ロイヤル・マリン・ホテルを目指す、ショーン達は、ひたすら歩いていた。
道中に出会った、ゾンビ達は矢で射たり、首を跳ね飛ばしたりして、あっさりと片付けた。
「もうすぐ、ホテルが見えてくるぜ」
「はわっ! それより銃声だわっ!」
ショーン達の目的は、徹底的に目立たず行動する事で、ゾンビ達による襲撃を回避する算段だ。
そうして、敵の注意を引かずに、目標地点へと到達する事だった。
だが、リズは通りに面した駐車場から銃声が聞こえてくる事に気がついた。
それは、ゾンビ達の気を惹きつけ、周りから様々な特殊感染体が集まってきた。
「ショーンッ! あの駐車場に逃げ込むしかないよっ!」
「ジャンピンガーが見えましたっ!」
「分かってるぜっ! 俺は援護するから、お前達は先に曲がれっ!」
フリンカとサヤ達は、急いで左側に位置する広い駐車場へと走っていく。
ショーンも前へと走って行くが、彼は右側から迫る敵に、バックラーを向ける。
「死に晒せっ! アホンだらっ!」
「銃を寄越しなっ!」
「ぐっ! 不味い…………」
「こっちに銃なんて、殆ど無いわよっ!!」
何やら、ショーンの背後にある建物からは、チンピラ達と何者か達が、銃を撃ち合う音が聞こえる。
「ショーン、俺達は建物の裏に行って見るっ! きっと、チンピラ達に襲われているんだっ!」
「それが、銃声の原因でしょうねっ! 前のゾンビ達は任せまたわっ!」
「分かった、ゾンビどもは引き受けたぞ…………」
マルルンとジャーラ達は、急いで建物の裏手に回っていく。
それを確かめる間も無く、ショーンは迫ってくるゾンビ達を睨む。
「アアアア?」
「グアアアア…………」
「グオオオオ~~」
ゾンビとフレッシャー達からなる、ゾンビの群れは、どんどん距離を縮めてくる。
「来やがったな、こいっ! 俺が相手だっ!」
「ショーン、ここは沿岸警備隊の基地よっ! チンピラ達は、銃を探しに来たんだわっ!」
「だから、銃を撃ち合っているのか?」
「それより、どんどん敵が来るぞっ! ワシントン、リズ、援護を頼むっ!」
「私も背後から援護するにゃっ!」
ショーンは、駐車場の正面ど真ん中に立って、ゾンビ達に対峙する。
リズは、敵が射程に入るまで、後ろに後退しながら、マジックロッドを構えつつ下がる。
ワシントンも、彼女と同じく後ろに下がり、弓を構えて、敵を正確に狙う。
スバスは、鉄球をグルグルと振り回して、右側から迫る群れを、迎撃しようとする。
戦混を両手で強く握り、ミーは前衛の者達が、倒しきれなかった、奴を倒さんと待ち構える。
「グオオーーーー!!」
「とりゃっ!」
ロングソードを思いっきり横凪に振るい、フリンカは、フレッシャーを撃退する。
彼女は、ショーンの左側から攻めてくる群れを、胴体や腕を、長刃で切り落としていく。
「ゲロロ~~!!」
「ぐっ! バックラーが汚れるだろうっ!」
攻めてくるゾンビの群れに、口から酸を垂らしながら歩く個体を、ショーンは発見した。
彼は、それがスピットゲローだと分かると、奴の吐いたゲロを恐れ、子盾を構えて睨んでいた。
「不味い、次は避けないと?」
「これは、やばいににゃ…………」
「ショーンッ! 燃えなさいっ!」
「遠距離攻撃型は、任せろっ!」
スピットゲローは、前方から強酸を吐いて、襲いかかってきた。
バックステップで、ショーンは下がり、頭を前のめりに下げて、ミーは強酸を回避する。
後衛に回った、ワシントンは、スピットゲローの頭を目掛けて、弓から矢を放った。
同じく、リズも火炎魔法を乱発して、マジックロッドから、マシンガンのように火玉を放つ。
「ゲロロッ!! グゲゲッ!?」
「ギャアアアアーー?」
「グウウォーーーー!!」
「当たったが、まだまだ来やがるっ!!」
スピットゲローは、ワシントンの狙撃で頭を撃ち抜かれて、倒れてしまった。
そして、迫るフレッシャー達は、リズの火炎を何発か浴びると、体が燃え始める。
だが、それでも炎上しながらも、体が燃え尽きなかった個体は、さらに突撃してくる。
ショーンは、遠距離からの攻撃に注意しながらも、フレッシャーやウォーリア達に眼を向ける。
「ギャアアアアアアーー」
「うわっ!」
一匹のジャンピンガーが、ショーンに迫ったが、それが何故か吹き飛ばされた。
「ゴオッ!?」
「ショーン、無事かっ!」
「ガアガアッ! グオッ!」
「えいっ! とお…………」
スバスが回転させた鉄球が横から当たり、ジャンピンガーは、地面に投げ飛ばされた。
そこから更に、彼が首を踏み抜いた事で、奴は動かなくなった。
そして、ロングナイフとカイトシールドを構えた、ウォーリアーは胴体を戦混で、どつかれた。
また、よろめいた隙に、頭を思いっきり叩かれた事で、口から血を吐いて死んだ。
「二人とも、助かったぞっ! 感謝するっ!」
「その前に、何かヤバイのが来たよ」
「ゲロロ、ゲロロッ!」
「ゲロロ、ゲロ、ゲロロ」
「グオオ、ゴオアアアアアアーーーー!!」
ショーンとフリンカ達は、スピットゲローの不気味な鳴き声が、響き渡るさまを聞く。
そして、二人が臨戦態勢を整えようとした瞬間、連中よりも大きな咆哮が轟いた。
「不味いわ…………なに、あの大きな敵は?」
「かなり、手強い相手だな」
「体格がいい感じから察するに、パワータイプだろうなっ!」
フリンカは、ロングソードを正眼に構え、ショーンは、姿勢を低くした。
スバスは、鉄球を振り回すのを止めたかと思うと、ターバンから小さな木箱を取り出した。
「グオオオオ~~~~! グアアアーー!?」
「喰らえっ!」
木箱が、体格の大きなゾンビに当たった瞬間、ドカンと爆発した。
しかし、スバスの目論みは成功せず、奴は怪我しながらも、未だに倒れない。
「ゴアアアーーーー!!」
「ギャアアアア」
「グエ~~~~!」
「不味い、ゾンビ達が攻めてくるっ!」
「ショーン、私達は横から攻めてくる敵を牽制するので、精一杯だわっ!」
体格のいいゾンビを筆頭に、正面と左右から様々なゾンビ達が襲いかかってきた。
なので、ワシントンとリズ達は、前から迫る驚異に対応できなくなる。
壁を飛び越えたり、屋根や屋上から次々と、フレッシャーが飛び降りてくるからだ。
さらに、その中には、ジャンピンガーも数体ほど混じっている。
「ショーン、スバス、ミー! 私達は前から来ているデカイ奴や、スピットゲローとウォーリアー達を倒すわよっ!」
「ゲロロッ!」
「グアア?」
「スピットゲローの攻撃は、こうしてっ!」
ウォーリアーが、パイクを素早く突き出すと、フリンカは、ロングソードを振るって弾く。
こうして、姿勢が崩れた所を狙って、彼女は奴の両腕を切り落とす。
スピットゲローの飛ばした強酸は、フレッシャーを、横から戦混で叩いて、ミーは胸ぐらを掴む。
それにより、奴を肉盾として使い、遠距離からの攻撃を防いだ。
「ショーン、俺が奴を鉄球で叩く、お前は囮役を引き受けてくれるか?」
「任せな、スバス…………奴は、少し離れた場所から攻撃した方が良さそうだからな」
ショーンとスバス達は、左右から体格のいいゾンビを倒すべく、素早く走った。
「グオオ、グオオオオッ!!」
大きなゾンビは、乱暴に腕を振り回して、二人を近寄らせまいと、激しく暴れる。
「この喰らいやがれっ! うっ!」
「この野郎っ!」
ショーンのショートソードによる一撃は、確かに大きなゾンビに、ダメージを与えた。
しかし、奴は腕を斬られようとも、臆することなく、彼を殴り倒した。
その間、スバスは鉄球を左側から脇腹に叩きつけたが、奴は気にもしない。
しかも、まるで大木に衝撃を当てたかと思うほど、彼の両手に震動が響いた。
こうして、二人は体格のいいゾンビを前に苦戦するほか無かった。