ショーンは、ゾンビ達が向かってくる中、奴等にショートソードを向けて待ち構える。
「グオオオオーーーー!?」
「グルアア~~~~~~~」
「チッ! しつけぇーーなっ!」
死体を飛び越えて、ギルド城門付近に後退した、冒険者たちを目指して、ゾンビ達が走ってくる。
特に、何度もフレッシャー達が群れの先頭を駆けていき、喉元に喰らいつかんと突撃してくる。
ショーンは、ショートソードを後ろに引いて、盾を構え始めた。
すると、蠢く大量の亡骸たちは、いきなり大爆発に巻き込まれた。
「グアアアアッ!?」
「ウオオーーーーーー」
「ぐっ! やったか?」
「上手く行ったわね?」
吹き飛ぶ、フレッシャー達を見ながら呟く、ショーンの背後から女性が、暗黒魔法を放つ。
その小さな暗黒球が、木箱に火薬を積めた、箱型爆弾に当たる度に、真っ赤な火柱が上がる。
「カーニャ、助かった」
「マルルン、まだ気を抜かないでっ!」
マルルンと言われた、灰鎧を着ているゴブリンは、ゾンビの首を跳ね飛ばしながら前に出た。
青紫のロングコートに、黒いスカートを履いた、カーニャと言われた、サキュバスは前を睨む。
紫ショートパーマから右側からだけ、巻き角を生やした、彼女の青目は、敵に怒りを向けている。
「下がれ、まだまだ来るぞっ! うわっ!」
「ギャアアッ!!」
「グアアアアアア~~~~~~!!」
「うぎゃっ! このっ! ぐぅっ!?」
ジャンピンガーにより、上空から奇襲された槍使いが馬乗りにされて、殴られ続ける。
フレッシャーの爪で、メイスを振るわんとした、女性僧侶は、左頬を切り裂かれてしまった。
「この離れやがれっ!」
「グガッ!!」
「はあ、はあ、助かったぜ」
「退けっ!」
「ギキィーーーー? ギギーー」
「助かりまししあ、アア?」
白人冒険者の握る大剣ツヴァイヘンダーで、ジャンピンガーは、額から串刺しにされた。
それにより、槍使いは動かなくなった死体を何とか、思いっきり蹴り飛ばした。
アラブ系戦士は、投げ棍棒を、フレッシャーの頭に当てて、よろけさせた。
だが、フレッシャーを倒すには至らず、さらに女性僧侶もゾンビ化してしまった。
彼女は、顔を斬られてしまったので、ウイルスが脳まで素早く達した。
これにより、直ぐさま、アンデッドへと変貌を遂げてしまったワケだ。
「うわっ! 来るなっ! 来るなっ!」
「このっ! クソがっ!」
「ギャーーーー!? グア?」
「ウアアア?」
「不味いな、これ以上は…………」
投げ棍棒を投げて、アラブ系戦士は後退をしつつ、彼の右隣から、傭兵は釘バットを振るう。
ショーンは、ついに犠牲者が出始めた事で、敵に対する警戒心を、さらに高めた。
「グガッ! グガッ!」
「うわっ! 離せ、このゾンビ野郎っ!」
「やめろ、コイツッ!!」
一匹のフレッシャーが、ショーンが構えるバックラーに噛みついた。
その横から、マルルンは右手に握るスパタで、ゾンビを斬り捨てる。
そうしている間に、ギルド城壁や駐車場に設置された、パープル色の水晶玉が作動する。
「ギャッ!!」
「グオオッ!!」
水晶自体は、戦争やテロに備えて、ギルドが防衛用に設置した、自動レーザー武器である。
交差するように何回も放たれる、レーザーは低威力だが、確実にゾンビ達にダメージを与える。
これが、城壁には、普段からライトにも使うために配置してある。
また、駐車場の左右にも、何本か置かれた、ポール上部にも載せてあった。
「とうとう、最後の防衛線まで退いて来てしまったか?」
「急げっ! 椅子やテーブルを持ってくるんだっ!」
ショーンは、駐車場の残り三割にまで、自分たちが後退してしまった事を悟る。
通常のゾンビに加え、ジャンピンガー&フレッシャー達による進撃は止めるのが難しい。
そんな中、ギルドの城門から、背もたれ付き椅子や円形テーブルなどを、冒険者たちが運んでくる。
こうして、バリケードを兼ねた置き楯が出来て、多少は敵の進軍速度を、止める事ができた。
「これで、一般ゾンビ達は進みづらくなるっ! しかしっ! オラッ!」
「ガアアアアアア~~~~!! ギャッ?」
上空から急降下してきた、ジャンピンガーの顎に、ショーンは鋭い膝蹴りを食らわせる。
それにより、奴は奇襲攻撃に失敗して、そのまま地面に落ちた。
「止めだっ! うらっ!」
「ギャッ!!」
ショーンは、フレッシャーが立ち上がる前に、ショートソードを頭に突き刺した。
「他は? はっ! この、クソ野郎っ!」
「うおおおおっ! っと…………」
「ギャアアーー!?」
ショートソードを振るって、ショーンは背後で戦っていた、フレッシャーの背中に斬りかかる。
それにより、ラウンドシールドを構えていた、マルルンは窮地から救われた。
「マルルンだったか? 無事だよな?」
「ああ…………それより、あんた、ショーンだろ?」
ショーンは、マルルンに声をかけると、向こうも此方の名前を聞いてきた。
「ルドマン商会に、腕の立つ冒険者が居ると聞いてな? 噂と同じ姿だったから直ぐに分かったよ」
「そうか、それで俺の事を知っていたのか?」
マルルンは迫り来るゾンビを、斬り捨て、ショーンも襲いかかるフレッシャーを蹴飛ばす。
二人だけでなく、様々な冒険者や傭兵たちの活躍により、戦線が崩れる事はない。
「コイツを喰らえっ!」
「死にやがれっ!」
「今のは、ワシントンだな?」
「テアン、やったみたいだが?」
バリケードの向こう側に対しても、射撃武器や攻撃魔法などが、続々と放たれまくる。
ワシントンが狩猟弓から、矢を放つ姿が見えるが、彼は次矢を放つべく、背中に手を伸ばす。
その隣右には、クロスボウに矢をセットするアジア系である男性が目に映った。
「これで、一般ゾンビは殺られていくな?」
「ああ、だが、まだまだ来るぜっ!?」
ショーンとマルルン達は、駐車場に設置された、バリケードを睨む。
組み合わせられた、背凭れつきの長椅子&円形テーブルは、ゾンビ達を足止めしている。
そこから、連中は手を伸ばすが、冒険者が振るう長剣やハンマーで攻撃されてしまう。
また、ギルド城壁の凸凹からも、銃撃や魔法などが放たれて、敵を殲滅していく。
「マルルン、来ますよっ!」
「サヤッ! 分かった」
桜鼠色の和服に黄色い胴鎧を着た、女性冒険者が、薙刀を真っ直ぐに構える。
黒髪ロングヘアで、前髪を揃えている、黒茶色の目を細める彼女は、凛とした印象を受ける。
そして、白い足袋の下に履かれた、
そして、マルルンも名前を呼ばれると、ラウンドシールドを構えた。
次いで、直ぐに、ジャンピンガーとフレッシャー達が、勢いよく襲いかかってきた。
前者は、上空から降ってきて、後者はバリケードを、よじ登ってくる。
「はあっ! 私の刃に殺られなさいっ!」
「ギャアッ!?」
「殺す前に、転ばしてっと」
「グアア? グオッ!」
「凄いな、俺も負けてられねーーぜっ!」
サヤと言われた女性は、上空から落下してきた、ジャンピンガーを薙刀で真っ二つに切り裂いた。
マルルンも、ラウンドシールドで、フレッシャーの頭を弾いて、後ろに倒れさせる。
ショーンは、二人の活躍振りに自らも負けまいと、ショートソードを振りまくる。
そして、ジャンピンガーの頭を跳ねとばし、フレッシャーを斬り捨てる。
こうして、冒険者たちの活躍により、徐々にゾンビ達は、数を段々と減らしていった。
「グアアアアーーーー」
「ギュオオオオッ!!」
「うわ、二体同時に相手するのかっ!」
ショーンは、両手で力強くショートソードを握って、フレッシャー達を切り裂こうと構えた。
「ショーン、危ないっ! 盾を掲げてっ!」
「ギャッ! ギャアアアッ!?」
「グルルルルァァッ!! グッ! ウ…………」
「おわっ! このっ! 助かったぜ、リズ」
その時、リズが魔導杖から火炎魔法を放って、フレッシャーを倒す。
バックラーを構えていた、ショーンは残る一体の額を斬ってしまった。
「はあ、はあ…………これで、終わりか?」
「ショーン、もう敵は見えないわ」
こうして、最終的に、ショーンとリズ達の奮闘が実を結んだらしく、駐車場から敵は一掃された。
これにより、ゾンビ達による襲撃は、ようやく鎮静化されて、戦闘は終わりを迎えた。
冒険者ギルドの建物は無事だったが、二人を含む冒険者たちは長く続いた戦いで疲れきっていた。
「リズ…………やっと、終わったんだな?」
「ええ、もう、ギルド内に戻ってきて」
ショーンとリズ達は、疲労困憊していたが、彼等は互いに労い合った。