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第13話 会議


 沿岸警備隊の事務所で、ショーン達は話し合っていた。



「はあ、事情は分かったが? 次に襲撃されるとしたら、チンピラどもは仲間達を増やして来るかも知れない」


「ゾンビだって、いつ襲ってくるかは分からないわよ?」


「そこで、提案なんだが? ここにある食料や水を君達に与える代わりに、要塞化を手伝ってくれないか?」


「私達の通信機は故障しているし、ここは資材不足で、バリケードすら作れない…………それに武器もないから」


 ショーンは、チンピラ達が再度襲撃してきた場合に、今度は負けるだろうと考える。


 リズも、ゾンビ達が押し寄せれば、高級デパートや冒険者ギルドみたいに拠点が潰されると思った。



 エドガーは、二人に対して、物資の取引を持ちかけてきた。


 カルメンも、不足する拠点防衛用の材料を求めて、持ってきて欲しいと頼む。



「で…………今は、リザードマンのクレンショー、ヒューマンのダビド達が、外を見張っている? それで、資材を集めに行って欲しいんだが」


「二人は、監視カメラを監視室から眺めているわ? それから申し訳ないけど、何人か見張り役に残ってくれないかしら? 私達だけじゃ、警備が足りないのよ」


「はあ~~? つまり、俺達に武器やバリケードの材料を集めてこいと言うワケだな? あと、警備かの人員も残せと」


「しかし、食料や水だけでは報酬として、足りないぞ」


 エドガーとカルメン達は、ゾンビ&チンピラ達の襲撃に備えなければ成らないと答える。


 それを聞いて、ショーンは面倒ごとを頼まれたと思い、ワシントンは相応の品物を要求した。



「通信機が直せれば、他の避難所と連絡が取れるわ? あと、ここが無事なことを報せられたら、民間人が集まってくる」


「そうなれば、より安全な避難所に行けるかも知れない、また民間人が増えれば、職人や商人から武器を強化して貰えるだろう」


「なるほど…………たんなる人助けで、終わらないのは確かだな? 俺達にも利はある」


 カルメンとエドガー達は、要塞化を手伝えば、様々な支援を行えると話す。


 二人の答えに、ワシントンは頷きつつ、両腕を組ながら眼を瞑る。



「じゃあ~~仕方ないっ! どのみち、俺達で行くしかないか? マルルン、ここの警備は任せたぜ」


「いや? ここは俺達が引き受けよう」


 ショーンは、これが自分たちの仕事だと思い、マルルンに警備を任せようとした。


 しかし、彼も同じ冒険者として、危険地帯に行く責任を丸投げする事はできない。



「マルルン? 行くのも危険だが、ここに留まるのも同じだ…………いつ、チンピラ連中が襲ってくるか、分からんからな」


 だが、ショーンは自分たちが行くと言って、マルルンを説得する。



「だから、俺達が無事に帰るまで、ここを守ってくれ」


「ショーン…………そう言うことなら、任せてくれ」


 ショーンの説明を聞いて、マルルンは事務所を警備することにした。



「と? その前に~~行くのは午後からだな? それまで、飯を提供してくれよ」


「カップ麺くらいしかないが、今は災害時だから我慢してくれよ」


 呑気な事を言いだした、ショーンの言葉を聞いて、エドガーは奥に向かって行った。



 それから、数時間後、昼食を済ませた冒険者たちは、廊下にたむろしていた。



「なあ? 俺が、どんどん勝手に話を進めちまったが、文句は無いか?」


「どの道、お使いには行くしかないからな…………それに、彼等と利害は一致している」


「まっ! 文句を言っても、仕方ないにゃ」


「それに、私達は冒険者だからね? 危険は承知の仕事だしさ?」


 ショーンは、外から見えぬように、カーテンが被せられた、窓辺に立っている三人に声をかけた。


 ワシントンは、狩猟弓を背中から取り出しつつ、真面目な顔で答えた。



 ミーも、準備万端だと言うような表情で、歩きだし、戦混を両手に握る。


 フリンカは、面倒くさそうな態度を取りながらも、次なる戦いを覚悟して、窓から背中を離した。



「と言っても、普段は対魔物の警備しかしてないんだけどね…………でも、行くしか無いなら行くわよ」


「だからと言って、何もしないで、ゾンビに食われるか? それとも、チンピラ達に殺されるか? それを待つだけなのは、性に合わん」


 リズは、マジックロッドを右肩に担ぎながら、カーテンの隙間から外を眺める。


 そして、スバスは座して死ぬ気はないと言いつつ、火薬を小さな木箱に入れる。



「スバス…………幾つか、ギルドから材料を持ってきてたんだな? まあ、ここに居る連中は、大体が冒険者だもんな? よし、文句が無いなら行くとするかっ! ん?」


 みんな行く気である事を確認した、ショーンは出発しようとするが、そこに誰かが近づいた。



「行く時間だな? ショーンと言ったか? 通信機が故障する前に、聞いた情報によると、新型のゾンビが出たらしい」


「名前は、マッスラーよっ! さっき、クレンショーが仕留めた奴だと思うわ」


「あのマッチョマン、マッスラーと言うのか? まあ、次は頭を狙ってやる」


 エドガーとカルメン達から、ゾンビに関する新たな情報が、ショーンに提供された。



「資材を集めるために向かって欲しいのは、近くにある建築現場なんだが? そこから、パイプや鉄板などを運んできて、貰いたいんだ」


「それから、パソコンショップに行って、電子機器を持ってきて欲しいんだけど…………」


「そう言えば、スマホは使えないのよね? 国から報道規制されてるのかしら?」


「いいや、基地局が何らかの理由で破壊されたか、故障したんだろう? ゾンビやチンピラが暴れてるくらいだし、連中が何かしたのかも知れない…………電子機器に関しては、俺に無線機を見せろ」


 エドガーとカルメン達は、地図を見せながら、行き先と欲しい物を教えた。


 リズが考えた疑問点に、スバスは冷静に考察しながら答えた。



「こっちよ、無線機の調子が悪くてね?」


「故障した、パーツが分かったら、替えのを持ってくる」


「そういや、スバスは手先が器用だし、PC関係に詳しかったな」


「彼が居れば、心強いわね?」


 スバスとカルメン達は、奥の通信機が置いてある部屋に向かって行った。


 ショーンとリズ達は、その後ろ姿を眺めながら、二人とも呟いた。



「スバス、入口で待ってるからな」


「ショーン、済まないが待っててくれ」


 ショーンは、スバスの背中に声をかけると、彼は振り返りながら答えた。


 それから、彼等は入口の方へと、みんなで向かっていった。



「おん? お前ら、マルルンはどうしたんだ」


「マルルン達は、後ろ側の警備に行ってます…………私達は、貴方たちの無事を祈ってますよ…………」


「ここの見張りは、俺達に任せてくれ」


「エナジードリンクを頼むわ、私の魔力が切れそうだし」


「エナジードリンク…………私にも必要だから持ってくるわね」


 ショーンの質問に、入口を警備していた、ジャーラは答えたあと、両手を組んで祈った。


 テアンは、入口から外を見張りながら、クロスボウを構えていた。



 カーニャだけは、エナジードリンクを頼んだが、これは魔力補充に欠かせない物だ。


 リズも、火炎魔法を発射する際に、魔力を消費するため、出来れば持って来ようと考えた。



「無事を祈ってくれるとは嬉しいなっ! ま、とりあえず、先にパソコンショップに向かってくる」


「ドリンクな? 自動販売機を壊すか、店から持ってくるか…………これは、非常事態だから仕方ないだろう」


「それより、外は戦場だから気をつけなきゃ成らないにゃーーよっ!」


「おっと、置いてかないでくれよ」


 ショーンが、入口のドアから抜けると、ワシントンとミー達が、後に続いた。


 これから向かう、パソコンショップは、道路の右側を、暫く進んでいけば見えてくる。



 だが、荒廃しきった路上を、再び進むのは、かなり危険を伴う。


 それでも、彼等はスバスが合流したあと、駐車場から出ていくのであった。




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