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第16話 パソコンショップ防衛戦


 逃げ遅れた、チンピラ達は為す統べなく、次々とゾンビの仲間入りした。


 そんな中、銃撃を受ける心配がなくなった、ショーンは駐車場を走り回る。



「うらっ! くたばれっ! このっ! ミー、そっちに行ったぞっ!」


「グガガッ!」


「ガへッ!」


「ウガッ!?」


「こっちに、寄越さないでくれにゃっ!」


 ショーンは、ウォーリアーが走ってくると、頭を真っ二つに切り裂いた。


 さらに、フレッシャーの顔面を、バックラーで弾き飛ばした。


 そして、最後に残るゾンビを、勢いよく蹴って、ミーの方へと向かわせた。



「ドンッ! これで、仕留めたにゃっ! 次は?」


「ウゲェ…………」


「ウガアアアア」


「ガアアアアッ!!」


 地面に、ゾンビが倒れると、ミーは後頭部を目掛けて、すばやく棍で打突を打ち込む。


 次いで、彼女は頭上で、棍を回転させながら、自分に近づく敵を弾いていく。



「はあっ! ぐっ! やるねぇ? コイツは…………伊達に、元冒険者じゃないわ」


「退くんだ、フリンカッ! ここは俺に任せろっ!」


「アウッ!」


 飛びかかりながら、ロングソードを振るった、フリンカの一撃を、ウォーリアーは籠手で防いだ。


 そして、彼女に別のゾンビが近づく前に、スバスが右側から鉄球を叩きつけた。



「やったね? でも、まだまだ来るわよっ! このままじゃあ、拉致が開かないわっ!」


「撤退した方がいい感じだな? しかし、この数では…………」


 フリンカは、フレッシャーを斬り捨て、ゾンビを蹴っ飛ばす。


 余りにも、数が多い敵を前にして、スバスは悪態を垂れるが、鉄球を振り回す手は止めない。



「ウガアアアア~~」


「ガアアアアアア」


「グオオオオーー!」


「うわっ! いよいよ、近づいてきたかっ! この弾を喰らえっ!」


「これを受ければ、肝胆に吹き飛んでしまうにゃっ!」


 ショーンとミー達は、迫撃砲弾を、三体のマッスラー達に投げた。


 たちまち、地面に落ちると同時に、それは爆発音を木霊させた。



「やったか? いや、まだ一体だけ残ったのかよっ!」


「やるしかないにゃ、仕掛けるにゃ~~よ」


「ウオオオオーーーー!!」


 二回の大爆発に巻き込まれた、マッスラー達は、粉々に砕かれてしまった。


 だが、残る一体が咆哮を上げて、ショーンとミー達の前に立ちはだかる。



 しかも、今の爆発音を聞いて、ゾンビ側に更なる援軍が、四方八方から続々と現れる。



 雄叫びを上げるフレッシャー、叫びまくるジャンピンガー。


 走りながら足音を立てるウォーリアー、カエルのように泣くスピットゲロー。



「ショーンって、言ったかしら? もう持たないわよっ!」


 パンパンッと発砲音を鳴らした後、女性ゴブリンは、リボルバーを揺らす。


 そうして、左側にずらした、シリンダー内の残弾数を確認する。



「チッ? 撤退するにも、コイツや他のゾンビは、倒さねば成らないっ! よっ!」


「殺らなきゃ、前には進めないにゃっ!」


「ゴアアアア~~~~!!」


 ショーンは、マッスラーの繰り出した重たいパンチを避けた。


 次いで、大きな隙ができたので、それを見逃さず、ショートソードで斬る。



 一方、ミーは同時に、敵の頭を狙って、勢いよく打突を放つ。


 これを受けても、奴は咆哮を上げるだけで、死ぬ事はなかった。



「おいっ? ああ~~警備員さんよっ! パソコンショップに隠れてる二人を呼んでこいっ! スバスも地雷を回収しに行くんだっ! 中に隠れてる民間人が踏んだら不味いからなっ!」


 ショーンは、いよいよ集まってくるゾンビの群れに、自分たちは耐えきれないと判断した。



「リーニャよっ! 暫くは、射撃支援できなくなるから、ここは任せるわよ」


「それは分かったが、ショーン…………ここで、死ぬなよっ!!」


「ああ、二人とも頼むっ! フリンカ、コイツを任せるわっ! 俺は向こうを目指す」


「ショーン、何をするか知らないけれど、それまでは敵を惹き付けなきゃ成らないよ?」


 リーニャと名乗った女性ゴブリンは、リボルバーを射ちながら、店に走っていった。


 スバスも素早く走り、近づいてくるゾンビ達に、導火線に着火した、手製の小型爆弾を投げまくる。



 二人が行く姿を見ると、ショーンは対峙するマッスラーの相手を、フリンカに任せた。


 彼を狙い、様々な感染者らが、背後から襲いかからんと群がってゆく。



「ミー、俺は行くぞっ! フリンカと任せるから、相手を頼むっ! お前ら、こっちだ~~~~バカタレッ!!」


「ウガアアアアアアーーーー!!」


「ギャアアアアーー!!」


「ちょっ! ショーン…………たく、やるしか無いにゃ~~?」


「ウッ!?」


 ショーンは、一人だけで駐車場を突っ走って行くが、その後をフレッシャー達が狙う。


 もちろん、前方からも、フレッシャー程ではないが、ウォーリアー達が小走りしてくる。



 そんな彼の突飛な行動に驚きながらも、ミーは正面に立つ、マッスラーに向き直る。


 彼女が繰り出した、打撃は奴の無防備な喉を捉えたが、変な声を出すだけで倒れなかった。



「退けっ! 邪魔だああっ! 死にやがれっ!」


「ゲロロッ!」


「ウガ?」


「グルルッ!」


 ショーンは、バックラーを構えて、スピットゲローの吐いた強酸を防御しながら突撃していく。


 また、そのまま盾を強く握りしめて、彼は走る速度を落とさず、奴に体当たりを喰らわせた。



 次に、フレッシャーが来ると、ショートソードで両脚を斬って転ばせた。


 最後に、後ろから追ってきた、ウォーリアーのロングダガーを交わしつつ、必死で逃走していく。



「ギュヤアアーー!!」


「うわ…………だから、邪魔すんなっての」


 前方から、いきなり目の前に落ちてきた、ジャンピンガーに驚く、ショーン。


 しかし、彼は向こうが飛び掛かってくると、スライディングしながら、それを回避した。



「ギャアアアアーー」


「ゲロロッ! ゲローー!」


「やかましいっ! お前らの相手をしている暇は、俺にないっ!」


「グアッ!」


 ジャンピンガーは、高々と飛び上がり、スピットゲローは、強酸を吐き飛ばす。


 だが、それらの攻撃を、ショーンは回避しながら、トラックに飛び乗った。



 また、彼はドアを開いて、近づいてきた様々なゾンビ達を弾き飛ばす。



「面倒な連中だなっ! 行くぜっ!! この野郎っ!!」


「グヘェッ!?」


「グアッ!?」


 ショーンが、安全な車内に入ってからも、ゾンビ達は、執拗に窓やバンパーを叩いた。


 しかし、彼がトラックを動かすと、たちまち連中は引き殺されてゆく。



「お前ら、退けーーーー!!」


 肉片と化す敵を、気にする暇なく、ショーンは猛烈な勢いで突っ込んでくる。


 そして、駐車場に散らばるゾンビ達は、次々と走るトラックが吹き飛ばしていく。



「ウガア~~~~!!」


「はっ! このっ! ヤバイわね…………ミー、避けるよっ!」


「喰らえっ! にゃあっ! 確かに、ヤバイにゃあっ!」


 フリンカによる両手で振るった、ロングソードは、マッスラーの左腕を切り落とした。


 反撃しようと、右腕が真っ直ぐ伸びると、それを棍を使って、ミーは叩いて軌道を剃らす。



 だが、彼女たちを包囲している他の敵が、勢いよく四方八方から迫った。


 さらに、二人はショーンが運転するトラックが爆走するのを目にする。



「うわああっ!」


「にゃああっ!」


「ガフッ!」


「ゴバアッ!?」


 それでも、フリンカとミー達は、マッスラーを中心とするゾンビ達から離れた。


 前方の連中は、トラックによって吹き飛び、肉片と血飛沫ちしぶきを辺りに飛ばした。



「ウガアアッ!」


「あ、ヤバ…………くぅぅ」


「ゲローー!」


「うわわ、にゃっ!」


 ジャンピンガーの落下を、右側に転がって避ける、フリンカ。


 スピットゲローの吐き出した、強酸が滴り落ちる前に、ミーは棍をアゴに打ち込む。



「お前ら、荷台に乗れっ!」


「今、行くよっ!」


「待ってくれにゃっ!」


 ショーンは、トラックを停車させて、二人を荷台へと、飛び乗るように指示を出した。


 フリンカが鉄板を掴んで上がると、ミーは高くジャンプしながら飛び移った。



「あとは、店の連中だなっ! そう言や、リズとワシントンは?」


 ショーンは、トラックを店の方まで走らせると、ふと屋上で戦っている二人を気にした。



「ん? フリンカ、全員が乗ったか?」


「ああ、あとは走らせるだけだよっ!」


 運転席の窓が叩かれた事に気づいた、ショーンは少しだけ、ボタンを押して、ガラスを下げる


 すると、フリンカが真剣な表情で、皆が荷台に乗った事を伝えた。



「よっしゃ、じゃあ~~出すぜ」


 こうして、ショーンは再びトラックを走らせて、ゾンビを引き殺しながら駐車場から離れる。


 その後ろからは、爆弾が炸裂する音が鳴り響いたが、彼は気にする事はなかった。














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