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第10話 街中はパンデミック状態


 早朝、朝日が届かぬ秘密の地下道で、ショーン達は目を覚ました。


 どうやら、まだ電気は通っているらしく、オレンジ色の灯りが、暗闇を照らしてくれている。



「ショーン、起きろ? 時間だぞっ!」


「ふああ? 見張りを交代する時間か?」


 ワシントンから声を掛けられた、ショーンは半目に成りながらも、床から身を起こした。



「あ? あーーそう言う事か? 朝なんだな」


 昨夜の戦闘は、夜遅い時間に行われており、ショーン達は、すでに疲れが溜まっていた。


 また、地下道に隠れたは良いが、彼等にはゾンビではなく、疲労により眠気が襲ってきた。



 しかし、まだ危険が去ったと、みんなは確信しておらず、警戒心を解かなかった。


 そのため、万が一に、ゾンビが襲ってこないように、見張りを立てながら眠ることに決めた。



 こうして、全員で一夜を薄暗い地下で過ごしたのだ。



「まあ、人数は多かったから見張りは苦労しなかったがな?」


「連中も逃げ遅れたのか? 災難だったな…………」


 ワシントンは、前や後ろに振り向いて、そこに集まった様々な人物たちに目を向ける。


 ショーンも、同じく周りを見ながら、背中や腰を叩きつつ、痛みを堪えて歩き出す。



 二人が目にする存在は、昨夜ギルド防衛戦で協力した、仲間達だ。



「マルルン? お前らも逃げ遅れたか? これから一緒に行動するしかないな」


「ショーン、そうだな…………他の連中は、先に他の避難所を目指して逃げて行ったんだろう」


 ショーンとマルルン達は、階段とは反対方向へと歩き、出口を目指していく。


 とうぜん、他の仲間達も、背後を警戒しながら二人に続いて、奥へと進んで行った。



「他の避難所と言っても、一番近い場所の沿岸警備隊の灯台は、かなり遠い」


「それでも、行くしかないぜ? 兄弟、みんなで安全な場所を目指そう」


 マルルンは、渋い顔をしながら愚痴を垂れるが、ショーンも疲れた顔で、彼を励ます。


 こうして、彼等は地下道を歩き続け、奥の壁に梯子ハシゴを見つけて、外へと出ようとした。



「俺が先に行く、後から着いてきてくれ」


 梯子を登り、ショーンは静かに四角い蓋を開いて、周囲を見渡す。


 僅かに開けられた、隙間からは明るい世界と、何処かの道路が見えた。



「ショーン、気をつけてね…………外も、ゾンビで溢れているかも知れないわ」


「なるべく、物音を立てない方が、いいにゃ?」


「ショーンの後は、俺が行く、俺の武器は音が鳴らないし、連射が出きるからな」


「万が一に備えて、私も行こう、戦闘ならば私の拳銃が役に立つだろう」


 ショーンが外に出ると、穴の中から、リズとミー達が心配して、声を掛けらてきた。


 そして、ワシントンとゴードン達が、外で見張りを行う彼を助けるべく、梯子に手をかけた。



「ああ、気をつけてくれ、ここにはゾンビ連中は見当たらないが、遠くには見えるからな」


「分かった」


「ふむ、どうやら、あっちは酷いらしいな」


 ショーンの言葉を聞いた、ワシントンとゴードンたちは梯子を登って、地上に出た。


 周囲を警戒しながら、二人が目を凝らすと、遠くには、ゾンビ達が不気味に歩く姿が見えた。



 三人は、静かに息を潜めて、その恐るべき光景をじっと見つめていた。


 ヨロヨロと動きながら、傷だらけの体を動かす、死者たちは、数が多かった。



「前はゾンビ、後ろにもゾンビ…………だが、後ろに居る連中は数が少ない」


「なら、任せろ? 音を立てないで仕留めてやる」


 ゾンビ達は、血に飢えた獣がごとく歩き回り、その咆哮は不気味な響きを地上に響かせていた。


 ショーンとワシントン達は、恐怖に震えながらも、冷静さを何とか保ち、次なる行動を考えた。



「仕留めた、もう一匹、さらに一匹…………」


「ワシントンだったか? 俺のも連射は出来ないが、狙撃なら任せろっ! 強力な一撃を放てるからな」


「ショーン…………アンタに加えて? 私、マルルンサヤ? この四人なら、音を立てずに、ゾンビの首を跳ねられるよ?」


「私達は後ろを警戒しますわ」


 ワシントンは、矢筒から一本の矢を取り出すと、狩猟弓から、一発ゾンビに放つ。


 それを繰り返している内に、テアンと言われた赤茶色い皮鎧を着ている男性が、クロスボウを射つ。



 鉛色の軽量防弾ベストを着ている男性であり、黒髪黒目から察するに、アジア系だと思える。


 そして、着ている衣服は、武闘家が着るような紫色の稽古着に見える。


 また、細長いケース型の矢筒を背負い、脚には灰黒い皮足袋を履いてる。


 こうして、二人の活躍により、ゾンビ達が遠くから暗殺されていった。


 そうしている内に、数を減らしていく内に、フリンカが前に出てきた。



 また、黒髪ロングドレッドヘアの黒人女性が、赤いバトルフックを握り締めて、穴から現れた。


 彼女は、ベージュ色ポンチョに、茶色いX型のサスペンダーを身に付けている。


 細い卵型の顔は、消し炭色肌をしており、尖った耳に、眼鏡と緑に輝く大きな瞳が目立つ。


 下には、水色のワイドズボンと、灰色ロングブーツを履いていた。


 また、背中には、青い菱形クリスタルを装着した、マジックワンドを背負っている。



「マルルンの仲間だな?」


「テアンだ、こっちはジャーラ」


「ジャーラです、宜しくっ!」


 ショーンは、街の中を警戒しつつ歩き出すと、テアンは狙撃を止めて、後を着いてきた。


 ジャーラも後ろを歩くが、彼女は青のスポーツブラを着ており、赤いホットパンツを履く。



「ショーンだ、とにかく宜しくな」


 ショーン達は、慌てずに周辺を確認しつつ、ゾンビ達の視界に入らないように気をつけて移動した。


 なるべく足音を消して、隠れる場所を探しながら、全員が街中を進んでいく。



 荒らされたのか、路上には壊れた車と屋台などが、存在したが中身や商品とかは無い。


 ゾンビとの戦闘で散乱したか、それとも暴徒や盗賊たちに、品物は盗まれてしまったか。



 どちらちにしても、酷い有り様であるのは間違いない。



「不味いな、この雰囲気…………嫌な空気が漂っている」


「ああ、感じるぜっ! この不穏な空気は、嫌な予感がする」


 ショーンとワシントン達は、下手に自動車の下には近づかず、屋台やトラックにも近寄らない。


 何故なら、そう言う場所に、ゾンビ達が潜んでおり、奇襲攻撃を仕掛けてくるかも知れないからだ。



 しかし、誰かが何かを踏んだらしく、ガチャンと言う足音が響き渡る。


 こうして、彼方此方あちらこちらに散乱する、ゾンビ達の注意を引いてしまった。



「ギャーーーーーーーー!!」


「大変だっ! 今すぐ、左右に別れるんだっ!」


「自動車とトラックの裏に隠れるんだよっ!」


 ショーンとフリンカ達は、皆が慌てる中、冷静に隠れる場所を見つけた。


 次いで、二人の指示に従った仲間漂は、左右どちらかに身を隠した。



「グワワワワーーーー!!」


「グアアアアアアアア」


「ギャアアーーーーー」


「ショーン、見て? アイツ、ガラス片が刺さってるわ」


「ああ、どうやら? 奴が音の原因みたいだな」


 遠くから段々と音の発生源に、フレッシャー達が近づいてくる。


 しかし、音を発した者は、自分達の仲間ではなく、ジャンピンガーだった。



 フリンカは、自動車の陰から、道路を走る敵を睨むと、ショーンも注意深く様子を伺う。



「幸いだが、車の下に、敵は居ない…………」


「早く行ってくれにゃ…………」


 ワシントンは、車体の下を覗き、ミーは棍を握り締めて、ゆっくりと呟く。


 路上を歩く、連中の腐肉から発せられる匂いが鼻を突く中、ショーン達は息を殺して耐えた。



 やがて、ジャンピンガーは何処かに飛んでいくと、フレッシャー達も獲物を探して歩いて行った。


 こうして、特殊感染者たちが通り過ぎ、彼等は安堵のため息をつく。



「危なかったな…………? 次はもっと慎重に行動しないと成らん」


「どうやら、デカイ物音や戦闘に、奴等は反応するようだな」


 ワシントンが、両肩から力を抜きながら囁き、眼を瞑った。


 ショーンは、彼の言葉に頷きつつ、再び周囲を確認しながら、次なる行動を考えた。



 彼等は、ゾンビ達の群れと遭遇しないように、また歩きだす。


 こうして、生き延びるために、避難所を探して、前へと進んでいく決意を固めたのだった。



「気を付けろ? 散乱するガラスや瓦礫を踏んだら、足音が響くからな」


「さっきの奴見たいに、音に反応して集まって来るからよね…………」


 ショーンとリズ達は、なるべく静かに行動することを心がけていた。


 彼等は、音を立てないように足を動かしながら、静かに話した。



 こうする事で、街中に潜むゾンビ達の注意を引かないように注意していた。


 特に、魔物やギャングとの戦闘で、背後に回る際は、こう言った隠密技術が重要となる。



「グア、グアアア…………グアッ!」


「仕留めたぞ」


 テアンの一撃により、街中を歩いていた、ゾンビが倒される。


 ショーン達は、度重なる魔物やチンピラとの戦いで、静かに移動する技術を身につけていた。



「ふぅ~~? ここから、一番近い避難所と言えば、ロイヤル・マリン・ホテルだな」


「そこまで行けば、船で脱出できるかも知れないなっ!」


「船がなくても、ホテルなら何人かが籠城しているでしょうし」


「そうだと、言いけれど…………大丈夫かしら?」


 ショーンは、比較的に大きな建物であるホテルの存在を思い出しながら進む。


 その背後では、マルルンが彼を何時でも援護できるように、気を張りつつ歩く。



 フリンカが、呟きながら険しい顔を正面に向けて、ゾンビが居ないかと探す。


 リズは、新たに目指す場所も、すでに陥落しているのではないかと心配する。



 こうして、彼等はゾンビとの戦闘を出来るだけ避けつつ、足早に向かって行った。

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