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第13話 クソみたいな連中

そして、彼女の物語はグリムに助けられた今に戻る。


♢♦♢


~遺跡~


「行っちゃった……。あ、名前だけでも聞いておくんだった。何やってるのよ私」


 俺が彼女を助けた数分後、偶然にも彼女の仲間達であろう魔法団の会話を聞いてしまった俺は、団員の者達が話している人物が彼女では無い事を祈っていたが……。


「すいません皆様ッ!」


 魔法団の元へ慌てた様子で走って来た1人の女の子。


「あーあ」


 そう。悪い予感は見事に的中。 

 遠くから魔法団の元へ走って来た者は、さっき助けたばかりの木の杖の女の子だった。


 ここは王都に向かう途中にある遺跡。

大きな岩があちこちに転がっており、王都の魔法団員達は一際大きい岩の前に集まっている。モンスターの討伐にしては結構な人数だ。それによく見るとその大岩には穴が空いており、中は洞窟の様に奥深くまで続いている様に伺えた。


 そして、走って来たさっきの彼女は魔法団へと合流するなり、誰かに激しく怒られた。


「どこにいたのよアンタッ! 自分が今任務中だって事分かってるの⁉」

「も、申し訳ありませんエンビア様……! 洞窟に入る前にお手洗いを済ませていたら少し迷ってしまいまして……」

「本っっ当にクズで足手まといね! アンタの為にどれだけの人が待ってると思ってるのよ!」

「す、すみませんでした!」


 彼女に怒号を浴びせたのはエンビア様と呼ばれた女の人。魔法団の紋章が施されているローブを着ているが、他の者達が全員黒色に対してエンビア1人だけ色が違う。あれは恐らく団をまとめている団長の証だろう。紋章も当然の如く赤色だ。


 助けた彼女はエンビアの前で頭を下げながら、小刻みに体が震えていた。


「何でこんな使えない奴が来た訳?」

「それはエンビア様もご存知でしょうが、今はどこも人手不足の状況なので……」

「チッ。いい? 私達はノーバディとか言う気持ち悪い触手を何時までも相手にしている時間はないのッ!

こうしている間にも、騎士団の奴らは国王直々に命じられた白銀のモンスターを討伐する為に辺境の森に行ってるのよ。

このままだと騎士団奴らに全部手柄を持っていかちゃうじゃない!

こんな雑魚はさっさと討伐して、私達だって早く白銀のモンスターの討伐に参加しないといけないんだからねッ!」

「ほ、本当にすみません……」

「謝って済む話じゃないのよ!」


 激怒するエンビアは声を荒げ、彼女の顔を思い切り引っ叩いた。

 その反動でバランスを崩した彼女は地面に膝を付き、倒れる彼女にエンビアは更に蹴りまで入れ始めた。


 ――ドカッ! ドカッ! ドカッ!

「ホント、幾ら人手不足とだからって、こんな3級魔法も使えないゴミが何で私の団に来たのよ! こんなのが来るなんて微塵も思わなかったわ。流石呪われた世代の1人ね!

アンタもあのグリムとか言う無能な奴と一緒に、辺境の森に飛ばされれば良かったのよ! 見てるだけでムカつくわコイツッ!」


 吐き捨てるように言いながら、エンビアは何度も何度も彼女に蹴りを入れていた。彼女は耐えようと必死に身を屈めており、それを見ていた周りの団員達も誰1人彼女を助けようとはしない。それどころか、蹴られる彼女を嘲笑う声が聞こえていた――。


「ハァ……ハァ……もういいわ。疲れる。

今から洞窟であの触手を倒しに行くけど、また癇に障る行動したら直ぐに捨てていくわ。アンタみたいなゴミに構う暇はないからね。

まぁゴミはゴミらしく、触手の餌になって私達の囮にでもなってくれたら儲けものだけど! キャハハハ!」


 ――ズガッ!

「ゔッ……⁉」


 エンビアは笑いながら最後に彼女の頭を踏みつけた。そしてそのまま高笑いしながら団員達を率いて洞窟の中へと歩いて行った。


 散々蹴られた彼女は痛みを堪えながらゆっくりと体を起こし、痛む場所を手で押さえながら懸命に立ち上がって皆の後を追う様に歩いて行った。


**


「――クソみてぇな連中だな」

「バウワウッ!」


 事の一部始終を岩陰から見ていた俺ははらわたが煮えくり返る程の憤りを覚えた。抱えていたハクも俺同様に怒りを露にしている。ハクも今のを見て怒っている。


「流石王都の騎士魔法団……どっちもクソだらけみたいだ」

「バウバウッ!」

「それに、他にもなんか気になる事言っていたな」


 やっぱりハクの討伐を命じたのは国王。

 それにやたらと襲い掛かってきたあの触手のモンスターは“ノーバディ”とか呼ばれているらしいな。さっきの女の言い方だと、そのノーバディとやらの討伐の為に騎士魔法団の両方が狩り出されているみたいだし。


 しかもここの洞窟の周りには触手のモンスターの残骸みたいな物が散らばっている。数も多いところを見るとこの洞窟の中にノーバディ本体がいるって事か?


 そしてそのノーバディを討伐するべく彼女達の魔法団がここに来たと考えるのが自然か。だとすれば彼女がヤバいぞ。あのエンビアとかい奴は相当イカれてた。あの女なら本当にノーバディの餌にしかねない。


「う~ん……どうしよう。どう転んでも絶対目立っちゃうよなぁ。王都に行くまでなるべく面倒も避けたいけど」

「バウ!」

「そうだよな。やっぱこのまま放っておけないかハクも」

「バウワウ!」

「よし。じゃあ俺達も行くか――」


 やはり彼女の事が心配になった俺とハクは、魔法団の後に続きバレない様に洞窟の中へと入った。


♢♦♢


~遺跡・洞窟内~


「うわ、真っ暗」


 ――シュボッ!

 洞窟内が暗すぎて何も見えなかった為、俺は転がっていた木を拾い火を点け洞窟の奥へ向かった。


「確かに、この洞窟内にノーバディが蔓延っているな。そこら辺でウニョウニョ動いている」

「ワウ」

「魔法団の奴らはあっちか……。相当深いし入り組んでるから、気を付けないとコレ俺達出られなくなるなハク」

「バウ」


 しっかりと道を覚えつつ、バレないように奴らの元へ向かう。


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