屋やスポーツ用品店から盗んだかにゃ?」
リズは、残虐な光景を見て、少し嫌そうな顔をしつつ、死体から目を背けて呟いた。
ショーンは、連中が強力な銃や魔法武器を持っている理由を考察しながら話す。
ゾンビとの激しい戦いにより、銃器などが軍や警察から盗まれたと、スバスは想像する。
それ以外の入手方法を考えながら、ミーは辺りに置いてある物資を見渡した。
「まあ、いい? コイツは死んだ…………はやく行こう? たぶん、その倉庫に盗まれた食糧はあるはずだ…………また、敵を弓矢で射たないとな」
「行くしかないにゃ…………でも、その前に
ショーンは、仲間たちを連れて、更なるチンピラ達が待ち構えるドアの向こうに行こうとした。
すると、ミーが申し訳なさそうな表情を浮かべながら、頼み事をしてきた。
「あん? ミー、お前は遠距離武器を使い慣れているのか? それなら頼りにできるが」
「一応、投擲訓練はしていたにゃ、これからは敵との銃撃戦が続くだろうし、投擲武器なら音もでないにゃっ!」
「屋上は、スナイパーライフルの予備弾ばかりだったわよ」
「ここに有るのは、エナジードリンクばかりだな? 爆弾とかは無さそうだぜ」
ショーンは、ミーに関して、格闘家のイメージしかなく、投擲ができると聞いて驚く。
そんな彼女に、フリンカは上の部屋には何も無かったと伝え、スバスは爆弾や手榴弾などを探す。
「エナジードリンク…………私は魔力を回復させないと成らないから、貰うわよっ!」
「二階と三階は? 何か使えそうな物は有るか? よっと、矢を拾わないとな」
「二階は、火炎瓶を投げてやったにゃ?」
「私が行ってた、三階も機銃の弾とか、普通のジュースばかりだったわ」
長く戦いが続いた事と、大量に魔力を消費した、リズは感ジュースに手を伸ばす。
チンピラと弓兵たちの死体から、ワシントンは矢を抜き取ったり、矢筒から物色したりする。
ミーは、誇らしげに自分の戦果を言いつつ、工具箱から色々な物を見つけては、懐に入れておく。
死体を蹴っ飛ばして転がす、フリンカも使えそうな道具を探す。
「なら、上に行く必要は無いにゃ? おっ! これと、これ、これも使えるにゃっ!」
「まあ、何を見つけたか知らんが、この先に行くぞ」
ミーは、武器として、かなり使そうな物を見つけたらしく、喜びながら次々と手に取る。
そんな様子を見ながら、ショーンは先を急ぐべく、奥のドアへと向かう。
「ドアは閉めて置こう、ゾンビが入って来たら困るからな? さあ、行くぞ」
「ゾンビとチンピラ達に、挟み討ちされたら、不味いからね」
裏口のドアを開けた、ショーンは仲間たちに早く出るように
フリンカは、悠々と歩きながら外に出ていき、辺りを見渡す。
こうして、彼等はチンピラ達が待ち構える拠点へと近づいていった。
「さて、瓦礫や車両の残骸が見えてきたな? チンピラ達が見張るくらいだから、ゾンビは居ないだろうが、警戒はしないとな…………」
ショーン達は、所々にコンクリート製のバリケードが置かれた道路を通る。
その奥には、何台か無造作に、黒と青のパトカーが乗り捨てられていた。
「ここで、チンピラに襲撃されて、武器を奪われたのか?」
「ドアが開いてる上に、穴だらけ…………どうやら、そのようだな」
ショーンは、パトカーの両脇を通りすぎながら、激しい戦闘を想像して、何気なく呟いた。
ワシントンも、銃撃戦の跡を見ながら、これから戦うチンピラ達も銃を装備していると考える。
こうして、彼等が市街地を通りすぎると、城門のような場所に、たどり着いた
その下から、壁に貼り付いて、向こう側を密かに眺めると、広い敷地に倉庫らしき建物が見えた。
ここは、かなり暗い陰に包まれており、敵からは目立たない場所だ。
敷地内には、複数のドラム缶や木箱などが、周辺に置いてある。
「自動車整備工場と倉庫だ? ロック・ゴーレムと監視ドローンが跳んでる」
「見張りも何人か歩いているわ? 不味いね…………どうする?」
車両整備工場と併設されている、大きな倉庫があり、周囲は建物に囲まれていた。
ここは、まるで要塞のようであり、ゾンビも容易には侵入出来そうになかった。
チンピラ達も、敷地内を見回り、スナイパーの姿もアチコチに確認できた。
それに加え、茶色いロック・ゴーレムとドローン達も警備任務で巡回している。
「不味いな、これは食糧を取り戻すとか、そう言う話じゃないぜっ!」
「くぅ…………見つからない内に、ここから脱出するしかないわ」
ショーンとフリンカ達は、二人とも苦虫を噛み潰したような表情で、チンピラ達を睨む。
「俺の狙撃でも、ここの攻略は難しいな、あの数に装備じゃあな」
「来た道を戻るしかないにゃ? 参ったにゃ~~よ」
「じゃないと、連中に見つかってしまうわね? もし、戦闘になったら私の魔法でも負けちゃうわ」
「爆弾でも使って、派手にやる訳にも成らんしなぁ…………」
ワシントンは、狙撃手や巡回の多さに、自身が使う狩猟弓による暗殺でも、攻略は難しいと考える。
ここは仕方なく撤退するべきだと、ミーは思って、背中を丸めながら呟く。
いくら、火力と連射能力が高いリズの魔法だが、人数が多いと不利だと、彼女は悟る。
小型爆弾を扱う、スバスによる攻撃でも、飛距離と威力の面から、どう考えても太刀打ちできない。
「敵襲~~~~!?」
「敵だっ! 敵だっ!」
「急げ、奴等が来るぞ」
「速く行かないと」
慌ただしく、魔法使いのチンピラは走りだし、倉庫西側へと向かっていく。
ピストルを握るチンピラも、倉庫から出てきて、あたふたする。
バールを握った、チンピラは急いで動き出し、とにかく走っていく。
両脇に、大量の爆弾を抱えた、チンピラは慌てて、倉庫内に逃げ込む。
「うわっ! な、なんだっ! いきなり、何が起きた」
「ヤバッ! 私達は、奴等に見つかっちゃたのかしらっ!」
ショーンと、反対側の壁に張り付いているリズは、チンピラ達の動きに注目する。
「急げ~~~~!? 襲撃者を撃退しろっ!」
「はやく行けっ! ゾンビが来たらしいっ! 北側の門が突破されたっ!」
自動小銃とマジックケーンを持っている、チンピラ達は、二人して西側へと向かう。
その直後、大きな爆発音が起こり、ショーン達は焦ってしまう。
「爆発? どうやら、ゾンビ達が攻撃してきたらしい…………不味いな」
「ショーンッ! これなら、私達も食糧を取り戻して、逃げられるよ?」
チンピラ達の行動を、ショーンは冷静に観察しながら、状況を把握しようとする。
そんな彼に対して、フリンカは混乱に乗じて、連中の隙を突こうと呟く。
「よし、どさくさに紛れて、やっちまおうっ!」
慌てふためき、ゾンビに対処するため、チンピラ達の数が減った。
これを、ショーンも好機と捉えて、倉庫へと向かおうと決心するのであった。