逃げ遅れた、チンピラ達は為す統べなく、次々とゾンビの仲間入りした。
そんな中、銃撃を受ける心配がなくなった、ショーンは駐車場を走り回る。
「うらっ! くたばれっ! このっ! ミー、そっちに行ったぞっ!」
「グガガッ!」
「ガへッ!」
「ウガッ!?」
「こっちに、寄越さないでくれにゃっ!」
ショーンは、ウォーリアーが走ってくると、頭を真っ二つに切り裂いた。
さらに、フレッシャーの顔面を、バックラーで弾き飛ばした。
そして、最後に残るゾンビを、勢いよく蹴って、ミーの方へと向かわせた。
「ドンッ! これで、仕留めたにゃっ! 次は?」
「ウゲェ…………」
「ウガアアアア」
「ガアアアアッ!!」
地面に、ゾンビが倒れると、ミーは後頭部を目掛けて、すばやく棍で打突を打ち込む。
次いで、彼女は頭上で、棍を回転させながら、自分に近づく敵を弾いていく。
「はあっ! ぐっ! やるねぇ? コイツは…………伊達に、元冒険者じゃないわ」
「退くんだ、フリンカッ! ここは俺に任せろっ!」
「アウッ!」
飛びかかりながら、ロングソードを振るった、フリンカの一撃を、ウォーリアーは籠手で防いだ。
そして、彼女に別のゾンビが近づく前に、スバスが右側から鉄球を叩きつけた。
「やったね? でも、まだまだ来るわよっ! このままじゃあ、拉致が開かないわっ!」
「撤退した方がいい感じだな? しかし、この数では…………」
フリンカは、フレッシャーを斬り捨て、ゾンビを蹴っ飛ばす。
余りにも、数が多い敵を前にして、スバスは悪態を垂れるが、鉄球を振り回す手は止めない。
「ウガアアアア~~」
「ガアアアアアア」
「グオオオオーー!」
「うわっ! いよいよ、近づいてきたかっ! この弾を喰らえっ!」
「これを受ければ、肝胆に吹き飛んでしまうにゃっ!」
ショーンとミー達は、迫撃砲弾を、三体のマッスラー達に投げた。
たちまち、地面に落ちると同時に、それは爆発音を木霊させた。
「やったか? いや、まだ一体だけ残ったのかよっ!」
「やるしかないにゃ、仕掛けるにゃ~~よ」
「ウオオオオーーーー!!」
二回の大爆発に巻き込まれた、マッスラー達は、粉々に砕かれてしまった。
だが、残る一体が咆哮を上げて、ショーンとミー達の前に立ちはだかる。
しかも、今の爆発音を聞いて、ゾンビ側に更なる援軍が、四方八方から続々と現れる。
雄叫びを上げるフレッシャー、叫びまくるジャンピンガー。
走りながら足音を立てるウォーリアー、カエルのように泣くスピットゲロー。
「ショーンって、言ったかしら? もう持たないわよっ!」
パンパンッと発砲音を鳴らした後、女性ゴブリンは、リボルバーを揺らす。
そうして、左側にずらした、シリンダー内の残弾数を確認する。
「チッ? 撤退するにも、コイツや他のゾンビは、倒さねば成らないっ! よっ!」
「殺らなきゃ、前には進めないにゃっ!」
「ゴアアアア~~~~!!」
ショーンは、マッスラーの繰り出した重たいパンチを避けた。
次いで、大きな隙ができたので、それを見逃さず、ショートソードで斬る。
一方、ミーは同時に、敵の頭を狙って、勢いよく打突を放つ。
これを受けても、奴は咆哮を上げるだけで、死ぬ事はなかった。
「おいっ? ああ~~警備員さんよっ! パソコンショップに隠れてる二人を呼んでこいっ! スバスも地雷を回収しに行くんだっ! 中に隠れてる民間人が踏んだら不味いからなっ!」
ショーンは、いよいよ集まってくるゾンビの群れに、自分たちは耐えきれないと判断した。
「リーニャよっ! 暫くは、射撃支援できなくなるから、ここは任せるわよ」
「それは分かったが、ショーン…………ここで、死ぬなよっ!!」
「ああ、二人とも頼むっ! フリンカ、コイツを任せるわっ! 俺は向こうを目指す」
「ショーン、何をするか知らないけれど、それまでは敵を惹き付けなきゃ成らないよ?」
リーニャと名乗った女性ゴブリンは、リボルバーを射ちながら、店に走っていった。
スバスも素早く走り、近づいてくるゾンビ達に、導火線に着火した、手製の小型爆弾を投げまくる。
二人が行く姿を見ると、ショーンは対峙するマッスラーの相手を、フリンカに任せた。
彼を狙い、様々な感染者らが、背後から襲いかからんと群がってゆく。
「ミー、俺は行くぞっ! フリンカと任せるから、相手を頼むっ! お前ら、こっちだ~~~~バカタレッ!!」
「ウガアアアアアアーーーー!!」
「ギャアアアアーー!!」
「ちょっ! ショーン…………たく、やるしか無いにゃ~~?」
「ウッ!?」
ショーンは、一人だけで駐車場を突っ走って行くが、その後をフレッシャー達が狙う。
もちろん、前方からも、フレッシャー程ではないが、ウォーリアー達が小走りしてくる。
そんな彼の突飛な行動に驚きながらも、ミーは正面に立つ、マッスラーに向き直る。
彼女が繰り出した、打撃は奴の無防備な喉を捉えたが、変な声を出すだけで倒れなかった。
「退けっ! 邪魔だああっ! 死にやがれっ!」
「ゲロロッ!」
「ウガ?」
「グルルッ!」
ショーンは、バックラーを構えて、スピットゲローの吐いた強酸を防御しながら突撃していく。
また、そのまま盾を強く握りしめて、彼は走る速度を落とさず、奴に体当たりを喰らわせた。
次に、フレッシャーが来ると、ショートソードで両脚を斬って転ばせた。
最後に、後ろから追ってきた、ウォーリアーのロングダガーを交わしつつ、必死で逃走していく。
「ギュヤアアーー!!」
「うわ…………だから、邪魔すんなっての」
前方から、いきなり目の前に落ちてきた、ジャンピンガーに驚く、ショーン。
しかし、彼は向こうが飛び掛かってくると、スライディングしながら、それを回避した。
「ギャアアアアーー」
「ゲロロッ! ゲローー!」
「やかましいっ! お前らの相手をしている暇は、俺にないっ!」
「グアッ!」
ジャンピンガーは、高々と飛び上がり、スピットゲローは、強酸を吐き飛ばす。
だが、それらの攻撃を、ショーンは回避しながら、トラックに飛び乗った。
また、彼はドアを開いて、近づいてきた様々なゾンビ達を弾き飛ばす。
「面倒な連中だなっ! 行くぜっ!! この野郎っ!!」
「グヘェッ!?」
「グアッ!?」
ショーンが、安全な車内に入ってからも、ゾンビ達は、執拗に窓やバンパーを叩いた。
しかし、彼がトラックを動かすと、たちまち連中は引き殺されてゆく。
「お前ら、退けーーーー!!」
肉片と化す敵を、気にする暇なく、ショーンは猛烈な勢いで突っ込んでくる。
そして、駐車場に散らばるゾンビ達は、次々と走るトラックが吹き飛ばしていく。
「ウガア~~~~!!」
「はっ! このっ! ヤバイわね…………ミー、避けるよっ!」
「喰らえっ! にゃあっ! 確かに、ヤバイにゃあっ!」
フリンカによる両手で振るった、ロングソードは、マッスラーの左腕を切り落とした。
反撃しようと、右腕が真っ直ぐ伸びると、それを棍を使って、ミーは叩いて軌道を剃らす。
だが、彼女たちを包囲している他の敵が、勢いよく四方八方から迫った。
さらに、二人はショーンが運転するトラックが爆走するのを目にする。
「うわああっ!」
「にゃああっ!」
「ガフッ!」
「ゴバアッ!?」
それでも、フリンカとミー達は、マッスラーを中心とするゾンビ達から離れた。
前方の連中は、トラックによって吹き飛び、肉片と
「ウガアアッ!」
「あ、ヤバ…………くぅぅ」
「ゲローー!」
「うわわ、にゃっ!」
ジャンピンガーの落下を、右側に転がって避ける、フリンカ。
スピットゲローの吐き出した、強酸が滴り落ちる前に、ミーは棍を
「お前ら、荷台に乗れっ!」
「今、行くよっ!」
「待ってくれにゃっ!」
ショーンは、トラックを停車させて、二人を荷台へと、飛び乗るように指示を出した。
フリンカが鉄板を掴んで上がると、ミーは高くジャンプしながら飛び移った。
「あとは、店の連中だなっ! そう言や、リズとワシントンは?」
ショーンは、トラックを店の方まで走らせると、ふと屋上で戦っている二人を気にした。
「ん? フリンカ、全員が乗ったか?」
「ああ、あとは走らせるだけだよっ!」
運転席の窓が叩かれた事に気づいた、ショーンは少しだけ、ボタンを押して、ガラスを下げる
すると、フリンカが真剣な表情で、皆が荷台に乗った事を伝えた。
「よっしゃ、じゃあ~~出すぜ」
こうして、ショーンは再びトラックを走らせて、ゾンビを引き殺しながら駐車場から離れる。
その後ろからは、爆弾が炸裂する音が鳴り響いたが、彼は気にする事はなかった。