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第15話 収奪者たち


 ショーンは、背後から銃口を向けられて、手を上げるしかなかった。



「動いたら、頭を撃つわっ!」


「ま、待て、何の積もりだっ?」


 どうやら、女性らしい謎の人物は、ショーンを略奪者だと思っているようだ。



「おいっ! 俺は敵じゃね~~? 通信機器を取りにきたんだっ!」


「この状況で、よく嘘を吐けるわねっ! 外の連中と同じく、それを盗みに来たんでしょっ!」


「おいっ! 銃を下ろしな…………ショーンは、殺らせないよっ!」


 ショーンは、両手を上げたまま、身動きできずに喋る他ない。


 だが、女性に対して、密かに近づいていた、フリンカが脅す。



「この剣に斬られたくないだろう?」


「ぐっ! よくも…………」


「やめろ、フリンカ、俺たちの敵は外の連中だ」


 フリンカは、両手で何時でも、ロングソードを振り下ろせるように構えている。


 対する、金髪ショートヘアのゴブリン女性警備員は、リボルバーを力強く握る。



 彼女は、セキュリティと書かれた帽子を被り、紺色のシャツと黒いベストを着ている。


 対峙する二人を見て、ショーンは彼女たちを戦わせないように説得を試みた。



「警備員さんよ? 俺達は、通信機さえ手に入れたら出ていく…………あと、チンピラや略奪者じゃない」


 ショーンは、銃弾や魔法が飛び交う中、女性ゴブリンを落ち着かせようとする。



「それに、敵は向こう側だろ? フリンカも武器を下げろ」


「そうね、分かったわ」


「ショーン、そうだね? 先に連中を片付けないと?」


 ショーンは、そう話ながら商品棚の右側から、外を眺めて見た。


 すると、二台の中型トラックが止まっており、そこから、チンピラ達が銃弾や魔法を乱射している。



 女性ゴブリンは、商品棚の左側に回り、リボルバーで店内から反撃した。


 フリンカも、じっと陰に隠れながら敵に反撃する機会を伺う。



「おいっ! 俺達より先に略奪しようとする奴等が居るとはなっ!」


「ふざけやがって、この辺りの品物は、渡さないって~~のっ!」


「ショーン、奥に避難するぞっ! このままでは蜂の巣だ」


「ヤバいにゃっ! チンピラ連中は数が多すぎるにゃっ!」


 魔法使いのチンピラは、短杖から氷結魔法を乱射して、冷凍ビームをマシンガンみたいに放ってる。


 銃兵のチンピラは、自動小銃を連射し続け、制圧射撃を行っている。



 形成不利と察した、スバスは再び煙玉を駐車場に転がして、即座に逃げ出した。


 ミーも、彼の後を追って、すばやく駆け出して行ってしまった。



「この野郎っ! 死にやがれっ! ぐわっ!?」


「やったわ…………」


 駐車場に白煙が上がる中、トラックの荷台から自動小銃を撃つ、チンピラが撃たれて倒れた。


 リボルバーを構えた、ゴブリン女性の正確な一撃が、眉間に当たったからだ。



「ショーン、店内の棚の両側に地雷を幾つか設置したっ! 逃げてくるなら、真ん中だからなっ!」


「スバスッ! 分かった、今そっちに行くからな」


 スバスは、ただ店内を逃げていただけではなく、罠を設置していた。


 ショーンは、それを聞いて、商品棚の間を一気に駆け出して行った。



「よっと、お前ら、速く走ってこいっ!」


「分かっているわよ」


「言われなくてもね…………」


 ショーンが、店の最奥にあった、カウンターへと一気に飛び込む。


 そこから、フリンカと女性ゴブリン達の姿を確認しようと、彼は声をかけた。



「連中は、奥に逃げたぞっ! 撃ち殺せっ! うわああああっ!」


「走るぞっ! ぐわっ!」


「気をつけろっ! 上からも、撃ってくるっ!」


「上の連中も、やっちまえーー!」


 チンピラ達は、トラックの陰や荷台から、ショーン達に集中砲火を浴びせる。


 そんな中、ショーン達が銃を持ってないと考えた、連中は突撃してきた。



 だが、パソコンショップの屋上からは、火玉が連射されまくり、走る銃兵チンピラを燃やす


 また、密かに狩猟弓から放たれた矢が、魔法使いのチンピラに当たり、胸を貫く。



「リズとワシントン達だ、上から援護してくれてるんだな?」


「ショーン、向かってくるにゃっ!」


「行けっ! 突撃だっ!」


「やってやるぜっ!!」


 走る敵を仕留める二人の援護に、ショーンは感謝しながらも、カウンター裏で頭を下げる。


 右側の商品棚に隠れている、ミーは敵が走る姿を見ると、棍を両手で力を入れつつ握りしめる。



 ロングスタッフから、雷撃魔法を放出しながら、魔法使いのチンピラが迫る。


 銃兵のチンピラも、ショットガンを何度も連射しながら近づいてくる。



 こうした中、店内に隠れる彼等は、白兵戦を覚悟して、連中を待ち構える。



「ぐふっ!」


「また、やったわ」


 カウンター左側から、ゴブリン女性は、リボルバーを何発か撃って、また一人のチンピラを倒した。



「連中を追い詰めたぞっ!」


「白兵戦の前に、火炎瓶を投げろ? ん?」


「ぐわっ!?」


「どわああっ!」


 店内に侵入しようとして、外の両側で身を隠す、チンピラ達。


 彼等は、内部に攻撃を仕掛けてから、一気に突入しようとした。



 しかし、中から何かが投げられて、連中は吹き飛んでしまった。


 それは、ショーン達が軍用装甲トラックから回収していた、迫撃砲の砲弾だった。



「しまった、連中は爆弾を持っているぞ」


「迂闊に近付けない? はっ! ゾンビが向かって来ているっ!」


「撤退しろっ! そろそろ、他の連中も逃げてる頃だっ!」


「クソ、収穫は無しかよっ!」


 パソコンショップの両側に隠れている、チンピラ達は、遠くからゾンビが歩いてくる姿を目にする。


 トラック側で、銃や魔法を使う連中も、フレッシャーやジャンピンガーに注意する。



「ウオオオオオッ!」


「グギャ~~!」


「く、くるなっ!」


「近寄らせるなっ!」


 チンピラ達が、自動小銃や魔法などを撃っていたので、トラック側に、ゾンビ達が集まっていく。


 しかし、反撃のために連中が、銃弾や火炎を放つ度に、フレッシャーが走ってくる。



「撤退だっ! このままでは、ゾンビの餌食になるっ! チッ! 奴等は放置するぞっ!」


「あの野郎ども、食料と部品を強奪しやがって」


「あ、待ってくれっ!」


「俺達を置いて行くなっ!!」


 トラック側から射撃していた、チンピラ達はゾンビの相手を止めると、荷台に飛び乗った。


 そうして、パソコンショップに向かった連中だけを残して、自分たちだけで撤退していった。



「ちくしょ~~! こうなったら、俺達も逃げっ! ぎゃっ!」


「グルルッ! グルルッ!」


「不味い、来るなっ! あっ! ぐわ~~~~!?」


「ウオオオオッ!」


 置いてきぼりにされた、モヒカン頭のチンピラはショットガンを撃って、ゾンビを仕留めた。


 だが、次の瞬間、ジャンピンガーに殺られてしまい、喉を引き裂かれた。



 それを見て、逃げ出そうとした、チンピラは右手に握るスティックから火炎魔法を乱射した。


 こうして、逃げる奴の背中から走ってきた、ウオーリアが、スピアーを突き刺した。



「ヤバい、あの連中…………銃声と魔法で、ゾンビを呼びやがった」


「ヤバいわ、店の奥には店長と客が居るのよ? 二人は非戦闘員なのにっ!」


「なら、防衛線を敷くぞ、真ん中にも地雷を置いて、俺達は外で戦うっ!」


「チンピラ達が、ゾンビを呼んだんだねぇ? まったく、厄介な事をしてくれたもんだよ」


 ショーンと女性ゴブリン達は、続々と集まってくるゾンビ軍団を前に焦りを見せる。


 ここは、広い駐車場だから彼方此方から様々な感染者が、物音に反応して寄ってきてしまう。



 スバスは、冷静に状況を踏まえ、商品棚の間に地雷を設置しようとする。


 フリンカも、店の外へと飛び出していき、ロングソードで敵を斬らんとする。



「フリンカ、待てっ?」


「コイツら、お仕舞いだね」


 店の外へと出た、ショーンとフリンカ達が目にした光景は、かなり衝撃的だった。



「ギャーーーー!!」


「うわあ~~た、助けてくれぇエエエエ?」


「グルアアアアッ!」


「げあ、が、う…………ウオオ?」


 フレッシャーが、ナイフを振るう、チンピラに噛みつき、それからウォーリアー変貌を遂げたのだ。


 ゾンビに囲まれた、チンピラも風刃魔法を放ちまくったが、やがて体中を噛まれてしまった。



 こうして、残るチンピラ達も、フレッシャーやジャンピンガー等に転化してしまった。



「な、これは不味い状況だにゃっ! 店の裏手からもゾンビが来ているにゃっ!」


「正面からも、マッスラー達が、三体も見えてるぞっ!」


「自動小銃は弾切れ…………しかも、故障しているわ…………他のを拾う暇もない」


 ミーは、ジャンピンガーやウォーリアー達が向かってくる姿を、店の左側から視認した。


 一方、スバスは正面から迫る驚異を前に、額から冷や汗を垂らす。



 女性ゴブリンは、自動小銃を拾ってみたが、激しい戦闘で壊れたらしく、使えそうになかった。



 また、他の銃はゾンビと化した、チンピラ達が首からスリングで下げている。


 魔法武器に関しても、彼女を含む魔力のないメンバーでは扱えない代物だ。



「仕方ない、いっちょ、派手に戦いますか?」


 ショーンは、そう言って、正面から迫るウォーリアー達に戦いを挑んでいった。

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