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第3話 危険地帯


 ショーンとフリンカ達は、街中を走っていた。



「ショーン、会社の人達は避難しているはずだわっ! 私も海運会社の船上警備していたけど、ゾンビと戦っている間に、退避勧告が出たの」


「それで、こっちに来たわけか? んで、フリンカ? 俺達の同僚は、この辺りだと、公民館の代わりに冒険者ギルドに向かっていると思うんだが」


 フリンカは、ショーンよりも先を走りながら、真っ直ぐ暗闇に向けて話す。


 彼が言った通り、この区域には公民館や役場の代わりとなる建物は、冒険者ギルドだ。



 ここには、万が一に備えて、食糧や飲料水などが、それなりの数が備蓄されている。


 だから、付近の住民や冒険者たちは、ここを目指して避難しているはずだ。



「あそこは、昔の要塞を改築して出来た建物だからね? いざとなれば、籠城戦もできるし、きっと色んな人達が集まっているわっ!」


「なら、とっとと、走って行くしかねぇか」


「ウオオーーーー!!」


「グウアアアア~~~~」


 ショーンとフリンカ達は、何とか、ギルドを目指して、さっきから走っている。


 しかし、聞こえてくる声は、人間の悲鳴よりも、ゾンビによる唸り声や咆哮ばかりである。



「フリンカ? この辺りは、もうゾンビしか居ないようだ…………」


「ショーン、たぶん、殆どの人が冒険者ギルドに避難しているはずだわっ! きっと、そうよ」


 ショーンは、暗闇や壁から聞こえてくる声に、生存者は居ないだろうと悟る。


 しかし、フリンカは彼等が存在しない理由を、すでに無事逃走したからだと語った。



 それは、希望的な観測でしかないが、それでも二人は、そうであって欲しいと願う。



「そうだな? かなりの人間が逃げ延びたから、もう声が聞こえて来ないのかも知れないなっ! あ…………?」


「敵だわっ! 二人で連携しましょうた」


 いきなり、六体のゾンビが現れて、ショーンとフリンカ達は、戦闘体勢を取る。



「ウェアア?」


「ギャア、ギャア、ギャッ!」


「クヘへへへ」


「グルゥ~~~~」


「ガアーーーー!!」


「キャキャキャキャキャキャ」


 フリンカは、男女からなるゾンビ達を前にして、ロングソードを正眼に構える。


 ショーンは、バックラーを前に出すと、ショートソードは後ろに引いて、カウンター攻撃を狙う。



「グルゥゥッ!」


「キャキャッ!」


「喰らえっ! とりゃっ!」


「クヒヒ」


「ガアーーーー!」


「うらっ!! これを受けろっ!!」


 太ったゾンビは、胴体をロングソードにより、右から着られてしまい、女ゾンビは走り出すが。


 しかし、それも、フリンカは腹を蹴られて、後頭部を壁に激突させてしまう。


 女ゴブリンのゾンビは、飛びかかってきたが、バックラーで弾かれて、顔を殴られた。


 そして、人狼ゾンビも、ショーンに噛みつく前に、ショートソードで首を跳ねられた。



「コイツら、数は厄介だな?」


「ウェアアアア」


「倒したら、直ぐに逃げるわよっ!」


「ガアーーーー!」


 ショーンは、力強くショートソードを振るって、サラリーマン風のゾンビを切り着けた。


 フリンカも、頭上へと、ロングソードを掲げて、振り下ろすと、漁師ゾンビを真っ二つにした。



「キャキャッ!」


「ガアーー」


「フリンカ、分かった…………ギルドまで、行こうか? このっ! お前は邪魔だっ!」


「ショーン、それが懸命よっ! アンタは死になっ!」


 再び襲いかかってきた、ゴブリン女ゾンビの右肩に膝蹴りを喰らわす、ショーン。


 頭だけとなっても、吠え声を上げる人狼ゾンビを、ボールのように、フリンカは蹴り上げる。



「行くわよ、ショーンッ!」


「分かってるぜっ!」


 フリンカとショーン達は、ゾンビ達の相手をしていると逃げ遅れるだろうと判断した。


 それは、二人の匂いを嗅いだり、戦闘音を聞いて、他にも動く死者たちが集まってくるからだ。



「この先は、スーパーだっ!」


「ショーン、逃げ込みましょうっ!」


 雑草が繁る狭いコンクリート壁を走っていた、ショーンとフリンカ達は、スーパーを見つけた。


 ここは、お魚マーケットと言う、新鮮な魚と酒を扱っている中規模の店だった。



 幸い、ドアは開いているらしく、中からもゾンビ達の声がしなかった。


 それで、二人は店内に逃げ込み、安息の地を求めて、奥へと入っていった。



「うわっ! 敵だっ!」


「撃ち殺せっ!」


 いきなり、店内の商品棚に置いてあった酒瓶が、ガチャンガチャンと割れる音が鳴り響く。


 また、同時に、拳銃の発砲音も何回か発せられると、菓子袋や生魚が、床に飛び散った。



「おいっ! やめろ、俺達は人間だっ!」


「ショーンッ! コイツらは、チンピラだよっ! 強盗に入ったんだっ!」


 ショーンは、左側にある商品棚の端に身を隠しながら、攻撃を止めるように頼む。


 しかし、同じように通路を挟んだ右側から、フリンカは、化粧用の鏡で連中を観察する。



 当然、そこに映る者達は、顔を布で巻いた奴と金髪パーマリーゼントのチンピラ達だ。



「へへっ! そうさ、俺達は品物を盗めれば良いのさっ!」


「お前達は、どうやら? 冒険者みたいだな? 殺してから身ぐるみを剥いでやるぜっ!」


 顔を布で巻いた奴は、スリングショットで、パチンコ玉を乱発してくる。


 リーゼントの盗賊も、拳銃を乱射して、二人が動けないように牽制してきた。



「くっ! 何か手を考えなければ…………はっ!」


「ショーン、何か思いついたんだねっ!」


 キョロキョロと目を動かした、ショーンは商品棚から落ちた、銀色に光る灰皿を見つけた。


 フリンカも、彼を助けようと、敵の注意を惹くべく、ロングソードを振るう。



「そんな剣なんてっ!」


「はっ! 遠距離武器もないのっ! がっ!」


 フリンカの商品棚から振り払った銀刃に、盗賊たちは攻撃を集中する。


 顔に布を巻いた、チンピラは手に持つ、スリングショットを射ち続ける。



 しかし、同じく拳銃を乱射していた、リーゼントのチンピラは、アゴに回転する灰皿が直撃した。


 それにより、奴は顔を押さえてしまい、銃を射てなくなる。



「くそっ! このやろうっ! ぐわっ!」


「アタシも、お返しよっ!」


 顔を布で隠した、チンピラも顔面に焼酎瓶が当たってしまい、それが砕け散る。


 これは、フリンカが隙ができた奴を狙って、思いっきり投げた必殺の一撃だ。



「この…………あ?」


「ゾンビが来やがったぞっ!」


 リーゼントのチンピラは、再び拳銃を両手で構えたが、左側から何かがきた事に気がついた。


 顔を布で隠した、チンピラも店のドアから、ワラワラと、ゾンビ達が入ってくる姿を目にした。



「このっ! 殺られて、たまるかっ! ぐわあっ!」


「死にやがれっ! 来るな、来るなああっ! ぎゃああああっ!」


「不味いな? フリンカ…………あの数では、俺達も勝てないぞ」


「分かっているわ、ここから離れるしかないわね? こっちよ」


 スリングショットを放つ、顔に布を巻いた、チンピラは大量のゾンビに食われてしまった。


 それと同じく、リーゼントのチンピラも拳銃を乱射しながら後ろに下がった。



 だが、奴も群れの中に包み込まれてしまい、悲鳴を上げてしまった。


 その様子を見ていた、ショーンとフリンカ達は、密かに行動を開始した。



「このドアから行きましょう? さっきの連中は、銃声や物音を立てたから、ゾンビの注意を惹いたのよ」


「なら、物音には気をつけなくちゃなっ! さて、開けるぞ」


 フリンカとショーン達は、ドアの中に入っていき、内側から鍵をかけた。



「ウオオオオッ!」


「グワアーーーー」


「うわっ!」


「ひっ!」


 丁度、鍵をかけた音に反応したのか、ゾンビ達が、ドアを叩き始めた。


 ショーンとフリンカ達は、一瞬だけ驚いたが、直ぐに冷静さ取り戻し、そこから離れた。



「どうする? ここも、ブチ破られるかも知れないぞっ!」


「あっちに行きましょう? 上に行くしかないわ」


 ショーンとフリンカ達は、ドアが壊れて、ゾンビの群れが入ってくる前に、階段を目指した。

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