ショーン達は、ゾンビの群れを殲滅した事で、安全を確保した。
「このトラックの中には…………」
「何が有るのか、見てみ…………」
「ウガア~~~~!!」
ショーンとスバス達が、ドアを開けた途端、巨体を誇るマッスラーが現れた。
「な、やべーーーー!?」
「うわあっ!!」
「不味いっ! 離れろっ!」
「今、やるわっ!」
ショーンとスバス達は、咄嗟に離れたが、腰を抜かしてしまった。
そんな二人を、叩き潰すべく、マッスラーは両腕を組んで、荷台内部から飛び降りた。
このままでは、彼等が殺されてしまうと思った、ワシントンは矢を射った。
リズも、大きな火玉を奴の後頭部を狙って、マジックロッドから放った。
「ウガアーーーーーー!?」
どうやら、無防備な後頭部を射たれた、マッスラーは叩き潰しを放つ事なく、フラりと倒れた。
「危なかったぜ、助かったよ、まさか中に入っているとはな」
「全くだぜ…………こんな奴が、何で入ってたんだ?」
「そんな事より、もう中に敵は居ないのか」
「周りは、大丈夫そうだけどにゃ? でも、念のために警戒は解かないにゃ~~」
「だね、私は前を見てくるよ」
ショーンとスバス達の間に、ドシンと音を立てながら、マッスラーは倒れた。
下で、未だに尻もちを突いたまま、身動きできない二人を、ワシントンは見下ろす。
何時でも、ゾンビやチンピラ達が襲ってくるか分からないため、ミーはキョロキョロと目を動かす。
同じように、フリンカも何が起きても良いように、トラックの前方へと向かった。
「あ、ああ、どうやら敵は居ないようだ」
「しかし、奴は…………」
ショーンは、剣と盾を構えて、慎重に荷台内部を警戒しながら見てみた。
同様に、スバスは何時でも敵を攻撃できるように、暗闇に包まれた中を睨んだ。
「これは? メモ書きか?」
「何て書いてあるんだ?」
スバスが、奥から一枚のメモ用紙を見つけて、それを、ショーンとともに読んでみた。
「破壊された、ピックアップを見てみろ? 幾つもの弾痕がある、それから~~魔法も射ったようだ」
「本当だわ、かなり激しい攻撃を受けたようね?」
ワシントンは、荷台の上から指を差して、車体に空いた穴を睨んだ。
蜂の巣みたいに、穴だらけになった、それを見て、リズも何気なく呟いた。
『チンピラ達の襲撃を受けた、残りは俺だけになったが、俺だけは近くの建物に隠れて助かった』
「どうやら、ワシントンの読み通り、チンピラ達に奇襲されたようだな」
「ふむ、この内容を読む限り、そう見たいだ」
メモを読んで、ショーンとスバス達は、これを書いた人物は、かなり焦っていたようだと考察する。
「ああ、あの弾痕から察するに、パソコンショップの時と同じく、チンピラ達は大量の銃弾をバラまいたと思える…………」
「弾痕か? え~~と、このメモにも戦ったと書いてあるな」
「続きは何て書いてあるんだ」
『俺だけは、辛うじて助かったが、連中が食糧を盗んでから居なくなった後、銃声を聞いて、多数のゾンビが来やがった』
ワシントンは、銃弾を受けて、ズタボロにされた車体を真剣に見続けていた。
ショーンとスバス達は、彼の話を聞きながらも、メモに目を向ける。
「ワシントン、このトラック…………フロントにも、穴が空いてるわ」
「それで、連中はトラックを放棄して、中身だけ運んでいったのね」
「クソ、それじゃあ、トラックは運転できないなっ!」
「しかし、メモを書いた人は、どうなったんだにゃ…………まさか?」
トラックの正面に移動した、フリンカは大きな穴を見つけた。
弾痕を眺める彼女に、リズは荷台から、周辺を警戒しつつ呟く。
ワシントンは、すごく残念そうな声をだしつつも、仕方ないと直ぐに冷静さを取り戻す。
一方、ミーはメモ用紙に記録を書いた、人物が気になり、それが誰かを気にするが。
「ミー、そのまさかだ」
「やっぱりにゃ…………」
『建物の中にも、ゾンビが来たから店から出て、奴等と戦いながら、ここに入った、だが俺は噛まれてしまったようだ』
ショーンとミー達は、互いに暗い顔を向けながら、メモを読む。
最後の文章は、吐血したか、出血したかは分からないが、紙が赤く染まっていた。
『願わくば、このメモを見た人間に、チンピラ達を倒して、食糧を取り返して欲しい、そして沿岸警備隊まで届け、、、な、がぎ┃◥か、◢〇が』
「…………だそうだ、最後の意味不明な文章は、ゾンビ化が始まっていたんだろう」
「つまり、コイツは書いた本人だったんだにゃ…………」
ショーンは、メモ用紙を、ミーにも見せたあと、荷台の中に紙を置いた。
「どうする? 連中が、死体を車で引き擦りながら、あっちに向かったようだが、追跡するのか? あと、俺は田舎暮らしで猟師だから、こう言うのは分かるんだ」
「なるほどね、と言うか? お前が説明しようとした通り、ゾンビより先んじて、チンピラが奇襲してきたと…………」
ワシントンが呟くと、ショーンは両腕を組んで、一瞬だけ考え込んだ。
このまま、盗まれた補給物資を取り戻すべく、捜索を続けるべきか、それとも撤退すべきか。
だが、彼等の任務は明確だった。
「行こう、これからは慎重に行動するぞっ! それと、チンピラの拠点でも隠密行動をするっ! 連中は、銃を大量に持っているようだからな」
「気をつけないと、体中を弾丸に貫かれちゃうからね」
「要は、俺の爆弾は使えないのか…………しかし、いざと成れば使うぞ」
「私の火炎魔法も、なるべく使わないようにしないと成らないわ」
ショーンは、トラックの前方にある十字路から左側を見ながら宣言した。
同じ方向を睨みながら、フリンカは両腕を組みつつ、ため息を吐きながら呟く。
小型爆弾を使う、スバスは派手な物音を立てられないため、少し難しい戦いになると予想する。
リズも、自身が扱う火炎魔法は、炎の射線や命中した場合に、敵に気づかれてしまうと危惧する。
「お前ら、隠密行動なら俺の弓矢に任せろ」
「敵の首を折るなら、任せるにゃっ!」
「ああ、弓矢の援護と、素早い動きは頼んだぞ」
ワシントンは、ゾンビの死体から矢を抜き取りながら自信満々に言った。
対するミーも、音もなく走りだし、目的の方向へと向かっていく。
そんな彼女の後を追いながら、ショーンも仲間たちとともに歩き始めた。
こうして、彼等は十字路の左側へと続いている血痕を辿っていった。
「物音を立てたら、敵を呼び寄せる…………だから。こうして、と」
「グヘッ!?」
「ガッ!」
「弓矢なら静かに殺せる」
フリンカは、ゾンビの背後に回り、左肩をドンッと押しながら体勢が崩させて、首を跳ねた。
そして、ワシントンは狙撃により、遠方に位置する、フレッシャーの頭部を正面から射ち抜いた。
十字路から先へと進んだ彼等は、なるべく戦闘を避けるために、密かに動き続けている。
ここは、近代的なビルと中世の建物が、アチコチに混在する区域だ。
「あの死体から、少し離れた所までだ…………そこから先は、血痕が途切れている」
「ここまで、死体を引きずりながら走ってたんだわ、それが擦りきれてしまったようだね」
左側に目を向けた、ワシントンは道の先に、ズタボロにされた死体を見つけた。
フリンカも、その真っ赤な
その時、バンッと乾いた銃声が成った。
「うわっ! 不味い、隠れろっ!」
「何なのっ! もうっ!」
「ヤバいにゃっ! ヤバいにゃっ! ヤバいにゃっ!」
「スナイパーだ、気を付けろ」
「建物の中に逃げるよっ!」
ショーンとリズ達は、急いで右側のビル内へと入っていく。
ミーとワシントン達は、一気に駆け出し、洋式建築の建物へと逃げ込んだ。
フリンカも、ワシントン達の方へと素早く走りだし、何とか身を隠す事ができた。
しかし、スバスだけは何故か身動きしないで、道路で倒れていた。