ダイヤ王国歴1506年10月同時刻。
ダイヤ王国の国境付近。
丘の上にはハート皇国の野営用のテントがずらりと並んでいる。ダイヤ王国に侵攻した兵士とは異なる後方支援部隊だ。そこに同行した聖女アリサは、忌々し気にダイヤ王国を眺めていた。
聖女アリサはダイヤ王国の妖精から拒絶されたため、王都に入ることができない。それを知るのはアリサ本人だけ。それだけでも腹立たしいのだが、それ以上に彼女は現状に不満しかなかった。
「なんで、なんで
アリサは聖女として
ダイヤ王国女王は、
そのためハート皇国への食料提供の隠蔽から始まり、様々な裏工作を行った。収納魔法を持っていたアリサは、ダイヤ王国から提供された食料を強奪。もちろん派遣隊は、全て使い魔に食わせた。
それから食料を丸々手に入れて、ハート皇国の民衆たちの前で配ったのだ。その結果、『聖教会』から聖女認定を得た。
順調だったが、アリサの不満は尽きない。
ゲーム内で使い魔は妖精だったのだが、アリサの前に現れることはなかった。その設定の
(何でこの国は茨で包まれていないのよ! 本当あり得ないわ!)
ゲームクリア後に、アリサが女王になることで茨の呪いが解除されダイヤ王国が復活。
四季折々の花や果物が常に実っており、食材となる動物は勿論資源も裕福な国へと姿を変える――はずなのだが、すでにダイヤ王国は実り豊かで、女王は君臨しているが暴君ではない。
前提条件が破綻しているため、アリサはどうにかしてシナリオクリアの条件である『ダイヤ王国女王とシン王子との婚約破棄』と『四か国同盟を白紙』の筋書きを用意した。
しかしこの二つの条件をクリアしてもゲームクリアにならず、戦争へと発展。
自分が手に入れるはずの国が劫火に包まれるのを見る度に、苛立ちが募る。廃墟の国などアリサは望んでいない。
ダイヤ王国の贅沢な暮らしをそのまま強奪したいだけなのに、どうしてこう蹂躙するような戦争になったのかと頭が痛くなった。
(これだから頭に血が上った獣人族は……)
盛大な溜息を吐きつつ、戦禍を眺める。
(だいたい何が駄目なの!? ハッピーエンドルートで
なにかもゲームと違う。
シナリオ通りであればダイヤ王国の玉座も、愛も全てはアリサのものになるはずだったのに、何一つ思う通りに行かない。アリサはこの世界に来てからずっとゲームのバグ、設定が狂っていると思い込んでいた。すでにダイヤ王国が滅びる光景も十二回目で、うんざりしていたのだが今回は今までと違った展開が起こった。
「!?」
アリサの絶望を払うように、金色の光が突如空の上に広がっていく。次いで光のあった場所に無数の幾何学模様が浮かび上がった。今までにない展開にアリサは目を輝かせた。
「そうそう。私が待っていたのは、こういうのよ!」
アリサは歓喜の声を上げた。
しかしそれは彼女が求める展開ではない。十二回目の
傍から見れば些細な違い。
けれど、その僅かな行動は十三回目の
十二回目の