ショーン達は、荒れ果てた路上を歩いていた。
「ゾンビの死体や冒険者の死体が、ずいぶん転がってやがるな?」
「チンピラの死体もある…………おそらく、損傷が酷すぎて、ゾンビ化しなかったんだろう」
「あそこよっ!」
「先手必勝だねっ!!」
おそらくは、昨日の戦闘にて、死んだであろう遺体を見ながら、ショーンは呟く。
ワシントンは、物言わぬ死体が、ゾンビとして蘇生しないかと、注意しながら進む。
そんな中、十字路の左側に、ゾンビが一体だけ見えると、リズは後頭部に火炎魔法を放つ。
右側の敵は、フリンカが一直線に走っていき、通りすぎながら、ロングソードで頭を撥ね飛ばした。
「ゾンビの数も、まばらだな? ここの連中は、さっきの戦いで減ったのだろうか?」
「だとしたら、パソコンショップまでは楽に行けるにゃ~~ね?」
ショーンは、二人の戦いっぷりを見ながら、呑気に先頭を歩く。
棍を構えながら、ミーも笑顔を浮かべて、後を着いていく。
そんな二人の前に、民家に激突した軍用装甲トラックが見えた。
しかも、緑色の車体は横転しており、周辺に物資をバラまいていた。
さらに、迷彩服を着た運転手のゾンビが歩いていた。
「ウゥゥ~~? グワアッ!?」
「な、なんだ、勝手に爆発しやがったぞ?」
「はっ! 事故った時に、軍用車の中から飛び出た地雷を踏んだんだっ!」
「ヤバいにゃっ! 音で敵がよってくるにゃ?」
「一先ず、隠れるよっ!」
ゾンビの頭を斬らんとしていた、ショーンだったが、いきなり敵は爆発してしまった。
スバスは、火薬の匂いと周囲に散らばる円形地雷を見て、全てを察した。
焦るミーは、猫耳を動かしながら、遠くからフレッシャー達が近づいてくると思った。
それを聞いて、フリンカは崩れた壁から民家の中に入って行った。
「他に隠れる場所はないっ! 行くぞ」
「援護するわ、先に行って」
「急げ、敵が近づいてくるっ!」
「ヤバいにゃ、ヤバいにゃ」
「はあ、この地雷は拾って置くぞ」
ショーンは、フランスの後を追って、とにかく民家に入ってゆく。
リズは、隙間の側から、マジックロッドを腰だめに構えて、射撃準備する。
その間に、ワシントンとミー達が、すばやく中へと逃げ込んでいく。
最後に、スバスは地雷を拾うと、それを入口に置いてから隠れた。
「グアアアアーーーー!」
「グオーー!?」
「グアアア~~!?」
「グオオッ?」
集まってきた、フレッシャー達は地雷を踏んで、見事に吹き飛んでいく。
こうして、連中は全てが爆発により、あっという間に倒されてしまった。
個々の威力は低いが、近くにある地雷に誘爆して、派手な火と煙が舞い上がる。
やがて、煙が晴れると、ショーン達は設置してあった地雷が、全部消滅した事を確認した。
「この地雷は、回収しておこう…………後で使う時がくるかも知れないからな?」
「中にも、何か物資があるわ? 何かしら?」
「地雷と迫撃砲の弾だねぇ~~?」
「これは、凄い発見だにゃっ!」
入口から外に出る前に、スバスは地雷を拾うと懐にしまった。
その後から、マジックロッドを構えながら、リズは横転したトラックに近づく。
彼女が、本来は左右に開くための後部ドアを上下に開くと、フリンカとミー達が中に入る。
「地雷は、全部で…………五個か? これは、俺が貰っておくぞっ! あと、迫撃砲の砲弾は敵に投げたら手榴弾の代わりになる」
「迫撃砲の砲弾は、十個ずつあるから? スバス意外の俺達で、一人二個ずつ貰っておこうっ!」
「投げた砲弾が、もし爆発しなかったとしても、私の火炎魔法とか? ワシントンの弓矢で当てれば、爆発するわ」
「そうだなーー? 爆発物を運ぶのは危険だが、いつ強敵と退治するか分からんから、あると便利だな」
スバスも、中に入ってくると、二つある箱の中から地雷を手に取った。
ショーンは、もう一つの箱から見つかった迫撃砲弾を、みんなで持ち運ぼうと提案した。
リズは、砲弾を手に取りながら、当たらなかった場合の事を考えた。
ワシントンは荷台に入らず、外で敵の襲撃を警戒しながら答える。
「まあ、みんなで先を急ごう? この辺りに、もう速く動けるゾンビは少ないだろうからな」
「そうしようっ! このまま目立たず、迅速に行動して、パソコンショップを目指すわよっ!」
ショーンが荷台から出ていき、フリンカも後に続いて、日差しを眩しそうに眺めつつ歩き出す。
このあと、彼等は余りゾンビに遭遇せず、無事にパソコンショップがある広い駐車場に来た。
「うおっ! ゾンビの数が凄いな?」
「こりゃあ、ステルスキルしようにも、矢が足りなくなるぜ」
「いったい、どうするにゃ?」
「行くしか無いわね、なるべく音を立てないで殺るわよっ!」
駐車場には、一番奥の右手に歯科医院が見え、反対側には、眼鏡屋があった。
そして、手前には、大きなドラッグストアのマツモトキトシがある。
この正面には、車が大量に止められていたが、窓が割れたり、血で紅く染まっている。
そして、左側に目的のパソコンショップとコンビニ等が見えた。
だが、もちろん、こう言った建物の周りは、ゾンビに囲まれていた。
ショーンは、余りに敵が多いので、進む事を注意してしまった。
ワシントンも、狩猟弓を構えながら愚痴るが、顔は真剣に敵を見据えている。
ミーも、棍を何時でも振り回せるようにしつつ、同時に走る準備をする。
フリンカは、ロングソードを晴眼に構えると、一気にダッシュしようと身構えた。
「仕方ない、行くぞっ! フリンカは俺と来てくれっ! ミーとスバス達は、右側を頼むっ!」
「ワシントン、リズ…………援護は頼んだわよっ!」
パソコンショップを目指して、ショーンとフリンカ達は、一気に駆け出した。
「ちょっ? 仕方ないにゃ~~ねっ!」
「行くぞ、やるしかないっ! うらあっ!」
「ああっ! たく、周辺の連中は任せろ」
「ショップ周辺だけでも、数を減らさないとね」
ミーとスバス達は、それぞれのリーチが長い武器を振り回しながら、ゾンビ達に突っ込んでいく。
ワシントンとリズ達も、パソコンショップの近くを歩く敵を、次々と射殺していく。
「リズの奴、威力を押さえながら、頭を正確に狙っているなっ! うらっ!」
「グアアッ!?」
「そうしないと、発射音と発射炎で、敵を呼んじゃうから…………ねっ!」
「グウゥゥ~~?」
ウォーリアーの背中を蹴って、前屈みになった奴を狙って、ショーンは右足を跳ねる。
フレッシャーに飛びかかって、フリンカは背後真上から、ロングソードを振り下ろす。
二人の奇襲を喰らった、特殊感染者たちは、何が起きたかも分からぬうちに、倒れてしまう。
「とおっ! 喰らえっ! 喰らえにゃっ!」
「ドアッ! グワッ!」
「グアアーー!?」
「これで、やれば…………」
ミーは、ゾンビの胴体を棍で、どつきながら一気に前に出た。
その後、一回転しながら、体勢を崩した隙を狙って、額を思いっきり叩く。
こうして、敵が倒れると、今度はフレッシャーの膝を突っつき、そして脳天にも回し蹴りを入れる。
スバスの方は、ジャンピンガーが飛ぶ前に、鉄球を二回も足に当てて、両膝を破壊する。
そして、飛べなくなった奴に近づいていき、後頭部に、拳を何発も叩き込んだ。
「ワシントン達は? おらっ! このっ!」
「どうやら、頑張っている見たいだね?」
ショーンは、ゾンビが近寄ってきたので、バックラーで顔を弾き、ショートソードで首を跳ねた。
一方、フリンカは力強く、ロングソードを横凪に振るい、二体のウォーリア達を一気に仕留めた。
そして、二人は辺りを囲む敵を掃討しつつ、チラリと射撃チームの方を見た。
どうやら、彼方も頑張っているらしく、かなり倒しているようだ。
「…………ふぅ」
「よし、次、次っ!」
ワシントンが、玄を引く度、スピットゲロー達の側頭部や後頭部を、鋭い矢が貫く
リズが、マジックロッドから放つ火玉は、ゾンビ達の頭を焼け焦がしていく。
動く死体たちは、数こそ多かったが、奇襲を仕掛けられた事により、なす術なく一掃された。
「よし、次はパソコンショップに入るぞっ!」
「リズ、済まないが、俺と屋根に来てくれないか」
「なるほど、見張りをしようと言う訳なのね?」
「上は、任せたわよっ! 私達は中に入るわ」
パソコンショップの入口に立った、ショーンだったが、当然ながら自動ドアは開かない。
そんな中、ワシントンは屋上を目指して、店の右側にある電柱を登り始めた。
リズも、マジックロッドを背負い、まだ数多く存在するゾンビを警戒するべく、彼に続いていく。
フリンカは、ロングソードを振るって、ガラスを叩き割ろうとした。
「うわっ! なにっ?」
「銃撃だっ! 店の中に入れっ!」
「危ないにゃっ!!」
「くっ! 煙玉を投げるぞっ!」
フリンカが自動ドアを壊すより先に、背後から無数の弾丸が飛んできた。
それは、ガラスを粉々に破壊しながら、ショーン達を射殺するべく、次々と放たれ続ける。
ミーは、ジャンプしながら店内に素早く逃げ込むと、床に伏せた。
スバスは、ターバンから取り出した煙玉を幾つも転がし、白煙を辺りに充満させる。
「なんだってんだ? お?」
「動くなっ!」
慌てて、ショーンは店内に逃げ込んで、なんとか棚裏に隠れたが、いきなりピストルを向けられた。
そうして、背後から殺意を向けられた、彼は両手を上げるしか出来なかった。