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恋人を、スパダリから寝取られた上に、パーティーを追放された不幸なオッサン冒険者っ! 世界の危機に無双するっ! ~~
恋人を、スパダリから寝取られた上に、パーティーを追放された不幸なオッサン冒険者っ! 世界の危機に無双するっ! ~~
デブにゃーちゃん
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年10月21日
公開日
36.9万字
完結済
 20XX年。  このグランワールドでは、科学と魔法が同時に発展しており、多種多様な種族が暮らしていた。  人間・亜人・昆虫族・植物族・魔族・不死族など。  古代から続く、戦争も世界大戦が終結してから、とうに長い年月が過ぎている。  当然、人々は混血しながら、都市で普通に暮らすように成っていた。  そんな平和すぎる世界にある、フルルンク共和国、沿岸部に位置するマリンピアシティー。  ここは出島であり、貿易や観光で栄える大都市で、漁業も盛んに行われている。  港にある倉庫を、海洋生物系の魔物から守る冒険者=警備員であるショーン・ボンド。  彼は、かつて都市でも、かなり名の売れた優秀な冒険者だった。  だが、今では何も深く考える事なく、日々の仕事を淡々と真面目に行うだけだ。  その理由は、自らを罠に嵌めて、成果を横取りして、出世した宿敵ライルズに負けたからだ。  また、奴は仕事を卑劣な手口によひ、冤罪で彼をクビさせた挙げ句、婚約者スザンナまでも奪った。  暫くの間、彼は立ち直れなかったが、新たな職場を得てから、再び冒険者として働いている。  そして、同僚である金髪エルフの魔法使い、リズとともに、平穏無事に過ごしている。  だが、魚港に、一隻の怪しい難破船が漂着してから事態は急変する。  そして…………出島は地獄絵図となる。  その最中、ショーンは宿敵ライルズと、ゾンビが蠢く戦場と化した街で再開する。  果たして、無実の罪を着せて、全てを奪った男ライルズ&スザンナ達に彼は勝てるだろうか。

第1話 若き才気溢れる冒険者ショーン・ボンド


 ここは、マリンピア・シティーでも、有数の危険区域であるスラム街だ。



 海からは、常に海洋生物の襲撃があり、街中ではギャングやマフィア達が、抗争を繰り広げている。



「ふぁ~~? ねむぃ? ってな…………」


「ショーン、また眠っていたのね?」


 若き茶髪の青年であるショーンが、軍用車両コンボイ内で、座席に腰掛けながら、欠伸アクビをしていた。


 彼は、目を覚ますと同時に、すうっと立ち上がり、後部ドアを開ける。



 彼は、青い軽鎧の下に、月白げっぱく色に染められた服とズボンを着用して、薄青いブーツを履いている。


 また、左腕には子盾バックラーを装着しており、腰にはショートソードの鞘が下げられている。



 それに続く、銀髪ロングで、碧眼の女性は、灰白いジャケットを着て、青いタイツを履いている。



 彼女は、スラリと痩せてはいるが、胸と尻だけは、ムッチリとした体型であった。


 腰には、右側にはピストル・ホルスターを、左側には、レイピアの鞘を下げていた。



 彼等の他にも、仲間たちが何人か、車から降りて、倉庫へと向かっていく。



「スザンナ、心配するな? 仕事はキッチリこなすさっ! それに、周辺の見張りは、先行しているチームが片付けてくれてるしな」


「本当に大丈夫なの?」


「スザンナ、ショーンなら大丈夫だっ!」


「彼は、信頼できるエースなんだし」


 ショートソードと子盾バックラーを握る、ショーンは、倉庫のドア右側に貼り付く。


 また、スザンナも左側の壁に身を寄せて、内部に何時でも突入できるように、レイピアを抜き取る。



 黒アリ人間の冒険者は、青い防弾ベストを着用しており、自動小銃HK416を持つ。


 金髪蒼白なゾンビ族の冒険者は、青い制服を着ており、防弾シールドと拳銃グロック17を握る。



 彼等は、冒険者団オーシャン・リザード・パーティーが、雇っている下請け警備会社の冒険者だ。


 通常は、警備業務を行うが、今回のように人質救出から、制圧作戦まで幅広く活動する事もある。



「みんな、そう言うけれど、私は無鉄砲なショーンが心配なのよ? いつも、一人で突っ込んでいくし? もし、貴女に何かあったら婚約は…………」


「ああっ! だから危険な傭兵稼業も、これが最後だな? スザンナ、君は家庭に、俺は普通の警備部門に回して貰うよ」


 スザンナは、不安気な表情を浮かべて、言葉を詰まらせてしまう。


 一方、ショーンも真剣な顔つきで、彼女の方を向いて、第一線から退くと答えた。



「だからと言って、今回も無理しないでね? と言っても、どうせ、敵に突っ込んでいくんでしょうけど」


「悪いな、これが俺の性分なんだ…………でも、本当に必ず今日で終わりにするさ」


 スザンナも左側の壁際で、レイピアとピストルを握りしめながら、愚痴をこぼす。


 ショートソードとバックラーを強く握り、ショーンは、倉庫のドア右側で余裕の笑みを浮かべる。



「おいちゃんと、外から警察や冒険者たちが来ないか、見張りはしているんだろうな?」


「分かってるぜ、だが俺達は、そんじょそこらのチンピラじゃねぇ~~クラップスだぞ」


「そうだぜ、マイレス? こんだけの銃があるんだ、何もビビる必要はねぇだろうが?」


 マイレスと呼ばれた体格の良い褐色男は、リーダーらしく、かなり威張っている。


 彼に対して、チンピラは悪態を吐きながら、アサルトライフル、AK47の弾倉に弾を込めていく。



 もう一人の黄アリ人間も、マチェットを肩に担いで、ダラダラと歩いていた。


 連中は、何人かで倉庫内で屯しており、内部に侵入者が居ないかと、アチコチを見張っている。



「ふんっ! そう言って、海トカゲ団が来たら、どうするんだ」


「大丈夫だ、人質はコンテナの中なんだからな」


『こちら、チーム1、人質を確認した』


『チーム2、了解だ』


 マイレスは、奥にある赤錆びた、コンテナを睨みつけながら子分たちを怒鳴る。


 しかし、やる気の無さそうな、リザードマンは、AK47を持ったまま、両腕を広げる。



 それを、小さな羽虫ドローンを通して、水晶玉に映る連中の姿を、ショーンは人数を確認する。


 また、彼は無線機で、別な場所に待機している仲間たちと連絡を取る。



『突入する…………チーム2、中に入ったら、援護を頼む』


『了解、我々は上からだ』


 ショーンと別チームのリーダーは、そう言うと、一気に内部へと、突入していった。



「スザンナ、行くぞっ! フラッシュバンだっ! バルザ、フロイスッ! 後ろは任せたっ!」


「ええっ! 分かったわ、行くわよっ!」


「分かった、目を瞑らないとな」


「銃弾は、俺のシールドで弾いてやるから、安心しろ」


 閃光手榴弾を転がすように、ショーンは下から倉庫内へと投げ入れた。


 それを見ると、スザンナは左腕で顔を隠して、眩い光から両目を守ろうとした。


 黒アリ人間のバルザは、HK416を構えたままドアから離れた。


 金髪蒼白なゾンビ族のフロイスは、防弾シールドで、即座に顔面を隠す。



「うわあっ! 襲撃だっ!」


「何処の奴等だっ!」


「お前ら、落ちつけっ! がっ!」


「ぎゃあーーー!?」


 炸裂した閃光手榴弾は、眩く発光して、強烈な爆音を周囲に轟かせる。


 次いで、ライフル弾やピストル弾などに撃たれて、チンピラ達は、次々と倒れていく。



「撃ち返せっ!」


「近寄らせるなっ!」


「そう言ってる間に、俺は近づいてるんだよっ!」


「ショーンを殺らせはしないっ!」


 チンピラ連中も、テーブルやドラム缶を遮蔽物として使い、AK47を撃ってくる。


 その銃撃に真っ向から近づいてき、あっという間に、ショーンは敵と距離を積めてしまった。



 彼が、注意を惹き付けている間に、スザンナは片手で、ベレッタ拳銃で敵を射殺しまくる。


 また、背後からは、バルザとフロイス達が、HK416やグロック17で援護射撃してくれる。



「あの野郎を撃ち殺せっ!」


「とにかく、止めろーー!」


「させるか…………やれ」


「死ねっ!」


 チンピラ連中の注意は、完全にショーンに向いており、アサルトライフルは銃火を吹き続ける。


 その銃撃に紛れて、倉庫内を照らす二階両窓から、一斉に弓矢と魔法が放たれた。



「よっしゃ、このまま死んでくれよっ!」


「ぐゃっ!?」


「げあ…………」


「うわあ、く、来るなっ! ぎゃあっ!?」


「来たら、撃ち殺すっ! ぐぇ」


 一見すると、無謀な突撃に見える、ショーンの行動は意味がある。


 それは、自らに注意を惹き付けるのと、突然の奇襲を受けた敵は、銃を撃つ前に混乱するからだ。



 弓矢と様々な魔法を喰らった、チンピラ達は、次々に倒れて数を減らしていく。


 また、不意を突かれて怯んでしまった連中を、ショートソードの刃が襲う。



「ぐ、このっ! おらあっ! ぐわっ!」


「殺られるワケね~~だろっ! とりゃあ」


 残り一人となった、マイレスは敵を近づけまいと、長い真っ赤なバールを振りまくる。


 それを軽く避けまくり、ショーンは奴の胸に深々と、ショートソードを突き刺した。



「ごばああああ、が…………?」


「終わったな、人質を救出するぞ」


「分かっているわ」


 リーダーのマイレスは、血を吐きながら倒れてしまい、これで敵は完全制圧できた。


 ショーンは、剣に着いた血を振り払うと、奥にあるコンテナに歩いていく。



 辺りを警戒して、まだ残敵が隠れていないか、スザンナは周囲に、レイピアとベレッタを向ける。


 戦いは終わったが、すぐに気を抜いては、何処から奇襲されるか分からないからだ。



 そこに、他のチームを率いる隊長が、ロープを伝って、倉庫内に降りたった。



「ショーン、警察より先に手柄を取れたなっ!」


「ライルズ、ああっ! これで、また出世できるなっ!」


 ライルズは、精進な顔つきのショーンとは対照的に、爽やかなハンサム・イケメン顔だ。


 おとぎ話に登場するような騎士を思わせる、かなり明るい金髪に、碧眼の持ち主だからである。



 服装は、青いバフコートを着ており、水色のジーンズと黒いブーツを履いていた。


 また、腰の鞘には、フェンシングソードと言われるフルーレを帯刀している。



「これで、また俺達の名声は高まるなっ!!」


「だなっ! 周りは任せてくれ、コンテナは頼むぞ」


 ショーンは、そう言いながら笑顔で、ライルズと拳を突き合わせる。


 彼等は、正式には警備員だが、冒険者パーティーや賞金稼ぎとして、警察より先に犯罪者と戦う。



 もちろん、目的は報酬や出世するためであり、今回の人質救出作戦も同じ理由で、行われている。


 そして、コンテナのドアを開かれると、そこには椅子に拘束された人間が見えた。



「人質を確認っ! これから、救助に移る」


「ショーン、その前に死んでくれ…………」


 ショーンは中に入り、トラップが無いかと慎重に人質に近づいていく。


 その時、ライルズは不穏な言葉を呟き、いきなり、両側からドアが閉められた。

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