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第20話 これは、ゾンビの餌ではない


 補給物資を積んだ、車両部隊を探しにきた、ショーン達だが、ゾンビの群れを発見してしまった。



「よっ! よっ! は…………どうだ、これなら狙いは定まらないにゃっ!」


「ウガアッ! ゲロロッ!」


「ぐっ! これは不味いよ、逃げなきゃっ!」


「今行くっ! お前ら、下がってろ」


 ミーの動きに、デブゾンビは口から大量のゲロを吐き出して、道路を溶かし始めた。


 それは、マグマのようであり、フリンカは臭いを吸わない内に、素早く離れた。



 ショーンは、二人を救うべく、奴の背後から斬りかかろうと、駆け出していく。


 それに、気がついた敵は、彼を獲物に定めて、濁った白眼を向けた。



「ゲロロッ? ゲロロロロ~~」


「くっ!」


 いきなり、ドバドバと吐かれた強酸製のゲロを前にして、ショーンは立ち止まるしかない。


 そして、彼が別の攻撃方法を考えていると、デブゾンビに右側から射撃が浴びせられる。



「うわ? なんだ、今のはっ!」


「グロロ…………」


 驚いて、両目を見開くショーンだったが、すぐに彼は、仲間たちが援護してくれたと分かった。


 デブゾンビは、今の射撃を浴びて、体が燃えたり、右足が吹き飛んだ。



「ショーン、援護するっ! 爆裂ボルトを射ってやるぞ」


「私達の攻撃に合わせてっ!」


「こっちは、何とかなっているから心配するなっ!」


 スバスは、二回ほど矢を放ち、背後からゾンビの声が聞こえると、くるりと体を回す。


 さらに、振り向きざまに、ボウイナイフを振るって、敵を斬り捨てる。



 ウォーリアーを前にした、リズは力強くマジックロッドを振るって、奴を押し倒す。


 そして、止めの一撃として、オレンジ色に輝く宝玉で、頭を叩き潰した。



 スバスは、小型爆弾を投げまくり、次々と現れるフレッシャー達に、ダメージを与える。



「グブアっ! ウガアアッ!」


「分かったぜ、行くぞっ! この野郎っ!」


 仲間達の援護により、デブゾンビが耐性を崩すと、ショーンは一気に飛び掛かった。


 そして、口の中に思いっきり、ショートソードを突っ込んだ。



 しかし、脳にまで剣先が達しなかったらしく、まだ奴は抵抗しようと、両腕を伸ばしてきた。


 さらに、喉奥からは、ゴボゴボと血液や強酸の混ざった吐瀉物を吐き出し続ける。



「くっ! 剣が溶けちまう、どうにかしないとっ! うらあーーーー」


「ゴアアアアアアッ!!」


「やったようだね」


「だけど、まだまだ、敵は多いにゃっ!」


 ショーンは、差し込んだ切っ先を抜き取ると、今度はデブゾンビの額に突き刺した。


 これにより、奴は力なく路上に倒れてしまい、ドシンと大きな音を立てた。


 それを見て、フリンカは歓喜するが、ミー連続打突で、ゾンビ達を蹴散らす。



「だね? 残りも片付けなきゃっ!」


「グアアッ!」


「グオオッ!」


「なっ! 起き上がったにゃっ!」


「ゾンビ化したのか…………」


 回りには、まだ相当な数のゾンビが残っており、フリンカはロングソードを振り回して戦う。


 一方、敵を食い止めていた、ミーは路上に頃がっていた死体が動き出したので驚く。



 それを見て、ショーンもバックラーを構え、フレッシャー&ウォーリアー達を警戒する。



「グアッ! ガアッ?」


「グアアアア」


「ショーン、今から、そっちに行くわ」


「これ以上は、耐えられん」


「爆弾だ、遠慮するなっ!」


 遠距離から、火玉や弓矢を受けて、ゾンビ達が倒れてしまったり、怯んでしまう。


 その隙に、フレッシャー&ウォーリアー達を相手していた、リズとワシントン達が逃げてくる。



 二人を先に行かせるために、スバスは小型爆弾を投げまくって、さらに鉄球を振り回した。


 こうして、暴れる彼も、徐々に群れを成す敵の進撃を押さえきれず、ついに撤退し始めた。



「スバス、こっちに来いっ! リズとワシントン達は、トラックに登れっ!」


「右側は任せなっ!」


「左側は、私が担当するにゃ~~」


「グオオッ?」


「ガアッ!」


 叫びながら、ショーンは自らに近寄ってきた、メイスを振り回す、ウォーリアーを斬り倒す。


 フリンカも、右側から迫るゾンビの胴体を真っ二つは斬り裂いた。



 ミーも、混を右脇に抱えるようにして、体を回転させながら、周囲のフレッシャー達を蹴散らす。


 そんな中、周囲に転がる死体が、さらにゾンビ化し始めた。



「アアッ! ウガアア」


「ウアアァァ」


「不味いっ! ゾンビに食われて、コイツらは感染したんだっ!」


「じゃあ、車両部隊はゾンビにでも襲われたのかい?」


「いいや、違う…………それは、後で話す」


 さっきから動かなかった死体が、次々と起き上がり、ゾンビとして歩いてくる。


 その中には、小走りをしたり、ウォーリアーとして、刀剣やメイスを振るう者も存在する。



 ショーンとフリンカ達は、それらを剣で撃退しながら、包囲を解かんと奮闘する。


 彼等を尻目に、ワシントンはトラックに飛び上がり、フロントから屋根に登る。



「ワシントンッ! 助けてっ!」


「分かってるぞ、手を貸せ」


「不味いにゃ、ゾンビが集まって来てるにゃ…………」


「殺るしかない、戦わなければ殲滅だ」


「グアアッ!」


 トラックの屋根から手を差し出して、ワシントンは、フロントに登った、リズを助ける。


 ミーは、混を力強く右側のゾンビ達に振るうと、つぎは勢いよく左側に向かって、打突を繰り出す。



 鉄球を、真っ直ぐ振るって、フレッシャーの体を押し倒す、スバス。


 これを受けて、後ろのウォーリアー達は纏めて後ろに倒れてしまう。



「ワシントンッ! 早く何とかしてくれっ! 出ないと、俺達はゾンビに負けちまうっ!」


「任せろ、今から敵を狙うからな」


「ここなら、私達も援護に集中できるわ」


 叫び声を上げながら、ショーンはゾンビ達が近づくと、バックラーで押し倒す。


 その間に、ワシントンとリズ達は、遠くから現れるゾンビ達に狙いを定めた。



「グア?」


「ギャアアアアッ!」


「遠くのゾンビが減っていくにゃっ!」


「これなら、近くのゾンビだけを相手してれば終わるわね」


「だが、まだ気は抜くなよ…………」


 続々と現れる援軍を前にして、ミーは額から汗を垂らしていた。


 同じく、フリンカも険しい顔をしていたが、ゾンビの数が減り出したので安堵し始める。



 ショートソードを突き出して、フレッシャーの頭を攻撃するショーンは、未だに気を抜かない。


 だが、彼等が奮戦した事により、動く死体の数は着実に減り始めていた。



 ワシントンの弓矢は、敵に刺さると爆発を起こして、確実なダメージを与える。


 アサルトライフルのように、リズが放つ連射も、ウォーリア達を炎上させる。



「あと、これも喰らいなさいっ! 全体魔法とは、行かないまでもっ!」


「敵が少なくなったな、これなら爆裂ボルトよりも、通常の方が」


 リズは、遠く前方に火炎放射のように魔法を放ち続け、路上に火で線を描いた。


 そうして、できた炎の壁は腰くらいまでしか、燃えていないが、そこを通るゾンビを燃やす。



 ワシントンは、後方の敵を狙い、狩猟弓から素早く何度も矢を放ち、頭を射ち抜いていく。


 これにより、大方の動く死体たちが一掃されて、残りも、ショーン達が白兵戦で処理した。



「よし、これで最後だ」


「いや、コイツだ」


 ショーンは、ゾンビの顔をバックラーで弾いたと同時に、ショートソードで首を跳ねる。


 鉄球を真上から振り下ろした、スバスによる一撃必殺は、ウォーリアーの頭を叩き潰した。



「ようやく、終わったね…………で、車両部隊は殲滅と?」


「いや、それは違う? さっきは戦闘中だから言えなかったが、今から説明しよう」


「それより、中身は無事かな?」


「開けて見よう、食い物が無事だと良いが」


 フリンカが呟くと、ワシントンは荷台の上から何かを語ろうとした。


 その話を聞く前に、ショーンとスバス達は、トラックへと近づいた。

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