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第4話 冒険者ギルドへと行かねば


 ショーンとフリンカ達は、二階の窓から外を眺めて、道路を見た。



「ここから、飛び降りられるが、ゾンビが多い? 地面は無理だな? なら、あの電柱から行くしかないか」


「電柱から別の建物を目指しましょう…………できれば、冒険者ギルドまでは、電線を伝って行きたいわね」


 ショーンは、近くに立っている電柱へと、ムササビの如く、素早く飛び乗った。


 フリンカも、彼が冒険者ギルドの方へと向かう電線を掴みながら進むと、自らも同じく飛び移る。



「グワアアアア」


「アウアウ、アアーー」


「危なかった、もう少しで、ゾンビに食われてしまう所だった」


「それより、はやく進みましょう? こうしている間にも、下のゾンビ達が追ってくるかも知れないし」


 さっきの建物二階からは、ゾンビ達が手を伸ばしている様が見えた。


 ショーンとフリンカ達は、それを目撃すると、戦慄が体中を走った。



 しかし、二人とも怯えて動かないわけにもいかず、冒険者ギルドに向かおうとする。


 こうして、彼等は電線を伝って、遠くに見えるライトで照らされた要塞を目指した。



「ライトが着いてるから、ギルドは人が居るようだな? っと、ここから先は、カフェテラスか…………」


「そう見たいね? あの要塞の状態から察するに、まだ冒険者ギルドは、健在みたいね?」


 ショーンは、電線からテラスへと移ると、フリンカの手を引っ張る。


 そして、聳え立つ要塞みたいな冒険者ギルドへと、二人は目を向ける。



「ここは、小さなカフェテリア見たいだが、今は客が逃げたようだな」


「そうね、きっと冒険者ギルドに逃げたか、別の建物へと避難したか?」


 ショーンとフリンカ達は、二階のテラスを見渡すが、そこには白い円形テーブルが四つ並ぶ。


 その内、二つは倒されており、ここから客達が慌てて逃げ出した様子が伺えた。



「じゃあ、次はこの板を歩けば」


「隣のコンビニの屋上に行け?」


「ゾンビめっ! うん?」


「私の棒術を、喰らいなさいにゃっ!」


 ショーンとフリンカ達は、手摺から向こう側のコンビニ屋根へと、行くために設置された板を見た。


 しかし、その瞬間を狙って現れた盗賊行為を働こうとしているチンピラ達に再び襲われる。



「な、チンピラかっ! 奇襲だなっ!」


「くっ! いきなりかっ!」


「いや、違うっ! 俺は、猟師だ…………マタギの方のな」


「ゾンビじゃないのかにゃ?」


 ショーンは、バックラーで顔を隠そうとし、フリンカは両手でロングソードを強く握り締める。



 すると、狩猟弓を横に構えていた、黒人男性は武器を下ろして、矢を背中の矢筒にしまった。


 対する、猫耳茶髪ショートの中華風な獣人女性は、両端を金属で補強された棍を下げた。



「サミュエル・ワシントンだ? ここには、仕留めた獲物を売るついでに、観光に来たんだ」


「私は、ミー・ユイファよっ! 旅の格闘家で、今はゾンビに警戒中だにゃっ!」 


「そ、そうか…………んだよ、脅かさないでくれよ」


「アンタ等も、避難している途中かい? だったら、一緒にギルドを目指さないか?」


 サミュエルは、青緑色のフード付きコートを着ており、茶色いズボンと黒いブーツを履いている。


 そして、ポケットが沢山ついた、釣用の茶色いベストを着用している。



 ミーは、濃いオレンジ色のチャイナドレスを着ており、赤いタイツと黒い短靴を履いていた。


 背中に、棍を背負っているが、どうやら左肩から掛ける赤茶ベルトの裏に鞘があるらしい。



 ショーンは、二人の奇襲に驚いたが、フリンカは敵ではないと分かると、彼等を仲間に誘う。



「ギルドか? 俺達も、そこまで避難しようとしていたんだ」


「私達も、避難しようとして、ここまで来たにゃ」


「よし、なら一緒にギルドまで行こうじゃないかい」


「そうと決まれば、早速行動に移ろうかっ! 行くぞ」


 どうやら、ワシントンとミー達も、冒険者ギルドを目指していた事が分かった。


 それで、フリンカとショーン達は、二人を連れて、コンビニへと続く板を進み始めた。



「ここから入るぞっ!」


 コンビニから、商店街を通り抜けて行こうと、四人は隣接する、ビル内の窓枠に飛び乗った。


 そこは幸い開かれており、容易に侵入することが出来た。



 ショーン達は、さらに三階へと登り、そこから別のビルへと飛び移る。



「ここら辺りは、ゾンビが少ないな?」


「見てっ! ライフル銃だわっ!」


「魔法を使っている? それに、剣を振るってるにゃ…………」


「ゴーレムも戦っているな、ここは冒険者や傭兵が守っているようだ」


 ショーンは、雑居ビルの手摺から下を見て、商店街で戦っている冒険者やゾンビ達を目にした。


 向かいの建物には、窓から銃を構えた狙撃手を、フリンカが見つける。



 地上では、火炎魔法を放ち、短剣を持った人間側が、動きの遅いゾンビ側を狩り倒していく。


 ミーとワシントン達も、ゴーレムが残り僅かな動く死者たちを掃討していく様を眺めた。



「ギルドは、もう少しだ、あそこの高いビルから行ける」


「アレは、マンションだね? その向こうには高級デパートがあるはずよ? 観光客むけの」


「どうやら? マンションの住人は、いつでも逃げられるように、フック付きロープを用意していたようだな」


「きっと、火事や強盗に備えて、いたんだにゃ? 今はゾンビの襲撃で、ギルドに逃げたのかも知れないにゃ」


 正面には、五階建ての横長なマンションが立ち、向こう側からは、屋上からロープが伸びていた。


 ショーンとフリンカ達は、喋りながらも、縄を掴みながら上へと登っていく。



 その後に、ワシントンとミー達も、続きながら用意された、脱出経路がある理由を考察する。


 二人は、下を見るが閑散としている通りには、ゾンビ達が何体か、歩いている様子が見える。



「よっし、屋上に着いたが、ギルドは…………」


 ショーンは、冒険者ギルドの建物と高級デパートを眺めて、様子を観察した。



「ギルドは、バリケードが設置されているようね?」


「それも、二重だにゃ?」


「デパートの方も、ゾンビを攻撃しているな…………」


 ようやく、ギルドの建物へと近づいたが、フリンカとミー達は、どうやって下に下りるか思案する。


 ギルドの駐車場は、有刺鉄線が巻かれており、そこに樽やドラム缶が、いくつも置かれている。



 後ろから、ワシントンが右肩に、フック付きロープを巻いてきた。


 彼は、デパートの方に目を配ったが、そちらからは、銃声や魔法を射撃音が鳴り響く。



「他の建物も、ゾンビを寄せ付けまいと、城塞化させているようだな?」


「ああ、きっと、冒険者ギルドの方も誰かが見張っているに違いない」


 ショーンが屋上から、冒険者ギルドの周辺を眺めていると、ワシントンが近くにやって来た。


 彼は、少し離れた場所から、グルグルとフック付きロープを振り回して、地上へと投げた。



「おっ! やるわね? 街灯に引っ掛かったわ」


「二股の街頭だから巻き付いたにゃ」


 フリンカとミー達は、冒険者ギルドの駐車場にある、街灯に注目する。


 オレンジ色に輝く、これはポール上部が、M字になり、カボチャ型のガラス電球が付いている。



 その右側に、ワシントンが投げた、フック付きロープが絡み付いた。



「一番手前の奴だな、行くぞ」


「おしっ! 行くわよっ!」


 バックラーを両手で掴んだ、ショーンが滑り降りていく。


 フリンカ達も、ロングソードを鞘ごと腰から外して、それを使って同じく地上に向かう。



「我々も行くぞっ!」


「分かってるにゃっ! 磯がにゃきゃっ!」


 ボウイナイフを使って、ワシントンが降りていくと、ミーも混で三人の後に続く。



「おっと、地上に着いたか?」


「これで、安心できるかしら?」


「ふっ! ここまでくれば心配は要らんさ」


「もう、ゾンビは居ないにゃっ!」


 ショーンとフリンカ達は、辺りを見渡して、駐車場に敵が居ない事を確認した。


 ワシントンとミー達も、有刺鉄線にゾンビ達が近づいてないか、そちらに目を配った。



「誰だっ! 勝手に敷地内に入ったのはっ!」


「返答次第では、射殺するぞっ!」


「盗賊だったらって、ショーンじゃない? 今まで、どこに行ってたのよ?」


「リズ、無事だったか?」


 その時、いきなり、冒険者ギルドの二階から、サーチライトが輝いた。


 また、ライフルを構える狙撃手が、駐車場に向かって怒鳴り散らす。


 弓兵も、こちらに矢と鋭い視線を向けながら、下手な動きをするなと牽制する。



 だが、そんな警備を行う彼等の中に、なんと、リズが混じっていた。


 それに、ショーンも驚きながら、手を振って、彼女が無事だった事に安堵した。

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