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第17話 帰り道


 再び軍用トラックが横転している場所まで、戻ってきた、ショーンは自分のトラックを停車させた。



「こッから先は、徒歩になるな…………お前ら、無事か?」


「大丈夫よ、みんな怪我もしてないわ」


 ショーンが運転席から飛び降りると、リズが荷台から答えた。



「ウアアアア」


「はあ、ゾンビッ! 助けた奴が転化したかっ!」


 いきなり、荷台から姿を表した、太っているゾンビに、ショーンは驚いて身構える。



「待ちなさい、この人はゾンビ族のマーフィ店長だよ」


「ウオオ、よ、よろしく…………」


「彼は、車の揺れに酔ったのよ」


 頭巾を頭に被った、魔法使いの老婆が、ショーンを説得する。


 マーフィと呼ばれた、パソコンショップ店長は気持ち悪そうな表情で答えた。



 リボルバーのシリンダーに弾を込め終えると、リーニャは、荷台から降りる。



「なんだよ、頼むから驚かさないでくれや…………」


「そんな事より、ここにトラックを塞ぐように止めて置こう」


「なるほど~~普通のゾンビを来られなくするのね」


 ショーンが肩から力を抜くと、スバスが横から話しかけてきた。


 フリンカは、その理由が分かったらしく、両腕を組んで背中をトラックに預けた。



「分かった、後ろ向きに止めるから、お前らは向こう側で待ってろよ」


 こうして、ショーンは運転しているトラックを、軍用トラックの左側に移動させた。



「若いの、助かったよ、私はカララ…………元は薬師をやっていた者さ」


「婆さん、薬師なのか? 後で、礼として栄養ドリンクを頼むぜ」


 カララに対して、冗談を言って、トラックの荷台右側から、ショーンは封鎖した場所を通る。



「さあ、ショーン、私達の拠点に帰りましょう」


「マーフィと言ったな、頼んだ電子機器は有るんだよな?」


「もちろん、ウオオ…………このポケットに部品は入ってる」


「まだ、酔っているのね? ショーン達の拠点に行ったら、カララに薬を作って貰わないと」


「大丈夫か? 転化しないような? 」


 リズは安心したように、帰り道を歩いていき、スバスは通信機を直せるか心配する。


 マーフィは吐き気が収まらないらしく、ウォーハンマーを杖の代わりにして、何とか歩き出す。



 リーニャは、彼を心配しつつ、何時でもリボルバーを撃てるように警戒する。


 明らかに具合の悪そうな彼を、ショーンは怪しみながらも拠点に戻ろうとする。



「そういや、リズとスバス達は屋上で何をしていたんだ? いや、もちろん戦っているのは分かっているんだが」


「ああ、店の裏から現れる敵を、ひたすら射ち殺していたよ」


「大変だったわ、あと少しで屋上を突破されるはずだったけど、ショーンのトラックが来てくれて、助かったのよ」


 何気ないショーンの言葉を聞いて、ワシントンは狩猟弓を使っていたと答えた。


 リズも、マジックロッドから火炎魔法を乱射したり、狙撃したりと、大変だった事を思い出す。



「そうか、そっちも大変だったんだな」


「こっちも大変だったにゃあ…………」


 みんなの最後尾を歩きながら、ショーンは呟くと、ミーは愚痴を垂れた。


 こうして、話ながら歩いていく彼等だったが、その後は何事もなく、無事に帰還できた。



「ここを曲がれば、いよいよ、沿岸警備隊の事務所だ…………いやあーー長かったぜ」


「やっと、帰って来れたわ」


「ウアッ! ウゴッ! も、もうダメだ、ウガアアアアッ!」


 ショーンとリズ達は、左に曲がれば駐車場だと思い、安堵のため息を吐こうとした。


 その瞬間、マーフィに異変が怒り、彼は地面に両手を着いてしまった。



「しまった、やはり、感染していたかっ!」


「離れろっ! 奴は危険だっ!」


 バックラーを構えながら、ショーンは少しずつ後ろに引き下がる。


 一方、ワシントンは狩猟弓ではなく、ナイフを手に持ち、白兵戦に備えた。



「ウ、オオロロロロ…………ウオオオオッ!」


 凄まじい咆哮を上げ、地面に吐瀉物ゲロを吐いた、マーフィの顔は明るくなった。



「ふぅ~~済まない、昨日は飲みすぎてな、ウ、ウウ? まだ、腹が本調子じゃないな」


「カララ、マーフィの治療を頼めるかしら?」


「薬か、材料さえ有れば、私は構わないけど、もう大丈夫でしょう」


 元からゾンビであり、感染者に転化すると思われた、マーフィは二日酔いしていただけであった。


 リーニャは、心配そうに彼の様子を伺いつつ、カララに治療を頼んだ。



「まったく、二度も騒がせやがって、それより事務所に戻るぞ?」


 沿岸警備隊の事務所に戻ってきた、ショーンは民間人たちを引き連れて、入口を目指した。



「よぉ? ショーン、よく戻ってきたな、さあ中に入れ」


「ゾンビが来るかも知れないから、速くしてね」


 テアンとカーニャ達が、入口を開けると左右に避けてくれた。


 それから、彼等はクロスボウや両手を構えて、ゾンビ達が来ないかと警戒する。



「テアン、カーニャ、何とか生きてたぜ」


 そう言いながら、ショーン達は中に入った。



「おい、電子機器は持ってきたし、次いでに民間人を連れてきた」


「電子機器は、俺が通信機まで持っていこう」


「良かったわ、これで通信機が修理できるわ? 民間人は奥に連れてくわね」


「しかし、これ以上の人間を受け入れるとなると、食糧が少なくなるな…………」


 廊下に進んだ、ショーンは成果を上げたと誇らしげに胸を張る。


 その隣で、スバスは通信機を修復させるべく、ズカズカと歩いていく。



 カルメンは、二人の話を聞いて安堵したらしく、少し表情を緩ませた。


 防弾ベストと紺色の制服を着た、リザードマンのクレンショーは困った表情を浮かべる。



「民間人の皆さん、こちらへ来て下さい」


「ああ、やっと安全な場所に来られたな~~」


「私は、腰を落ち着かせたいわ」


 取り敢えず、カルメンは民間人たちを奥の部屋まで、案内していく。


 マーフィとカララ達は、ゆっくりと歩きながら、彼女に着いていく。



「やっと、ここまで来られたな~~」


「ああ、他の避難所は、どうなんだか」


 ショーン達は、さっきは見なかった、ワーウルフのとオーガー達を目にする。


 二人は、どうやら冒険者らしく、サーベルと棍棒を肩に担いでいた。



「誰かしら? あの二人は?」


「さあな? 後から来たんだろ」


「その通りだ、それから君達も休むんだな…………その後は建築現場に行って貰うからな」


 リズの疑問に、ショーンは答えながら歩こうとすると、クレンショーが答えた。



「分かってるぜ、ああーーえっと?」


「クレンショーだ」


「ショーン、リズッ! 生きていたか」


 ショーンとクレンショー達が話していると、マルルンが背後から現れた。



「マルルン、お前も無事だったか」


「もちろんだ、あれから何回かゾンビに襲撃されたが、全部撃退した」


「それに、何人か避難民も増えましたわ」


 ショーンの背後から、マルルンとジャーラ達が、救急箱を運びながら現れた。



「今は、ゴードンが彼等の怪我を見ている…………彼等は、チンピラとの戦闘で、爆発や銃撃で負傷したらしくてな」


「チンピラ達、海トカゲ団、テロリスト…………町は悪党だらけのようです」


「なるほど、町は犯罪者だらけと…………? 俺達も、チンピラ達に襲撃されたしな? まあ~~俺達は薬師の婆さんを連れてきたから、看病を手伝ってくれるかもな」


 マルルンとジャーラ達は、避難してきた冒険者たちから町の様子を説明した。


 その様子を聞いて、ショーンは駐車場で、パソコンショップを襲撃した、チンピラ達を思い出す。



「そうだと言いが、とにかく向こうで休んでくれ、ロッカールームを使わせてくれるんだと」


「仮の休憩室として、私達に提供してくれるらしいですわ」


「そりゃ、よかった…………これで、静かに眠れるな」


「はぁ、ようやく休めるわね、ここまで来るのは長かったわぁぁ」


 マルルンとジャーラ達の言葉を聞いて、ショーンは体を休めさせられると思った。


 リズも、ため息を吐くように呟き、緊張感が解けたのか、全身から力を抜いた。



「まあ、マルルン、ジャーラ達も気をつけてくれな」


「そっちも、ゆっくり休んでくれよ」


 そう言って、ショーンは奥にあるロッカールームと書かれた看板が下げられた、ドアを目指した。


 マルルンの方も、救急箱を抱えながら何処かへと、向かっていった。



「今日は、もう夕方だ、みんな疲れただろう? 俺達は休ませて貰おうか」


「そうしましょう、みんな疲れてるのは当然だし、警備はマルルン達に任せればいいし」


 そう言って、ショーンとリズ達は、ロッカールームと書かれた看板が下げられた部屋に向かう。



 こうして、彼等は夜が開けるまでは、ぐっすりと眠るのだった。

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