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ビハインド・ストッカー〜激突! 背後霊バトル!〜
メリーさんのアモル
現代ファンタジー異能バトル
2024年10月21日
公開日
41,964文字
連載中
 背後霊ビハインドを従え、他者のビハインドを倒して「ストック」する者たち「ビハインド・ストッカー」、通称「ストッカー」が密かに夜の街を駆け巡り、️相争う世界。彼らはビハインドをストックし、魂を呼び戻す秘技を実現させるべく戦う。

 偶然からストッカーに目覚めた高橋(たかはし) 裕之(ひろゆき)は、魂を奪われ植物人間となった幼馴染を救うため、ストッカーとして、ストッカーとの戦いに身を投じることを選ぶ。

プロローグ〜病院の対決

 夜の病院。僅かな夜勤の医療従事者と入院患者以外いないはずの聖域。

 そんな聖域の廊下を二人の影が踊る。

「この進路、狙いは一緒ってことね」

 影の片方、長い髪をワンサイドアップにした高校生くらいの少女が呟く。

 直後、廊下の角から飛び出したもう一人の人影。飛び出すと同時、人影から少女に向けて青白い炎が飛ぶ。

「仕掛けてきたか! レイコ!」

 少女が叫ぶと、少女の背後に和弓を構え、弓道着を身に纏ったポニーテールの少女が出現する。

 その足元は揺らめいており、まるで実体がないかのよう。

 レイコと呼ばれた何かが弓に矢を番え、放つ。

 青白い炎と矢がぶつかり合い、互いに消滅する。

「ビハインドの性能は拮抗してる! 一気に距離を詰めるわ!」

 少女が一気に地面を蹴って駆け出す。

 人影はさらに青白い炎を数発放った後、さらに奥へと逃走を始める。

「同じ手を数だけ増やしたって無駄よ!」

 レイコが再び矢を放つ。それは空中で分裂し青白い炎を相殺していく。

「レイコ、先行して!」

 少女の指示に従い、レイコは滑るように少女の先を行く。

 だが、人影はその動きを見越していた。

「タケシ!」

 人影、スーツの男はポケットからタバコの箱を取り出し、開きながら叫ぶ。中身は空だった。

 否、箱の内部からレイコと同じく、足元が揺らめく男が出現した。その手には竹刀。

「下がって、レイコ!」

 慌てて、少女が叫ぶが、あまりに遅い。タケシと呼ばれた何かの竹刀が鋭くレイコを打ち据える。レイコの姿がノイズが走るように揺らめき、より朧げになる。

「ストック持ちとはね……」

 少女が悔しげに呟く。

 タケシがタバコの空箱の中に戻り、男はその空箱をポケットにしまった。

「トドメだ、シオリ」

 男の背後に着物を着た長い黒髪の少女が出現する。これまでのレイコやタケシと同じく、足元がゆらめいている。

 シオリと呼ばれた何かが手のひらをレイコに向ける。

「レイコ! 私を呪いなさい!!」

「ウウ……、アアア……! 憂紀ゆうきィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!」

 少女が叫ぶ。直後、レイコは一瞬呻いてから、激しい怨嗟の声を上げる。

 同時、レイコを紫色の炎の如きオーラが纏う。

 シオリの手のひらの先から青白い炎が飛ぶが、レイコが纏う紫色の炎の如きオーラが掻き消す。

「なにっ!?」

 男が驚愕する。

 だが、それは一瞬でありながら致命的な隙だった。

 その驚愕している間に、男へ肉薄した少女は、抜き放った警棒で、男の頭部へと殴りかかった。

紫煙しえん!」

 だが、それより早く、男の指示なしにシオリが間に割り込む。

「へぇ、指示なしにビハインドが庇いに来るなんて。随分懐かれてるのね」

 シオリの青白い炎を帯びた手刀と警棒が触れ合う。刹那、警棒にレイコが纏っているのと同じ紫色の炎が如きオーラが纏わりつき、青白い炎と紫の炎が如きオーラの両者が拮抗する。

「そちらこそ、ビハインドと人間が拮抗するなど聞いたこともないぞ」

 「ビハインド」。それがレイコと、シオリの正体だった。

 彼女らは背後霊。英語で言うならば「ゴースト・ビハインド」。背後霊を使役する彼らはそれらを縮めて単に「ビハインド」と呼んだ。

「ちっ」

 シオリと呼ばれたビハインドを抜けないと判断した少女……憂紀は後方に飛び下がり、レイコと呼ばれたビハインドと並ぶ。

 そして、両者はほぼ同時に、それぞれ別々のものを取り出した。

 男……紫煙はタバコの空箱を。憂紀は竹筒を。

「タケシ!」

「コウヘイ!」

 それぞれの容器から新たなビハインドが出現する。

 タケシの見た目は既に説明した通り。

 コウヘイはボクシンググローブを両手につけた半裸の少年だ。

 両者の竹刀と拳がぶつかり合う。

「やはり既にストックしているビハインドがいたか。ならばここには君もストックを増やしに?」

「あなたと一緒にしないで頂戴」

 通常、人間が使役出来るビハインドは一体だけだ。ビハインドの使役とは即ち「取り憑かせている」状態であり、二体以上のビハインドに取り憑かれて、無事でいられる保証はない。一体取り憑かせて無事でいること自体、使役者の特殊な才能なのだから。

 だが、直接取り憑かせず、何かに封印して必要に応じて封印を解く方式であれば?

 この発想から生まれたのがビハインドを空の容器に封印する「ストック」と呼ばれる技術。

 彼らこそはこの現代にあってビハインドと言う名の超常を操る者。

 「ビハインド・ストッカー」である。


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