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第23話 チンピラの拠点


 クロスボウを背負うチンピラは、いきなり目の前に現れた、二人を殴ろうと襲いかかる。


 マジックロッドを抱えていた、チンピラも右手から魔法を放とうとした。



「邪魔だっ! ぐはっ!!」


「退けやっ! ぐぶっ!?」


「死ね」


「お前は行かしてやるにゃっ!」


 だが、チンピラは殴りかかる前に、ロングソードで、フリンカに首を跳ねられてしまった。


 その後ろを走る、チンピラも魔法を放とうとするが、それより先に、ミーの打突を食らってしまう。



「かはっ? く、ぅぅ」


「答えろ、お前らはチンピラだな」


 倒れた、チンピラの喉仏に対して、フリンカは切っ先を向ける。



「うぅ? ぐふっ!」


「もう一度、食らうかにゃ~~」


 苦しそうに腹を押さえるチンピラに、ミーは涼しい顔をしながら、再び棍を突き出そうと構える。



「わ、分か…………い、言う」


 チンピラも、二人を前にして、大人しく従う他なく、情報を吐こうとした。



「なら、何者で、ここで何をしていたか、答えろっ!」


「俺たちは、たんなる見張り役で、ここに来る奴らを撃てと言われてたんだ」


 フリンカは、ロングソードの切っ先を少しだけ喉に刺しつつ質問して、チンピラは素直に答えた。



「警備か? 何のためだい…………」


「ひっ!」


「ほかに、本拠地とかは存在するのかにゃ」


「人数は何人だ、それと他の監視場所も教えろ」


 かなり怒った表情で、質問を続ける、フリンカに対して、チンピラはビビりながら後ずさる。


 それに加えて、ミーとワシントン達も、奴に色々と聞いてみて情報を収集しようと試みた。



「に、人数は三十人だ、本拠地はな…………他にも、監視拠点が、ここを含めて、六か所も存在する」


 チンピラは、六人から囲まれて、いつ殺されるのかと心配しながら答える。



「その本拠地は、いったい何処にある?」


「ここから東に行った場所にある、つまり、あのドアから向こうだ」


 ショーンによる質問にも、チンピラは死にたくないのか、素直に答える。



「分かったわ、もういい…………喋るなっ!」


 チンピラは、全ての情報を吐くと、フリンカにより後ろから首を跳ねられてしまった。


 そして、奴は一言も喋る事もなく、立っている力を失い倒れてしまった。



「コイツら、ギャングやチンピラ冒険者にしては、やけにいい武器を持っているわね」


「きっと、警察や軍、騎士団から横取りしたんだろなっ?」


「この騒ぎじゃ、殲滅した部隊もあるだろう」


「他に、密輸や密造していたか? 武器屋やスポーツ用品店から盗んだかにゃ?」


 リズは、残虐な光景を見て、少し嫌そうな顔をしつつ、死体から目を背けて呟いた。


 ショーンは、連中が強力な銃や魔法武器を持っている理由を考察しながら話す。



 ゾンビとの激しい戦いにより、銃器などが軍や警察から盗まれたと、スバスは想像する。


 それ以外の入手方法を考えながら、ミーは辺りに置いてある物資を見渡した。



「まあ、いい? コイツは死んだ…………はやく行こう? たぶん、その倉庫に盗まれた食糧はあるはずだ…………また、敵を弓矢で射たないとな」


「行くしかないにゃ…………でも、その前に投擲とうてき武器を拾わせてくれにゃ」


 ショーンは、仲間たちを連れて、更なるチンピラ達が待ち構えるドアの向こうに行こうとした。


 すると、ミーが申し訳なさそうな表情を浮かべながら、頼み事をしてきた。



「あん? ミー、お前は遠距離武器を使い慣れているのか? それなら頼りにできるが」


「一応、投擲訓練はしていたにゃ、これからは敵との銃撃戦が続くだろうし、投擲武器なら音もでないにゃっ!」


「屋上は、スナイパーライフルの予備弾ばかりだったわよ」


「ここに有るのは、エナジードリンクばかりだな? 爆弾とかは無さそうだぜ」


 ショーンは、ミーに関して、格闘家のイメージしかなく、投擲ができると聞いて驚く。


 そんな彼女に、フリンカは上の部屋には何も無かったと伝え、スバスは爆弾や手榴弾などを探す。



「エナジードリンク…………私は魔力を回復させないと成らないから、貰うわよっ!」


「二階と三階は? 何か使えそうな物は有るか? よっと、矢を拾わないとな」


「二階は、火炎瓶を投げてやったにゃ?」


「私が行ってた、三階も機銃の弾とか、普通のジュースばかりだったわ」


 長く戦いが続いた事と、大量に魔力を消費した、リズは感ジュースに手を伸ばす。


 チンピラと弓兵たちの死体から、ワシントンは矢を抜き取ったり、矢筒から物色したりする。



 ミーは、誇らしげに自分の戦果を言いつつ、工具箱から色々な物を見つけては、懐に入れておく。


 死体を蹴っ飛ばして転がす、フリンカも使えそうな道具を探す。



「なら、上に行く必要は無いにゃ? おっ! これと、これ、これも使えるにゃっ!」


「まあ、何を見つけたか知らんが、この先に行くぞ」


 ミーは、武器として、かなり使そうな物を見つけたらしく、喜びながら次々と手に取る。


 そんな様子を見ながら、ショーンは先を急ぐべく、奥のドアへと向かう。



「ドアは閉めて置こう、ゾンビが入って来たら困るからな? さあ、行くぞ」


「ゾンビとチンピラ達に、挟み討ちされたら、不味いからね」


 裏口のドアを開けた、ショーンは仲間たちに早く出るようにうながす。


 フリンカは、悠々と歩きながら外に出ていき、辺りを見渡す。



 こうして、彼等はチンピラ達が待ち構える拠点へと近づいていった。



「さて、瓦礫や車両の残骸が見えてきたな? チンピラ達が見張るくらいだから、ゾンビは居ないだろうが、警戒はしないとな…………」


 ショーン達は、所々にコンクリート製のバリケードが置かれた道路を通る。


 その奥には、何台か無造作に、黒と青のパトカーが乗り捨てられていた。



「ここで、チンピラに襲撃されて、武器を奪われたのか?」


「ドアが開いてる上に、穴だらけ…………どうやら、そのようだな」


 ショーンは、パトカーの両脇を通りすぎながら、激しい戦闘を想像して、何気なく呟いた。


 ワシントンも、銃撃戦の跡を見ながら、これから戦うチンピラ達も銃を装備していると考える。



 こうして、彼等が市街地を通りすぎると、城門のような場所に、たどり着いた


 その下から、壁に貼り付いて、向こう側を密かに眺めると、広い敷地に倉庫らしき建物が見えた。



 ここは、かなり暗い陰に包まれており、敵からは目立たない場所だ。


 敷地内には、複数のドラム缶や木箱などが、周辺に置いてある。



「自動車整備工場と倉庫だ? ロック・ゴーレムと監視ドローンが跳んでる」


「見張りも何人か歩いているわ? 不味いね…………どうする?」


 車両整備工場と併設されている、大きな倉庫があり、周囲は建物に囲まれていた。


 ここは、まるで要塞のようであり、ゾンビも容易には侵入出来そうになかった。



 チンピラ達も、敷地内を見回り、スナイパーの姿もアチコチに確認できた。


 それに加え、茶色いロック・ゴーレムとドローン達も警備任務で巡回している。



「不味いな、これは食糧を取り戻すとか、そう言う話じゃないぜっ!」


「くぅ…………見つからない内に、ここから脱出するしかないわ」


 ショーンとフリンカ達は、二人とも苦虫を噛み潰したような表情で、チンピラ達を睨む。



「俺の狙撃でも、ここの攻略は難しいな、あの数に装備じゃあな」


「来た道を戻るしかないにゃ? 参ったにゃ~~よ」


「じゃないと、連中に見つかってしまうわね? もし、戦闘になったら私の魔法でも負けちゃうわ」


「爆弾でも使って、派手にやる訳にも成らんしなぁ…………」


 ワシントンは、狙撃手や巡回の多さに、自身が使う狩猟弓による暗殺でも、攻略は難しいと考える。


 ここは仕方なく撤退するべきだと、ミーは思って、背中を丸めながら呟く。


 いくら、火力と連射能力が高いリズの魔法だが、人数が多いと不利だと、彼女は悟る。


 小型爆弾を扱う、スバスによる攻撃でも、飛距離と威力の面から、どう考えても太刀打ちできない。



「敵襲~~~~!?」


「敵だっ! 敵だっ!」


「急げ、奴等が来るぞ」


「速く行かないと」


 慌ただしく、魔法使いのチンピラは走りだし、倉庫西側へと向かっていく。


 ピストルを握るチンピラも、倉庫から出てきて、あたふたする。



 バールを握った、チンピラは急いで動き出し、とにかく走っていく。


 両脇に、大量の爆弾を抱えた、チンピラは慌てて、倉庫内に逃げ込む。



「うわっ! な、なんだっ! いきなり、何が起きた」


「ヤバッ! 私達は、奴等に見つかっちゃたのかしらっ!」


 ショーンと、反対側の壁に張り付いているリズは、チンピラ達の動きに注目する。



「急げ~~~~!? 襲撃者を撃退しろっ!」


「はやく行けっ! ゾンビが来たらしいっ! 北側の門が突破されたっ!」


 自動小銃とマジックケーンを持っている、チンピラ達は、二人して西側へと向かう。


 その直後、大きな爆発音が起こり、ショーン達は焦ってしまう。



「爆発? どうやら、ゾンビ達が攻撃してきたらしい…………不味いな」


「ショーンッ! これなら、私達も食糧を取り戻して、逃げられるよ?」


 チンピラ達の行動を、ショーンは冷静に観察しながら、状況を把握しようとする。


 そんな彼に対して、フリンカは混乱に乗じて、連中の隙を突こうと呟く。



「よし、どさくさに紛れて、やっちまおうっ!」


 慌てふためき、ゾンビに対処するため、チンピラ達の数が減った。


 これを、ショーンも好機と捉えて、倉庫へと向かおうと決心するのであった。

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